頑張りとは、報われるべき願いである   作:ババネロ

47 / 143
年末忙し過ぎて執筆時間が取れない!
ということで生存報告も兼ねて投稿です。連続投稿でもないのでいつもより時間をズラしてます。久々なのでちょっと長めです。今話から本格的に晄輪大祭準備編スタートです。


Area-04「ハイランダー客車内 #トレインジャック #人質 #更生」

 聖園さんと模擬戦をした翌日、シャーレの部室で正式に聖園さんがシャーレの嘱託部員という扱いになったことを先生から話された。……模擬戦のことは先生もこれ以上言うことないのか触れてこなかったので、私も触れないことにした。ちなみに先生から怒られた後に空井さんからも絞られて、聖園さんと一緒に荒れ果てたキャンプ地を整備するハメになった。

 

「以上により、聖園ミカを連邦捜査部シャーレの嘱託部員とする。はい、これが辞令ね」

 

「はーい!」

 

 先生から聖園さんに手渡されたのは七神代行から出された辞令だった。組織的な面だけ見れば一応の監督者は七神代行になるので、私のトリニティ転入とかも七神代行に許可をもらう必要がある。ほんとは超法規的権限で必要ないけど、隙を見せないためにってことだね。

 

 聖園さんが辞令を受け取ってしばらく眺めた後、彼女に与えられたデスクの上にそれを置いていた。聖園さんのデスクの上にはまだ電話しかない。パソコンは空きがないので、連邦生徒会で在庫が出るのを待つか、シャーレの雀の涙のような予算で購入するか、先生のポケットマネーで購入するかの3択だ。

 

「これで正式にミカはシャーレの部員になったけど、何する?」

 

 先生の問いかけに、聖園さんは首を傾げていた。ここで何をするか、奉仕活動って言っても確かに何をすればいいのかな。刑務作業と違って、シャーレの仕事を手伝わせるんだもんね。

 

「うーん、トリニティだと草むしりとか、トイレ掃除とか雑用してたけど……」

 

「更生寮の藤川さんからミカのしてたことは聞いてるよ。ただ、ここで同じことをしてもしょうがないから、ミカはどうしたいかなって」

 

 この問いかけをする意味を考えてみよう。先生がわざわざ聖園さん自身に言ってほしいってことだろうけど、自主的にシャーレの仕事をしてほしいってことなのかな。といっても、聖園さんはカヤちゃんの話とか先生が教えてくれたトリニティ側の思惑を考えると自主的にここへ来たというのはなんともいえない気がする。カヤちゃんが乗り気だった、っていうけど、トリニティで受けた仕打ちを考えれば逃れてきたとも言える。

 

 それでも、聖園さん自身がどうしたいか、それを先生は聞きたいのかな。

 

「先生たちって、普段は街中で困ってる人を助けてるんだよね」

 

「支援要請が入れば、そうだね」

 

「それに、私が起こした事件も、アリウスがやったテロも、先生たちが治めたもんね」

 

「そこは違うかな。みんなの協力があったから終わらせられたんだよ」

 

「そっか」

 

 先生の言う通りで、何か大きな事件があった時、シャーレの単独で事件を終わらせたことはまずない。私が来る前のアビドス事件なんてアビドスの子たち自身の力があってこそだし、私の黒崎さんの保護もハルナの協力があったから。エデン条約の時だって、みんなが協力してくれてようやくだ。

 

 聖園さんの目には、私たちはどのように映っているのだろう。

 

「……ここで何をしたいか……よくわからないかも」

 

 答えはわからない、というものだった。当然といえば当然、けれど、濁さずに正直な答え。結構大事なことだね。わからないなら、ハッキリとわからないと言う。意外と、これが難しいんだよ。

 

 わからない、ということがわかった私と先生は、それを前提に動くことができるからね。

 

「うん、わかった。じゃあ、まずはミカ、エリカの補佐として動いていこう。シャーレのことをよく知ってもらうためにね」

 

「私の補佐ですか?」

 

「ナギサも同じように部下みたいにしてたし……いいかな?」

 

 いやあの部下みたいにナギサちゃんを扱ってたのは事故だし、ナギサちゃん自体の気質と私の先走り癖が悪魔合体したというか、なんというか。聖園さんをちらりと見れば「よろしくねー」と笑顔を向けてきていた。

 

 大丈夫かな……いや大丈夫だろう。聖園さん、ふわふわしてるように見えて、ちゃんと政治的なトップにいたわけだし…神輿だなんて言われても、私と初めて会った時のナギサちゃんと並んで見せていた威圧感は忘れられない。

 

「えっと、よろしくね」

 

「よろしく、エリカちゃん。あと、ミカでいいよ?」

 

 名前で呼んでほしいらしかった。

 

「じゃあ、ミカさん」

 

「さん付けなんだ…」

 

「嫌だった?」

 

「別に。ただ、ナギちゃんはちゃん呼びだったからさ」

 

 聖園さん…ミカさんはくすくすと笑っていた。よ、よくわからないこのお嬢様。ナギサちゃんはわかりやすいぐらいにいい子だったけど。先生をチラリと見ると、意味ありげな視線を一瞬向けられた。ミカさんをどうしろというのか。わからないけど、先生から任されたんだし、犯罪を犯した生徒の更生はヴァルキューレ生としては役目の一つ。しっかり果たさないと。

 

 本当はSRTの子たちと晄輪大祭に向けて練習とかしたいけど、昨日の晩のうちに無理そうだからFOXとRABBITの両小隊それぞれで特訓しといてね、とは伝えてある。ユキノちゃんもミヤコちゃんもいい返事をしていたので、任せても大丈夫だろう。

 

 で、こっちはこれからどうしようかな。ミカさんの方を見ると、彼女は首を傾げた。何か仕草をするたびに彼女からは可愛らしいという感想が出てくる。なんというか、まさに愛されるために生まれてきた……天使・女神に近い美貌だった。

 

 もしかしなくても、私はトリニティの天使族の子が性癖——いやいや!邪なことを考えてる時じゃないでしょ今は。

 

 改めてミカさんのことを見る。今着ているのはトリニティの、彼女専用に用意された制服だ。ティーパーティーのバッジこそ外されてるけど、前に会った時から変わらないもの。せっかくシャーレで動くときは制服を用意してあげたほうが、シャーレの仕事をしてるって気持ちになるかな。

 

「先生、まずは形からということで、ミレニアムに行ってミカさんの制服を用意してあげたいと思います」

 

「なるほど?ウタハたちを頼るんだね」

 

「はい。それに、晄輪大祭の準備の状況を確認しなくてはいけませんし、視察がてらというのもいいかと思っています」

 

 先生にそのように言えば、彼女は頷いてくれた。

 

「いいね。じゃあ、二人は今日ミレニアムに行ってもらおうかな。私は別の支援要請があるから」

 

「別の支援要請ですか?」

 

「ちょっとね。エリちゃんたちには後で報告書は見せるから」

 

 先生が詳細を語らない支援要請は何かある。ミカさんも不思議がってるけど、特に口は挟んでこない。こういうところを見るとちゃんと教育された子というか……ナギサちゃんと同じで、育ちはかなり良いんだろうね。

 

「あとそうだ、先生。車もエンジニア部にいいものがないか聞いてみます」

 

「いいよ別に。なんでもウタハたちに頼りっぱなしはダメだし」

 

「それもそうですけど…」

 

 お蔵入りという形でかなりの未発表作品があるらしいので、白石さん的にはシャーレで使ってもらうのは歓迎だと言っていた。なので、言えば快く貸し出してくれそうだけど…先生は少し声を落として私たちに言ってきた。

 

「……変な機能が付いてたら、ほら…」

 

「あぁ…」

 

 なるほど、となってしまった。これまで借りたものって変なものを追加する余地がないものだったけど、思えばカイテンジャーに使った電撃グレネードとかもやりすぎな威力だったし、普段使いが出来るものを渡されるかは怪しい。

 

 実はRABBIT小隊が使ってる入浴セットも“地獄の釜茹でモード”なる機能があるらしく、一度試しに使おうとしたらボイラーがオーバーロードしそうになって緊急停止させたらしい。これを車でとなるとジェット噴射機能が付いててもおかしくない。

 

 うん、やめておこう!

 

「わかりました。先生。制服までにとどめておきます」

 

「そうして。じゃあ、今から行くのかな?」

 

「はい。準備して向かいたいと思います。ミカさん、いいね?」

 

「うん。いいよ」

 

 よし。じゃあ、早速ミレニアムに行こう。ミカさんを連れ立って、私はシャーレの執務室から出ていく、先生は「いってらっしゃい」と手を振ってくれていたので、二人で元気よく返事をしておいた。

 

 

 

 ミレニアムへの移動は電車を使うことになった。到着駅はミレニアムサイエンススクールに近い、ミレニアム中央駅。エデン条約事件の時にお世話になった駅長さんがいる駅だ。あのあとの状況はユキノちゃんから報告を受けたけど、予想通りほとんどユキノちゃんとオトギちゃんが出る幕もなく、ハイランダーの制圧射撃の前にアリウス生たちはやられてしまったらしい。恐るべしハイランダー。

 

「昨日も電車だったし、また電車乗るの?」

 

「車もないからね。ヘリは私飛ばせないから」

 

「ふーん。ナギちゃんから聞いたけど船は操れるんでしょ」

 

「一応ね。けど、船で行ったら日にち変わっちゃうよ」

 

 もう既に乗って、走っているこのミレニアム行きの電車は特急だ。D.U.を出たら一直線にそのままミレニアム。今はちょうど10時ぐらいだから、お昼前には着くかな。ボックス席なのでミカさんは私の対面に座っていて、もう既に退屈そうだった。

 

 ミカさんの横の空席にはシールやストラップでデコレーションされたミカさんの銃を収めているジェラルミンケースが置いてあった。長距離移動用だとこれに入れてるみたいだ。

 

「そういえば、その銃返してないんだね」

 

「これ?」

 

 私の銃を見てミカさんが言う。トリニティ製のライフルを両手に持って見せてあげると、ミカさんは触りたそうにしてるので、差し出してあげると、彼女は丁寧にライフルを手に取った。滲み出るお上品さ。

 

「コハルちゃんと同じ銃……けど、全然仕上げが違うね」

 

「わかるの?」

 

「うん。一応、モノがわかるように教育は受けてるよ」

 

 審美眼、とかそういうのかな。お嬢様だよねぇ。ナギサちゃんが意外と観察眼優れてたりするのもそういうことなのかな。言動も性格も全く違うのに、ミカさんのライフルを観察する様子はどことなくナギサちゃんを連想させる。幼馴染だから似てるのかな。

 

「ウチのマーク、掠れてるけどこれワザと?」

 

 ミカさんが指摘してきたのはストックに描かれていたはずのトリニティの校章だ。今は掠れて中心部が削れている。

 

「ううん。それは古聖堂でミサイル攻撃された時に瓦礫で擦っちゃったみたい。一応表面で怪我しないように、やすってはいるけど」

 

「………そうなんだ」

 

 うっ、なんでか急にミカさんの空気が重くなった。いやいや、今のは責めてもいないよ。

 

「気にしないで。何もミカさんのせいじゃないよ」

 

「けど、アリウスをあそこまで中に入れちゃったのは私のせいだよ?エリカちゃんはお腹に穴あけられたのに、私のこと、恨んでないの?」

 

 ミカさんが銃口の方を持って私にライフルを返してくる。私はストックの部分を持ってミカさんから銃を受け取り、そのまま席についてるガンラックにかけておいた。そういえば先生が驚いてたっけ、電車の席にガンラック標準搭載なの。外の世界だと普通じゃないらしい。

 

 それにしても、ミカさんを恨んでいるか、なんて聞かれてもなぁ。

 

「………ミカさん、正直に言って良いかな」

 

「……いいよ」

 

「どうでもいいんだよ」

 

「え」

 

「私とミカさんの接点って、存外薄いんだよね。補修授業部の件の時は直接関わらなかったし、トリニティにいた時も話さなかった。だからさ、すごい冷たい言い方をすると、なんとも思ってないよ。だって、まともに話したの昨日が初めてなんだから」

 

 確かに、エデン条約事件の発端はミカさんの行動にも原因がある。けど、私がミカさんに恨みや憎しみを向けるような理由が正直に言って無い。加えて、彼女がナギサちゃんの大切な人であるせいで、余計に私はミカさんに対して悪感情を向けていない。

 

 さっきのような銃を向けてほしい、という願いには応えられない。罰せられる。叱られる。責められる。そのほうがきっと、ミカさんは楽なんだろうね。先生がミカさんの意思で何かをさせようとしてるのって、これが理由かな。

 

 逃げるな、って言いたいのかもしれない。

 

 ナギサちゃん。あなたのことを一つだけ咎めるなら、ミカさんはしっかりと罪人として扱うべきだった。ミカさんは、私に今は罪人と向き合う警察官としての草鞋野エリカを求めているのだろうか。

 

「だからね、今のあなたと私の関係はフラットだよ。何もないの。過剰に罰するような感情もなければ、易しく擁護することもない」

 

「………ぇ……?」

 

「これからなんだよ。私があなたのことを知っていくのは。同じく、あなたも私のことを知っていくように」

 

 けど、今の私はシャーレの草鞋野エリカだから。私はミカさんに笑顔を向ける。

 

「ミカさん。一旦、シャーレでの奉仕活動に集中しよう。生徒を助けるシャーレが、そんなに暗くちゃね」

 

 強引に話を切り上げる。容易に助けてもいけない。罪を犯した生徒をどう更生させていくか。これはずっと、ヴァルキューレにいた頃、カンナちゃんとさんざん議論したことだ。結論は未だにお互い、出せていない。

 

 けど、私の持論としては罪を犯そうとも、生きていれば明日は来てしまう。だからどのような道を選択していくか。私のようにヘイローを壊すという選択肢を選ばずに——これ以上、どのように罪を重ねないように進んでいくか。

 

 ミカさんも進んでいくしかないのだ。罪を犯しても進まなくてはいけない、私のように。

 

 私の気持ちがミカさんに伝わったかはわからない。けれど、ミカさんは少し調子を取り戻したのか、穏やかな空気になっていた。

 

「……優しくないんだね。ナギちゃんから聞いてたイメージとだいぶ違う」

 

「私はさ、休学してるけどヴァルキューレの生徒だよ?」

 

「それもそっか。なーんだ、てっきり王子様みたいなの期待してたのに」

 

 どういう期待!?王子様…って、私、女の子だし、お姫様みたいに扱ってほしいこともあるんだけどなぁ。ハルナも前の潜入捜査の時は私にタキシード着せてきたし。

 

「私だってドレスとか着たいんだよ」

 

「ふふっ、エリカちゃん可愛いから似合いそうだよね」

 

 かわっ!?私が…?言われたことないよそんなこと。ヴァルキューレ時代は鬼だの暴走機関車だの、堅物とか散々だったんだけど。そういえば、フブキちゃんが初めて一緒にパトロールで「ワーホリ過ぎて無理」とか言ってきたの思い出した。あのときはだいぶ絞ったな……そんなんだから可愛いなんて一言もなかったんだろうね。

 

 ミカさんはくすくすと私の様子を見て笑っていた。からかわれてるなぁ。

 

「それにしても、ハイランダー鉄道ってこんなに普通の客車も綺麗なんだね」

 

「ハイランダーの子たちは鉄道事業に全力だから綺麗だよ」

 

「この客車、普通の人用だよね。椅子の座り心地もそんなに悪く無いし」

 

 こんな感想が出てくるのはトリニティだと上流階級向けの専用客車があるからだね。加えて、トリニティのティーパーティー用の車両もあったはず。私は乗らなかったけど、ミカさんやナギサちゃん、百合園さんは乗ったことがあるのかな。

 

 それらと比べても遜色ないのはハイランダーが学校そのものの存在理由である旅客事業に全てを注ぎ込んでいるからだろうね。ゲヘナ方面の路線だと汚職が蔓延ってる、なんて聞いたことがあるけど、少なくともD.U.発の車両は連邦生徒会のお膝元だけあって、乗務員の生徒たちも比較的穏やかな子が多い。……だからトレインジャックに上手く抵抗できなかったりするけど。

 

「エリカちゃんたちもそうだけど、職業校って普段どういう生活してるの?」

 

「仕事してるよ。私なんかはほぼ1部局を預かってたし」

 

「副局長だったんだよね」

 

「知ってるんだ?」

 

「最初に会う前に色々調べたんだよ?あのときエリカちゃんが立ち向かってきたらアリウスが忍び込むなんてできないかも、ってひやひやしてたんだから」

 

 それは高く買い過ぎじゃないかなぁ。あのとき、黒崎さんの件が仮になかったとして、補修授業部と一緒に行動していたとしても、私はたぶんミカさんを疑うことはできなかったと思う。

 

 根っからの悪意があれば違ったかもしれないけれど、先生の報告書や先生を通して聞いたハナコちゃんの分析からして、ミカさんが事を何とか軟着陸させようとしていたのはわかってるし。

 

「そんなの無理だよ。私は所詮1警官に過ぎないんだから」

 

 私がそう言ったら、コイツマジか、みたいな顔をミカさんがしてきた。え、なんで。

 

「謙遜しすぎだよ。公的な記録でもエリカちゃんの功績は誤魔化しようがないぐらいに多かったんだから」

 

「そこは明らかになんかしそうな人がいる、ってわかって首突っ込んだ結果だし」

 

 トレインジャックだって改札あたりでなんか怪しそうな人たちがいたりして追ったら遭遇したってだけだし。もちろん、空振りに終わったことだってあった。

 

 私自身の功績を否定するわけじゃないけど、安全局の生徒たちは少なからず日常に対する異変を察知する力があるから、キリノちゃんや、あの気だるげなフブキちゃんでさえ、似たような状況になったことがある。

 

 なにも、私が特別、というわけじゃないのだ。

 

「普通の人はなんか怪しいな〜、って事件に遭遇しないと思うよ」

 

「そうかな」

 

「そうだよ」

 

 いくら騒動が起こりがちなキヴォトスとはいえ、毎日犯罪に遭遇するなんてことは自分から首を突っ込まなければない。今日だってミレニアムに移動して制服とか、晄輪大祭の準備状況を見るだけ。平和に終わるはず。

 

「まぁでも、ミカさんもシャーレに今後関わるなら少しはそういう目を養ってもらおうかな」

 

「いやぁ、そんな人を観察してこの人犯罪起こしそう、なんてわかるわけないでしょ」

 

「慣れだよ慣れ」

 

 普段と違う、って雰囲気を感じ取れればいいんだよね。だから、慣れてくればだいぶ違うというか。

 

「………………」

 

「どしたの?そんな急に耳ピーンってして」

 

 嫌な雰囲気がした。耳が勝手に立って、音をよーく拾う。ここじゃない、別の車両で何か悲鳴のようなものが聞こえた。銃を手に取って立ち上がる。それと同時に、後方車両側のドアが勢いよく開いた。

 

 出てきたのは黒づくめのセーラー服にフルフェイスのヘルメットを被ったヘルメット団らしき生徒複数。ヘルメット団の生徒一人がハイランダーの乗務員の子を人質にしてるのか、銃をこめかみに突きつけながら引き連れていた。

 

 平和に終わる1日だと思ったのになぁ。

 

「止まれ!」

 

 大声を出して呼びかけた。周囲の乗客も私の声を聞いてパニックになる前に固まってくれた。ヘルメット団の子たちは私を見て動きを止める。ハイランダーの乗務員の子はまだ新人の子なのか、少し怯えているようだった。

 

「……なんだお前は」

 

 人質を取っているヘルメット団から聞かれて、私は銃を構えたまま答えることにした。

 

「私は連邦捜査部シャーレの補佐官、草鞋野エリカ。ただちに武装解除し、彼女を離せ」

 

 名乗ったけど相手は特に止まろうともしない。まいったな。今の私の武器はこの狭い車内だと取り回しが悪いし、たぶんこれトレインジャックをまだしてるわけじゃなくて、あの新人っぽい乗務員の子とあのヘルメット団の間で何かあったのかな。未遂ならどうにか暴れる前に止めたい。

 

 ミカさんはどうしてるのかと横目で見たら、席に膝立ちになって両手で椅子につかまりながら頭をひょこっと出していた。

 

「道を開けろ」

 

「開けたらあなたたちはどうする」

 

「この列車の行き先を変えるんだよ」

 

「どこに?」

 

「言う必要あるかよ」

 

 D.U.からミレニアムの間で列車の行き先を変えるとなると、ちょうど自治区境に廃された路線とか、過去にあった自治区への線路があったりするはず。そういう線路の先はスラムとか非合法な組織が根城にしてるような場所に辿り着くので、困るな。

 

 なんでそんな線路が残ってるの?といえば、ハイランダーだって綺麗なわけじゃないからね。色々とあるみたいだった。

 

 けど、だからといって目の前で起きたことを見過ごすことなんてできない。とりあえず話を聞かないと。あえて銃の構えを崩す。

 

「その乗務員をなぜ人質にした」

 

「わ、私は、ただこの人たちが違法なものを運んでるのを見ッ……っあ!?」

 

 パンっ、と乗務員の子のこめかみに一発の銃弾が放たれた。あんな至近距離で頭に…!乗務員の子はあまりの痛みに悶絶していた。血は出てない。よくて痣だろうけど。

 

「わーお……本物のアウトローってやつかな…?」

 

 おそらくはこんなの見たことないミカさんが謎の関心をしていた。初日でこんなヘビーなの任せるのはちょっと申し訳ないので、もう少し一人で頑張るかな。

 

 ヘルメット団の子が発砲してしまったので、私は再度銃を構えた。撃ってしまったのなら、こちらも撃たない、という択がなくなってしまう。撃たないで欲しかったけど、もう無理だ。

 

「警告する。直ちに武装解除し、人質を解放し、手を頭の後ろに、その場に伏せろ」

 

「おいおい、この人数に一人でやるつもりか?それに、お前ヴァルキューレじゃないだろ」

 

 そうなんだけど、あなたたちみたいな子に言えるのは今これだけなんだよね。

 

「シャーレって聞いたことあるぞ?生徒のために何でもやる何でも屋だろ?なら私たちのことも助けてくれてもいいんじゃないか?」

 

 人質をとっていない別の子からそんなことを言われる。ちょっとだけイラッときた。

 

「もう一度警告する。武装解除し、人質を解放せよ」

 

「誰が言うこと聞くかよ。どうせこいつ一人だ、やっちまおう!」

 

「へっ!良い子ぶったこと後悔させたるわ!」

 

 どうやらダメみたいだ。人質を取っている生徒がハンドガンをこちらに向けてついに撃ってきた。見え見えの予備動作なので簡単に避けられる。避けよう、と思って体を少し横にずらそうとしたら、私の体の前にシュッ!と何かが割り込んで銃弾が掴まれていた。

 

 車内にいた全員が頭の上に疑問符を浮かべたと思う。私も何が起きたのかよくわからなかった。

 

「安い弾使ってるね?何円ぐらいなのかな」

 

 あまりにも呑気な声音でそう言ったのはミカさんだった。ミカさんは私に向けて放たれた弾丸をまるで虫を捕まえるかのように簡単に手で掴んで、それを手のひらで転がしていた。

 

「は?え!?」

 

「な、なんだあの女!?」

 

 何が起きたのか理解したヘルメット団の子たちが露骨に動揺していた。いやこれ私も動揺してるよ!?そんな簡単に弾丸って掴めないよ!私も新人の頃、宴会芸で前に一回だけやらされたけど10発ぐらいは失敗したよ!

 

「返すね★」

 

 えい、っとミカさんが掴んだ弾を手首のスナップだけで投げたらおおよそ鳴ってはいけないようなビュゴッ、という風切り音が聞こえて、人質を捕らえていた子のヘルメットがべコンと凹んで衝撃で後ろに倒れた。いやいや、大丈夫!?

 

「あれ?」

 

 ミカさんがその様子に首を傾げていた。車内の全員がミカさんにたじろぐ。

 

「ひ、ひっ!?」

 

 人質になっていた子がなんとか逃れて私の方へやってきて、私の影に隠れた。首からかけてる生徒証見るに1年生っぽいから荷物の検査して何か見つけて正直に指摘したんだろうね。ハイランダーの子たちは中には列車の運行に支障が出るからと見て見ぬふりする子もいる。あのヘルメット団の子たちはそれを期待していたのかな。

 

「大丈夫か?」

 

「は、はい!」

 

「よし。このまま上級生の子に伝えてきなさい。彼女たちは私たちシャーレがどうにかする」

 

「……ぁ……あ、ありがとうございます!」

 

 乗務員の子は駆け出していった。人質は解放されたので結果的にはヨシ!

 

 あとはあのヘルメット団の子達をどうにかしてしまえば終わりだ。

 

「えっと、エリカちゃん、私何かまずいことしちゃったかな」

 

「結果的には人質を解放できましたがね。手加減はしてほしいものですな」

 

「あ、あはは……それはごめん。あと、口調なんか怖いね?」

 

「んんっ!ごめん、つい……トレインジャック未遂だからヴァルキューレ気分になっちゃった」

 

「今までの声どっから出てたの?」

 

 そんなに私の声って上下してるの?わからないけどまぁいいや。倒れた子が何とか立ち上がってるけど、あの様子を見るに戦意はだいぶ削がれたかな。

 

「く、くそッ!なんだあのゴリラ…!」

 

「は?」

 

 今横からどっから出たのかよくわからないものすごい低い声が聞こえた。それと同時に、ミシッ、という音も聞こえた。おそるおそる見てみれば、ミカさんの指が座席の背もたれの鉄製部分にめり込んでいた。

 

「今なんて言ったのかな?」

 

「………………」

 

「ねぇ?なんて言ったのか、って聞いてるんだけど?」

 

 怖い!怖い!?ミカさんの顔が笑ってるけどものすごい怖い!目が据わってる!

 

「女の子にさ、あんなこと言うとかないよ。最低だよ」

 

「……ぅ…………」

 

「それにさ、知ってる?ゴリラって臆病で繊細で温和な生き物なんだよ。追い詰めないと戦おうとしないぐらいには。ちゃんと調べてからそういうこと言おうね?」

 

 そうなんだ……って、感心しちゃったけど、トリニティの上流階級の子たちって雑学とかこういう知識結構持ってるんだよね。だからこそ出会い頭にジャブを打ち合うようなお話ができるのだと思う。学があんまりない私は結構ついていくの大変だった。

 

「それで、君たちは何がしたいの?私これからミレニアムに行くんだけど」

 

 まるで女王様が問いかけるような威圧感だった。ヘルメット団の子たちは完全に萎縮してしまっている。

 

「ふふっ、どうしたの?そんな——神様を前にしたように跪いちゃって」

 

「あ、あぁ……あ……」

 

 うん!もう十分!この子たちを捕らえよう!正直だいぶひどい暴言だったので相手の自業自得なんだけど、そりゃトリニティの生徒会長にまでなった人の本気の威圧なんて普通の生徒が耐えられるわけがないよね!

 

「ミカさん、もういいよ」

 

「え?けど——」

 

「彼女たち、失神しそうだよ」

 

「嘘ぉ」

 

 ほんとだって。ヘルメットに弾丸当てられた子なんか、体がくがくしてるし、それにちょっと……うん、これは尊厳的に指摘はやめておこう。とにかく、もう抵抗はしないはずだ。私は銃を下ろして彼女たちに歩み寄った。

 

「武器を下ろし、その場に伏せなさい。抵抗するようであれば、相応の対応をします」

 

 相手は素直に武器を全て下ろして床に転がした。ヘルメットが凹んでる子のヘルメットを取ってあげると、黒髪ショートのこの子もたぶん1年生ぐらいと思われる顔が涙や鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。私は屈んで向かい合った。

 

「これに懲りたらこういうことはやめるように。母校に戻って復学しなさい。もし困ってるならシャーレを頼って。力になるから」

 

「……ぅ、わ、わかり、ました」

 

「それと、人をあんなふうに揶揄するようなことは言ってはいけないよ」

 

 制服のポケットからポケットティッシュを目の前の子に渡してあげて、私は立ち上がった。ミカさんの方へ振り返ればものすんごい微妙な顔をしていた。なんで?

 

「エリカちゃんってさ」

 

「なに?」

 

「女たらし?」

 

「違います!」

 

 私の叫びとハイランダーの武装した警備係の乗務員の子たちがやってきたのは同時だった。

 

 

 

 ミレニアムに着いて、ヴァルキューレミレニアム支部にトレインジャック未遂を犯した子達を引き継ぎ、ハイランダーの人たちにはミカさんが席を壊してしまったので謝った。そしたら私と顔見知りの駅長さんは「車両を爆破されてもいないですし銃撃戦も起きてないので安いもんですよ!」と笑ってくれた。ミカさんはその様子に若干引いていた。トリニティ、なんだかんだで表面上の治安はかなり良いので、当たり前のように列車が吹き飛んだりするのは流石にないからしょうがないのかもしれない。

 

 目的であるミカさんの制服のために、着いて早速私たちはミレニアム校内のエンジニア部へと向かった。晄輪大祭も近いからか、若干いつもより校内が賑やかに感じる。

 

「なんか賑やかだね?」

 

「晄輪大祭も近いからかな。今回のホストだし」

 

「それもそっか」

 

 忙しそうで少し気が引けるけど、私の予備の制服はあるらしいから大丈夫かな。

 

 校内をしばらく歩いて、エンジニア部の部室である格納庫の前にやってきて中に入る。部員と思われる子たちが忙しなくロボットや機械の整備に追われているようだった。白石さんがいつもいるのはそんな部室の奥なので、私たちは邪魔をしないように中を進んでいく。

 

「すごいね、こんな機械がいっぱいで」

 

「エンジニア部だからね。それにこういう機械以外にも色々作れてるから本当にすごいと思う」

 

「ウチが古臭いって言われちゃうのも納得。工業力全然違うじゃん」

 

 工業力は確かにどう足掻いても敵いそうにないもんなぁ、トリニティ。いや、ミレニアムと比べたらどこの自地区も遅れているように見えるぐらい進み過ぎなんだろうけど。

 

 部室の奥のほうまでやってくると、急に開けた場所に出る。いつも使われている試射用の空間だ。エデン条約事件の時とは違って、生塩さんが使っていたレールガンはもうないし、たぶん光臨大祭用の機材とかが仮置きされてる。

 

 それらを前にして、白石さんはいた。

 

「白石さーん!」

 

「ん?あぁ、エリカか。こんにちは」

 

 近づきながら呼び掛ければ、白石さんは珍しく白のブレザーを着てしっかりと制服を纏っていた。う、うわっ、なんかものすごい…言い方よくないけどホストみたいな雰囲気。

 

「こんにちは。どうしたの?いつもと様子が違うけど」

 

「ん?あぁ、今日は定例の部長会があってね。一応それなりの格好をしたんだよ」

 

 なるほど。正直かなりカッコいい。

 

「……エリカちゃん、このイケメン誰……?」

 

 口元に手を当ててミカさんが耳打ちしてきた。ほんとにね、いつもの若干マッドな感じが消えて暴力的なイケメン度を発揮してるよ白石さん。噂に聞くファンクラブやモテまくってるというのも納得。

 

「そちらの君は見ない顔だね。前に来たトリニティの……桐藤君に似ているが」

 

「あ、ごめんね。私、聖園ミカ。ナギちゃんとは幼馴染なの」

 

「そうか。聖園くんか。初めまして、私は白石ウタハ。このエンジニア部を預かってる者だよ。よろしく」

 

「よろしく!」

 

 美女同士、ものすごい空気が形成されている気がする。

 

「それでエリカ?またこんなお嬢様を連れて今日はどうしたんだい?」

 

「話せば長いから簡潔に説明するけど、こっちのミカさんがしばらくシャーレの嘱託部員になったから、制服を用意したいんだ」

 

「そうか。そういうことなら君の予備を少し弄れば使えるかな。今日すぐには無理だろうから明後日にでも郵送で送ろう」

 

 ずいぶんとあっさりOKされてしまった。私が腑に落ちないでいると、白石さんは苦笑いして私の気持ちを察して答えてくれた。

 

「チーちゃんから君が制服をすぐにダメにすると聞いたからね。事実この前も血だらけになってしまったし」

 

「あ〜……そういうことね」

 

「だからある程度の予備はヒビキが用意してくれているよ。今度のは汚れも落ちやすく改良もしてる」

 

「なんか何から何まで本当にありがとう」

 

「正式に契約もされているからね。気にすることじゃないさ」

 

 もはや名誉シャーレ技術顧問にでも白石さんたちをした方がいいんじゃないだろうか。どうやってこの恩に応えたものか。

 

「じゃあ、聖園君。君の採寸をあちらで…と言いたいところだが、少しその前に相談したいことがあるんだ」

 

「私に?」

 

「いや、君を含め、エリカと…シャーレにだよ」

 

 白石さんがブレザーを脱ぎ、いつものように肩にかけると置かれている備品の一つに手を置いた。私たちシャーレに頼みたいこと、とはなんなんだろう。ミカさんも聞く姿勢をとっている。

 

「晄輪大祭が近いのは君たちも知るところだろう。現在、ミレニアムではその準備に追われている。セミナーも大忙しだ。エデン条約事件だったか?この前の騒動の影響でギリギリまで開催が危ぶまれていたからね」

 

「……それはその、ごめんね」

 

 ミカさんが白石さんに思わず謝っていた。白石さんはミカさんが何をしたかなんて知る由もないので、首を傾げるだけだった。

 

「なぜ君が謝るのかわからないが、そもそもとしてスケジュールが不確定なままだった連邦生徒会にも非はある。それを確認しなかった私たちミレニアムもね。だから今の忙しさは参加する他校の子たちが気に病む必要はないさ」

 

 落ち着いた声音と大人のような落ち着き具合で私たちは思わず安堵したような気持ちになる。白石さんも忙しいだろうに、こうして私たちと話すのにそんな雰囲気を微塵も感じさせない。

 

「話が逸れたね。本題に入ろう。本来ならセミナーから言うべきなのだろうが、先に私からミレニアムの1生徒として支援要請としてお願いしたい」

 

 支援要請。ハッキリとこの言葉が出たので、私は姿勢を正した。

 

「わぉ、初めての支援要請だよ、エリカちゃん」

 

「そうだね。白石さん、内容を教えてほしい」

 

 少し浮き足立つミカさんを横に、私は白石さんに問いかけると、彼女はこの空間に置かれている機材たちを見ながら話し始めた。

 

「先ほどから言っている通り、晄輪大祭は目前だ。ここにある機材関係は全てそのための準備なんだが、実を言うと今、この機材関係で問題が起きていてね」

 

「問題?機械の故障とか?」

 

「それぐらいなら問題にはならないさ、聖園君。今起きている問題は通常ならヴァルキューレに頼むような事柄になるかな」

 

 ヴァルキューレに頼むような事柄。そうとなれば……?

 

「盗難とか、そういう話かな。白石さん」

 

「エリカの言う通りだ。現在、ミレニアム内で晄輪大祭に関係した機材や備品、準備している生徒たちへの嫌がらせが相次いでいる」

 

 それならば、ヴァルキューレに相談すればいい、とは思うけど、あえてシャーレに言うということは何かあるかな。私は無言で白石さんに続きを促した。

 

「まぁ、嫌がらせや盗難、といっても本当に些細なことさ。少し手間が増えるだけで開催の準備に支障はない。大袈裟に言ったが、所詮は悪戯レベルのものさ」

 

「それなら、私たちになんで頼るのかな?」

 

 ミカさんが思わずそのように聞くと、白石さんは少しクスリとしながらも、気分を害された様子もなく答えてくれた。

 

「あははっ、まぁ、そうだろうね。無視をしてもいいとは思うし、ヴァルキューレに頼めば犯人はいずれ捕まるだろう。それではいけないのさ」

 

「どうして?」

 

「晄輪大祭は二年に一回のキヴォトス全体のお祭り。何も無理に楽しめとは言わない。けれど、少しでもいい思い出になってほしいのさ。後輩たちのね」

 

 優しい声だった。それと同時に、なんだか無くしてしまったものを懐かしむかのような声にも思えた。なんとなくだけど、たぶん、白石さんは犯人に目星がついてる。きっと今すぐ問い詰めて捕まえてしまうことはできるのだろう。そして、ヴァルキューレに差し出してしまえば何の問題もなく晄輪大祭を迎えられる。

 

 そうではなく、私たちを頼る意味。シャーレの存在理由をわかってのお願い。ミカさんはわかるだろうか。ちらりと見れば、ミカさんは不思議そうな顔をしていた。

 

 私の答えはもう、一つしかない。

 

「白石さん」

 

「なんだい?」

 

「連邦捜査部シャーレとして、あなたの支援要請を受託します」

 

 私の答えに、白石さんは満足そうな顔して深く頷いた。

 

「どうか、お願いするよ。セミナーには私の方から報告しておく」

 

「お願いします。先生に情報を共有後、本格的に行動しますので」

 

 先生もきっと、同じように白石さんからのお願いを受けるはずだ。そして、ミカさんがシャーレを理解するのにも、もってこいの支援要請だと思う。

 

「じゃ、ミカさん。一回ここを出て、先生に報告してから動こうか」

 

「わかったよ。けど、何をどうするの?」

 

「地道にまずは聞き込みかな?白石さん、じゃあ、私たちはこれで。制服の件はお願いします」

 

「わかった。また会おう。それと、制服の件は任せておいてくれ」

 

 私たちはその場を離れた。晄輪大祭関係の支援要請だから頑張って行こう。頑張って、先生少し褒めてくれてると嬉しいな。

 

 

 

 

 

『優し過ぎませんか?ウタハ』

 

「そうかな。私から言えば彼女たちは確かに従うだろうけど、それじゃあ意味がないからね」

 

『……モテるのも考えものですね。そこまでモテるのに、なんであなたが生徒会長にならなかったのですか』

 

「私にそんな器はないよ。君もそうだろう?ヒマリ」

 

『………あの女はそうだと?』

 

「リオは確かに突っ走りがちだが、何よりもミレニアムのことを大切に思っている。思い過ぎるぐらいにね。それを表に出さないだけで、彼女は生徒会長に最も大切な気持ちを持っているよ」

 

『言わなければ意味はないのですよ。それは。だから誤解にまみれるのです。……今回の件、セミナーに報告しないのはそういうことですか?』

 

「私は理想主義者なんだ。誰も悪者にはなってほしくない」

 

『だからシャーレに悪者になってもらおうと?』

 

「今日の君は少し、意地が悪いな」

 

『リオを褒めるような言い方をするからです』

 

「手厳しいね……まぁ、だが、エリカたちなら悪者にはならないさ、きっと。チーちゃんから聞いたことがあるんだ」

 

『なんです?』

 

「“安全局の狛犬”に捕まった生徒は、更生する確率が高いとね」

 

 




ミカの魔女堕ちの時、顔の良さも相まって本当に畏怖を感じました。天使モチーフなんだけどミカから女神のような印象も受けがち。

あとウタハ先輩もイケメン過ぎて辛い。

次回はまた未定です。年内投稿…できるかなぁ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。