──要塞都市エリドゥ、都市入口駅。無人のそこに幾人もの足音が木霊する。駅に入ってきた貨物車両のコンテナが開くと、SRT特殊学園にも納入された電子戦も可能な装甲指揮車が降りる。
「いやスゲェな。どんだけ横領したんだよリオは」
「数百メートルクラスの宇宙戦艦を丸々作れるぐらいには使っていたはずだよ」
一団の先頭を歩くネルは降り立った駅から出て現れた摩天楼の数々、そして、奥に聳え立つミレニアムタワーをも超える巨大な建造物…この都市の中枢であるセントラルタワーの威容に圧倒される。
ウタハも二度目となる光景に、まさか本当に作るとはと感嘆する。
「でも、部長嬉しそう」
「ヒビキの言う通りです!」
その感嘆に、ヒビキとコトリは気が付くもウタハは隠すつもりもなく「そうだとも」と頷いた。
「リオはすごいんだね、本当に」
「あぁ、そうだ先生。あの子は本当にすごいのさ」
先生は誇らしげなウタハに、微笑ましさを感じていた。先生は改めてやってきたエリドゥを見上げる。生徒一人が生み出したという信じ難い近未来都市。調月リオ、生徒の一人が生み出した成果物。
この都市の建造に使われたお金のことを考えなければ、先生は手放しにリオのことを賞賛していた。ここへとやってくるまでの道中で、先生はリオがこの都市を元はどうして生み出そうとしたのか聞いていたからだ。
ただ、ミレニアムの生徒たちのために、ミレニアムという学校自体の持つ課題の解決の助けにするために。要塞都市ではなく技術研究都市という名目で計画された当初の構想を先生は聞かされた時に、同じだ、と思っていた。
「どうしてだろうねぇ。生徒会長を担う生徒って一人で無茶しがちというか」
作戦の都合上、既に別れたエリカも同じようなことを先生は言っていたな、と言いつつも苦笑いする。そして、それはエリカにも当てはまることであり、エリカは先生と話してから自身の行いを思い返してミヤコにバツが悪そうにしているのを先生は見ていた。
「責任感がこのキヴォトスには向かないぐらい強い子が多いんじゃないかな」
『それ自分で言うんだ』
「チーちゃん。君もどちらかというと、リオ寄りだよ」
指揮車から通信でウタハに突っ込むチヒロに、ウタハはチヒロもリオに近いと言う。チヒロはそんなことはないと否定したかったが、彼女の周りでオペレーターをしている他のヴェリタスのメンバーは首を縦に振っていた。
「ねー、アレなんだろう?」
「アスナ先輩。アレとは?」
「あれだよ、アレ。なんか空に伸びてる…?」
ネルの後ろに立っているアスナがビル群の合間から覗く、空に伸びる弧を描く構造物を指差す。カリンも釣られて見るが、何なのかはわからない。一方で、先生は目を輝かせた。
「あれは…マスドライバー!?」
「おや、わかるのかい先生」
「当然!なになに、ウタハ。まさか宇宙戦艦用の!?」
「もちろん。技術研究都市エリドゥは宇宙にも行けるようになっているのさ。もっとも、肝心の宇宙戦艦はないけど」
「どこかに落ちてないですかね?宇宙戦艦」
残念だ、というウタハとまずありえないことを言うコトリを横目に、浪漫の塊であるマスドライバーの存在に先生はテンションが上がっていた。元より先生はSFの世界観が日常と化しているミレニアムを先生という立場を抜きに、一個人としては気に入っており、まさに夢の具現化といっていい光景に、大人という殻を破り捨てかけるほどには喜んでいた。
その姿に、その場にいる生徒たちは誰もが可愛らしいと思った。
『コホン。先生。作戦を開始しよう。エリカたちもそろそろ動き出すから』
「おっと、ごめんよチヒロ」
遠足に来たかのような和やかな雰囲気はそこまでだった。先生は頭の中を切り替えると、ある生徒に呼びかけた。
「さて、モモイ。行けるね?」
『もちろん!絶対にアリスと会長に会うんだから!』
「いい元気。元気があればなんでもできるからね。ユズ、ミドリもいいね?」
『はい、先生。頑張ります』
『任せてください。ユズちゃんと一緒に、お姉ちゃんを全力でサポートします!』
ユズとミドリはチヒロたちの乗る装甲指揮車の中に特設されたまるで複座のロボットのコクピットのような座席に座っていた。モモイだけは姿が見えず、通信の発信元は指揮車の牽引しているコンテナ車からだった。
指揮車の中で、チヒロは車両をその場でアウトリガーを展開し固定すると、オペレーターとなっている後輩たちに目配せする。
「マキ、コタマ、ハレ。始めるよ」
「「「了解!」」」
先生たちが見守る中、指揮車に牽引されていたコンテナが開き始める。天板が開き、地面に対し垂直となるとそれはそのまま少し上方へと伸びる。前方左右のパネルがそれぞれの方向へと展開し、中にはフレームが組まれ、機器も積み込まれていた。
その機器から伸びた様々なコードがその中で立っているパワードスーツに繋がれていた。
パワードスーツは白を基調に黒のラインが走る。パワードスーツの右手には機体の大きなマニピュレーターに合わせたサブマシンガンを携行し、左手には菱形を横に伸ばしたようなシールドを構え、シールド裏には4連装のグレネードランチャーが覗く。背中にはスラスターを搭載する大型のランドセルがあり、ランドセルの右には大口径の荷電粒子砲、左には多連装のミサイルランチャーを持ち、それとは別にロボットアームが2本左右から伸び、左腕に懸架したシールドと同じ形状のシールドをそれぞれに持つ。
左のミサイルランチャーの側面にはゲーム開発部のマークが入っていた。
そして、このパワードスーツに乗り込むのはスクール水着に着替えたモモイだった。
「なんで水着なのそういえば!?」
「え?こういうのに乗る時の様式美だよ」
「どういうこと!?」
水着であることをようやく突っ込めたモモイは先生のさも当たり前と言わんばかりの言葉に意味がわからないと声を荒げた。
『モモイ、発進シークエンスだよ』
「うぇ!?えっと、こういうときアニメとかだと……」
『お姉ちゃん!まずはシステム全部立ち上がったか見て!』
「了解!」
ユズに急かされ、ミドリにフォローされ、モモイはサングラスのようにかけたディスプレイに機体状況を表示する。
「燃料オーケー、弾薬も全部入ってるし、ユズとミドリのコントローラーとの接続も大丈夫。私は両腕操作すればいいんだよね?」
モモイは両腕にはめられた手袋のようなコントローラーをまじまじと見る。アニメのロボットのパイロットになったかのような状況に、アリスを助けに行くというのにどうしてもモモイは興奮してしまう。
『モモ!私たちはここから支援するから、ネル先輩とブチかましてきてよ!』
「わかってるってマキ!才羽モモイ、行くよ!」
モモイが乗り出すように前へ体を倒せば、ユズがそれに応えてパワードスーツの足を一歩前へと踏み出させる。繋がれたケーブルはバチンと音を立てて次々に外れていく。
「……アレ?こういうのってこうさ、一回グッて屈んでから飛び立つんじゃないの?」
『推進剤は有限ですので』
モモイの指摘にはコタマの現実的な回答がされた。これに落ち込んだのは──先生とウタハだった。
「えぇ!?お約束だよねそこ!」
「垂直カタパルトせっかく作ったのに!?」
「おいそこの馬鹿二人は遊びじゃねーんだぞ」
先生とウタハに呆れるネルはため息をつきつつも、両手のサブマシンガンのセーフティを外す。彼女が戦闘体勢へと移行すると、アスナとカリンも装備の最終点検を行う。先生は空気を柔らかくしつつも、周囲への目配りは忘れない。ネルたち三人の動きはSRTの生徒たちとはまた違うが、洗練されたものに先生には見えていた。
「(さすがは特殊部隊。思えば、ミレニアムってこういう戦うメイドさんとか、いい趣味してるよね。リオの考案だから、何もなければリオとは話し合うんじゃないかなぁ)」
個人的な趣味という観点では先生はリオと仲良くできそうだと感じていた。
「ユズ、移動は先ほど伝えた通り足裏のローラーでやるんだ。ブースターは一応飛べるが短時間。温存しておいてほしい」
『わかりました…ウタハ部長。は、発進!』
「うわっ!?」
コンテナから降りたパワードスーツ──サムス・イルナは急加速し、地面へ片方の足裏に備えられたピックを突き立て急反転。ネルの横に止まる。
「うわぁ、すっげぇかっこいい〜!」
「先生はガキかよ。…いや、カッコいいな」
サムス・イルナを絶賛する先生に、ネルも思わず見上げて同意してしまう。モモイは自身が褒められたわけでもないがドヤ顔をしていた。本来であればサムス・イルナの全機能をコトリが説明するところだが、流石にそんな時間はないため、頑張ってうずうずを抑えつつコトリもガトリングを構えていた。
「ふぅ。まぁ、興奮するのはこれぐらいにして。それじゃあ、みんな、始めよう!」
先生が号令をかけ、その場の全員が「応!」と返す。彼女たちの目の前で、エリドゥは未だ不気味なほどに静寂を保っていた。
調月さんと天童さんがいる要塞都市エリドゥ、その中でも明星さんが知っている先生たちがいる正面とは真反対の裏にやってきた私たちは作戦開始の合図を待っていた。編成は私を先頭に、隣にミカさん。後ろに明星さんを背負った和泉元さんと、二人の護衛役としてミヤコちゃん。
メンバーは最終的にこの5人に加えて、サポート役としてセミナーから生塩さんと早瀬さんもオペレーターを買って出てくれた。
「…何故私まで?」
「部長。会長に話したいことあるんでしょ」
「ありません」
「頑固だね」
明星さんは本来、先生たちの方でチヒロちゃんに今は乗ってもらっている指揮車……SRTやヴァルキューレでも使用されているレッドハウンドに乗ってもらう予定だったけど、チヒロちゃんが連れて行けというので和泉元さんが強引におんぶして合流した。
なので、実質この小隊の戦力は私とミカさんとミヤコちゃんの三人である。いいや、ミヤコちゃんは二人の護衛に専念してもらうので、本当は私とミカさんだけしか前線を張れないね。
まだ先生からの合図はないので、少しだけ話をしようかな。
「ねえ、明星さん」
「なんですか?草鞋野さん」
うわぁ、露骨に不機嫌な顔をしていらっしゃる。明星さんって美人だけどあどけなさも残っていて、不機嫌な顔もそんなに怖くはない。
「話せるうちに話しておいたほうがいいよ。色々とね」
「………あなたに言われると何も言い返せません」
けど事実だからね。何も死別してからってわけでもない。捕まりでもしたらずっとしばらくは話せなくるし。
「私は別に明星さんと調月さんの間に何があったかは聞かないよ。でも、明星さんは調月さんをよく知っているんでしょう?」
「嫌いなものほどよく知るものですよ」
「部長。耳元で喋るとうるさい」
「なっ、エイミ…!」
「ぼしょぼしょくすぐったい。……ASMR?」
「えーえす…なんだかよくわからないですが、これは草鞋野さんのせいです」
ひどい責任転嫁を見た。いやまぁ、確かに明星さんの声を耳元に囁かれたらすごくなんというか……ハルナに囁かれた時みたいな感じになりそう。
「ヒマリちゃんだっけ?私もエリカちゃんには同意しちゃうかなぁ〜」
「聖園さん。あなたとは今日が初対面なはずですが」
「ちゃん付けは嫌だった?」
「いいえ。この超天才病弱美少女ハッカーの愛らしさをすぐに理解する。だからこそのちゃん付け。いいですよ」
ミカさんが若干固まった。自分を美少女と言ってはばからない人は明星さんぐらいしか知らない。ミカさんも抜群の容姿だけど、特に容姿の自慢を口にすることはない。自分が可愛いってことと、それを武器にできることはよくわかってるみたいだけど。
「まぁいいや。私もさ、友達が大変な目に遭ってから謝っておけばよかったとかあったし、たぶん失ってからじゃないと気がつけないからわからないと思うけどね」
「あの女に何かあることはありえません。なんだかんだで図太いですし。まがりなりにも私を差し置いて学園一の天才の名声を欲しいままにしているのですから」
「ふーん。信頼してるんだね」
「当然です──あ、いえ、これはそうではなく」
「あははっ。ちょっと見てて思ったけど、ヒマリちゃん、リオさんだっけ?その子のこと喋る時、ちょっと口が緩くなってるよ」
もうそんなところまでミカさんは見抜いてたの?私がチラリとミカさんを見れば私にウィンクしていた。もしかしてわざと煽るような感じで言ってるのかな。……さすがあのティーパーティーのトップに君臨した一人というか。その気になればミカさんもナギサちゃんに劣らないぐらいの力量はあるのかな。
明星さんはまんまとミカさんに言わされたことにかなり不機嫌な顔をするも、大きくため息をついた。認めるしかないらしい。
「明星さん。私たちは別に仲良くしろとは言わないよ」
「……え?てっきりこの流れは仲直りしろというものでは?」
「まさか。私たちはただ少し話してみたら?としか思ってないよ。あなたたちの関係はあなたたちだけのものかなって。シャーレだからってみんなを仲良しこよしの友達にするわけじゃないよ」
私の発言に明星さんは少しだけ驚いたようだった。これはシャーレ、というか先生のスタンスだ。先生はもちろん助けを求められれば助けるけど、ある程度はやっぱり生徒たちの意志を尊重する。
今回はモモイさんの天童さんと調月会長に話をするという目的がなければ、おそらくは単純な襲撃作戦になっていたし、シャーレの物品や私への攻撃などから先生には罰則を設ける権利があった。
でも、先生はそうしなかった。おそらく、最低限のケジメはつけさせるだろうけど、先生は…私たちは敵を倒すためにここに来ているわけじゃない。アリウス自治区へミカさんと行った時と同じだ。
「先生といい、草鞋野さんといい、聖園さんといい……シャーレのことをまだ私は理解できていなかったようですね」
「これから知っていけばいいと思うよ」
「そうさせてもらいましょう。あなた方とは特異現象捜査部としても、今後ともお願いしたいですから」
彼女がどうするかはわからない。でも、言いたいことは言えた。意識を切り替える。倒すために来たわけじゃない。けれど、戦いには来たのだから。
「聖園、RABBIT1。装備点検」
おそらくはそろそろだろう。そんな気がしたので、私はミカさんとミヤコちゃんに装備の最終点検をさせる。ミカさんはよくわかってないのか、いつも使ってるサブマシンガンを少しみただけで終わり、ミヤコちゃんは手早く銃以外の各装備を点検していく。
ミヤコちゃんは本来コンビニに行くだけだったのでSRTの装備がないから、ミレニアムで色々貸してもらっていた。エンジニア部は警察装備も開発経験があるからか、ミヤコちゃんがいつも使っているものとよく似たスタン・ドローンを貸してくれたり、以前に黒崎さんが使っていた複数のモードがある手榴弾もくれた。
「草鞋野会長。点検完了しました」
「了解した」
「あ、そんな感じ?点検かんりょ〜、でいいのかな」
「真面目にやってください」
「相変わらずこわっ」
いや、ミカさんは別にいいんだ。ミヤコちゃんがなんともいえない顔になってたけど、気にしないでほしい。ミカさん、普段の手入れはびっくりするぐらい丁寧だし、実は私のライフルも頼めばミカさんが整備と軽い修理まで出来るほど。普段から確認してるから大丈夫。
『もしもし草鞋野さん?私よ』
「こちら草鞋野。感度良好」
『……間違えたかしら?』
「あ、いや、早瀬さん、合ってます」
『声低すぎて誰だかわからなかったわ』
早瀬さんから通信が入ったけど、早瀬さんに一瞬勘違いさせてしまった。いやほんとに、私の声そんなに違うものなの?
『5人の位置は捕捉できてるわ。このまま草鞋野さんたちは派手に暴れる先生たちを囮にセントラルタワーに突入。いいわね?』
「草鞋野、了解。各位、今の通信は聞いたな」
私が問い掛ければ全員が頷いた。ミカさんも含め、全員簡易なヘッドセットは用意してくれたので助かる。
『いやだから急に怖いわよ!?』
「ご、ごめんごめん。つい癖で」
『噂に聞く安全局の狛犬ってやつね。まぁ、こっちも過剰反応しすぎね。気にしないで』
「……そうしてくれると助かる。事が始まってしまえば、普段のほうが逆に意識しないといけないからな」
『わかったわ。今、先生たちもエリドゥ正面に展開したみたい。モモイ大丈夫かしら…』
モモイさんは今回、向こうでは美甘さん並みの戦力と計算されて配置されている。敵のパワードスーツを一手に引き受ける先生たち陽動班の中でも、さらに囮。基本的に回避とかはあのものすごい動きをゲームでしていた花岡さんがやるみたいなので大丈夫だと思いたいけど、心配になるよね。
『ユウカちゃん、大丈夫です。あちらには先生がいますし、何よりユズちゃんが操作をするのですから。ミレニアム最強があちらには二人いることになります』
『そう…そうね。ユズがもしゲームの動きを戦闘でも出来たら、それだけで心強いものね』
「あの、つかぬことをお聞きしますが…」
『月雪さんだったっけ?いいわよ』
「花岡さんは何か、すごい方なのですか?」
『すごいと言いますか…ユズちゃんはミレニアムにおいて殿堂入りをしているゲーマーです。学内の公式大会は全て出禁になっていますから』
「え」
生塩さんの回答にミヤコちゃんが驚いているけど、私とミカさんも目を合わせて驚いた。想像の何十倍も花岡さんすごいね!?全部出禁、殿堂入りってつまり、その大会を過去全部で圧倒的な成績を修めてしまっているということ。
「殿堂入りってどういうこと?」
「聖園さん。つまりは強すぎて誰も優勝できなくなるから出てくるな、ということです」
「なにそれヒマリちゃん?いいの?」
『ユズちゃんには申し訳ないと思いますが、彼女が出てくると大会が成立しなくなることがあるので』
ミカさんはゲーム大会とかよくは知らないだろうし、異文化って感じだね。私は知識としては知っているし、こういうのは訓練で私とカンナちゃんが取り調べのいい警官と悪い警官の役をそれぞれやった時を思い出す。カンナちゃんがあまりにも怖すぎて訓練参加者が極端に減ったのだ。結局、コノカちゃんに変わってもらったっけ。
「ふーん。そういうのがあるんだね。まぁでも、大会ってぐらいだからホストの意向に反しちゃうのかな?よくわからないけど。優勝者決まってたら大会じゃないもんね」
『そんなところよ、聖園さん』
『というわけで、現在先生の元にはネル先輩とユズちゃんのミレニアム最強が2人いますから、いくらリオ会長でも簡単にはいかないはずです』
強さに関しては私とミカさんも異存はないと思う。あの格ゲーの反応速度を現実の戦闘でされたらはっきり言ってやっていられない。まともにやりあえばかなり骨を折ることだろうね。
「RABBIT1、花岡さんの実力は納得したか?」
「はい。余計なお時間をとらせてしまい、申し訳ありません」
「構わない。先生からの合図はまだですか?」
『……ちょうど来たわ。始めてちょうだい!』
「了解。これより我々は天童アリス及びシッテムの箱奪還作戦を開始する」
時間が来たようだ。目の前の景色を見る限り、このあたりは住宅地として設計されているのか、比較的近未来的でなく現代的だ。その分路地などもあり奇襲には警戒が必要だ。
「フロントは私と聖園。月雪は明星さんと和泉元さんをエスコートしろ」
「RABBIT1、了解」
ミカさんは何も言わずに私の横に立ち、笑顔だけを返す。ミヤコちゃんは復唱する。
「エリカちゃん?加減とかしたほうがいいかな。トリニティの同盟相手だし」
「生塩さん。そのあたりは」
『加減はしなくて大丈夫です。会長相手に手加減すれば足元を掬われると思ってください』
「だそうだ」
「オッケー。じゃあ……遠慮なしでいこっか!」
そんなことをミカさんが元気よく言ったら早速発砲した。曳光弾でもないのに相変わらず謎パワーで光る弾丸が、道路の脇にあるグレーチングが開いて出てきた四脚のガードロボットを破壊して、小爆発した。
「いくぞ!」
私が駆け出し全員が続いてくれた。
『エリドゥのガードロボットです。サイズは高さ10cm全幅25cm。機体上部に電撃を発信可能なターレットがあります』
生塩さんが敵のスペックを読み上げてくれる。実際、目の前にいきなり転がってきたガードロボットの上部が開いて電撃を飛ばしてきたけど回避し、ライフルを撃つ。防御力は皆無らしい。粉々になった。
けど、数がむちゃくちゃに多い。
「次から次に……ハッキングできれば」
「部長は大人しくしてて」
今回の作戦、あろうことか電子戦をかなぐり捨てての強引なものになってるんだよね。明星さんがそもそも「鼻柱を折るなら真正面から」と言ったことが始まりだけど。
ガードロボットは路地からも側溝からも異常な速度で増加していく。足を止めたら一瞬で蟻の大群に呑まれるかのように覆われて終わりだろうね。
今いる住宅地もやっぱりそれなりに広く、入り組んでいる。事前に白石さんが提供してくれた図面がなければ迷ってしまうと思う。そういえば白石さんが驚いていたっけ。まさか過去の設計をそのまま実現させたなんて、とか。
『20m先を左折!その先を右折、また40m直進してください!』
「了解!」
生塩さんのナビゲートは素早い。十字路を左折すると、曲がった方とは反対側からまるで波のように走ってくるガードロボットが見えた。流石に気持ちが悪いんだけど!?
『反応5、10、20、40、80…!?なによこれ!?ガードロボットこんなにいるものなの!?』
早瀬さんの悲鳴のような報告に、私は即座に指示を下す。
「月雪!ドローンを突撃!続けて手榴弾!」
「イエス・マム!」
走りながら最後方のミヤコちゃんへ指示を出すと彼女は即座に行動を開始。腰に備えた転がるタイプのドローンを起動させ、そのまま走りながら落としてガードロボットの大群に突っ込ませ、さらに手榴弾を投擲。
直後、ガードロボットを巻き込んでドローンが自爆。手榴弾2発も加わって大爆発を起こす。背後にわずかな爆風を受けつつも私たちは止まらない。すぐにやってきたT字路を右折。ここからまた直進。
ガードロボットは塀の上にも走ってこちらに並走している。
「聖園!右だ!」
「きゃっ!?」
ガードロボットの上部が開くと、バチンッ!と白く発光し電撃が飛ぶ。ミカさんは回避できず右手で庇うように電撃を受けると「いたたっ」とまるで静電気が起こったかのような反応をした。
「大丈夫か!?」
「むちゃくちゃ強い静電気みたいだけど…」
思ったより平気そうだった。ミカさんは反撃を放ち、ガードロボットを破壊した。
「ガードロボットの電撃は並の生徒であれば体が硬直するぐらいの威力があるのですが?」
「そうなの?すごいね、あの子」
背後から明星さんと和泉元さんのそんなコメントが聞こえた。ミカさん、かなり頑丈だからなぁ。
『ヒマリ部長!ガードロボットってこの数がデフォルトなんですか!?』
「いいえ、ユウカ。おそらくリオが増産したのでしょう。本来、このガードロボットは見回り用程度で、こんな物量作戦をするものではありません」
『そういうことですか!?確かに設計図見た限り異様に安価なのに高性能だし…!』
「消耗品と割り切った設計ですからね。とはいえ、よくもまぁこんな量を」
聞こえてくる話は興味深いけど、耳を傾けてる余裕はあんまりない。本当に途切れなくガードロボットが飛びかかってくる。これならそれこそ、スピードの出るトリニティのクルセイダーやレッドウィンターにもあるような戦車でタンクデサントをできればかなり楽だったかも。
阿慈谷さんがいたら助かったかもしれない。
「弾薬の消耗が狙いか」
「かもね。どうするエリカちゃん?最短距離で行く?」
ミカさんの言う最短距離はおそらく壁を全部破壊していくってことだろうけど、流石にこの密度の住宅街を破壊していたらそれこそミカさんの弾薬がなくなるし、仮に肉体でやっても消耗させてしまう。
「いや、もっと根本的に解決した方がいい。それに、ガードロボットというぐらいだ。先生たちは大丈夫なのか?」
『!』
早瀬さんの息を呑む声が聞こえる。まさか私たちだけに差し向けられたわけじゃないだろう。
『確認します──先生、応答してください。ノアです。状況を』
『ノア!?なに!?』
聞いたこともないぐらい焦ってる先生の声が聞こえた。先生!?まさか先生の方にもこんな凄まじい数のガードロボットが!?
『こちらは現在、エリドゥのガードロボットが大量に襲ってきています。そちらは?』
『こっちはなんかアバンギャルドくん6体ぐらい出てきてるし!なんか半分ぐらい4脚に改造されてて苦戦してる!』
『え!?あんなのが6体も!?』
早瀬さんの驚愕する声に私も同じぐらい声を上げたかった。あれだけの人数がいても1体倒すのに多大な犠牲を払ったアバンギャルドくんが6機も!?冗談じゃない。しかも改良されてるみたいだし。
『けどネルとゲーム開発部が頑張ってる!あ、今3機目をモモイたちが落とした!』
す、すごい、もう3機も。それにゲーム開発部の子たちが活躍してるみたいだ。
『エリちゃん!聞こえてるね!?こっちには構わず進んで──カリン!あの街灯撃って!』
かなり激戦みたいだし、これ以上の通信は先生たちの負担になる。先生の指示、いや命令は先に進むこと。
「了解しました!先生、ご武運を!通信終わり!」
強制的にそう言ってしまえば、先生は通信を切ってくれた。早瀬さんが「本当に大丈夫かしら」と心配している声が聞こえたけど、ここは先生たちを信じるしかない。今は前進あるのみだ。
「先生たちを信じよう!足は止めるな!」
飛びかかってきたガードロボットをライフルのストックで跳ね上げ、頭上に上がったところを撃ち抜く。なりふり構わないガードロボットにこっちも容赦はしていられない。
でも、本当にこのガードロボットはどうにかないといけない気がする。仮にセントラルタワーへ辿りついてもこのままなら、今度は屋内という狭い空間でこの大量の機械の波に襲われることになる。
「明星さん!このロボットどもを止める方法はないのか!?」
「あります」
明星さんに聞いてみればあるらしい。一体どういう。
「セントラルタワーよりも手前。見えますね?あのマスドライバーの制御室へ行けばそこの端末から私がどうにかしてエリドゥのエマージェンシーモードを立ち上げます。そうすれば、ガードロボットは止まるはずです」
マスドライバーというのがよくわからないけど、位置関係からしてあの空に伸びてるレールのような構造物がそうらしい。
「ますどらいばーってなあに?ヒマリちゃん」
「簡単に言えば、宇宙に向けて物資を打ち上げるための発射台です」
ミカさんが聞いて帰ってきた回答に私は思わず足を止めそうになる。宇宙に物を打ち出す装置!?そんな凄まじいものなのアレ!?
「エマージェンシーというぐらいには緊急用の何かを発報するのだと思いますが、どうしてそれで止まるのですか?ガードロボットが」
「ノア。エリドゥの図面などにはもう目を通していますね?月雪さんに説明してあげてください」
『はい。ヒマリ先輩。月雪さん、マスドライバーの制御室から発報できるエマージェンシーはいわばこの都市を放棄する直前に発報するもので、住民の避難の妨げになるものを全て緊急停止させます。その中に、ガードロボットも含まれています』
生塩さんの説明はわかりやすくて、私でもなんとなく察した。
「つまり、宇宙に脱出するために、ということですか?」
「はい、そうです。技研都市エリドゥはいわば浪漫の塊ですから。あり得ない世界の滅亡にも備えた機能を有しています。ただ、リオも対策はしているでしょう。止まってくれれば御の字。止まらなければ、その場で私が端末を弄ってガードロボットだけは止めます」
思った通り、本当にそのためらしい。世界の滅亡にも備えた都市……。
「ふーん?まるでこの都市自体が方舟みたいだね」
「聖園さんからまさかその比喩が出てくるとは思いませんでした」
「そうかな。友達がこのテの話好きでさ。これで本当に宇宙にいける船があれば本当になっちゃうね」
「そうでしょう。しかし、そのような終末が訪れないことを祈りたいですね」
それは本当にそうだ。宇宙に逃げ出すなんて状況、考えたくもない。
とにかく、方針は決まった。
「このままマスドライバーの制御室へ向かう!生塩さん、ナビゲートを!」
『了解しました』
マスドライバーまでの道のりはガードロボットを退けながらで、弾薬の消耗が著しいため、途中から明星さんと和泉元さんに襲いかかる個体以外は極力私とミカさんが殴り飛ばす方向にシフトして弾丸を温存した。
幸い、ガードロボットの装甲はたいしたことなくて手とかは特にダメージはない。
目標の真下までやってくると、どういうわけかガードロボットが施設のゲート付近でぴたりと停止した。異様な光景に私たちは流石に足を止める。攻撃すらガードロボットはしてくる素振りがなかった。
「……なるほど。施設へのダメージを考えての安全装置ですか。リオらしいですね」
明星さんの言葉からして、重要構造物内での戦闘を避けるためのセーフティがあるみたいだ。なら、この選択は大正解かもしれない。
「急ぎましょう。構造が変わっていなければあの入り口のエレベーターで一気に管制室のある上までいけます」
明星さんが指差した方向には確かにエレベーターがある。開放式で工事現場にあるリフトに近い。私たちが駆け寄れば、エレベーターのゲートは閉まっている。ゲートの脇に端末があるので、それで操作するみたいだ。
「エイミ。パネルを操作してください。触るだけで起動するはずです」
「わかったよ、部長」
和泉元さんが明星さんの指示に従ってパネルを触ると、パネルが光った。無事に起動したかな。
「……いえ、これは」
が、明星さんが眉を顰め、パネルは警告表示が出ていた。私も近寄って見てみれば、そこにはこう書かれていた「アクセス制限。解除するには制御室から操作してください」と出ていた。
「使えないの?」
「そのようだ、聖園。明星さん、これは」
「先客がいるのでしょう」
どうやらここに来ることは読まれていた……いいや、明星さんや白石さんがこっちにいるのだから、当然と言えば当然。むしろ、私たちは追い込まれたのかもしれない。ここに。
「会長らしいね。退路を絶って、ここで潰す。私たちが本命なの、読まれてたかも」
和泉元さんの言う通りで、罠にはまってしまった。
……罠だろうが関係ない。
「草鞋野会長!こちらの非常階段入り口、鍵が壊れています!」
「月雪!よく見つけた!」
ミヤコちゃんが即座に別ルートを探してくれている。さすがだ。ただ、これもおそらくこのマスドライバーの上で待っている相手の誘いだ。
「どうするエリカちゃん?明らかに罠だけど」
「退路はない。前に進み、突破するしかない」
「ま、それもそっか。というか、みんなそれぐらいわかってるもんね」
露骨なまでの誘いは誰もがこの先にいる相手が私たちを仕留められるほどの強者だと想像がつく。ちょっと覚悟を決めた方がよさそうだ。
私を先頭に階段を登っていく。かなりの高さがあるから少し時間がかかる。道中で攻撃を受けるかもと思って警戒はしていたけど、備えられていたのは監視カメラぐらいで、罠はなかった。
10分はかからなかったと思う非常階段を登り切ると、そこは大きな屋根のついた格納庫のような部分と、一体どんなものを走らせるのか想像もつかないぐらい幅の広いレールが空に向かって伸びていた。制御室はどうやらあの格納庫の中にあるのか、格納庫の中に向かってある窓に灯りが見える。
「あそこが制御室です。エイミ、もう一息──」
ぴくりと、耳に届く風切音。いや、これは砲弾が落ちてくるような。
「伏せて!」
私の警告は間に合ったのか。直後に、私たちと制御室の間にあるマスドライバーの平場に、黒い球状の物体が降ってきた。鉄製の床にめり込んで煙を上げながら着地したそれは2つあった。
「なにこの黒い球。砲弾?」
ミカさんがよくわからないものを前にして、首を傾げていた。
「会長、確認します!」
「待て!月雪!迂闊に近づくな!」
ミヤコちゃんが球に近づこうと私の横をすり抜けようとしたけど、慌てて手を掴んで引き止める。恐らくは……アレが、私たちを待ち構えていた相手だ。
ぷしゅーっと白い煙を吐き出しながら球が割れて、べろんとハッチが開く。開いた縁に中から指が見え、掴む。誰かがこんなものに乗ってやってきたっていうの?一体誰が。
『正面、熱源が2つあります!草鞋野さん、詳細は!?』
「……馬鹿な…!?」
ありえない。今、では私が喋っているのは誰だ?黒い球から出てきたのは耳元で私に敵の詳細を求めているはずの──早瀬さん、その人だった。服装も、装備している二挺のサブマシンガンも、顔付きから体つきも、何もかも視界の情報が目の前の存在を早瀬さんだと認めている。
けれど、私たちに向かい合い、開いた瞳はひどく空だ。
「……あの女は……!」
「部長、背中で怒り狂わないで」
「怒り狂わないわけにはいきません。あの女の頭は倫理観という言葉も無くなったのですか?」
明星さんの声が震えていた。倫理観、といったか彼女は。
「わーお。早瀬ちゃんだっけ?今、私たちの目の前にあなたがいるよ?」
『はい!?何言ってるんですか!?映像は……えぇ!?本当に私!?』
本人も驚くほどの精巧さ。だけど、私は相手の正体がなんとなくわかった。通信を一瞬あえて切って、正面の存在音に集中する。足音に混じる、駆動音。
「……あれはロボットだ。機械の音がする」
「ロボット…!?あれほど精巧なもの、見たことありません」
「しかし、月雪、現実だ。そして、アレがここの番人なのだろう」
もう一つの球から出てきたのは、早瀬さんとくれば当然、生塩さんの姿をしたもう一機のロボットだった。
二体のロボットは無言で、私たちの前に並び、銃を構えている。
『……会長。流石に、私も自分とそっくりなロボットを作られて、このような使い方をされるのは不愉快です。聞いていらっしゃるのでしょう?』
生塩さんの怒った声が怖い。本気で怒っているのが伝わる。調月さんへの呼びかけはまさか繋がることはないだろうと思ったけど、私の予想に反して、彼女は応えてくれた。
『ノア、ユウカ。無断であなたたちを模したロボットを作ったことは謝罪するわ』
『会長!?ちょっとなんなんですか、あのロボットは!一体なんの目的で』
『あれは人型の方舟……私はラハムと呼んでいるわ』
「泥人形、ですか。悪趣味ですね」
『ヒマリ……』
「あなたのことです。ウタハから聞いたのでしょう?生徒の生体データ全てをデータ化すればその生徒自体の複製はできると」
それって…!?そんな、そんなことができるっていうの。
「へぇ。トリニティの一部の派閥が聞いたら命の冒涜どころじゃないし、私は聞かなかったことにしてあげるよ」
『わかるのね、聖園ミカ。あなたは』
「ミレニアムって映画の中の話がさ、ぽんぽん出てくるし、本当に未来の世界みたい。だからなんとなく、わかっただけだよ」
目の前のラハムというロボット。これはもしかしたら、死んだ人を生き延びさせることができるような、夢の装置なのかもしれない。本当にそうなら、私は……。
「草鞋野先輩!」
「…ッ!?すまない。呆けていた。調月会長、目の前のロボットは、早瀬さんや生塩さんのデータは取り込んでいない、違うか?」
『そうね。ラハムを方舟として使うのは最終手段』
『じゃあなんでそんなものをここに?』
『ノア。あなたならわかると思うけれど』
『……複写された生徒が本人と同一かどうかは…今は置いておきましょう。こうして、私たちを阻むように現れたということは、単純な人型戦闘ドローンとしても有用ということですね?』
『正解よ』
やっぱりそういうことらしい。目の前の2体のロボットは今、単純な戦闘用のドローンとしてここにいるようだ。仮に、生徒同等の力を持っているというのなら侮れない。これまで戦ってきたドローンなどとはワケが違う。
「エリカちゃん、やれそ?」
ミカさんは優しいから、聞いてくれた。
精巧な、それこそ本人と変わらない姿のロボット。正直に言えば、私は既にためらっている。おそらくは、調月さんはわかってこの2体のロボットを差し向けたのだろう。いっそ清々しいほどに悪辣で、けれど、有効そのもの。
なるほど、手段の選ばなさはナギサちゃんとは比較にならないかもしれない。ただ、組織の長という点ではそれは、正しい判断をどんなに非常なことでも取れる証拠だ。生徒会長……間違いなく、彼女はミレニアムという巨大な自地区を治めるに相応しい人なのだろう。
「でも、やるしかない」
「わかったよ。それじゃあ、無理はしないで?私の援護をお願いね」
「援護…?」
「今、エリカちゃんは指揮官なんでしょ?それに、先輩を助けるのも後輩の役目。ナギちゃんもやってたわけだし」
ミカさんがそう言って私の前に出る。
『……聖園ミカ、あなたが来ることは誤算だったわ』
「やっぱり?」
『いいデータを期待しているわ』
「私を実験動物扱いだなんて、あははっ、さすがだね。でもさ?私はエリカちゃんみたいに優しくないし、トリニティの子達の中には私を魔女だなんて呼ぶ子もいるんだよね」
ぞわりとした。ミカさんが背にある羽を広げて、銃を片手で構える。
「ノアちゃん、ユウカちゃん。あんまり見ない方がいいかもよ?」
『聖園さん。構いません。あんな勝手に私のこと模したロボットなんて壊してください!徹底的に!それに…!』
「それに?」
『カメラで見てればどうにも足が太すぎるんですけど!?会長!どういうことですか!?』
『え』
『そういえば、私の方のも、なんだか胸が大きすぎません?』
『………………』
なんだろう、ものすごい糸が切れそうな空気がまた無くなってしまった。早瀬さんの言うとおりなのか改めて早瀬さん人形を観察してみると、確かになんだか、太ももが「ヌッ」って感じで若干強調されてる気がする。生塩さんの方も胸がちょっとおっきくなってる。
勝手に作られた挙句、微妙になんだか一部が強調されるのは確かに嫌かも。
「リオ。所詮あなたの後輩を見ている目はその程度ということですね」
『……学内の健康診断データを参考にしたものよ。正確なはずよ』
『それなら納得です。夏前のデータは一時期改竄されたものでしたから』
『あの時の!?あれ私の体重100キロにされてなかった!?』
なんだかおかしな話にどんどんなっている。100キロって……ミカさんを見てみれば、なんか気合を入れたはずが若干抜けてしまっている。
あぁ、でも、チャンスかもしれない。私はライフルを即座に構え、早瀬さん型の方へ撃った。ミカさん同様、昂っていたからか弾丸は光を帯びていた。でも、弾は早瀬さん型の目の前で防がれる。青白い、バリアのような被膜。生徒と違ってロボットの体だ。簡単に壊れないように当然されてるか。
『草鞋野エリカ』
「……なんでしょうか」
いきなり調月会長に声をかけられた。なんだろうか、これまでの無機質なものから変わって、わずかに怒りのようなものが乗っている気がする。
『あなたは合体中のロボットを攻撃するタイプね』
「当然では?」
何を当たり前のことを。敵がパワーアップするのを待つ人がいるだろうか。
『………残念ね。ラハム1号、2号、やってしまいなさい』
「残念、とは一体!?」
「……なんでしょう。認めたくありませんが一瞬リオと同じ考えが過ったのは」
「明星さん!?」
「せ、先輩は間違ってないと思います!」
「ありがとうミヤコちゃん!」
よくわかんないけど!とにかく、目の前のロボットを倒すしかない!これを倒さないと制御室にはいけないんだから。
「総員、かかれ!目の前の人型ドローン──ラハムを破壊!突破する!」
「オッケー!」
「了解!RABBIT1、交戦!」
なんだかすっきりしないけど…!カイテンジャーが合体ロボを持ち出してきたら絶対合体前に破壊するからね!?
本作の主人公は合体中に攻撃をする割と塩野郎です。
リオの技術力が盛りまくりですが未来予知できるぐらいの演算機能持ってる都市作れるぐらいだからイケると信じたい。なお、最後に出てきたユウカとノアを模したドローンは当然ヘイローはないですが、服の下に至るまで完全に作られています。ユウカはそれも察して破壊を命じています。
次回はまた未定です。お待ちいただけますと幸いです。