morning glory   作:鈴夢

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コードネーム"朝顔"

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"引き金を引くだけで世界が平和になるのなら、それは平和と呼べるのだろうか"

 

 

 

 

 

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―――バーリント総合病院

メインエントランス―――

 

 

 

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エントランスには様々な病状を抱えた市民たちの姿があった。

 

東国首都"バーリント"

その最大都市に佇む総合病院にとってはいつもの光景。

いつもと変わらない風景―――

 

その中を3人の白衣姿の人物が颯爽と歩く。

 

 

 

 

 

「――ティファニーちゃん。今夜メシでもどう?美味い店見つけてさ〜。」

「おいおい。医局長に注意されたばかりだろお前。"若手研修医に色目使うな"って。」

「別にいいだろ?あの医局長もこの前誘ってたの俺は見たんだ。」

「ゲッ…あのジジイ、歳考えろよな?」

 

金髪の可憐な少女を間に挟み、男2人がグチグチと文句を垂らす。少女はその様子を半ば困り果てたような表情を浮かべつつ、2人を交互に見れば"いつもの光景"に慣れている様子だった。

 

「ごめんなさい。私、今夜は先約があって…」

 

少女は片手に持っていたバインダーとファイルを胸元で強く抱きしめる。そして毎日のように食事の誘いを口にする先輩外科医の男を見上げる形で視線を向け、申し訳なさげに顔を顰めた。

 

「昨日は心臓手血管外科の勉強会。一昨日はオペ助手、そのまた前はカルテ管理…。さすがに今日は空いてると思ったんだけど?」

 

グッと男の腕が少女の肩を引き寄せる。もう1人の男はその様子を呆れ顔で眺めていた。

 

「今夜は…その。昔からの友人と食事の約束があって。」

「じゃあその後で良いからさ?」

「おい、それ以上は止めとけって。人目もある。お前いい加減に――」

 

強引な男と、それを阻止する男。

その間に挟まれる少女。

 

 

「あの…私―――」

 

 

「"ファニー"君!」

 

 

隣の男の手を払おうとした瞬間、ふと聞き慣れた声が背後から飛びかかる。

そして同時に、両隣の男たちもその声に気づけば3人はその場に立ち止まり、背後へと視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

「"ロイド"先生。お疲れ様です。」

 

 

ニッコリと笑顔を向けた先に立つ男。

深い緑色のスリーピーススーツを纏い、少女と同じ明るい金髪に矯正された顔の持ち主…

 

 

両隣の外科医の男たちはその人物の登場に笑みを向けた。

 

 

 

「おいおい。スマート精神外科医が"ウチのエース研修医"に何の用だ〜?」

「馴れ馴れしく愛称呼びしやがって。"元教え子"相手に相変わらず距離近すぎだろ?この妻子持ちが。」

 

「すみません。たまたま見掛けたのでつい…」

 

どうやら関係性は悪くないらしい。

まあ、それもそのはずだろう。この病院で"ロイド・フォージャー"を嫌う者など…

診療部長のジェラルド・ゴーリーくらいだろうか…

 

 

 

 

「ったくよ〜。…じゃ、俺らこの後オペがあるし。」

「は、え?ちょっとお前、ティファ…」

 

 

「――フォージャーの前であまり醜態を晒すな。医局長とも仲良いんだから後々面倒だぞ?」

 

鬱陶しいくらいに誘いの言葉を吐いていた男は同僚の言葉に息を飲む。すると2人はまるで逃げるよにその場から去っていく。

 

まるで嵐が去った後…

ロイドは"ファニー"と愛称呼びした少女を前に呆れたようなため息を漏らす。

 

 

「もっと上手く断る方法を覚えるんだな。」

「そうですね。"先生"。」

「その様子だと満更じゃなさそうだが…」

「先生が来てくれるって分かってたので。」

「………全く。」

 

やれやれと両腕を組むと、いつも通りの呑気な彼女相手につい笑顔がこぼれる。

 

そして2人は同時に、鋭く冷たい"何か"を察知した。

 

 

 

 

遠くから濃い視線を感じる。

執着するような、重苦しい気配。

 

そして2人の視線は20mほど先で立ち尽くしている事務員姿のフィオナに向けられた。

 

「…"フィオナ"君。((何時からそこに?ていうか、何だあの鋭い視線は…))」

「"フィオナ"先輩?((…視線怖っ…))」

 

 

そんな2人に向けられた視線を気にすることなく、フィオナは踵を返すとその場から立ち去る。

相変わらず無機質な表情。感情が一切感じられない。

 

しかし、彼女の裏の心情は誰よりもハッキリとしていた。

 

 

 

「((先輩、好き。あぁあ…今日も最高!…ていうかあの娘。そもそも外科の研修医のポジションなんて、科は違えど"先輩"との接点は事務員の私より多いわ。…"朝顔"、私と代われ。))」

 

 

そんなフィオナの背中を見送る2人の表情は困惑していた。まあ、これもいつもの光景だ。

 

 

 

 

「そうだ。――今夜、久しぶりにうちに来ないか?アーニャも会いたがってるし。ヨルさんが晩御飯を振る舞いたいと…」

 

「え?いいんですか?私ヨルさんのご飯好きなんですよね〜。」

 

「…あ…あぁ。だったら良かった…((やっぱり舌が馬鹿なのか。それともただ単に阿保なのか…))」

 

 

 

 

あの料理を抵抗もなく食べることが出来るのはヨルの実の弟か、目の前の少女だけだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、そろそろ時間なので。退勤したら直ぐに伺いますね。先生。」

「ああ。待ってる。」

 

 

 

すれ違い様。ロイドば少女の白衣のポケットに"何か"を忍ばせた。

そっとそれを探るようにポケットに手を差し込むと、何やらただのペン。

 

しかしそのペンには仕掛けがある様で、WISE特有のマークが印字されていたのだった。

 

 

「((ハンドラーからのメッセージ……L暗号かな。))」

 

 

 

 

 

彼女の名前はティファニー・ラドナー

暗号名(コードネーム) "朝顔"

 

 

 

 

彼女もまた、スパイだった――

 

 

 

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