頑張りとは、報われるべき願いである   作:ババネロ

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これでこの休暇(?)編は終わりです。


Area-11「エピローグ」

「先生、お疲れ様です」

 

「ありがとう、トキ。色々助かったよ今回は」

 

「いいえ。先生のメイドとして当然です」

 

 百鬼夜行、ゲヘナの交流会は色々あったけど無事終わった。ニヤへの説教はちょっとやりすぎたかもしれないけど、イブキが大怪我する可能性もあったし、あれぐらいは必要だった。

 

 百鬼夜行からの帰りは途中までマコトの飛行船に同乗させてもらって、列車でD.U.に戻ることになった。

 

 支援要請の中でトキは何度も私のことを助けてくれた。C&Cの子たちはやっぱり優秀だ。特に付き合いがあるのはアカネだけど、アカネはつつがなく音を立てずに気がついたら事を済ましてる感じで、トキもそんなアカネによく似てスマートに補佐してくれた。

 

「トキの師匠はアカネなんだっけ?」

 

「はい。エージェントとしてもですが、メイドとしても彼女から作法を伝授してもらいました」

 

「なるほどね。私は好きだよ、アカネとトキのやり方」

 

「勿体ないお言葉です」

 

 隣に座ってるトキが頭を下げてくる。色々瀟洒なんだよなぁ。たまに突拍子もないこと言うけど、お仕事もモードな時は隙が全くない感じなんだよねこの子。あのマコトでさえも茶化すことができず、トキと話す時はなんかふざけられていなかった。

 

 ……最高のメイドさんに仕えられる。なんていいんだろう。あ、いや、待て待て。トキは生徒だっての。

 

「そういえば、草鞋野さんはお土産を買ってくるでしょうか」

 

「それ本気だったんだ」

 

「当然です」

 

 何故かトキはアビドス土産を期待していた。あれかなぁ、留年までしちゃってるし更にリオの懐刀としてどうもあんまり外のことを彼女は知らない。エージェントとして知識はかなりあるみたいだけど。

 

 だからなのか、百鬼夜行では仕事の傍ら観光もしたかったようで、自由時間が出来たところでトキは百鬼夜行で色々とお土産を買っていた。旅行が趣味になるんじゃないかってぐらい楽しんでいた。

 

 そういう意味では、トキを今回の支援要請に連れてきたのは正解だったかもしれない。

 

「でもちゃんとトキはエリちゃんの分も百鬼夜行のお土産買ったんだね」

 

「それはもちろん。……ご迷惑をおかけした分」

 

「あー……」

 

 トキはこのあと、エリカに会ったときに謝罪をしたいとのことだった。見守ってあげないとね。

 

「それで何を買ったの?エリちゃんに」

 

「彼女の趣味は紅茶などを淹れたり、お菓子作りだとお聞きしましたので。百鬼夜行の茶葉と菓子を」

 

「へぇ。喜ぶんじゃないかな?エリちゃん」

 

「そうだと嬉しいです。せっかくですから、彼女にお茶を淹れたいとも思います」

 

「それは喜ぶと思うよ。私なんか全然違いがわからん大人だからさ、トリニティのそういうこと詳しい子とはよく話してるよ」

 

 エリちゃんはトリニティに通ったおかげか、春先ぐらいの真面目な警察官みたいな側面だけじゃなくいい感じのお嬢様成分もプラスされていた。そのおかげか、たまに執務室の中でミカとエリちゃんから上流階級な感じのお話が始まる。

 

 だいたいは普通の女子高生って軽めの話題だったり、会社員も真っ青な感じだけど。

 

「他には?リオとかにも買ったんでしょ?」

 

「リオ様は公務で外遊されることはこれまでほとんどありませんでしたので、この機会に色々と買いました」

 

「なるほど〜。それはアカネ仕込みかな?」

 

「はい。主のために、というところです」

 

 アカネがマジですごい。あの子私より年下だよね?まるでメイド長のような圧倒的な何かを感じる。役職的にはネルがメイド長のはずなんだけど。思えば、アカネが教育を担当したというカリンもメイドとしてはほんとピカイチで、キヴォトスにおける瀟洒なメイド第一位はアカネなのかもしれない。

 

 爆弾魔だけど!

 

「っと、電話だ。エリちゃんから?」

 

 休暇中のはずのエリちゃんから電話がかかってきた。絶対何かあったでしょこれ。エリちゃんから電話がかかってくるのはだいたい情報共有・相談・報告だ。もうちょい無駄話してもいいんだよ?って言ったけど「支援要請の合間にそのような負担はかけられません!」の一点張りでダメだった。真面目だ……。

 

「はい、もしもし。エリちゃん?」

 

『お疲れ様です、先生。今よろしいですか』

 

 声がのっけから深刻だった。あぁ、これはダメそうだ。

 

「いいよ。ちょうど戻ってるところだから」

 

 今乗ってる列車は長距離移動するものなのでコンパートメントだ。そのまま応答する。

 

「どう?休めた?」

 

『…………いえ、その、ちょっと色々とありまして』

 

 ホシノがいてもどうやらダメだったらしい。

 

「えっと、ちなみに聞くけど、問題はどんな規模だったのかな」

 

『SRTが出動を許可されるレベルです』

 

 大惨事だった。それ普通にキヴォトスの危機レベルだよ。マジか……エリちゃん……。ただし、電話をしてきていて、この口ぶりだと、おそらくもうカタがついたのだろうか。

 

「あー………電話してるってことは解決しちゃったのかな?」

 

『はい。なので、事後ですが報告を』

 

 やっぱり。まぁ、わからなくもない。本気になったエリちゃんと、おそらくその気になればとんでもなく強いホシノが組めば何が起こるかなんて簡単に想像できる。敵組織の壊滅は当然と思っていい。そして、そうなってしまったということは……。

 

「了解。とりあえず話してくれるかな」

 

 ……案の定、エリちゃんが語った内容はかなりとんでもない出来事だった。

 

 まず、スラムなどにいる生徒たちが大量に拉致され強制労働させられていたということ。

 

 このことは私も知らなかった。まさかそんなことが起きてるなんて。先生失格なんてものじゃなかった。とにかく、解放された生徒たちの支援策はすぐに考えなくちゃいけない。

 

 そして、拉致をしたのはカイザーグループの末端企業だった。たぶんトカゲの尻尾切りになるだろうけど……あいつらほんと一回潰れてしまったほうがいいのではないだろうか。碌でもない会社だ。

 

『それと、不知火室長が本件に巻き込まれました。無事ではありましたが』

 

「オクトワイズ社だっけ?行政トップに喧嘩売ってるって正気?」

 

『……正気、とは思えません。ですが、現実として起きてしまいましたので』

 

「カヤも無事でよかったよ……言っといて」

 

『はい』

 

 さらに、何故かカヤも巻き込まれていたらしい。

 

 なお、強制労働をさせていた目的が戦略兵器の発掘らしく、そのためカヤの権限だけでSRTの介入が可能となった。結果、一時的にエリちゃんのSRT会長としての権限が戻って悪党たちを懲らしめたらしい。

 

「怪我はしてないよね?」

 

『足首ひねりました』

 

「ほんとに?」

 

『はい!』

 

 今頃絶対、エリちゃん耳がぴこぴこしてると思う。嘘つくのが下手すぎ。内容からして私はもうしょうがないと思ってるけど、ナギサは平気だろうか?……うん、そこは生徒間の問題だから介入しないでおこう。馬に蹴られるのは嫌だ。

 

「とりあえず、状況的に事後報告するしかなかったのはわかったし、お疲れ様、エリちゃん」

 

『申し訳ありません。また勝手に…』

 

「まぁ、今回のはしょうがないし、カヤも助けられて、たくさんの生徒たちも救えたんだから。責めるなんてできないよ」

 

『ありがとうございます』

 

 実際、大人が子供を搾取するなんて許されない行為は摘発されて当然だし、エリちゃんたちが成したことに罰をつけることなんて微塵も思えない。せいぜい、私が言えるのはエリちゃんの報連相抜けをいい加減にと説教するぐらい。

 

 まぁそれは落ち着いてから話せばいいだけで、今することじゃない。

 

「それで、事後処理は?」

 

『はい。現在、ヴァルキューレ公安局とSRTの各小隊が到着し、現場保存とその場にいたオクトワイズ社の社員を確保、D.U.の本局へ連行しています』

 

「ミヤコとユキノたちも来たんだね」

 

『RABBIT、FOXの両小隊にはしばらく駐留してもらう必要があるので』

 

「さっき言ってた戦略兵器ってやつだね。実際どんなやつ?」

 

『シャーレの共有クラウドに写真をあげましたので確認できますか?』

 

「了解。ちょっと待ってね」

 

 クラウドね。

 

 エリちゃんとミカ、人数も増えてきてたまに分担してそれぞれ細々とした支援要請を受けることも増えたので、機密性高めなシャーレ所属の人しかアクセスできないクラウドのファイル共有を使って写真のやり取りを最近始めた。

 

 生徒のプライバシーに触れることがほとんどだし、アオイがすんなり許可してくれて助かったよほんと。

 

「どれどれ…ってなにこれ!?」

 

 写真を見たらそこに写っていたのは──どうみても近未来、宇宙戦艦のような何かだった。嘘でしょ。合成かと思っちゃうけど送ってきたのはエリちゃんだ。

 

「宇宙戦艦…なのかなこれは」

 

『先生も似たような結論になりましたか。実はカヤちゃん……不知火防衛室長もオデュッセイアの艦艇を思い出すようでして』

 

 カヤが詳しいのはオデュッセイアの装備を知ってるからかな?防衛室として。ただ、素人の私から見てもどうみても艦艇だ。

 

『あったのは地下深くで、人為的にこんな場所を深く掘った記録はホシノちゃん曰くないそうです』

 

「もしかして宇宙人が残した古代の遺跡なんじゃ」

 

 マジでありえる。古代キヴォトス人が残した遺物。そもそも、オーパーツがこの世に存在してる以上、古代文明が遥かに進んだ技術力を持っていてもおかしくない。

 

『その可能性もほんとにありそうで怖いです。なので、私からミレニアムに調査依頼をしたいという提案したところ、ホシノちゃんも防衛室長も同意頂きました。あとは先生と七神代行から許可を頂ければと』

 

 なるほどね。これは確かにリオやヒマリ、それにウタハたちの領分だ。あの子達ならこれを悪用しようなんて思わないだろうし…たぶんリオとウタハは趣味全開で楽しんでくれるんじゃなかろうか。

 

 特異現象捜査部としてもぴったりの案件だと思う。

 

「了解。私としてもいいと思うし、リンちゃんも流石にこんな代物手が余ると思うから。リオたちなら何とかしてくれるんじゃないかな」

 

 一旦私は携帯から耳を離すと、トキへと眼を向ける。

 

「内容は大体把握しました。会長へ連絡します」

 

「ありがとうトキ。いてくれてよかったよ」

 

「いえ。ミレニアム生として宇宙戦艦という浪漫に溢れたもの、私だって見逃せません」

 

「そりゃそっか」

 

 すぐにトキはリオへ連絡を始めてくれた。助かる。

 

「ちょうどトキがいるからリオに今連絡してもらってる。すぐに協議が必要だろうからその調整は私がしておくね。エリちゃんはもう休みなよ?」

 

『いえしかし』

 

「休むように。いいね?他にも頼れる子、現地に来てるんでしょ」

 

『了解しました………申し訳ありません』

 

「うん。無茶して倒れちゃ先生悲しいからさ。それじゃあね。もっと詳しい報告はまた帰ってきてから」

 

『はい。お疲れ様でした』

 

 電話が切れた。エリちゃん、これは痩せ我慢をまたしてるかも。重症じゃなきゃいいけど。

 

「──はい。承知しました。では、後ほど」

 

 ちょうど、トキの通話も終わったようだ。リオのことだし、話は早そうだ。

 

「リオはなんだって?」

 

「状況は了解したそうです。声がかかれば特異現象捜査部とエンジニア部をアビドスに派遣すると仰っています」

 

「ヒマリとウタハたちが来るんだね。なら大丈夫かな」

 

「えぇ。お二人なら問題ないと思います」

 

 私は背中を席に深く押し付ける。それにしても、宇宙戦艦か。……冷静になれば絶対碌でもないことが絡んでそうだ。それこそ、あんな遺物みたいなの、黒服が好きでしょ。

 

 このキヴォトスに来てからというもの、なんだか嫌な予感というのは当たるもので、あんなものが見つかったってことはそれが必要になる事態が起きるんじゃないだろうか。

 

 奇跡や魔法や、デカグラマトンみたいな機械生命体だっているわけで、宇宙人が攻めこんできてもなんらおかしくない、なんてアホなことも考えてしまう。

 

「先生?」

 

「あぁごめんね、トキ。ちょっと頭整理するからさ」

 

「了解です。では、必要あればお声がけを」

 

「いいや、大丈夫。暇なら電車の中散策してきてもいいよ。遠出は初めてだったし」

 

「よろしいのですか?」

 

「もちろん。お小遣いもあげるから、車内販売で何か買っておいで」

 

「ありがとうございます。先生」

 

 お金を財布からいくらか出して、トキには一度コンパートメントから出て行ってもらった。あぁ、ほんとに色々とまだまだ起きそうだ。どうか、無事に生徒たちが過ごせる事を私は祈り、問題が起きた時に、解決できることであることを願うばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 ホシノちゃんと採掘場を制圧した翌日、最初に到着したのはやっぱりSRTだった。

 

「RABBIT、FOX各位、施設内を掌握!かかれ!」

 

『イエスマム!』

 

 指揮はユキノちゃんが取ってくれて、基地の完全掌握まで時間は全くかからなかった。当たり前だけど、経験豊富なFOX小隊と、それに追従以上のことができるRABBIT小隊が制圧済みの基地なんて簡単に掌握できる。

 

 一晩を基地で過ごしたけど、私はなんとかアイシングで耐えていたところだったので、ニコちゃんとミヤコちゃんから基地掌握後に医務室で手当を受ける羽目になった。

 

「これで大丈夫です。FOX2、あとはお願いします」

 

「了解です。RABBIT1。引き継ぎます」

 

 しっかりギブスとかを用意していたミヤコちゃんとニコちゃんに手厚く処置されて、見た目はかなり痛々しい感じになってしまった。ミヤコちゃんは隊の指揮があるのですぐに戻ってしまったけど。

 

「ありがとう、ニコちゃん。助かったよ」

 

「助かったよ、ではありません。会長。お身体を大事にしてください。RABBIT1……ミヤコちゃんもかなり心配していますよ」

 

 うっ。ニコちゃんに怒られた。それに、ミヤコちゃんが心配そうな顔をしていたのは私もわかった。情けない限りだ。

 

「あまり、会長に……先輩にこんな言葉をかけさせないでください」

 

「ほんとごめんなさい」

 

「頭も、あんまり下げちゃダメです。そうならないように、気をつけてください」

 

「そうだね。気をつけるよ」

 

 絶対生返事でしょ、という感じの視線が突き刺さる。ニコちゃんを怒らせてしまったのが辛い。けれど、今回もこれは自分のせいなのでどうしようもない。準備運動もせずに全力で動いたせいだ。ちゃんと準備すれば多少筋を痛めた程度で済んだはず。

 

「では私はこれで失礼します。会長、安静にしてくださいね」

 

「もちろん。お迎えも来るみたいだからさ」

 

 アビドスの子たちにも救援の報は入れてある。アヤネちゃんが今、こっちにヘリで向かってきているようだ。

 

「そうですか。小鳥遊委員長。草鞋野会長をお願いします」

 

「はいよ〜」

 

「あ、そうだ。ニコちゃん、FOX2。以降の指示は不知火防衛室長の指示に従ってね」

 

「承知しました。しばらく駐留という指示は変わらないと思いますので、あの遺物のミレニアム引渡しまではお任せください」

 

「よろしくね」

 

 ニコちゃんが医務室を出ていく。ちなみに、ホシノちゃんは足痛めてからずっと私の横だ。もうこれ以上無茶するなってことだと思う。ナギサちゃんとの約束もあるからね。

 

「いい後輩さんだね。あんなに心配してくれちゃって」

 

「ほんとね。私には勿体無いぐらいだよ」

 

「そんなことないって」

 

 よくできた後輩たちで、もっと私もしっかりしないと。

 

「あ、そろそろアヤネちゃん来るかな。一旦外行くね?歩き回っちゃダメだよ」

 

「大丈夫。待ってるよ」

 

「ほんとに〜?おじさんとの約束だよ」

 

 ホシノちゃんからも半信半疑って感じだけど、彼女も一旦医務室から出て行ってしまった。しばらく一人になるかな、って思ったら入れ替わるように久々に見た顔が見えた。

 

「姉貴!久しぶりっす!」

 

「公安副局長!久しぶりだな!」

 

「ありゃ?お仕事モードっすか?」

 

「あ、ごめんつい。久しぶりだね、コノカちゃん」

 

「いやほんとっすよ」

 

 コノカちゃんだった。そりゃ自分の担当してる事件なら現場来るよね。陸八魔さんの回収もあるだろうから。

 

「いやぁ、また助けられたっすね」

 

「そんな。陸八魔さんを投入したから防衛室長も動けたみたいだし、コノカちゃんのおかげだよ」

 

 実際、私とホシノちゃんが突入した時点で、カヤちゃん率いる叛乱した生徒たちのおかげで司令所が潰れて指揮系統がぐちゃぐちゃになったらしく、戦力は半減していた。なのであそこまですんなり私たちが暴れられたようだ。

 

「それにしても、相変わらず着崩しすごいね」

 

「いやー、これがスタイルなんで」

 

「まぁいいけど。カンナちゃんは?」

 

「本局で受け入れ準備中っす。大騒ぎっすよ今。久々にデカい案件になったんで」

 

「やっぱりデリケートな感じになりそう?」

 

「カイザー絡みっすからね。本体にまでは手が及べないでしょうけど、やらかしたオクトワイズでしたっけ?ありゃダメでしょうねぇ」

 

 やっぱり。ともかく、あとはヴァルキューレと連邦生徒会の沙汰待ちとなるだろう。オクトワイズに対してのシャーレとしての役目はここまでだ。

 

「まぁしかし、また派手にやったんすね姉貴」

 

「カンナちゃんには黙っておいてね?」

 

「報告の義務があるんで」

 

「………えっと、何が必要?」

 

「姉貴の奢りでカフェデートっすかね」

 

「普通に誘ってよ〜」

 

「冗談っすよ。まぁ、聞かれなきゃ言わないですけど、コトがデカすぎるんでたぶん耳には入りますよ」

 

 そりゃそうだ。公安局の局長にも防衛室と同じく報告は入るだろうね。カンナちゃんからのお説教……はないだろうけど、また呆れ混じりの小言はねちねちと言われるんだろうなぁ。

 

「とはいえ、姉御もお礼を言うと思いますよ?こんなデカいヤマ片付けてくれましたし」

 

「偶々だし、ホシノちゃん……アビドスの子もいたからさ」

 

「それでもっすよ。んじゃ、自分は犯人たちの護送があるんでこれで」

 

「お疲れ様。何かあったらまた教えてね」

 

「当然っすよ。まぁ、姉貴とのホットラインは姉御にバレちゃいましたけど」

 

「まぁまぁ、そこはうまくやってこ」

 

「そっすね。じゃ、お疲れ様っす」

 

「うん。お疲れ様、コノカちゃん」

 

 相変わらずなへにょへにょの敬礼をしてコノカちゃんは去って行った。相変わらずだなぁ。でも、だからこそ信頼できるというか。見た目はゆるいけど、コノカちゃんは公安局の副局長。つまりはカンナちゃんの次席。ほんとに優秀なのだ。

 

 民間協力者だって本当は表立ってやっていい捜査方法じゃない。だからこそ、こうして現場までやってきてケリをつけてる。陸八魔さんを紹介したのは私だけど、投入を決めたのはコノカちゃんだ。彼女にはそれを躊躇いなくできるだけの覚悟とケジメをつけることができる優秀な公安局の隊員だ。

 

「エリカちゃーん!お迎えきたよー!」

 

 しばらく医務室で待っていると、ホシノちゃんが戻ってきた。お迎えのヘリが来たらしい。

 

「はーい!今行くねー!」

 

 私は松葉杖をついて、医務室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「ん。カイザーは潰す」

 

「まぁまぁシロコちゃん。犯人たちはみんな連行されたし、もう大丈夫だよ」

 

「それでいいの?」

 

「すっきりはしないけどね、やり過ぎはよくないからさ」

 

 基地を後にして、その翌日。対策委員会の委員会室で事件解決のお祝いというか、お茶会を十六夜さんが開いてくれたので、おいしいお茶を飲みながら私がリラックスしてたらシロコさんがまたしてもやる気満々だった。

 

 ホシノちゃんも今回の結果は言う通りですっきりこそしてないけど、納得はしてるようだった。

 

「ありがとう、シロコさん。怒ってくれて。でも、主犯はオクトワイズ社みたいだからさ」

 

「……エリカがそう言うならまぁ……」

 

「まぁまぁ、事件は解決しましたし、みんなでおいしいもの食べてパーっとしちゃいましょう!」

 

「ノノミ先輩の言う通りね。草鞋野先輩、これどうぞ」

 

「ありがと、黒見さん」

 

 クッキーは市販品だけど、チョコチップが入ってておいしい。お茶請けの類は十六夜さんのセンスとのことで、なんだかトリニティ生のように組み合わせが上手だった。やっぱりすごいお嬢様なんじゃないだろうか。

 

「そういえば、ハイランダーの子たちはどうなったのでしょうか?」

 

 アヤネちゃんが聞いてくる。もちろん、彼女たちもあのまま退却して終わりではなかった。

 

「それなら、さっき私に連絡があって、ハイランダーで不法な線路は撤去するみたいだよ」

 

「当然ですね★」

 

 私が聞いた事を伝えると、なんでか十六夜さんが当たり前だと言わんばかりに反応する。

 

 聞きはしないけど、私はおそらく、十六夜さんはハイランダーの関係者なのではないかと思っている。それに滲み出るお嬢様という雰囲気や仕草から、それこそトリニティにいてもおかしくないぐらいの大きな家の可能性。

 

 そうとなれば、一つ引っかかる。ハイランダー鉄道と関係の深い、カイザーにも劣らない大企業──アビドス土着企業だったセイントネフティス社。そこのお嬢様だとすれば、ハイランダーとの因縁は何かあるかもしれない。そもそも、アビドスにいることも何かありそうだ。

 

 けれど、そんなことを想像したとしても、聞く話でもない。人の事情に踏み込みすぎてもね。

 

 それはそれとして、ヒカリさんから庇ってくれたことのお礼を言われた。実際話してみてわかったけど、どうにも恥ずかしがり屋さんなところもあるのかちょっとぎこちない感じだった。……正直、可愛いと思ってしまったのはよくないと思うけど、しょうがない。実際、橘さんたちは可愛いのだ。

 

「それで、エリカはこれからどうするの?」

 

 シロコさんが話題を変えるように聞いてくる。

 

「うーん。予定通りなら明後日にはトリニティに戻るけど」

 

「ん。じゃあ私と遊ぼう」

 

「いやいやシロコ先輩!草鞋野先輩は足がダメだって!」

 

「2ケツする」

 

「危ないですよ!」

 

「大丈夫。私、ライディングは天才だから」

 

 どうやらシロコさんはどうしても私とツーリングしたかったらしい。ホシノちゃんはどう思うかな、と思ったけど欠伸してる。あ、これは話聞いてないな。

 

「シロコさん。忘れちゃったかな?私、休職中とはいえ警察官なんだけど。二人乗りを提案したのかな?今」

 

「…………」

 

 忘れてました、といった感じでシロコさんは首を窓の外へ向けた。

 

「全くもう。ホシノ先輩もなんとか言ってくださいよ!」

 

「え?なんだって?」

 

「話聞いてなかったの!?」

 

 黒見さんのツッコミが炸裂していた。ホシノちゃん、ほんとやる気ないとボケボケすぎる。昨日とまるで別人だ。……それでも、私はホシノちゃんのことをよく知れた。彼女も、誰かのために頑張れる素敵な人。そのことがわかったことが嬉しくて、ナギサちゃんがアビドスに送ってくれたことに、お礼を言いたかった。

 

「シロコさん。今回は残念だけど、足が治ったら一緒に行こうね」

 

「ん。約束。破ったら許さない」

 

「あはは。そうだね。約束」

 

 シロコさんは一応これで納得してくれたのかお茶をよく冷まして飲んでいた。私と同じ種族だけど、シロコさんは猫舌らしい。

 

 とにかく残りの休暇は回復に専念してトリニティに戻ろう。じゃないとナギサちゃんから何を言われるか……それに、蒼森団長にバレたらどうなるか想像もつかない。まぁ、なんとかなるでしょ!たぶん!

 

 

 

 

 

 

 

「アキレス腱を痛めています」

 

「エリカさん?」

 

「…………………………」

 

 やっぱりダメでした!蒼森団長を誤魔化すことはできませんでした!

 

「はぁ……まぁ、軽度のものですからしばらく安静です。戦闘はしないようにして頂ければ問題ないかと」

 

「そうですか。では、エリカさん」

 

「はい……」

 

「しばらく、私のセーフハウスで、過ごしてもらいますよ」

 

「えぇ、でも、シャーレの仕事が」

 

ミカさんに、行ってもらいますので、ね?」

 

「エリカ様。観念されたほうがよろしいかと。では、私はこれで。お大事に」

 

 このあと更に3日間ほど私はナギサちゃんのセーフハウスに軟禁されてしまったとさ。毎晩ナギサちゃんと一緒に寝てしまったけど、色々と理性的な問題で気が休まらなかった。最近、ハルナと同じような反応を体がするようになってきたので非常にマズかった。

 

 まぁ約束破ったからね……罰と思って私は過ごして、シャーレへと戻った。戻ったら戻ったでミカさんから揶揄われて大変だったけど。

 

 とはいえ、ようやく色々と落ち着いた感じがして、しばらくは通常業務に戻れそうだ。あの宇宙戦艦のことは気になるので、定期的に先生と情報を共有しておこうと思う。

 

 こうして、私のまとまった休暇──休暇だったのだろうか?ともかく休暇は終わった。一応しっかり休めたので、これからまた頑張るぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「将軍、私の聞き間違いか?」

 

「いえ、事実です。オクトワイズ社は失敗しました」

 

 カイザーグループ。その中枢ともいえるビルの最上階で、グループを収める男、プレジデントは腹心でありカイザーPMCの最高指揮官であるジェネラルからの報告を受けていた。

 

「………すぐにオクトワイズ社をグループから外し声明を出せ。秘書」

 

「は、はいっ!すぐに!」

 

 オクトワイズ社がしたことは世間的に見れば最悪そのものであり、カイザーグループとしては粛清対象そのもの。末端の暴走として処理するしかなかった。

 

「参りましたな」

 

「全くだ。……シャーレ、やはり障害となるか」

 

「いかがしますか?」

 

「シャーレの排除も計画に加えろ」

 

「先生。あの女は」

 

「拘束し、しばらくは生かせ。シャーレの評判は貴様も把握しているだろう、ジェネラル」

 

「下手に排除すれば……というところですな。了解しました」

 

 先生を殺害すれば何が起こるかはジェネラルからしても容易に想像ができた。

 

「連邦生徒会長の置き土産だ。何か仕掛けがあるとは思ったが、そもそも、仕掛けなどないとはな」

 

「ノーガード戦法とはよく言ったものです。しかし、子供相手に誠実というのは単純ですがこれ以上有効なものはないかと」

 

「フン……我々のような手合いからすればやり辛いというのは間違いない」

 

「まるで我々が悪党のようではないですか、プレジデント」

 

「大人に善と悪などないぞ、ジェネラル。残るの成果だけだ」

 

「そうですな」

 

「戦略兵器が無い以上、セカンドサンクトゥム計画のメインプランは使えない。将軍、貴様の意見を聞きたい」

 

「防衛次長。あの子供が提案したプランもありますが」

 

「主要な自治区を利用し連邦生徒会長代行を不信任で排除。そこに介入し、我々が実権を握るというものか」

 

 プレジデントはため息をつく。

 

「そもそもとして、その不信任など何を理由にするのだろうな?」

 

「プレジデントの仰る通りかと」

 

「まぁいい。ゲマトリアだったか。連中から提供された戦術兵器はあるのだろう」

 

「は。例の神の杖ですか」

 

「古代兵器よりは現実的だ。最悪の場合は見せしめにシャーレに落とせばいい。もちろん、人員は退避の上で、だがな」

 

「では」

 

「準備を始めろ。1ヶ月後にセカンドサンクトゥム計画を実行だ」

 

「了解しました」

 

「ままごとの時間は終わりだ。子供は、大人が導かなくてはな」

 

 悪の胎動が始まろうとしていた。

 

 




次回は明日、新章の1話です。

なお、主人公がかなり最悪な無自覚ムーブかましてますが、チヒロだけはよーくそれを理解しているためもはや呆れ返ってます。ホシノのことを知ったらまた盛大なため息をつきます。


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