最終編であんな大事な会議でガチ居眠りかましてたの図太いし可愛くて好きですサツキ。
それではちょっと短めですが今回もよろしくお願いします!
アビドス自治区のとある丘陵地に設けられた違法採掘場。そこで、その日に起きたことは地獄の現出だった。
まず初めに起きたことは採掘場の中に停車していた列車の爆破だった。
「な、なんだぁ!?」
「敵襲ーッ!」
「どこのどいつだよ!こんなところまで!」
表向きにはただの研修会社でしかないオクトワイズ社の社員たちはまさかこんな僻地まで来るものなどいないと楽観視していた。しかし、現実はそうではなかった。
爆破炎上した列車の周囲に集まった社員たちは相手を探すが、見当たらない。
「よく探せ!隠れたってことは少数だ!」
「ヴァルキューレの特殊部隊か!」
「SRTはとっくに潰れたろ!?」
彼らは統制が取れていた。襲撃に泡を食いこそしたが、すぐに落ち着きを取り戻していた。彼らはカイザーPMC上がりのもたちも少なくなかった。
しかし、彼らは”それ”を知る前に人材育成会社へと入ってしまった──群を凌駕する個の存在を知ることができなかった。
「がっ!?」
「ぎっ」
「うご」
銃声も何もなく、次々と社員たちが倒れていく。
「な、なんだ!?」
「くそっ!撃て!とにかく撃つんだ!?」
「馬鹿野郎!撃てるかよ!味方に当たる!」
「だが──ヒギィ」
また一人、地面に顔をめり込んで倒れた。目の前で同僚が倒れた姿を見た一人の社員は、青い稲妻のような影を見た。
「なんだよ!?なんなんだ!何がいるんだ!?」
また一人、一人と社員たちは倒れていく。ようやく彼は気が付く。倒れる瞬間に強烈な鋭い打撃音がし、倒れた社員の近くの地面がまるで何かが着弾したかのように抉れていることに。
「ちくしょうっ!ちくしょう!俺たちが何をして」
「貴様たちに情状酌量の余地はない」
「……ッ!?」
「与えられるのは償いの時間だけだ」
最後に残った社員の意識は一撃で刈り取られる。倒れた社員の背後に立っていたのは表情がないエリカだった。彼女の瞳は倒れた社員を無垢なまでに映していた。
「こちら草鞋野。列車周りの人員の排除完了。小鳥遊、お前は」
『ちょい待ってね』
エリカがホシノから渡された短距離用の通信機を使いホシノへと声をかけると、ホシノもまた戦いを始めていた。
彼女が向かったのは施設の前から見た処刑じみた行為をされた生徒たちが連れていかれていた方向だった。
「邪魔だよ」
「うぎゃ」
「がふっ」
出会い頭に現れたオクトワイズ社の社員をハンドガンで的確にヘッドショットし気絶させて、ホシノは先に進む。ホシノは敵が訓練はされているがその実力は傭兵の足元にも及ばないと感じていた。
「(弱いね。カイザーPMC崩れのチンピラ?)」
建物の影から飛び出し、銃剣を向けてきた一人をホシノは回避し、瞬時に振り上げた足で銃剣のついた小銃を踵落としで叩き落とすと、脇腹にショットガンを放ちノックダウンした。
「くそっ!止まれェ!」
「!」
低階層の建物の上、陣取った社員がバズーカを放つ。ホシノはその場で盾を取り出し防御。社員から見て明らかに直撃したと感じるような紙一重のタイミングであった。
「やったぞ──うぎゃ」
「大した炸薬量じゃないし、あの子たちは当たりどころ悪かったんだね」
通常の生徒であればそれなりのダメージを受けるはずのバズーカ弾だったが、ホシノからすれば大した威力とは感じないもので、広がった煙を手で払いながら再度ホシノは前進した。
そして見えたのは倉庫のような建物。その前に十人ほどの社員がホシノを待ち構えていた。重機関銃を構えている様子に、ホシノは彼らの背後がホシノの目指しているものだと察した。
「撃て!蜂の巣だ!」
「うーん。そんなの効かないなぁ」
誰も、後輩たちもおらず、エリカの目もないことから、ホシノは普段は見せることを避けている神秘を解放する。途端に、ホシノ以外には認識ができない強烈な神秘の防壁が構えた盾の前に展開される。
神秘を認識できるとあるアリウスの姫であれば、ホシノの周囲を赤い光球が包んだことがわかったであろう。
「な、なんだ!?弾が!?」
「俺たちの知らない武器でもあるのか!?」
「ミレニアムの発明かよっ」
動揺する社員たちに、ホシノは無表情だった。
「全部ハズレだよ。──アビドス生徒会副会長として、君たちは制圧するよ」
生徒会長不在、次席として権限はホシノにある。自治区における守護者としての役割は彼女にあった。
ホシノが突撃をかける。その速さは、特化したエリカには及ばない。だが、無敵とも言える盾と小柄な体躯ではありえない質量を生かした突撃は強烈な結果をもたらす。
「沈め」
「ば、化け物かっ」
隊列の中央に突っ込み、あっという間に重機関銃の隊は蹂躙される。
ショットガンには当然のようにホシノの、暁のホルスとまで言われたアビドス最高の神秘が込められ、逆に重機関銃を蜂の巣にしていく。銃撃に巻き込まれた社員たちはどうすることもできず、次々に昏倒する。
「ふぅ。ま、こんなもんか」
1分もかからずにホシノの周りにはエリカが作り出した惨状と変わらない状況が出来上がっていた。倒れた相手など目もくれず、ホシノは倉庫のような建物に足を踏み入れる。中は牢屋になっていた。
「(懲罰房ってとこかな。ひどいことするね)」
今は解放している余裕はない。ホシノは外に出て、エリカへと通信を飛ばす。
「エリカちゃん。懲罰房を見つけたよ。見た感じさっき見た子たちはここに入れられたみたい」
『わかった。あとで解放する』
「そうしよう。一応、看守みたいな人たちは倒したから」
『よくやってくれた』
「これからどうする?」
『──こちら草鞋野。不知火室長、指示を』
『え、えぇ!?もう片付いたんですか!?こっちはこっちで実はクーデターを起こして、事務所に籠城中です!あとは採掘場に今作業中のメンバーと監督員たちがいます!そちらの解放を!』
『草鞋野、了解。小鳥遊、採掘場で合流する』
「はいよー」
エリカは一歩でその場から掻き消える。彼女の体は怒りによりリミッターと呼ぶべきものが外れていた。銃を使わないのは僅かに残る理性が相手の無力化を狙ってそうさせていた。
神秘解放と、エリカに取り憑く亡霊が呼んだ現象が、エリカの体に再び降りかかっていた。
一方、エリカに呼ばれ彼女に合流しようと駆け出していたホシノはエリカの凄まじい威圧感に、これまでの彼女への評価を改めていた。
「いやぁ、あれじゃあちょっと、やり合ったらお互い再起不能になっちゃいそうだね」
無理をした時は抑えられる。それは変わらない。だが、おそらくその結果は互いに再起不能になるとホシノは感じてしまった。目で追える速さであり、ホシノの装備からしてもエリカとの相性は良いが、それでも稲妻のような速度で動かれてはホシノもたまらない。
「なるほどねぇ、安全局の狛犬かぁ。そりゃあれなら絶対犯人捕まるね」
エリカの今の実力はヴァルキューレ時代の比ではないものであったが、ホシノはそんなことなど知らないために、そのように思った。
進むに連れて、エリカが引き起こした惨状を見る。まさに死屍累々と言って良い様相であり、地面はことごとく小さなクレーターのように抉れている。まるで怪獣が暴れたかのような跡だった。
実際はホシノが戦った後も全て無惨に破壊され惨劇が広がっていたが、それを棚に上げてエリカの戦果に恐々とした。
「御愁傷様だねぇ」
当然の報いではあったが、もはや怪獣に襲われたかのような犯罪者たちにホシノは僅かに同情した。
「お待たせ、エリカちゃん」
「いや、ちょうどよかった。この守衛に聞いたが、この先、かなり地下深くまで採掘は進んでいるらしい」
既に〆た相手を静かに下ろしながら言うエリカに、ホシノは「へー」と相槌する。
「つまり外の音は聞こえてないんだ」
「そのようだ。それで、この連絡用の車両を使い、奇襲をかける」
「トロッコだね」
エリカが指差した先にあったのは発動機の付いたトロッコであり、それで進んだ方が早いようだった。ホシノは頷き、エリカと共にトロッコに乗り込む。躊躇いもなくエリカはトロッコを発車させた。
「それにしても何を掘ってるんだろうね」
「室長、彼らの目的は?」
『どうやら彼らはこのキヴォトスをひっくり返すほどの戦略兵器を探しているそうです』
「……なるほど、戦略兵器。SRTの出動に値するものです」
『えぇ。そういうことです。あともう少しで地下の巨大な空間に辿り着くと監督員は言っていましたので、間に合ってよかったですよ』
「そうですか」
エリカは間に合った、という言葉に安堵する。
「いやぁ物騒だね。戦略兵器って、こんな地下深くとかどんな古代兵器なんだか。漫画の読み過ぎじゃない?」
「あるというからここまでやったのだろう」
「そうだろうけどさ。いやはや、自分家にそんな物騒なものが埋まってるなんて勘弁してほしいよ」
ホシノはため息をつく。エリカは何も返さずに前を向いた。
「(噂には聞いてる例の雷帝の…?いや、アレはそんな古代兵器みたいな代物じゃないだろうし……となると本気で遺跡かな)」
ホシノの知識にある戦略兵器とは別のものだろうと彼女は結論づけた。
それから十数分間は無言が続き、トロッコの速度は増し、エリカの耳が遠くで何かを掘削する音を捉える。
「近いな」
「やっと終点か〜」
光源も先にうっすらと見え、エリカはトロッコの速度を緩める。そうして、見えてきたのは複数人の社員たちに見張られながら、苦しそうに採掘作業をしている生徒たちだった。エリカはその姿を見ると、もはや警告を発することもなく、トロッコから飛び降りると監督員の一人を殴り倒した。
「動くなッ、貴様ら!」
「な、なんだ!?」
「はいはい、こっちも動いちゃダメだよー」
「くっ!?」
エリカに銃を向けようとした社員をホシノがショットガンを突きつける。
「こちらは連邦生徒会、連邦捜査部シャーレ!様々な違法行為により貴様らを拘束する!ただちに武装解除せよ!さもなくばこの場で制圧する!」
「たかだかガキ二人で俺たちをやれ──!?」
エリカを撃とうとした社員の銃が吹き飛ぶ。いつ撃ったのかわからぬほどの早撃ちで、エリカの銃口がその社員の持つ銃があった場所を射抜いていた。
「次は当てる。動くな」
「ひ、ひっ、ひぃ!?」
「ほんとに従ったほうがいいよ〜みんな。じゃないとこっちも容赦してあげられないし」
緩く、しかし明らかに敵意を込めて告げるホシノに、その場で全員が手を挙げ、地面に膝をつく。
抵抗は無意味。学園の生徒会長にして実力者が力を振るえばどうなるか──日の目を見るよりも明らかな状況であり、事件はあっけなく幕を下ろした。
「いやー!さすがですね!エリカさん!」
「いえ。申し訳ありませんでした、室長。救助が遅れ」
全員を拘束したところで、カヤちゃんが採掘場の奥までやってきていた。後ろに陸八魔さんもいる。あぁ、そういうことか。彼女はコノカちゃんが用意した民間協力者。やっぱりこの場にいる生徒たちは集団失踪事件の被害者たち。
公安局が追っていたヤマもこれで決着ってことだね。
カヤちゃんの姿は元気そうで、乱暴された形跡はなさそうだ。きっと、カヤちゃんのことだ。陸八魔さんが民間協力者と見抜いて動いていたのだろう。防衛室長に就いているということはやっぱりこれぐらい出来て当然なのだ。流石だよ、カヤちゃん。
「遅れたなんてそんな。しかし痛快ですね。ここまで強いなんて、えぇ」
「……本当にね。恐ろしいぐらいよ」
「陸八魔さん。今回はご協力ありがとうございました。元同僚に代わり、お礼を」
「同僚って、あの公安局副局長の?」
「はい」
「そう。………まぁ、よろしく言っておいて」
相変わらず、大物感があるというか、カヤちゃんにも劣らない圧だ。ホシノちゃんにだって負けてない。こんな周りで拘束した人たちなんて小悪党に思えてくる。陸八魔アル。やっぱり警戒しないといけないかも。
「それじゃあ、ご開帳といきましょうか?」
「どういうこと?カヤ」
「アルさん。危険物であれば確認しなくてはなりません。なんたって私は防衛室長ですからね。よろしいですか、小鳥遊委員長」
どうやらカヤちゃんはこの先に埋まっているという何かを確認したいらしい。安全保障に関わることとなれば防衛室長の権限はかなり強い。原理原則から言えば……ホシノちゃんは断れない。
「いいよ?エリカちゃんのお友達なんだっけ、君って」
「ふふっ、そうです!」
「………うーん、まぁ、いいや」
とりあえずいいらしい。カヤちゃんは許可が取れたとわかると駆け出して、採掘されていた壁の前に向かい、指を刺した。
「ここです!ここがもう崩れかかってますから!お二人でぶち抜いてください!」
「え、流石にそれは無茶だよカヤちゃん!?」
待った待った。流石にそんな岩盤は無茶だって!いくらなんでも!
「え?」
いやそんな純粋な目を向けられても困るけど!?
く、でも期待されてる。断るのも忍びないし、やるだけやってみよう。
「ホシノちゃん、ちょっと、試してみよっか」
「うへー、重労働だよ。おじさんにやらせていい仕事じゃないって」
言いつつ、ショットガンをホシノちゃんはカヤちゃんの指差す方に向けた。私もとりあえず向ける。
「カウント3で発射。いい?」
「いいよー」
「よし、じゃあいくよ。3、2、1──撃て!」
射撃。私の弾はともかく、ホシノちゃんの射撃は信じられないような威力が出ていた。す、すごい、どういうこと!?普通のショットガンじゃないのそれ!?
「おー、開いたねー、穴」
「嘘でしょ……ホシノ、すごいわね」
「いやーそれほどでもないよ〜」
陸八魔さんも驚いてるけどほんとにすごいよ。
既に岩盤は弱くなっていたのか、小さな穴から人一人分が通れる穴が空き……開口部の向こうに、信じられないけど、人工的な鉄製の床が見えた。といっても先は真っ暗だ。
「ホシノちゃん、ライトある?」
「そこの借りてこう」
「それもそっか」
置かれていた光源を借りる。無線式なので持ち運べる仕様だ。ただし、取手以外は光が強いせいかかなり熱い。やけどしないようにしないと。
私が光らせて、ホシノちゃんが先頭に立って、カヤちゃんたちは後に続く。穴を抜け、現れたのは巨大な空間。足音が大きく反響する。目の前には柵が見える。朽ちてはいないように見えるけど、いきなり風化なんてしたら危険なので触らない方がいいだろう。
「これは一体……」
「なんだろうねぇ。ウチにこんな施設、なかったはずだよ」
「アビドスでもわからないのですか?」
「不知火ちゃんだっけ?ウチはこんな地下に施設なんてないし、こりゃ本当に未知の文明の遺跡なんじゃないかな」
「大発見じゃない!」
「まさか本当にそうとは!」
陸八魔さんとカヤちゃんがホシノちゃんの言葉にずいぶんと興奮していた。気持ちはわからなくもないけど。
ホシノちゃんが慎重に壁沿いに設けられた階段を下っていき、私たちも続く。これはなんというか、遺跡というには現代的すぎるし、しっかりしてる。本当に遺跡なのだろうか。それとも、SFよろしく未知の存在がここに作った基地だったりして。
しばらく下って、私はこの空間の中心に光源を向けた。
「え」
「エリカちゃん、どうしたの」
「み、みんな、これ!」
光を向けた先、そこには信じられないものがあった。
「こ、これは!?」
「なによ、これ、大きな箱……?」
「うひー……ちょっと、おじさん頭がキャパオーバーしそうだ」
顕になったのは、巨大な構造物。箱……?にしては、明らかに装甲のような表面の感じ。さらに階段を降れば、その物体の正面に回っていく。見えてきたのは窓。建物?
「あれは、艦橋、でしょうか」
「カヤちゃん、どういうこと?」
「いえ、オデュッセイアなどが保有する自衛用の艦艇の艦橋があんな感じでしたので」
オデュッセイアは海上にある以上、海賊と化した生徒から身を守る必要があるため、戦闘艦を保有してる。ただ、それを陸地に対して使うことは原則禁止となる条約を連邦生徒会と結んでいるんだよね。安全保障に関わる内容なので、当然カヤちゃんはその艦艇のこともよく知ってる。
「じゃあなに?つまりあれは、戦艦ってこと?カヤ」
「しかし、形状が水上艦には見えませんし、武装の類も無さそうです」
もっと下って、ようやく底に辿り着く。明らかに人工的な空間だ。まるで、何かの工場のような。
その中心で、音も出さずに鎮座するこの謎の艦艇のような構造物。これがキヴォトスを脅かすほどの兵器……?わからない。ただ、何か尋常ではないものな気がする。そして、こういうものは私たちでは手が負えない。
「不知火室長、提案、よろしいでしょうか」
「どうぞ、エリカさん」
「正面の正体不明の物体ですが、シャーレの権限により接収し、ミレニアム、調月会長に調査解析を依頼します」
「ミレニアムに?」
「ミレニアムには特異現象捜査部……室長もご存知でしょう、理外の脅威に対しての専門チームがあります。シャーレ監督のもと、連邦生徒会の指示であれば、問題も起きないかと」
私の提案に不知火室長は少し悩んだものの、すぐに答えてくれた。
「ふむ……まぁ、シャーレ監督ということであれば問題ないでしょう。といっても、ここにいる私、そしてエリカさんでは最終的な決済は取れません。一度持ち帰り、七神代行及び、先生に判断を仰ぎましょう」
「はい」
そうだね。それでいいと思う。七神代行と先生の許可があれば、どこの自治区も異論は挟めないし、そもそも正体不明の物体を引き取ろうなんて、ミレニアムぐらいだろうから。
「ホシノちゃん、色々勝手に決めちゃった、ごめん」
思わず色々勝手に言ってしまったのでホシノちゃんに言えば、彼女は「いーよいーよ」と許してくれた。
「さすがにこれは私もどうにもできないって。ヒマリちゃんたちなら知ってるし、アビドスとしては問題ないよ。専門家に任せちゃおう」
「ふむ、この場では異論無さそうですね。アルさん、ここで見たことは他言無用です。ヴァルキューレへの報告は失踪者のみに留めてください。いいですね?」
「当然よ。必要以上のことはするつもりもないわ。それに、触らぬ神に祟りなし。私たち便利屋には関係のないことだもの」
陸八魔さんのはっきりとした態度に安心する。彼女ならきっと秘密は守るだろう。
「とにかく、これで一先ずは事件解決、ってことかな」
「……はぁ、とんでもないことになっちゃったねぇ」
なんであれ、これで事件は終わった。
問題はなかった。
いや、ある。
「………………」
「エリカさん?なんだか顔が青くないですか?」
「いたい」
「え?」
「足がめちゃいたい」
「エリカさん!?」
「エリカちゃん!?だいじょぶ!?」
「いだだだだだっ!」
どうやら私は全力で動いた結果、利き足のアキレス腱を伸ばしたらしい。怒って興奮して、準備体操をしなかったからだね。今の今までアドレナリンドバドバで気がつかなかったのかも。
「救急車!救急車を呼んでください!」
「エリカちゃん!しっかりして!」
立ってられないので座る。あぁ、これはナギサちゃんになんて言い訳をしよう。とりあえず……休暇はあとまだ数日ある。アビドスにいるうちに直せばいいだろう。私の回復は早いのだから。
「ナギちゃん?」
「………気のせいでしょうか」
「え?」
「なんだか、とても裏切られた気がするのです」
「やだなぁ、私はもう懲りたって〜」
「いえ、ミカさんではなく」
「………あぁ、そういうこと」
「まぁ、気のせいでしょう。あとで電話でもしましょう」
「電話の頻度高くない?束縛する彼女は嫌われるよ?」
「なっ!誰が彼女ですが!?まだ、まだ私は彼女の恋人ではありません!」
「いやいや、まだって。そんな絶対勝てるみたいな」
「は?」
「エリカちゃんの周り知ってるでしょ」
「ミカさん!人の恋路をなんだと!」
「いや事実──ちょ、ロールケーキはやめ、もがっ、ふぐっ!?」
「………はぁ。淑女としての恥じらいを持たないかい君らは」
お読みいただきありがとうございました。
というわけで本章はウトナピシュティムの本船、早期発見というお話でした。
ちなみにエリカは現在F1エンジンを軽トラに積んだような状態なのでまるで剛性が足りない感じです。強さ的にはフェス限みたいな感じになってますが当然自傷ダメージ入ります(クロコみたいなメリットもなし)。
次回は明日、この章のエピローグ予定です。
感想やここすき、いつもありがとうございます。大変励みになりますので、よろしくお願いします。