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――午後 13時過ぎ
アイリスの自宅にて――
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「はい。どうぞ。」
「あ、……ありがとう……」
テーブルに並べられたバゲットや野菜スープ。どれも庭で採れたものや村の住人から貰った新鮮なものらしい。東国の生活とは大きく違う、正に自給自足のような生活。贅沢からほど離れた様子だが彼女は幸せそうだった。
「いただきます。」
「はい。私もいただきます。」
スプーンを手に取りスープを口に運ぶ。柔らかく煮込まれた野菜の数々、そして程よい味付け。懐かしい味がした。
「…………」
昼食を摂りながら、ふと彼女の自宅を見回してみる。暖かいウッド調の家具が揃えられており、東国での無機質な家具が揃ったシンプルな部屋とは大きく違っていた。花瓶には綺麗な花が生けられ、大きな観葉植物も置かれていた。キッチンには瓶に詰められた美味しそうなジャム、漬けられたピクルス。片手間に手がつけられているであろうミックスナッツが入った小瓶まで。
お手製と思われる本棚には変わらず彼女の好きな本が並べられいたり、中には医学書も揃っている。
柔らかい風がレースカーテンを揺らす度に緑のいい香りがする。柔らかい陽の光に照らされる彼女を見ると"彼女が心から待ち望んでいた幸せな人生"を謳歌しているのだろうと、……なんだか嬉しい気分だった。
「……お元気でしたか?」
「見ての通りピンピンだ。」
アイリスはスプーンをテーブルに置くと両肘を立て、まじまじと対面側に座るユーリをじっと見つめる。
「…やっぱり身長伸びましたよね?座ってても分かります。」
「ああ!伸びたぞ!ロッティと並ぶほどにな!」
「遅れてきた成長期ですね?おめでとうございます。」
「……お前少しバカにしてるだろ。」
懐かしい光景だった。
意地悪そうに笑う顔も、人の揚げ足を取るような会話も。たがどれも不快では無い。
「お前は変わらないな?」
「ふふ。変わらず可愛いですか?」
「ああ。相変わらず子供っぽくて口達者で参ったよ。」
「……それ、バカにしてますよね?」
むうっと頬を膨らませる姿さえ愛おしい。バゲットの欠片を口に放っては顔を赤らめ、恥ずかしそうに視線を逸らす細かな行動まで……何もかもが愛おしかった。
「えっと……"ティフィ"……じゃなくて"アイリス"……」
「アイリスじゃなくていいですよ。みんな"アリー"って呼んでくれます。」
「……"アリー"。」
「はい。ユーリさん。」
既視感がある。そういえば昔、ティファニーと名前を呼んでいた時も今みたいに癖のある妖しい笑い方で"ティフィー"と呼んでください、なんて言われたな。
相も変わらずいい意味で人ったらしだ。
普通の男なら今の台詞と妖艶な微笑みで勘違いするだろう。
というより実際"勘違いしているストーカー"とやらがわんさかいるらしいし、正に魔性の女だ。それは歳を重ねた今だからこそより明白だ。
「よくここまでたどり着きましたよね?私の事を尋ねたらストーカーとか変質者とか言われませんでした?」
「ああそうだった!!ここまで来るのに大変だったんだぞ!相変わらずストーカー扱いされるし!」
「それはユーリさんの言動にも問題があったんじゃないですか?元々ストーカー気質有りますし。」
「ち、が、う!断じて違う!」
「((いやいや。過去に実際ストーカーしてたでしょう。))」
呆れ顔を満面に浮かべジト目を向けるアイリス。ユーリ本人はストーカー気質は無いと言うがそんなわけが無い。そもそも実姉のヨルにも酷く執着していたし、自分と付き合うとなってから、それはそれは周りも引くほどのストーカーっぷりを発揮していた。
「で?問題の男はどれくらい居るんだ?」
「数えてません。来たら追い返すの繰り返しです。」
「あのな……危機感ってのは無いのか?」
「何かあれば対処します。それに私はもともとスパイですよ?その辺の男性に捕まるなんて有り得ません。」
「((だからそういう意味じゃないんだよ!……お前のことを"そういう目"で見る男が居ることが不愉快なんだ!))」
ユーリも眉を顰め、彼女の台詞に対して胸中で反論していた。彼女は強い、男の一人や二人を捩じ伏せることなど容易だろう。だが"そうじゃない"。自分が近くにいなかったこの十年間、そういう目で彼女を見ているという輩が居ることが気に入らなかった。
「アリー。頼むから危険な事だけは……」
ユーリが更に畳み掛けるように言葉を放ったその時、玄関の方から大きなノック音が響いた。
「ん?誰だろ。」
「待て。ボクが行く。」
「ちょっと待ってください。いきなりユーリさんが出向いて皆が驚いたら……」
椅子から同時に立ち上がる二人。玄関に向かおうとするアイリスの腕を掴み制止しようとするも応えるわけが無い。足早に玄関へと向かうアイリス、そして引っ付くようにユーリも向かう。
「――はーーい。どちら様?」
扉を開けると目の前にはユーリと同じ背丈の青年が立っていた。
「"センセー。お邪魔してイイ"?」
にこやかに微笑む青年。扉の縁に腕を預け、陽気な笑顔を浮かべていた。
少し長めの黒髪に瞳の色は明るいブラウン。白シャツは大胆に第二ボタンまで開けられており、ベージュトーンのチノパンは怠そうに腰あたりで履いていた。パッと見チャラチャラとした印象だ。
しかし瞳は切れ長で"美少年"とも言えるだろう。
「((……コイツ。さっきあの場所でベタベタとアリーに引っ付いていたクソガキ……))」
先程、森をぬけた花畑にて。周りの少女たちに文句を言われながらベッタリとアイリスに引っ付いていた青年だった。
「……"追い返さないのか"?」
「何言ってるんです?彼は確かに男性ですけど私の大切な"友人"ですよ?」
"厄介な男は追い返す"と言うようなことを口にしていたアイリス。それであれば追い返すのがセオリーだろう?なんて言いたげなユーリの表情。
しかしアイリスはそんなユーリの胸を押すと"そんな事言わないでください"と呟く。
中睦まじげな二人の様子をじっと見据える青年。"友人"だと口にしたアイリスに対してどこか不機嫌そうで、僅かに拳に力が篭っていた。
「……"ピーター・ウィリアム・クックソン"。歳は二十。」
「は?」
「ピーターでいい。……先程はどうも。」
ピーターと名乗る青年はユーリに向けて手を差し出した。余裕そうな維持の悪そうな笑みだった。彼は握手をしようとしているのだろう。
対してユーリは薄い笑みを向け、彼に手を伸ばし軽く握手をしたのだった。
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「…………」
「…………」
テーブルを介し、リビングの椅子に腰かける二人。ピーターはアイリスに出されたアイスティーをクルクルとストローでかき混ぜる。何より気に食わないのは"まるでこの家に何度も訪れたことがある"かのような空気感を醸し出す目の前の青年――
「((……このタイミングで急患は仕方ないが……何でボクとこのクソガキを放置していくんだよ!てかアリーに用があったなら帰ればいいだろ!))」
アイリスは今この場に居ない。近くに住む年配の女性が脚立から転落し怪我を負ったというので併設している診療所で手当をしているのだ。
「…………」
その時、ふと二人の視線がぶつかる。
ピーターはアイスティーを全て飲み干すと両肘をテーブルにつき、ユーリに迫ったのだった。
「アンタ。アリー先生のなんなんだよ。」
生意気な口調と声色。
しかしユーリは至って平然とする。
「何って恋人だけど?」
「…………」
「ん?何か問題でもあるのかな?ピーター君?」
十も下の子を煽るのは癪だがユーリも彼には苛立っていた。何となく感じるアイリスに対しての好意。きっとこの青年は彼女の事が好きなんだろう。わかり易すぎて滑稽だった。
「……オレ、アンタのこと知ってるよ。」
「ん?」
「
「へぇ。ボクって有名人なんだ。」
「よくテレビで見てるよ。東西平和のきっかけを作った偉人だってな。」
「それはどうも。」
悔しいがユーリはそれなりの大物だ。自分がどんなに楯突いたとしても勝てないのは事実。背丈は一緒だが体格は違う。下手に手を出せば簡単に捩じ伏せられるのがオチだ。きっと頭も良い。
「……アリー先生の……"恋人"。」
ピーターはその事実を再確認するように呟く。ほんの少しだけ彼の声が弱々しくなった気がした。
「だったら何?――ああ、そういえばキミさ?彼女にベッタリくっついてたよね?あの花畑で。」
「…………」
「ベタベタ擦り寄ってさ。肩に腕回したり頭を乗せたり、まるで"恋人みたい"に見つめたりさ?」
「……別に良いじゃ」
「実に不愉快だったよ。ここが西国じゃなければキミのこと容赦なく殴っていたかもね。」
「…………」
「殴るだけじゃ……正直物足りないくらい。」
「ッ……」
ニコニコと何食わぬ笑顔で恐ろしいことを口にするこの男。ただの外務官僚では無い空気を感じる。相手を試しているような、顔色や様子を伺って観察される感じ。
まるで尋問されているような気分だった。
「なーんてね。冗談冗談。キミみたいな子供を相手に本気になる訳ないよ。」
「……マジで……なんなんですか……アンタ……」
「ん?何ボソボソ言ってるの?」
わざとらしく"聞こえないんだけど?"と煽ってみる。ピーターは手を震わせながら、睨みつけるようにユーリに強い視線を見せた。
「今まで……アリー先生を放っといて!急に現れて何なんだよ!」
「…………」
「先生が……どれだけ苦しんで………独りで寂しかったか…!」
更に口調に怒りが混ざるのが分かる。
酷く腹立たせ、青年の顔は蒼く染まっていく。
"自分が知らない彼女の苦しみを目の前の青年は間違いなく見てきた"
「……教えてよ。彼女がここでどのようにして生きてきたのか。」
「……」
「キミが見てきたものをボクに教えて?」
怒りで取り乱す自分を相手にも未だ冷静な男。そんな大人を相手にピーターは羞恥心を抱くと静かに俯く。
暫く間を置いたあと、青年はアイリスとの過去を語り始めた。
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"碧眼を持つ美しい女性"
――アリー先生は突然現れた。胡散臭い茶髪の男と一緒に。
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丘の上の古びた空き家。
管理していた村長曰く、その二人が来る前に別の男が買い取りに来たと言っていた。
全てが異様で不気味だ。
だが人当たりが良さそうな女性に村人は距離は起きつつも様子を見ることにした。
――数ヶ月経った頃、気づいた時には共に過ごしていたであろう茶髪の男の姿が見えなくなったことに気づく。村人達はみんな噂した。恋人なのか夫婦なのか、きっと別れたのだろうと。男は出ていったのだと。
そして先生は独りになった。いつも独りだった、
仕事をしている様子は無い。となれば収入も無いはず。もしかしたらあの男から手切れ金でも受けとったのだろうか?そうでないと生活は出来ないはずなのだ。
定期的に街におりては花を買い、バゲットを片手に村に戻る。街で先生を見かけたことは何度もあるがいつも近くには先生を口説く男の姿が目に付いた。
それを目にした村人。
噂は直ぐにまわる。
"男を惑わす危険な女"
"パッと見、人当たりは良いけど近寄れない"
"怪しい――"
"胡散臭い――"
"売女――"
事実では無い噂はもちろん本人の耳にも入る。元より村人達の様子を見れば勘づいて当たり前だろう。
だけどアリー先生は反論することもなければ静かに独りで過ごすのみ。村人達にどれだけ変な目で見られようが自分は自分だと、強い意志を持っているような雰囲気をしていた。
――確かあれは十二歳になったばかりの頃。
"……ねえ。何読んでるの?"
子供ながらに興味があった。
だからオレは先生に近づいた。
先生の家の中庭に侵入して会いに行ってみた。
"医学書。読んでみる?"
"これはヘイステルの外科書、こっちは東方医学書。"
"まだ君には早いかもしれないけど理解すると面白いよ?"
嫌な顔ひとつせず先生は優しく教えてくれた。両親や村の人たちから聞いた人物像とは大きく違う。
知性的で博覧強記。
真面目で優しくて、几帳面な人。
男ったらしでもなければ、遊び呆けるような人でもない。
"お姉さんはどこから来たの?"
"秘密"
"家族は?友達は?"
"秘密"
"仕事は?何をしてるの。"
"……しがないお医者さんかな。"
秘密ばかりで多くを語らない人が唯一話してくれたこと。先生は医者だと言うこと。
――それを知った時、何故か分からないけどすごく嬉しかった。誰も知らない先生の素顔も知れて、秘密を共有した気分で。"この人のことをもっと知りたい"と思った。
オレは先生に最初に懐いた村の人間だった。
誰一人近づかなかったが、オレだけは先生に近づき続けた。厳格な両親に嘘をついては先生の家に行ってたくさんの本に触れさせてもらったり、勉強も教えて貰えた。
"君は物覚えが早いね。"
――先生に褒められる度、嬉しかった。
"私に会ってること、バレたら大変じゃないの?"
――知るもんか。オレは先生を知りたかった。
ひとりの時は寂しそうに、虚ろな瞳をしているくせに人前になると作り笑顔をうかべる変な人。
不思議で魅惑的な先生に……オレは心の底から惚れていた。好きになってしまった。先生の事をもっと知りたいといつも考えていた。
だけど先生は一定の距離をいつも保つ。先生との間にいつも見えない壁があった。
┈┈┈
先生が村に来て二年経たない頃。村では伝染病が蔓延した。
原因不明の高熱。嘔吐下痢、物が食べられないほどの喉の腫れと痛み。効果のある薬は一切存在せず、村を降りた街一番の医者も手の打ちようがないとお手上げ状態。
大人は耐性があったのか酷く寝込んでも徐々に回復した。だが子供は別だった。その病に感染すると歩けなくなるほど体調が悪化し、寝ることも食べることも出来ないほどに苦しむ。まるで悪魔に取り憑かれるような、呪いのような病。人々は酷く恐れた。
……そしてオレもそのひとりになってしまった。
苦しくて何も考えられない。
無くならない寒気、酷い関節痛、水分を摂っても吐き戻し、脱水症状が延々と続く。
頼りにならない町医者が唯一施したのは栄養を体内に送り込むための点滴のみ。それしか対処法が無いと告げられ、両親は酷く落胆していたのを覚えている。
――先生はひとりぼっちでどうしているだろうか。
オレが会いに行かないと……先生はひとりぼっちだ。
早く治して……先生に会いたい。――
意識が遠のいていく。
視界は酷く歪んで音さえも徐々に消えて……
"ちょっと!うちの息子に何の用!?"
母が誰かを罵る声
"その子を診させてください。"
僅かに聞こえるアリー先生の声
どうやら先生は僅かな医療品と古びた聴診器を入れた鞄を片手に現れたそうだ。
断ってもその場から立ち去らない先生。帰れと何度言っても診させてほしいとの一点張り。そんな一切引かない先生に母親がついに手をあげた。頬に打ち付けられた手のひら。乾いた鋭い音が部屋に響いたのを今でも覚えている。父親はそんな母親の手を掴み苦しげに声を上げた。"帰ってくれ"と。"息子に近づくな"と。
得体の知れない女に何故息子を診させなければならないのかと――子を持つ親なら誰しもそう思ったに違いない。なんせ、アイリスという人間が医者であったことを知るものは誰もいなかったのだから。
"……お願いします。このままじゃ……彼は死んでしまいます。"
"アンタ……ッ……いい加減に!"
"お願いします。……お願いします。私に診させてください――"
その場に座り込み、先生は何度も頭を下げた。
オレは遠のく意識を何とか保たせ、必死に先生を呼んだ。声にならないガラガラの掠れた声で、何度も何度も何度も先生を呼んだ。
その声は両親に届いた。
ひとり息子のオレを助けるために、両親は覚悟を決めて先生に全てを委ねたのだった。
――それから三日三晩。先生はオレから片時も離れなかったそうだ。傍で何度も名前を呼んでくれた。先生はオレの手を離さなかった。そんな先生の姿は……神様のようだった。
"ピーター君。お薬は飲めそう?"
――何が何でも口に含んだ。
"ピーター君。氷枕変えてくるね。"
――汗で汚れたオレの頭を何度も撫でてくれた。
"ピーター君。よく頑張ったね。"
――頑張ったのは先生だよ、と。オレは何度も口にした。
ひやりと冷たくて柔らかい。先生の手のひらが額に触れる瞬間が気持ちよくて大好きだった。綺麗な声で歌ってくれた子守唄はこの世で一番大好きな歌になった。
みんな、伝染病に罹ったオレに近づくのを恐れていたのに……先生は絶対に離れなかった。どんな病原菌を持っているかも分からない子供を相手に、先生は優しく何度も抱きしめてくれた。
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それからというもの、先生は他の子供たちも診てまわり病の元を調べひたすらに対処した。
子供がかかると重症化する危険な伝染病――先生はそれに対抗する薬を作って村を救ってくれたんだ。
それから徐々に……少しずつ。村人の先生に対しての視線が変化していく。
初めはオレの両親が。そしてその近所の人が。その仲間内が……この村に凄腕の医者が居ると瞬く間に広がっていく。十年近く経った今じゃこの辺りで先生を知らない人は居ない。
そして皆、先生の素性を無闇矢鱈に調べることもせず。目の前にいるアイリスという人間を受け入れ始めたのだ。
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そして数年の月日が経って、村の男たちが先生の為に診療所を建てた後のこと。
"アイリス先生。良い人は居ないの?"
"よかったらうちの息子はどう?今は街の方で警官をやってるんだけどなかなかいい人がいなくてねぇ〜"
"あら!うちの息子もそうよ!もういい歳なのに!稼ぎはいい仕事をしてるんだけど……ねぇ?どうかしら?"
道の真ん中で開かれていた井戸端会議。不幸にも先生はそれに引き込まれてしまい面倒な女子会に参加することに。
オレはたまたま近くの木陰で本を読んでいた。聞くつもりはなかったが耳に飛び込んでくる会話。本を顔の前でわざとらしく開き、隙間から先生の様子を伺う。
今更先生がどこの人間で、どこから来たのか、……なんて聞く人間は居ない。
だけどみんな口を揃えて"そういうこと"には興味津々だ。
美人で賢くて謙虚で優しくて、オマケに優秀な医者。悪いところなんてひとつも見つからない。結婚相手にはうってつけの人物。
村の男たちも先生を見るとみんな鼻の下を伸ばす。どこからやって来たのか分からないがストーカーが現れたのもこの時期からだ。
みんな老若男女問わず、いい意味でも悪い意味でも彼女を狙っていた。
"…いえ、ありがたいお話ですが……"
オレは必死に聞き耳を立てた。
"――想ってる方が居るんです。"
その一言だけだった。
本当に、それだけ。
どこの人だとか
どこにいるのか
生きてるのか死んでるのか
何も分からない。
だからこそ、それ以上誰も聞くことは出来なかった。
――ああ。こんな神様みたいな女性に想われてる人は一体どんな人なんだろう。
慈しむような、この世の全ての幸せを思わせるようなあの眼差しで……先生の脳裏に思い浮かぶ相手はどんな人間なんだろう。
ひとりぼっちでもその人を想い続けているだけで幸せだと言わんばかりの微笑みに
オレは酷く嫉妬した。
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「……その相手がまさか"アンタ"だったなんてな。」
青年は冷たく言い放った。
過去を語り尽くした彼は変わらず苛立った様子で、目の前にいる男の存在を否定しているようだった。
「そうだよ。アイリスが想っていた相手は間違いなくボクだ。」
「……ムカつく言い方だな。」
「事実だからだ。ボクも彼女を彼女以上に想っていたんだ。」
「ははっ、……へぇー……」
今度は打って変わって青年の表情に苦笑が浮かぶ。
「……アンタ、先生の事"どこまで"知ってんだよ。」
「全部だよ。」
そして核心を突くかのように、ピーターはユーリにある言葉を放つ。
「……じゃあ……"体の傷は"――」
聞き捨てならないワードがユーリの鼓膜に飛び込む。
刹那 深紅の瞳は今までにないほど大きく開かれ、ユーリの手が容赦なく目の前の青年の襟元に掴みかかる。
「ぁ……がっ…!…」
床に力強く うつ伏せの状態で押さえつけられる。後ろ手に組まれた両手は強い痛みを感じ、容赦ないユーリの行動に驚きを隠せなかった。
「……何故お前がそれを知っているんだ。」
「痛ッ………ちょ、……離せ」
「質問に答えろ。」
「…だから……待」
「"何を見た"。」
憤怒に狂気めいた殺気が込められたどす黒い声色。のらりくらりと余裕そうな様子で笑っていた男はほんの一瞬で豹変した。
押さえつけられている手にさらに力が入る。このまま黙り込んでいれば殺されてもおかしくないような状況だ。
恐ろしい――今はとてもこの男が恐ろしい。
恐怖心に駆られるピーターは震える声で漸く口を開いた。
「……背中に……ムチを打たれたような……ッ……複数の傷と……」
「"と"?」
「脇腹に……大きな痕と……………胸元にも変な焼き痕…」
どの傷もユーリは知っていた。
全て自分が関わっている彼女の傷跡だ。
「別に覗き見した訳じゃない!…たまたまっ……先生の家の風呂場が壊れたとかで…ッ……オレの家の風呂を貸してた時期があって……」
「………」
「着替えを置きに脱衣場に行った時……………鉢合わせて……」
ピーターの言葉が本当ならば故意ではない。彼の今までの様子を見る限り、彼は意外と常識人で真面目な人間だとユーリは理解していた。
たまたま見てしまった彼女の姿。
当時、彼は酷く驚き、妙な気持ちに陥っただろう。
その気持ちをユーリは飲み込む。
「……そうか。……いきなり悪かったな。」
ピーターから手を離し、解放する。彼の手首には真っ赤な掴み痕が残っており異常な力が加わっていたことが分かる。
そして痛そうに体をゆっくりと起こすと再び椅子に座り直し、苦しげな表情のままピーターはユーリに言葉を放った。
「先生は何者なんだよ。……アンタとの間に……何があったんだよ……」
今にでも泣き出しそうな顔だった。
歪な関係を感じるユーリとアイリスの間。自分が立ち入れない、踏み込むことが出来ないアイリスの過去。苦しくてたまらないと青年は胸中で呟いていた。
そんな彼を目の前に、ユーリは再び落ち着いた様子を見せる。このまま何も無かったなんて言える状態では無い。
……そこまでアイリスを想う青年になら、話しても構わないだろうか?
自分の罪を、彼女を苦しめた根源である自分について。
「……あの傷は全てボクがつけたんだ。」
ユーリの言葉に無言で目を見開く。予想だにしていなかった返答だった。
「過去、ボクが彼女にムチを打った。」
「は?」
「彼女が脇腹を刺された時、ボクは何も出来なかった。」
「……」
「胸元の焼印。あれは東国の負の遺産を意味する。」
全てにおいて理解が追いつかない。
ただ分かることは"あの痛々しい傷に子の男が関わっている"ということ。
恋人に、想い人に鞭を打つなんてありえない状況だ。脇腹にナイフが刺さる状況も……どうなったらそうなる?そして不気味な焼印――理解できない。
"……なぜ……、なぜ?
自分を傷つけたこの男を想っていられるんだ?"
「……"なぜ"って思うだろう?」
「……」
「なぜ彼女はボクを待ち続け。なぜボクは彼女に逢いに来たのか。」
傷つけられてもなお、彼を待ち続けた。
傷つけたとわかっていてもなお、彼女を求めている。
「愛しているから。ただそれだけなんだ。」
「……そんな、……ただの綺麗事……」
「ああ、ただの綺麗事にかもしれないな。……キミの言う通りだよ。」
そう例えるしかないのだ。
そう例えるしか他にない。
「それしかないんだ。傷つけたからこそ……ただその感情だけを頼りに……その想いだけを頼りに……ボクは縋って来たのかもしれないな。」
コロコロと変化するユーリの声色と表情。今度は弱々しく、まるでなにかに怯える子犬のように小さくなった。
安堵と共に落胆の表情が男の頬を纏う。
「……なんでアンタはオレにそれを話したんだ。」
不思議だった。
見ず知らずの相手に、先程顔を合わせたばかりの十も年の離れた子供相手に。秘密を、罪を……何故話す?
ユーリはゆっくりとテーブルに置かれたグラスに手を伸ばすと温くなったアイスティーで喉を潤す。氷が解けきって薄くなったそれは全く味を感じない。
「……勘違いするなよ?クソガキ。」
そして男は薄い笑みを零しながらそう言い放った。再び維持の悪そうな、上から目線の声色で。
「お前なら彼女を理解できると、守れると思ったからだよ。」
「……」
「見た目は軽薄そうでボクは好かないけど……そこまでキミは馬鹿じゃなさそうだ。」
「はぁ?その言い方はないだろ?」
「何となくだけど"昔のボク"に似てるんだよ。だから話した。アリーもキミのことを容易に家にあげるくらいだし、手は出さないだろ?」
「そんなの分かんないでしょ?オレだって男だ。その辺のストーカーと同じにされたくは無いけど……オレだって先生の事……その、……お……押し倒すことくらい!」
「"殺すぞお前。"」
「………冗談だよ。」
「「…………」」
二人は思わずくだらない会話の後、視線を合わせ微かに笑みをこぼした。顔から力が抜け、まるで子供の頃みたいな顔をしている。
お互いに関係を深めた訳では無い。ただただ想っている相手について話し合っただけだ。それぞれのアイリスとの過去を。悲しいことも、嬉しいことも、罪と罰も――それをただ共有しただけだ。
たったそれだけ。だけど不思議と相手を信じれそうな気がした。具体的に言語化はできないが"理解"できそうな気がした。
「ほら、もういいだろう?アリーはまだ戻らないだろうしさっさと帰れ。」
「は!?何でだよ!オレは先生に会いに…」
「そもそも邪魔なんだよ!ボクとアリーの時間にお前は要らん!」
二人は同時に椅子から立ち上がり まるで兄弟喧嘩のように声を上げあった。
「なんだよオジサン。子供相手に必死すぎでしょ?別にオレはアンタが居なくなったらいつも通りこの家に通うし、先生に膝枕してもらって子守唄歌ってもらうし……しっかたないなぁ〜、オジサン可哀想だから今日は譲ってあげようかな。」
意地の悪いピーターの台詞。
ユーリは額に青筋を浮かばせると"クソガキ"と呟き再び声を荒あげる。
「はぁああ!?お前!アイリスに膝枕なんてさせてるのか?」
「先生オレには甘いんだもん。調子悪いって言ったら直ぐにおでこに手を乗せてくれるし?そこのソファーなんてほぼオレが使ってるよ?昼寝で。」
「マジでお前……"処…"」
「てかオジサンとアリー先生は恋人なんでしょ?それくらい別に許してよ。それ以上のことできる関係性なんだしさ?クソガキ相手に必死すぎだよ、オジサン。」
「さっきからボクの事をオジサンオジサンって……悪いがボクはまだそんな年齢じゃない!」
「あっそーですかあ〜」
両手をヒラヒラと伸ばし余裕そうに嗤うピーター。"ぐぬぬぬっ"と分かりやすい声を漏らすユーリはまるで大きな子供だった。
多分このまま言い合ってもお互い似たもの同士で強気だし折れないだろう。二人は肩を上下させ荒い息を漏らすと"これ以上は無駄に体力を食うだけだ"と胸中で呟いた。
「……まあいい。ボクの方が大人だしな?ふぅ……クソガキ相手にマジになりすぎちゃったよ。」
「何が大人だよ。」
さっきから何を言っているんだと言わんばかりに貶すように嘲笑った。なんとなくピーター自身も彼と似ているような部分を感じる。だからこそ目の前の男を嫌いにはなれなかった。
向き合うふたり。
そしてその時、ユーリはピーターに手を伸ばした。
「……ボクが居ない間、アイリスを守ってくれてありがとう。……彼女を独りにしないでくれてありがとう。」
「……ッ……」
掴まれた手。再び交わされる握手。
「ピーター。――"これからも"彼女を頼むよ。」
意味深な台詞だと感じた。
だけどピーターはあえて何も聞き返さず、小さく頷くだけだった。
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日が沈み、外が闇に包まれ始めた頃――
「…………」
「…………」
キッチンから"トントントン"と包丁で食材を切る音。そして食欲そそる肉が焼ける匂い。エプロンを身につけ、長い髪の毛を器用にお団子にまとめたアイリスの姿があった。
リビングのソファには眼鏡姿のユーリ。彼女の本棚から取り出した興味深い医学書の一冊を手に取ると静かにじっくりと読んでいた。
穏やかな時間。想いあっていた人と過ごす暖かい時間。
そんな中、ふとアイリスは僅かな異変に気づいていたのだった。
「……ピーターから聞いたのですか?」
「…何を。」
「私のここでの生活です。過去の事も含めて。」
「…………まあな。」
ユーリは眼鏡を外すと指で眉間を掴み、目の疲れを取ろうと解し始める。持っていた医学書は目の前のローテーブルへ置かれ、小さく息を吐いた。
「ほんっとうに分かりやすいですよね、ユーリさんって。」
「はぁ?」
「顔にも態度にも直ぐに出る。まるで大きな赤ん坊です。」
「〜〜ッ!!」
平然と装っていたはずだが全てお見通しだったらしい。
あれからピーターは素直に立ち去った。だがアイリスの過去の出来事を全て耳にしたユーリの胸中は正直荒れていたに等しい。動揺しているというより……次から次へと困難が待ち受けていた彼女のこの十年間に何故か自分も苦しさを感じていたのだ。
東国から逃れ、平穏な日々を手にしていたと思っていた。実際今は穏やかな毎日を過ごしているに違いないがそれまでの過程があまりにも苦難が多すぎた。
孤独に過ごしていた彼女を想像するだけで……辛くて居た堪れない気持ちが込み上げていたのだった。
「――で?話は変わりますが今夜はどこに泊まるんです?」
「宿くらい街にあるだろ?ふん!」
「街を下るには遅い時間ですよ?雨も降ってきましたし………それに宿って"また予約がいっぱい"だったらどうするんです?」
「いちいち過去の出来事を掘り返すな!チンチクリン!」
「そのチンチクリンに当時助けられたの覚えてます?それに……ほら。雨が降るとこの辺りの地面はぬかるみますし、足腰に悪いですよ?オジサン。」
「〜〜〜っ!!!」
"深刻に物事を考えて落ち込んでいた自分がバカバカしくなってきた"
だが恐らく、彼女はそれを察してわざと今のような会話を持ちかけたのだろうか。少しでも気分を変えようと、彼女なりの優しさに違いない。
「うーーん。そうですねぇ……
美味しいご飯と暖かいお風呂。お酒もお出ししますし、ご希望であれば子守唄も歌いますよ?」
カウンターキッチンからこちらをニッコリと見つめる彼女が目に入る。悔しいが"可愛い"。見慣れないエプロンなんて纏って、……悔しい。
「くっ……」
「一泊800ダルクでいかがです?」
「どこの五つ星ホテルだよ!詐欺師め!」
「あら!詐欺師なんて……この家に泊まるには妥当だと思いますけど?」
"ほら、ユーリさんの好きだった煮込みハンバーグです"なんて嬉しそうに声を跳ねさせながらリビングのテーブルに料理を並べていく。完全に彼女のペースに乗せられている自分が悔しくてたまらない。何年経っても、自分が歳を重ねても"一生彼女には敵いそうにない。"
コロコロと変わる可愛い表情。口達者で生意気な台詞を次々と吐く唇。まるでボクの全てを見透かしているような青い瞳――
「……酒はそこの棚に入ってる赤ワインを出してくれ。ツマミはそこのナッツが良い。」
「目敏いですね?そのワイン、いい値段するんですよ?」
「ボクは目利きが良いんだよ。」
「ちなみにそのワイン。ピーターが初めてのお給料で奮発して贈ってくれたワインなんですよ?」
「なら要らん。……ていうかアイツ……なんの仕事を?」
「"お医者様"ですよ?まだ見習いですけど。街の大きな病院で小児科の研修医をして……」
「あの"ちゃらんぽらん"が医者!?」
"あんなチャラ男が医者なんて有り得ない!"と言わんばかりの驚きの表情。だが彼が医者をめざしているのは事実。あんなナリでも普段は医者をしている若き天才なのだ。
「ピーターは私の一番弟子なんです!ちゃらんぽらんなんて失礼な!」
「嘘だ!ていうか気に食わない!アイツが医者なんてボクは認めないぞ!」
「ユーリさんが認めなくても私は認めてますから!」
「〜〜っ!!!」
アイリスはわざとらしく頬を膨らませ椅子に腰かける。ユーリもその様子に対抗するように負けじと対面側に座ると"昔と変わらない様子"で様々な論争や会話を繰り広げた。
「ユーリさんはやっぱりオジサンです。前より口うるさいし、十も下の子供に必死になりすぎなんです!」
「危機感がないキミを躾ているようなものだろう?歳を重ねても大人になってないのはキミの方だ!」
┈
「明日は街の朝市に行きたいんです。着いてきてくれますか?」
「当たり前だ。変な男が近づいたら即処刑してやる。」
「頼みますから面倒な騒ぎとか起こさないでくださいね?」
「する訳ないだろ?ボクは紳士だ。」
「紳士は処刑なんて言葉使いません。」
「〜〜っ!」
┈
「おい。お前の方がニンジンの数が少ないぞ。」
「……気のせいです。」
「ははーん。さては未だ克服できてないんだな?たかがニンジンだぞ?」
「人には向き不向きがあるように好き嫌いも存在するんです。」
「なんだその意味不明な言い訳は。だから万年チビなんだよ。」
「……うるさいです 。」
「強くて賢くてなんでも出来る大先生が……まさかたかがニンジンが食べられないなんて。まだまだオコサマだなー」
「〜〜っ!!」
┈
くだらなくて意味もない。
ふたりの表情はコロコロと百面相のように変化し会話は止まることは無かった。
"幸福すぎるなんでもない時間"
ふたりにとって宝物のような時間だった。
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――夜は深けていく
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窓の外から部屋に侵入するのは優しい雨の香り。
耳をすませば心地よい雨音。昼間に轟いていた子供たちの声が嘘のように静まりかえっていた。
リビングの灯りは最小限に抑えられており、淡いオレンジ色の灯りが室内を覆っていた。
アイリスは寝巻きのワンピース姿でソファに腰掛けら薄明かりを頼りに大好きな夢物語を読んでいたのだった。
いつもなら一人でこの時間を黄昏ていた。
しかし今は彼がこの家にいる。浴室のある方から物音が聞こえる度に改めて"大好きなユーリさんが居る"事を実感していた。
その物音さえも心地よかった。雨音の静かで穏やかな音よりも、彼の放つ生活音が今は最上級に心地好い――
「――お風呂。ありがとう。」
「どういたしまして。疲れは取れました?」
「ああ。お陰様でな?」
タオルで髪の毛を拭きながら現れたのは風呂上がりのユーリ。Tシャツに短パン姿。昔と変わらない服装だが大きく違う部分がある。
以前と違う体格。服の上からでもわかる筋肉質な肉体はなんとなく魅惑的だ。髪の毛も昔より短く、先程までオールバックにまとめられていたせいかラフに下ろしている姿を見ると若干幼さを感じる。
「…髪の毛。下ろすと印象変わりますね?」
「子供っぽいとか言うんだろ?」
「違います。大人の男性って感じです。」
「…………」
「"素敵"だと、そう言ってるんですよ。」
食事の時とは遥かに違う落ち着いた会話。心做しかアイリスの口調やトーンも控えめな甘え声に聞こえる。薄明かりのせいか、彼女の姿もぼんやりとしており より妖艶さを感じてしまう不思議な現象だった。
「はい。お約束通り晩酌のお時間です。」
「……スパークリングワイン?」
「ピーターから貰ったお酒は彼と飲むと決めてるんです。彼が研修医を卒業したらと。なのであの赤ワインは開けられませんが私のお気に入りのワインを。」
ソファ前のローテーブルに置かれたふたつのグラスと瓶一本。その傍にはミックスナッツの小瓶も置かれていた。
ユーリはタオルを首にかけアイリスの隣に腰を下ろす。ふわりと漂う彼の匂いに不思議と胸が高鳴った。
そしてユーリも同じく彼女の懐かしい甘い匂いに心拍数を上げた。ワンピースから覗く白くて弾力のある生脚が見えるとなんとなく視線を泳がせる。
……そして微かに見えた脚の傷。十年前の傷跡をようやく目にした時、グサリと胸にナイフが突き刺されるような気分だった。
「……まさかお前が酒を飲むようになるなんてな。」
「もう子供じゃないので。」
「ん?……ていうかお前!ボクが風呂に入っていた時間に一本飲んだのか?」
何となく感じた違和感。
ユーリはキッチンの方へと視線を向けると栓の抜かれたワイン瓶を見つける。食事中に酒は飲んでいない。だとすればあの瓶の中身は一体どこへと……。
「このワインと同じ瓶だな?……アルコール度数結構高いぞ?飲みやすいからって調子に…」
「たかがワイン一本二本で酔うわけないじゃないですか?誰かさんと同じにしないでください。」
「何言ってるんだ。……ほら、水も飲め。明日朝市に行くんだろ?しかもその後は午後から診療……」
「うるさい、……"れす"。……起きれますから………」
「説得力も何も無いな。」
よく見ると頬が赤い。
瞳はとろんと溶け、僅かに潤んでいた。
「…………すきです。」
「ん?」
「ユーリさんのこと…………すき。」
ぐったりと頭を垂れ、長い金髪はサラサラと床に向かって落ちていた。顔を隠すように髪の毛をカーテンのようにして纏う様子は"彼女らしくない"姿だった。
「キミがボクの事を好きなんて当たり前に知ってるよ。――ほら、今日はもう寝るぞ。寝室に――」
ユーリは彼女の肩を抱き、横抱きにしようと力を込めた。しかしそれを制止するアイリス。彼の胸元を強く押し返すとゆっくりと頭を持ち上げ彼を見つめた。
「……ユーリさんは未だに私のこと子供扱いしてます。」
「…………」
「"こういう時"は大人みたいに一歩下がって……まるで子供をあやす様に私に触れて……話しかけて……」
「…………」
「私……もう子供じゃ、……ない……」
ユーリの胸元に添えられた白い手に力が加わった。何かを訴えるように、か弱い柔い手のひらは小さく震える。
年齢的に見ても彼女はもう子供では無い。
元々精神的にも大人びていた彼女。だがユーリにとっていつまで経っても手を妬かせる可愛い少女のようだった。
滅多に弱みを見せず、強い言葉で自身を守る。彼女の悪い癖だ。何年も変わらない悪い癖。
だがそうするしか無かったのだ。それはユーリがいちばん理解していた。だからこそ、せめて、自分の前だけでは弱くあって欲しかった。
縋って、弱音を吐いて、心の底から甘え尽くせばいい。
「………そんな目で私を見ないで…」
「…………」
慈しむような柔い眼差し。
優しさに膜を張ったような、そんな瞳を。
「……ユー」
「本当に……キミは"綺麗"だ。」
ユーリの柔らかい声が鼓膜を撫でる。
それはまるで麻酔薬のように、まともに頭が働かないような媚薬のように。
彼女の首筋に手を添えてみた。
対しヒヤッとした感覚に肩を揺らすアイリス。
首筋に触れられるなんていつぶりだろうか。官能的な感覚がアイリスに襲いかかると更に火照ったような瞳を向ける。
「……ユーリさんは……まだ飲んでませんよね?」
「飲んでない。」
「ふふ……どうせ直ぐに酒に飲まれて、私のこと押し倒――」
刹那、ソファに倒れるアイリスの体。
顔前にさらに近づく彼の顔。その表情は意地の悪いものだった。
「ハハッ………"押し倒されたかった?"」
「……」
「期待した?」
「……」
「言ってよ。アイリス。」
「…………はい。期待しました。」
いつにも増して素直な彼女。
甘えるような猫撫で声にユーリの心臓が更に脈打つ。
二人はじっと見つめあった。
そしてユーリの手は彼女の体に触れていく。そして背中に手を回した時、歪な凸凹とした水膨れのような感触が指に伝わると僅かに眉を顰める。
"背中に残った鞭の痕"
それは自らが彼女に残したものだ。
「ユーリさんに付けられた背中の鞭の痕。……どうです?」
「……すまなかった………本当に……ボクの」
「"私、おかしくなったのかもしれません"。」
ユーリの謝罪を遮るアイリスの言葉。
「…ん?」
「この背中を鏡越しで見る度に……ふと背中に手を回して膨れた傷跡の感触を指先で感じた時――」
アイリスはユーリの口元に手を伸ばす。
親指で唇を撫でる仕草を見せると彼女は妖しく笑みをこぼした。火照った頬の色は徐々に元の色に戻っていく。
「"乱暴にユーリさんに抱かれる夢を見るんです"。」
この十年間、勿論異性と関係を持っていない。しかし人間には避けられない三大欲求というものがある。
アイリスは時たま想像した。夢を見ることもあった。彼に鞭を打たれ、涙を流し、乱暴に抱かれる夢を。夢や妄想は都合がいい。それが全て快感となる。それで何度自らを慰めたことか。
だが今夜は彼が目の前にいる。
以前より体格も大きく変わった……"大人の男"が目の前に。
「…何言っ」
「言ったでしょう?……もうあの頃の少女じゃないんです。」
アイリスの手がユーリの寝巻きの隙間から差し込まれると素肌をそっと撫でる。筋肉質な胸板に指を這わせ、男を誘う
「……ユーリさん。」
「…………」
「愛してください。」
そしてもう片方の手はユーリの肩へと回され、彼女は耳元で囁いた。
「――"酷くていい……壊してもいいから"……
……」
この人になら壊されたっていい。
空白の時間を。密かに彼を求めていた十年間を埋めて欲しい。
彼に何をされようが
きっと全てが快感に変換される。
"それほどに彼を求めたい"
「――キミを壊せるのは……ボクだけだ。」
次の瞬間、男の手が容赦なく女の首に掴みかかった。
狂おしいほどにお互いを求めていた長い時。それを我武者羅に埋めてやりたいと、壊して、無茶苦茶にしてやりたいと。
――貪り尽くして。
骨の髄まで、奥深くまで――
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"愛してる"
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「――"もしもし"」
「うん。無事会えたよ。……"彼女は生きてた"。」
「ムカつくがお前の手がかりが頼りになった。ありがとう。」
「一週間後の午前の便で帰る。長い休暇なんて久しぶりだし、
「何?チワワ娘が土産を寄越せだと?いつものピーナッツを山盛り買って帰ってやるって言っておいてくれ。あとは……数学と物理の参考書もたっぷりとな?"いんぺりあるすっからん"だかなんだか知らないが気を抜かせないためにも引き続き勉学は必要だ。――父親のお前ももっとしっかりしろよ?」
「そりゃあ……血の繋がりは無くても姉さんの娘でボクの姪でもあるんだからな!それくらいボクだって気にしてる!バカにしやがって……"ロッティ"!」
「……え?"ボクはどうするのか"って?」
「………………」
古びた電話ボックスの中でユーリは俯き、真剣な面持ちで応える。
「……
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"朝目覚めたら 大好きな人が隣にいる"。
気持ちよさそうに寝息を立てる彼の頬に手を伸ばし、私は嬉しくてたまらなくて、彼の胸元に再び顔を埋めるの。聞こえるのは彼の心音。生きている音、彼の温度。トクトクと心音が鼓膜を叩く度に、まるでそれは子守唄のように"エフブンノイチゆらぎ"のように、穏やかでしあわせで。
目を覚まして、お互いボサボサに乱れた寝癖を指さして笑いあって。明るい声が家に響いた。
一緒に朝ごはんを食べて朝日を浴びる。顔を洗って、歯を磨いて。彼は昔と同じように器用に長い髪を結ってくれる。編み込まれた三つ編みに彼は赤いリボンを巻き付け、似合うと笑ってくれた。
手を繋いで丘をおりる。他愛のない会話をしながら街へと向かう。道行く村人達は快く彼を受けいれ、優しく声をかけてくれた。村の人と朗らかに丁寧に会話をする彼の横顔を見上げると……何故だか不思議と胸がくすぐったい。
街へおりて いつもの花屋へ向かう。
店主は先日の無礼を詫びようとたくさんの花を持たせてくれた。私の瞳と同じ色の青い花の数々。そして店主は私の名前に因んで"希望を与える花のアイリス"と"恋の予感のポピー"を彼に手渡した。受け取った彼はその香りを吸い込むと優しく私に笑いかける。まるで美しい夢を見るような、うっとりとした赤眼にまっすぐと自分が映っているのが分かると私の碧眼も応えるようにじっと見つめた。
腰を引き寄せ片時も離れまいと、彼の瞳は常に私に向けられていた。私の好きそうなカフェを指さし、ケーキを半分こしよう?とお店へ誘う。私の好物を彼は全部覚えていた。"やっぱりストーカー気質がありますね?"なんて冗談交じりで言うと、彼は得意げに鼻で笑い"キミのことならなんでも分かるよ。体のホクロの数も、長い睫毛の本数までもね?"と言い放つ。周りのお客さんや店員さんは耳を疑うかのように目を見開く。以前の私なら"恥ずかしいからやめて"と即座に言い返しただろう。……だけど私は彼の頬に手を伸ばして"大好きです"なんて応えてしまった。
……やはり私はおかしくなったのかもしれない。昨晩のことも含めて。
愛し合うふたりの幸せなその光景に誰もが嫉妬する。誰もその間に立ち入ることが出来ない。
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"彼女の白衣姿は目を惹かれるものがある"。
真剣に患者の話を聞き、いつもとは違う芯のある声。難しい医療用語が記されたカルテには事細かに患者の様子が記録されていた。彼女はやはり"凄い人"だと、ボクは改めて実感した。
あのクリスマスの日、病を患った子供たちを診ていた時の事をふと脳裏に映し出した。ボクに日々向けられている瞳の色とは大きく違う。優しさの中にある理性的な、真剣な眼差し。彼女は本当に"人を助けたい、人のために尽くしたい"とその様子を見るだけて理解出来る。
診察を終え患者が部屋から出ていったあと、毎回彼女は緊張の糸を切らしたかのように息をつく。初めて目にした光景だった。ボクは傍らで器具を洗浄する手伝いをしながら、そんな光景を続けて目にした。普段から余裕そうに患者の診察をしているが実際は常に緊張しているのだろう。…本当に、驚くほど神経質で真面目な人だ。
午後の診療を終えると彼女は休むことなく夕食を作る。"ボクが作るよ"と何度声をかけても引く様子は無い。だったら"無理やりにでも隣に居座ってやる!……なんて、ボクは子供のように声を上げて野菜を切り刻んでいく。――ああ、幸せだ。彼女がいる。隣で嬉しそうに笑っている。ボクの背丈が大きくなったからか以前よりも小さく見えて可愛い。結ってあげた赤いリボンがとても似合ってる。……可愛い、本当に。
"そしてまた求め合う"。
何度も何度も――長い空白期間を埋めるように、何度も何度も欲をぶつけあった。
背中の痕を見る度にボクは変に興奮した。指でその傷をなぞると彼女は甘美に声を漏らす。…彼女は言っていた。"この傷を見る度ボクを思い出す"と。
ボクも狂っているらしい。ボクが傷つけた最低最悪の傷跡なのに "この傷がある限り、彼女は永遠にボクという存在から逃れられない"という事実に激しく興奮した。ボクという呪い、永遠に切れない鎖――
"……キミは永遠にボクの愛すべき人だ"
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――再会から一週間後。
首都リリベリア アリアビーチにて――
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まだ朝日も昇らない早朝。
星々はすっかりと消え、東の空は白くもえている。
十年前の別れの日の夜明け。
あの日を思い出させるような光景だった。
眠たげな、甘さを含んだ春の海。
規則的に響く波の音は心地よく、まだ夢の中に居るような、そんな幻想的な感覚に堕ちる。
「……足、冷えないか?」
「大丈夫です。ユーリさんこそ末端冷え性なんですからご無理せず。」
「ムードを壊すようなことを言うな、チンチクリン。」
「あなたもですよ、オジサン。」
相変わらずこんな時にも呑気な会話を交わすふたつの影。
靴を脱ぎ捨て、白い砂浜に腰をおろす。共にTシャツに麻素材のパンツ姿というラフでリラックスしている二人は互いに身を寄せ合い日が昇るのを待っていた。
「……あの時は……太陽が昇るのを酷く恐れていたよ。」
「……」
「"太陽が昇った瞬間キミとボクの時間は全て絶たれる"……薄暗闇の空にそう告げられていた気がしてね。」
夜明け前に東国の海岸を離れなければならなかったあの時。永遠に朝など来なくていいと、太陽なんて消えてしまえと心の底から祈っていたユーリ。
「だけど、今はこんなにも待ち遠しいなんてね?」
「え?」
「キミとまた新しい朝を迎えられる。明るい陽の光に照らされるキミを見れるなんて……本当に幸せだ。」
ユーリはアイリスの肩に頭を乗せ優しく微笑んだ。甘い潮の香りを吸い込むように深呼吸すると体の隅々まで幸福が行き渡るようだ。
「言葉選びがロマンチストですね?ユーリさんは。」
「思ったことをそのまま口にしているだけだよ。」
「ふふ……"外交官をやめて"小説家になったらどうです?」
「…………」
「それに、もう"東国には秘密警察なんて必要ない"でしょう?ロマンチストなユーリさんなら作家さんになれますよ。」
「……それは……どうだろうな。」
"外交官をやめて"
"東国に秘密警察なんて必要ない"
そのワードが彼女の本音に聞こえた気がして思わず瞼を閉じる。冗談だと本人は言いたげだが、誰にも言えない口にできない本当の気持ちを言ってしまった――なんて捉えてしまうほどに。
「ねえ……ユーリさん。」
「ん?何?」
そして彼女は急に改まるように口を開く。
「……今日、お昼から雨なんですって。」
「うん。そうだったね?」
「悪天候になるみたいですし……」
「"追い風成分は15ノット以下、雨が降るのも午後から"。天気予報を細かく調べたがそこまで酷くはならなそうだ。」
「…………そう……ですね…」
いつにも増して歯切れの悪い会話だと感じるユーリ。その意味をなんとなく察していた。
"飛行機が飛ばなくなる基準"。
その条件について賢い二人は勿論理解していた。
らしくない彼女の様子だった。
まるで"今日は天候が悪く、飛行機も飛ばないだろうからもう少し滞在しないか"?と言われてるような気分だった。
「「…………」」
再び流れる沈黙。
波の音と足から伝わる冷たい砂浜の感触が強く感じられた。
彼女の肩に頭を乗せているせいで表情は伺えない。だが容易に想像がつく。
「――"アイリス"。」
ユーリの改まった声。
それに機敏に反応するアイリスの肩の揺れ。
「"キミはここに残るんだ"。」
ユーリは真剣な声でハッキリと言い放つ。
それはまるで百の言葉を煮詰めたような、重さがこもった台詞だった。
「……」
暫く返答は無い。
呼吸音さえ聞こえない。
ただただふたりを包み込むのは波の音と空気だけ――
「――"残れ"なんて。私はそもそも東国に戻る気は有りませんよ。」
暫くしてアイリスはそう応えた。
特にいつもと変わりない声色と口調で。ハッキリと。
「……キミならそう応えると思ったよ。」
「
「…………」
「私の今の居場所は
「…………」
「"ティファニー・ラドナー"はもう存在しません。彼女は死にました。」
アイリスはそっとユーリの手に自身の手を重ねる。
「ユーリさんも分かっているでしょう。例え過去の出来事が風化されているとしても……私はそれなりの罰を与えられる。」
また陰となって生き続けるのは望まない。
「私と関わりのあった先生やヨルさん。アーニャちゃんもせっかく"スカラー"になったんです。台無しにしたくありません。」
愛してくれた全ての人を……もう裏切りたくない。壊したくない。
「だから……何が何でも……"ユーリさんが西国に来てください"。」
「……」
「必ず……っ……約束してください。」
ユーリはゆっくりと体を戻すと彼女に視線を向けた。
懇願するように、美しく光る碧眼を向ける彼女の様子はいつにも増して真剣で、必死で。今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「私は何十年でも待ち続けます。この左胸の鼓動が止まるまで貴方を待つと。……愛し続けると誓います。」
アイリスは自身の左胸に手を当て、振り絞るように声をあげた。
「もう怖くありません。孤独でもありません。ひとりじゃない。」
「…………」
「私は"アイリス・ポピー・ルウファウス"。私はこの町の医者です。」
涙を流し、満面の笑みを零す。
矛盾する彼女の表情につられるようにユーリも涙を流した。
ふたりは額と額をコツンと合わせ瞼を閉じる。ぽたぽたと滴り落ちる涙が頬を伝い、握り合う手の甲を濡らす。
「……約束するよ。」
「はい。約束です。」
「必ずキミの元へ。」
「はい。必ずです。」
二人は瞼を同時に持ち上げ見つめ合う。互いの赤と青を慈しむように、何度も何度も視界に映す。
刹那、朝日が顔を出し、二人を暖かく祝福するように照らす。
光を纏う彼女の姿。それはまるで天界と地上をつなぐためにおりてきた天使のように、無垢な輝きを放っていた――
花のように、光を浴びて咲き誇る。
私たちの未来はこの光のように明るいものだろう。
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"おかえりなさい"
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"morning glory"
―完―
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※※※※※※
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!
今話でスパイファミリーの夢創作小説"morning glory"は完結となります。ここまで書けたのは読者の方の応援があったからこそです!
この夢を書こうと思ったきっかけは"なんとなく、パッと思い浮かんだから"です。発端は本当にそれです。笑
そして原作のファンでもあり、ユーリがとても大好きで大好きで……そして黄昏、夜帷という人物に"もし"もう1人追加するならなんて妄想したら"朝"というワードが出てきて、パッと思いつきで朝顔さんを創りました。
執筆して丁度1年経ってないくらいですかね?まさかこんなに早く仕上がるとは思いもせず、書き終わった事にとにかく安心です。
しっかし本当に楽しかった!ユーリ夢!スパファ夢!
そして読者様のメッセージやコメントが暖かすぎる!
いつもニヤニヤしながら読んでました←
そしてそしてこの後の2人……
何年か経って、世界に平和が訪れて、秘密警察なんて必要なくなって(存在はするけど組織的にそこまで動く必要が無い状況に)、更に東西の関係がユーリやらWISEやらダミアニャによって良くなって…………
もしかしたら子供がいたり?いなかったり?
ユーリが搭乗しているであろう飛行機の到着を空港で待っていて……黒髪碧眼の2〜3歳くらいの男の子がアイリスに抱かれてユーリを迎える!みたいな妄想してます。
そして持つひとりの創作キャラのピーターは何だかんだアイリスを支えてきたとか。
レノルド兄さんは……本当にみなさんの想像で美化してもいいしグッサグサに刺しまくってもいいし。彼については本当に"よくわからない"状況で終わらせたかったんです。歪んでいて、でも妹をずっと想っていて、だけど一度の負の経験で彼の全てが壊れて、結局"戦争"というものに全てを奪われた不幸な少年。そんな彼が最後の最後に、本当にほんっとうに、ちょっとだけ、気まぐれなのか分からないけど妹を助けた。なんて。
実は銃で撃つつもりは本当に無かったとして、ユーリと共謀して逃げることも出来たかもしれないけど その可能性を自分自身でぶち壊したお兄さんに乾杯(最低)。
とにもかくにも、みなさんそれぞれ想像してください。
そして原作登場チームに関しては
ロイドとヨルはなんやかんやお互いバレずにめっちゃ仲良し、アーニャも無事スカラーになっていてダミアンと仲良し(ダミアンは父親の罪を償うために そりゃもう頑張りまくってる、なんて妄想。)
しばらく経って西国にロイドたちが現れたり、簡易的な結婚式を挙げたり、それを茶化す姪のアーニャが居たりとか、めちゃくちゃユーリを睨みつけて"いつか姉弟揃って消してやるわ、ユーリ・ブライア"と胸中で呟くフィオナちゃん。――うん、夢って素晴らしい。。
長くなりましたが、書き足りませんが……ここまでにさせていただきます!
ぜひコメントやメッセージ頂けると嬉しいです!
サイコパス、呪術、チェンソー!
こちらも引き続き頑張ります!
すずめ。
PS
勝手な想像、ピーターのCVは内田雄馬さん。
(トーンは伏黒恵とかじゃなくてアッシュリンクス……かしら。)