廃遊園地の正面ゲートを抜けた私たちは警戒しつつ、少しずつ園の入り口広場へやってきた。足を踏み込んですぐに襲いかかってくるものかと思ったけど、なんの反応もない。
「動きなし……明星さん。ドローンから何か動くようなものは見れますか?」
『カメラでは特に。サーマルに切り替えても何もありませんね』
「了解です」
便利だなぁ空からの支援があると。それにしても、廃遊園地という割には結構中は原型を留めてて、今いる広場も植栽が伸び放題な以外は埃で白ずんでるだけで活気があったことを想像しやすい。
暗視ゴーグルとかはないので、普段つけてるハーネスを持ってきて胸の横にライトをつけて前を照らして、視界は最低限確保できてる。
「今いるのが正面ゲート裏の広場ですから、この目の前の庭園……は伸び放題で抜けられないのでこの周りの通路を歩いて先に行きましょう」
「了解。生塩さんはここの構造知ってるの?」
「日中のうちに頭に入れておきました」
「ありがとう、助かるよ」
さすがにミレニアムの生徒会役員だけあって、生塩さんの優秀さが早速出てくる。短時間でもうここのことを頭に入れてるなんて。
生塩さんの言葉に従って、目の前の鬱蒼と茂ってるところの左右に広がる通路のうち右側に私たちは入った。本来ならもう少し広い通路なんだろうけど、草木のせいでちょっと狭くなってる。
「コハルちゃんはここがやってる時に来たことある?」
「ないです。あんまり、こういうの興味なくて」
「そっか」
なくても、補修授業部の子たちとこれから行くんだろうね。私もそういう友達がほしかったなぁ。
「先輩はこういう場所は…?」
「遊びに行く暇がなくてさ。今は少し余裕あるから、そのうち行きたいよ」
「な、なら、私と…!」
「お、いいね。コハルちゃんみたいな可愛い子といけるなら大歓迎だよ」
コハルちゃんと遊園地は楽しそうだ。
通路をしばらく歩いて抜けると、今度はいくつかのアトラクションが見えてくる。ジェットコースターかな?レールとかはまだ朽ちてないのか残ってるし、その周りも色々あるね。吊られてる椅子みたいなやつとか、たぶん建物中に何かあるやつとか。
ここまで来ても特に気配とかは感じない。廃墟らしく静かだ。
「…あ…すいません。あのメリーゴーランドは動画に映っていたものでは」
マリーちゃんが声をかけてきたので、振り返って彼女が指をさしているのを見た。その指先を辿っていくと、確かにちょっと離れたところに動画で動いていたと思われるメリーゴーランドらしきものが確認できた。
調査してみようか。
「見てみよっか。明星さん、動いていたと思われるメリーゴーランドがありましたので接近してみます」
『わかりました。もし可能であれば制御室も確認してみてください』
「了解です」
銃を構えつつ私たちはゆっくりメリーゴーランドへ近づいていく。周りの遮蔽物になりそうなアトラクションなどに目を配りつつだ。ただ、メリーゴーランドに近づいていっても何かが現れる気配はない。
動画ではこのあたりで熊の着ぐるみが動いていたはずだけど、脱ぎ捨てられた熊の着ぐるみなんてないし、あの着ぐるみたちが撃っていた銃弾の薬莢も散らばってない。ケースレス弾の可能性も捨てきれないけど、どうだろ。
「見たところ、古ぼけたものにしか見えませんね」
目の前までやってきて、生塩さんが言う。そのとおりで、見た目はなんの変哲もない経年劣化がいたるところに見られるメリーゴーランド。各馬を貫いている棒は錆てるし、砂埃で汚れ切ってる。
「これを…どう、調査するんですか…?」
「コハルちゃん。まずはそうだね、これが動いていたか確認しようか」
動画ではこれは動いていた。なら、このメリーゴーランド自体のテーブルの継ぎ目を見ればいい。乗り口を探せば制御室ごと見つかったので私はそこへ近づいて、地面とメリーゴーランドの中の継ぎ目を見た。
「……ビンゴ。ほんとにこれは動いてるね」
怖いので外れて欲しかったけど、メリーゴーランドの床と乗り口の地面に積もった埃は、少し模様が異なるし、そもそも動いていなければ溝が泥で埋まっていてもいいものなのにそんな様子は見られない。
「ヒマリ先輩。メリーゴーランドは動いていそうです」
『動力も無しに?ノア、制御室を覗いて見てください。通電しているかを』
「わかりました」
生塩さんが明星さんの指示で制御室の扉を開けようとするが、鍵がかかっていた。この時点でこの制御室を使って動かしたとは思えないけど、中を見る必要がある。どうしようか、と思っていたら「下がってください」とマリーちゃんが控えめに言って、そのままなんとハンドガンで鍵を撃ち抜いて破壊した。
「これで開きますでしょうか……?」
「ありがとうございます」
生塩さんは微笑んでいたけど、撃った瞬間はちょっと驚いてた。撃つの得意じゃないと思っていたけど、人に向けるのが苦手なのかな?マリーちゃんは。あと、私も驚いたけどかなり反動があるはずなのに平気で片手で撃ってた。
扉が開いたことで、生塩さんは中に入る。レールガンはいつの間にか背負ってるけど、あれ狭いとこだと突っかかりそうだ。閉所は避けて行動しないとね。
ガチャガチャと色々なスイッチを生塩さんが弄ってるけど、どれも反応がない。つまり通電してない。
「通電している気配はないですね」
『なるほど。ということは、そのメリーゴーランドは動くはずがないのに動いたと……わかりやすいぐらいに特異現象ですね』
「そのときだけ通電してたとかは?」
『ありえなくはないですが、可能性は低いでしょう。事前に資料を貰いましたが、ここは発電機などの類は全て止まっているそうです』
どういう力でこのメリーゴーランドは動いていたんだろう。コハルちゃんが明らかに怯え出してるので、大丈夫だよと頭を撫でつつ、ここから先に進むか考える。調査としてはまだ足りないと思う。トリニティとしては、起きている異常は全て把握しておきたい。
なので、あの着ぐるみの幽霊(?)を確認したいところ。
「生塩さん、ここから奥は何があるのかな?」
「ここから先となりますと……モモフレンズエリアがあって、その先にマーケット。お土産売り場があります」
「………行こうか。調査としてはまだ足りないからね」
「わかりました。私は構いませんが、残りのお二人は?」
コハルちゃんは震えながらも頷いてくれて、マリーちゃんは大丈夫ですと、言わんばかりに微笑みながら頷いた。
「じゃあ、調査は続行ね」
隊列を組み直して、私たちはさらに奥へと進むことになった。
「(姫ちゃんは無事園内に入れたでしょうか?)」
ギリースーツを纏い、周囲に完全に同化した槌永ヒヨリは得物である対物ライフル“アイデンティティ”のスコープを覗きながら、仲間である“姫”が目的地に侵入できているか心配だった。
今、ヒヨリがいるのは“スランピア・トリニティ”の近縁にある小山であり、園内は彼女の持つライフルの射程圏内だった。本来であればヒヨリはこんな場所に身を潜めているはずがなかったが、彼女のリーダーにこの場所からの援護を命令されていた。
「(うぅ、こんな一人で敵地に行けって言われて、私どうでもいいからこんなこと任されたんですね)」
ネガティブな思考をしつつも、彼女の狙撃手としての腕は違わぬもので、泣きそうな顔をしていようともライフルを構える姿勢には一切ブレがない。
スコープの先には園の入り口が見えており、彼女は駐車場跡地に何かが停まっているのを見かけた。よく見れば、それはトレーラーであり、トレーラー自体の天板には様々な機器――それこそ通信用の設備やどうみても機銃座にしか見えない四連砲や、ドローンの発射装置なども見えた。
「(………?トリニティにあんな装備を使えるところなんて)」
他校と比べれば型落ち感が歪めないトリニティの装備とは思えない重装備のトレーラーであり、明らかに前線での簡易司令塔の役割を持っているとヒヨリは判断した。トレーラーの側面には校章らしきものが見え、ヒヨリはその校章の形に驚いた。
「え……!?なんで、ミレニアム…!?」
思わず、声すら漏らすほどの衝撃であった。ミレニアムとトリニティの関係などヒヨリは聞いたこともない。確かに生活用品などで多少の交易はあるのは誰しも知っていることだ。ヒヨリが持っている携帯も過去にトリニティから密輸したミレニアム製のものだ。
だが、この様子は明らかに作戦行動に対する支援であり、トリニティとミレニアムが何らかの密約を結んだのではとヒヨリが想像するに容易かった。
「(ゲヘナはレッドウィンターと同盟を組んだってリーダーから聞きましたし…うわーん!私の判断できる範疇超えてますよぉ!)」
あんな高性能に見える支援装備が使用されているのであれば、高い索敵能力を持っていることは容易い。“姫”が単独で潜入し、多少は隠密行動に長けているとはいえ、空から索敵されてはどうしようもない。
ヒヨリはどうするべきか思考を巡らせる。彼女がここで撃つことを許されたのは四発だけであり、弾丸は全てトリニティ製のもの。とにかく露見することを避けるために援護は最低限だ。もちろん、最悪の場合はもう数発は撃てるが。
「(合図もまだですし……時間稼ぎ、必要ですよね…?)」
遊園地の一番高い塔のようなアトラクション。上下に動くコースターの頂上に巡航ミサイルと発射装置は隠されており、起爆スイッチを入れれば、一回だけ光が瞬くことになっている。ヒヨリはそれを見届けるまでここを動けない。
「(トレーラーを壊しちゃいましょうか…まずはトレーラーヘッドのガソリンタンクに榴弾。そのあとに後ろへ徹甲弾と榴弾…たぶん、乗ってる人、ヘイロー壊れちゃいますね)」
ヒヨリの口元が僅かに綻ぶ。彼女のこれから行おうとしていることはこのキヴォトスでは過去あまり例を見ない“殺意”を持っての行動だ。
「(痛いでしょうね、熱いでしょうね、苦しいでしょうね……けど、ごめんなさい)」
セーフティーを外し、ヒヨリはスコープの先の的に狙いを定める。風は凪ぎ、静まりかえった遊園地。停止目標に当てるなど児戯に等しく、ヒヨリはトリガーに指をかけた。呼吸が僅かに浅くなる。人を手にかけたことは――ヒヨリにはない。ハジメテ。
「ふっ……ふっ……ぅ……ぁ………ッ!」
一発目。弾丸は見事にトレーラーヘッドの燃料タンクに着弾し、大きな爆発を起こす。すかさずヒヨリは弾を装填しなおし、二発目を後部のトレーラーへと向ける。徹甲弾が放たれ、コンテナの内部へ着弾。装甲が厚いのか貫通とまではいかなかったが、ヒヨリからすれば装甲片で乗員を殺傷できるため好都合であった。三発目を間もなく用意し、続けて撃った。ピンホールショット……榴弾が更なる破壊をもたらし、トレーラーは積んでいたであろう機器や弾薬に引火し爆発する。
「あぁ、や、やって、しまいました。こ、これで私も、人殺し……し、死刑にされちゃいますよね…うぅ」
並の生徒であれば生存など望めないような爆発の仕方であった。かろうじで即死とまではいかないが、救援がこなければ焼き尽くされていずれ死ぬであろうことは間違いない。ヒヨリは詰めの確認をしようとスコープを再度覗き込もうとした。
「へ」
しかし、スコープを覗くまでもなく、爆炎をあげるトレーラーから一条の光が昇ってくる。慌てて再度覗けば、それが何らかのユニットに乗り込んだ少女であることがわかった。
「い、生きて!?」
どういうからくりなのか。ヒヨリが目をこらせば単純なものであることがわかった。青白い光の防壁がその少女と少女が乗る車椅子を包んでいた。バリアであった。
ヒヨリは絶望感と、何故か奇妙な安堵感があった。
「(なんで安心してしまっているのでしょうか……と、とにかく、まずいですよ…!まさか今ので無傷だなんて…!)」
空中に飛び出したと相手へ狙撃をすれば位置がバレる。ヒヨリは相手の生徒が明らかに周囲に目をこらしているのが見えた。風に揺れる長く白い髪、敵対者へ対しての怒りが浮かぶ表情。浮かび上がる数多の空間投影ディスプレイ。
「(……っ……ま、魔女……!?)」
その姿は近未来的であるはずなのに、まるで魔女のようにヒヨリから見えた。
ヒヨリの驚愕はこれだけでは終わらない。燃え盛る残骸の中で、何かが吹き飛ぶ。爆発によるものではなかった。ヒヨリが視線を向ければ、煙を上げながら何かが炎の中から、それは人だった。
「(ぜ、全身燃えてるのに、なんであんな)」
火だるまになったはずが、まるで何事もなかったかのようにピンク色の髪をした少女が煙を上げながらスタスタと歩いていた。服は全て燃えたのか何も纏っておらず、恐ろしく豊満で瑞々しい肉体を夜空の下に曝け出していた。
ヒヨリは悟った。あのトレーラーに乗っていた者たちの実力を。只者ではない。それこそ、ヒヨリたちのチーム“アリウススクワッド”に匹敵するだけの者たちではないかと。
『ふふふっ……撃たれたのはいつぶりでしょうか?新入生の頃にリオやウタハとバカをしていた時以来でしょうか』
悲鳴を上げそうになったがヒヨリは特殊部隊の一員の意地としてなんとか堪えた。特定の周波数ではなく、広域に対する無差別の通信。ヒヨリの持つ通信機が強すぎる強度のそれを拾ってしまっていた。
応えれば終わる。逆に殺される。ヒヨリはそんな気がした。それほどまでに“魔女”の言葉は朗らかな声音でいて、おぞましいまでの感情が込められていた。
『どなたかは存じ上げませんが、私の可愛い後輩に怪我までさせて……無事で帰れると思っているのであれば、あなたが今週の占いで一位だったからでしょう』
「(ひっ、ま、まずいです、逃げないと、逃げないと……!)」
何かされる。ヒヨリは恐慌状態に陥った。生物的な本能があの“魔女”から脇目も降らずに逃げろと言っている。ヒヨリは合図を待たずに逃げようとして、スコープから目を離そうとした。その瞬間だった。
“魔女”と目が合い、その口が“ミツケタ”と動いたのと、その魔女の背後で光が一瞬光ったのは。
「(…!逃げます逃げます逃げます!!)」
もはやここにいる必要はない。ヒヨリはギリースーツを投げ捨ててその場から駆け出す。濃密なまでの“死”の感覚。先ほどまで獲物だった相手から向けられる敵意。ヒヨリは理解した。彼女が手を出したのは明確な“上位者”であると。
『あの女にも出来たのです。私も出来て当然でしょう。ダンディライアン、リリース』
“魔女”――ヒマリは車椅子から4つほど戦闘ユニットを射出する。それは非常にわかりやすい形状をしていた。後方に姿勢制御用のアポジモーターとローターがつけられ、その先には開放型のバレルが設けられ、紫電を漏らす。
ヒマリの脳波に感応して、機敏に動くそれらはそれぞれが更に小型化されたレールガンであり、ドローン兵器だ。
『いきなさい』
空に浮かぶ四つの砲門が光を瞬かせる。刹那、ヒヨリが元いた場所は跡形もなく消し飛び、大きく煙を上げた。ヒヨリは既にその場から離れていたが、離れたところまで届く強烈な衝撃に更に逃げ足を早めた。
「……手応えはないですね」
ヒヨリが逃げ出し、ヒマリは仕留め損ねたとため息をついた。車椅子の推進剤も無理やり飛ばしているため長くは保たない。彼女はトレーラーから少し離れたところに降下した。そこへ全裸となったエイミがかけてくる。彼女らしくもないとても心配した表情を見せていることにヒマリは気がついた。
「部長!」
「大丈夫ですよ、エイミ。久々に撃たれたので驚いただけです。あなたこそ大丈夫ですか?」
ヒマリはエイミの体を確認するが、煤けているだけで火傷や生傷は見られない。以前にエイミが負ったであろう古傷こそ見えたが。
「私は平気」
「ならよかったです。ただ、服がなくなりましたね」
「……私はこのままでもいいけど?」
「トリニティの子たちには刺激が強すぎますよ。見慣れている私ならばともかく」
ヒマリはこのあとどうしたものかとため息をついた。支援ユニットが大破し、今の空中での戦闘行動で車椅子のエネルギーは尽きかけている。当然園内との連絡は途絶えた。エイミの服がないのも頭を悩ませる。流石にこのままとはいかない。
「………仕方がありません」
「どうするの?」
「あなたはいいですが、私はそのままではよくありません。背に腹は変えられないので」
「……まさか」
「嫌とは言わないでくださいね?私だって我慢するのですから」
ヒマリは白い肌を真っ赤にしながら、エイミに近づいていくのだった。
遊園地のだいぶ奥。トリニティの街並みが再現された物販エリアの跡地にやってきた私たちは、後方、つまりは入り口の方から爆発音と僅かに爆炎が上がったのが見えた。
「なに!?」
「……ヒマリ先輩…!?」
飛び上がって驚くコハルちゃんと、今までの余裕のある表情が消えた生塩さん。私は気が緩んでいたと自分恥ずかしく思った。敵が中だけとは誰が言っただろうか。何があったかはわからないけど、明星さんたちがやられたなら…当然ドローンは動きを止めていた。
空からの支援はもう望めない上に、後方から敵が来る可能性だってある。
「せ、先輩!どうしましょう!?」
「落ち着いて。………こうなった以上。明星さんたちを助けないと。調査を中止して、戻らなくちゃ」
「は、はい」
「生塩さん、伊落さんもいいね」
生塩さんとマリーちゃんが頷いた。二人とも武器を構えて臨戦体制だ。
戻ろう、そう思って足を動かそうとした。
「ッ…!?」
ゾクリとした感覚がして、耳が立って、毛が逆立った。本能的な何かが反応した。なんだろ、これ。恐怖…?感じたことない、なにこれ!
「どうしたんですか、草鞋野さん」
生塩さんが私の異変に気がついてくれたけど、言葉を返せない。なんせ、この感覚、背後からとかいうお約束じゃない。“全方位”から向けられてるからだ。
「……ひっ…!」
コハルちゃんの短い悲鳴が漏れる。周囲のトリニティの街並みを模した各売店の窓がぼぅ、っと青白く光出す。点々とではない。全部。全て光った。こりゃまずいかも。
「あぁ…!」
マリーちゃんが悲鳴のように声を漏らして、指差した。私たちの進んできた道を塞ぐかのように敵が姿を表す。青白く光って、虚な様子で歩いてくる。動画で見た熊の着ぐるみ――。
「いや、キモっ!?」
――とは様子が違った!なにあれ!?なんで熊の着ぐるみが動画のオーバーオールじゃなくてエグい角度のハイレグ着てマリーちゃんみたいなベール被ってんの!?思わず普段は絶対言わない言葉が出ちゃったよっ!
「な、なんですかあれは」
「え、えっちなのは…いや、キモい!」
あまりにあんまりな姿に生塩さんも困惑し、コハルちゃんも私と同じ感想を漏らした。どういうことなの…?でも、一つだけわかることがある。こいつらは間違いなく、私たちに敵意を向けてる。
「た、退路が塞がれました!どうしましょう!?」
マリーちゃんのいう通り、次々と出口の方に敵は湧いてくる。対して、更に遊園地の奥へと進めばまるで行きはよいよい、とでも言いたいのか露骨にハイレグ熊が少ない。誘われてる。
「生塩さん、このまま進めばどこに着くの」
「……時計塔を模した上下に動くコースターのアトラクションに辿り着きます」
先ほどから威容を見せていた大きな時計塔のようなもの。どうやらあそこが終点らしい。わざわざ誘い込むということは罠かな。でも、進むしかないのが現状だ。
「後退は現実的じゃない。このまま突破するよ!」
私は決断した。進むしかない。二手に分かれたところで、生塩さんの装備で単独突破は不可能だ。ならもっと奥に行ってみるしかない。それに、このよくわからない相手の発生源にたどり着けるかもしれない。
生塩さんが納得しかねてる様子だけど、しょうがない、となったのか正面を向いてくれた。彼女の持つレールガン、どれほどの威力かわからないけど、頼りにしよう。
周囲の建物のガラスが一斉に割れ、ハイレグ熊やウサギが飛び出してくる。私は正面に現れた一体に照準を合わせ一発放った。すると、コハルちゃんが撃った時と違って何故か弾がほんのりと光って、熊に直撃すると弾けて熊も消しとんだ。
「……おぅ、なにこれ」
自分でしたことがよくわからず困ったけど、今はありがたい。それに、相手は生身じゃない。やっぱり何か霊的なものかもしれない。直撃して消えた熊は霞んでそのまま痕跡すら残していないのだから。
「とにかく行こう!突撃ー!」
「「「おー!」」」
時計塔、何が待ち受けてるのかわからないけど、私たちは駆け出した。
“姫”こと、アリウス分校の生徒である秤アツコは時計塔型のアトラクション、その最上階に備えられた巡航ミサイルに対する処理を終え、既に園の外へと向かっていた。
「(これで良し。ミメシスもこっちへ侵入者を追い込むようにした)」
アツコは遊園地に入ったエリカたちを少なくともしばらく動けなくするために巡航ミサイルが爆発するタイミングでやってくるようにミメシスたちに仕向けていた。本来は単独の任務のはずが、やはり不安だと援護の要員を入り口側に配置したためにアツコはそうするしかなかった。
あとは離脱するだけだったが、アツコはミメシスを顕現させたことで敏感になった知覚が強大な何かを捉えた。
「(……!これは…この神秘は…!)」
それは強力な“神秘”の気配。アツコは思わず園内へと振り返る。最奥に配置したネズミ型と鳥型の強力なミメシスが蓄えた神秘をも遥かに圧倒するそれは、アツコの知る限りトリニティの生徒会長並のものだった。
「(例の新しいティーパーティー…?けど、これは聖園ミカと同じ、複合の……!)」
アツコは“複合神秘”という存在を知っていた。
生徒が携える神秘の強さはヘイローに現れる。だが、生徒のほとんどはヘイローが“ある”ということしか知覚できず、その形まではおぼろげにしかわからない。だが、一部の生徒は知覚できることがあり、アツコもその一人だった。
ゆえに、アツコは聖園ミカのヘイローの形が複雑で、“天使”の権能とは違うより大きな“宇宙的存在”さえ抱えていることを知っている。
感知した“神秘”はそこまでには及ばなくとも、尋常ではないものだった。
「(2つ…いや、3つ。すごい……サッちゃんに報告しないと)」
敵は想像よりも強大。巡航ミサイルを犠牲に得た情報は決して無駄ではなかったとアツコは思いながら、遊園地の外へと脱出した。
ヒマリがイシュタルモチーフだったりするので美しさがそのまま恐怖(畏怖)になる感じがして好きです。
車椅子にこんな機能はないですが本作では命の危機に瀕した時だけ機能する装備として色々搭載してます(同級生であるウタハが色々ヒマリにしてあげています)
主人公がまるでミカみたいな攻撃エフェクト出てますが遊園地がミメシスのせいでなんかそういう霊的な場所になってるのでちょっと神秘が漏れ出してる感じです。流石にミカみたいに隕石降らせたりとか無茶苦茶はできません。