morning glory   作:鈴夢

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the previous

 

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「――銀色の明かりの下 お眠りなさい」

 

鼓膜に響く優しい声

 

 

「僕のかわいいお姫様 お眠りなさい――」

 

優しく頬を撫でる暖かい手の感触

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

幸せな夢物語の世界へおちようとしていたその時。耳に飛び込んできたのは聞き慣れてしまった"戦争の音"だった。うとうとと閉じられていた瞼は反動で大きく見開かれ、少女は慌てて体を起こす。

 

 

「こわいっ……まだ音がする……」

 

微かに聞こえる爆発音。揺れる家屋。幸いにもここから離れた場所に何かが着弾したらしい。その音はしばらく止むことなく少女の不安を掻き立てる。

 

 

 

「ひっ…!…」

「音が大きかったね?でも大丈夫、早くおやすみ。」

 

家に残された兄妹。

ランプの薄明かりだけを頼りにふたりはお互いの顔を見あった。

 

この家には他に母親と長男が住んでいた。しかし警報音を耳にしたふたりは数十分前から家畜の様子を見るため、今はこの家をあけていたのだ。

 

幼い兄妹ふたりっきり。

ベッドの上でふたりは抱き合い、兄は安心させようと必死に妹の背中を擦る。

 

「……っ……」

「ほら。明日近くのお花畑に行くんだろう?兄ちゃんとお母さんも一緒に行くって約束したし、早く寝ないとね?」

「う……うん。」

 

少年の声はとても穏やかだった。口調と声色だけでこの少年がどれだけ心優しい人物なのかが手に取るように分かる。

 

柔らかい青い(まなこ)

ふわふわと揺れる癖のある金色の髪の毛

 

美しい兄妹だった。

容姿も中身も何もかも、評判のいい兄妹だった。

 

 

 

「大丈夫……大丈夫。」

 

 

妹の頬を撫で、コツンと額をぶつけてみる。

 

 

「おにいちゃん……ぎゅーってして。」

「うん。ぎゅーってしてあげるね。」

「おうちこわれない?"ばくだん"おちない?」

「心配性だなあ〜大丈夫大丈夫!こんな人気のない山の上に爆弾は落ちてこないよ。」

「ほんとう?」

「うん。本当だよ。だから明日もお外で遊ぼうね?」

 

自分の胸に収まる妹の体。

小さくてか弱い女の子。

 

「…何があってもお兄ちゃんが守ってあげる。」

「……」

「絶対に。約束するよ。」

 

 

 

兄の瞳が鋭く光った。

 

 

 

 

 

 

 

「僕の可愛い……

 

 

 

 

 

 

 

――"アイリス"。」

 

 

 

 

 

 

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――morning glory 番外編

"the previous"――

 

 

 

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春の息吹が西国(ウェスタリス)を覆う。

美しい花々、緑、揺れ動く木々。

 

市街から離れた丘の上。

穏やかな地に佇む診療所――

 

 

 

診察室の壁掛け時計は正午を示す。

今日も今日とて大繁盛――というのは医療従事者あまり良い例えでは無い。しあし頼りにしてくれている人々の数は相変わらず多く、寧ろ年々増え続けていることもあり看護師を雇うほどまでに診療所は大きくなった。

 

 

 

 

 

「――"せい?"」

「…………」

 

診察室でカルテと睨み合う金髪の"先生"。

その傍らでは若い看護婦が何度も呼びかける。

 

 

「……せい……先生ったら!」

「!?」

 

呼び掛けに反応しない先生に呆れ顔の看護婦。そこで痺れを切らした看護婦は先生の肩を強くゆさぶった。

 

「〜〜っ!ごめんなさい。私ったら…」

「大丈夫です?ぼーっとして」

「大丈夫大丈夫。……えっと、次の患者さん…」

「先程の方で最後ですよ?」

「………」

 

"しっかりしてくださいな"とため息混じりで告げられると先生は薄笑いを浮かべ頬を指で掻く仕草を見せた。

 

「先生、最近眠れてます?」

 

いつも元気で天真爛漫な先生。

しかしここ最近、心ここに在らずというか、とにかく顔色と良くないことが多い。

 

「まあ……それとなりに。」

「顔色良くないですよ?もしかして"夜泣きが酷かったり?"」

「いえ、そんなことは。最近は寧ろ夫が見てくれてまますし。」

「だとしたら"式"の準備で寝不足?」

「かもしれませんね?」

 

"ふふふっ"とお互いに笑みを向け合うふたり。

何はともあれ眠れない状況になるのは仕方ないのかもしれない。

 

休む間もない仕事。

子供の睡眠退行時期。

今週末行われる大切な"式"。

 

 

……それと……"誰にも言えない悪夢と幻覚"。

 

 

 

 

「そういえば先生?そろそろ行かないといけないのでは?」

 

カルテを片手に笑顔を向け、壁掛け時計をツンツンと指差す看護婦。それにつられるかのように先生も視線を向けると我に返ったかのように大きく目を見開き椅子から立ち上がった。

 

 

「うわっ!もうこんな時間!行かないと!」

 

"彼女"にしては珍しい慌てようだった。いつも完璧で何でもそつなくスケジュール通りこなす先生なのに……と。慌てて白衣を脱ぎ傍らの鞄に手を伸ばす。

 

「"旦那様"に伝言は大丈夫です?」

「はい、大丈夫です!"息子"はそのままピックアップして向かう事も今朝伝えてますし!」

「分かりました。気をつけて向かってくださいね?片付けは私にお任せあれ〜。」

 

大慌てで身支度する先生の姿は滑稽だった。

しかしこの先の予定を把握していた看護婦の表情はどこか嬉しそうだ。

 

 

「ありがとうございます。後はよろしくお願いします。」

 

彼女は足早に診療所の裏口から駆け出した。

 

無造作にラックに掛けられた白衣はゆらゆらと揺れ、胸元の名札が窓から差し込む陽の光に照らされると美しく反射する。

 

 

 

 

"アイリス・ポピー・ブライア"

 

ファーストネームの意

――希望に満ち溢れた

ミドルネームの意

――陽気で優しい

 

 

 

 

ラストネームは

"最愛の人物の姓"だ。

 

 

 

 

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同日、午後2時――

下校を知らせる鐘の音が響く。

 

中心街から少し離れた場所に佇む小中学校。

生徒数も数年前より増加。学び舎の数も増え、子供の笑顔も増え続け正に平和の象徴でもあった。

 

 

 

 

「"先生"!!」

「先生さようなら!」

「また週末ね!先生!」

「楽しみにしてますからね!」

 

 

ここにも"先生"がひとり。

たくさんの子供たちに慕われる姿を見る限り人気者らしい。とくに女子生徒からは熱い視線が注がれていた。

 

 

「うん!みんな気をつけてね。」

 

黒髪に燃えるような赤い瞳。

少しカジュアルなシャツとスーツパンツを纏う"先生"。こ難しそうな分厚い書籍を片手に全員に手を振るう姿は誰しもが見惚れるだろう。

 

学校では博学で才に溢れた凛とした素晴らしい教師。

しかし巷では"奥さんにしりに敷かれまくっている旦那さん"と言われていた。

 

そして"元東国(オスタニア)"の外交官。

最初の頃は肩身狭い思いをしていたらしいが直ぐに払拭され今に至る。

 

 

「さてと。テストの採点を終わらせて早く家に……」

 

ある程度生徒達を見送った後、正門から踵を返したその時。

 

 

「"ユーリセンセー"ちわーっす。」

 

呑気な男の声が"ユーリ先生"と呼び止めた。

 

 

「……何の用だ"チャラ男"。」

 

チャラ男、改め"ピーター・ウィリアム・クックソン"

 

「口悪いなあ〜。そんなんじゃあ嫌われますよ?"ユーリセンセー"。」

 

ユーリセンセー、改め"ユーリ・ブライア"

 

 

お互い黒髪、違うのは瞳の色くらいだろうか?

ユーリは赤い瞳。ピーターは柔いブラウンの瞳。

どことなく雰囲気は似ているが圧倒的に"派手でチャラい"のはピーター。

 

しかし彼はれっきとした医者でもあり、過去にアイリスに救われ医者の道を選んだのだった。

 

そして未だに未婚。アイリスとユーリの仲違いが早く起こらないかと今か今かと待ちわびている"クソ野郎"でもある。

 

 

「お医者様が何の用だ?暇なのかお前。」

「きゅ、う、し、ん、び!!休みだよ!」

「休みにわざわざボクに会いに来てくれたんだ?本当に暇なんだね?彼女もいないし、性格もクソだから付き合いのある友人も……」

「アンタに言われてたまるか!彼女やら友人はともかく性格クソなのはアンタも同じだろーが!」

「既婚者、子持ち、元外交官、高所得……ボクのことがだーいすきな世界一カワイイ奥さ」

「あーあー!!うるさい!もういいよ!」

 

ユーリには悔しいが"色々勝てない"事実。

とくに"カワイイ奥さん"に関しては本当に本当に勝てない。

 

 

 

「にしてもお前。相変わらず医者のくせにチャラチャラチャラチャラと…そのピアスは医者としてどうなんだ?」

「オレ小児科医だし こーいうナリの方が子供のウケはいいんだよねー?しかも流行ってるし。知らないの?オジサン。」

「…………グリグリグリグリ…」

「ちょっ!まっ!ウソです!頭グリグリすんのやめろって!イタイイタイイタイイタイ!」

 

正門で繰り広げられるいつものくだらない光景。

ユーリとピーターがこんな仲だと言うことも既に知られている事だった。今更止める人間もいる訳もなく、みんなクスクスと笑って通り過ぎていく。

 

 

「ッ……そんなことより!アリー先生は?さっき診療所に寄ったんだけどクローズの札になってて……往診?」

「知っててもお前には言わん。」

「えーっ!?何でー?」

「なんでもかんでもお前に家庭事情を言うわけないだろ!」

「ケチ。」

「お前な……」

 

ピーターは頬を膨らませ幼子のようにイジける姿を見せる。彼がユーリに対して"こんな感じ"なのには理由があるし、ユーリもそれを理解していた。

 

数年前、ぽっと出のユーリに"大好きなアリー先生"をとられたのだ。ユーリとアイリスが何年もお互いを思い続けていた関係性はもちろん理解していたがやはりその気持ちはずっと彼の心に付きまとい続けている。

 

ユーリとアイリスが再会。そして再び一年半年ほど遠距離となったふたり。その間、アイリスを守り続けたのはピーターだ。ユーリという人物が居ながらもピーターはアイリスの傍で、一定の距離を保ちながら守り続けた。

 

"お腹が大きくなっていく最愛の人"

"自分では無い相手を愛すアリー先生"

 

そんな彼女に未練があるのは当たり前だった。

だからこそユーリもピーターに対してはそれなりに信頼も置いているし、反面申し訳なさもあった。

 

「……ま、俺は部外者だし。仕方な」

「今日、"西国(ウェスタリス)から家族が来るんだ。"」

 

残念そうに俯いていたピーター。

しかしユーリの台詞に顔を上げ、打ち明けてくれた事に喜びを見せていた。

 

「あれ?来るのって明日じゃなかったっけ?」

「早く来れることになったからな。今日になったんだ。」

「……そっか。それは良かったね。」

「…………ピーター。」

「じゃ、今夜は街で飲み歩こうかな〜。また今度夕飯お邪魔させてくださいね?」

「…………」

 

無邪気に笑うピーター。それはどこか寂しそうにも見えたがほっとしている様子も伺えた。

 

 

「……はぁあ〜。アリー先生のドレス姿、早く見たいなあ。」

「…………」

「俺もめいっぱいオシャレして行こう!で、俺に惚れて"やっぱり結婚しません!好きなのはピー"」

「グリグリグリグリ――」

「ゴメン!!ゴメンって!!!冗談だよ!!」

 

ユーリの容赦ない攻撃がピーターを襲う。

しかしどこか楽しそうだった。

 

 

 

 

 

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時刻は遡り

同日、正午過ぎ――

 

 

西国(ウェスタリス) 首都リリベリア

――リリベリア国際空港 中央ロビー

 

 

 

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「――"でっかい。"」

 

多くの人々が行き交うロビーのど真ん中で少女は呟く。

 

 

"西国は素晴らしい国だ。"

 

"やっと会える。大好きなあの人に。"

 

"やっぱり何度来ても良いな西国は"

 

"何年も前の冷戦時代が懐かしいよ"

 

 

 

 

 

少女の脳内に響く人々の声。平和な言葉の数々。東国と西国を行き交う制限も撤廃され、より一層互いの国は手を取り合っていた。

 

「((世界平和……お姉さん達とちちとはは、アーニャ達で頑張った……))」

 

"エスパー"の力は健在。且つ幼少期に比べ人混みにも強くなり、人々の様々な声にあてられることも無くなっていたのだった。

 

 

 

「……"アーニャ"。その語彙力なんとかならんのか。」

「そのまま言っただけ。東国(オスタニア)より空港がでっかい。」

 

相変わらずの娘の様子に呆れ顔の"ロイド"。歳を重ねているはずなのにそれを感じさせないほどの風貌。ツーピースのスーツを着こなし、正にカッコイイ父だ。

 

「ここ数年で西国(ウェスタリス)は更に発展しましたからね?アーニャさんの言う通り大きな空港です。」

 

上品に微笑むのは母のヨル。

彼女もまた弟と同じく整った容姿で長い黒髪は相変わらずツヤを放っていた。

 

尚、アイリスに関して"東国と西国に板挟みにされた戦争の被害者"。スパイと報道されていた時は戸惑いを見せていたが後の報道や噂、嘘偽り――様々な情報を自分なりに解釈した結果"アイリスさんは普通の女の子"だと疑うことなく彼女を受け入れていたのだった。

 

 

「そろそろ待ち合わせの時間ですね?」

「ああ。"中央ロビーの時計塔の下で待っていて"と――」

 

ロイドをはじめヨルも辺りを見回し始める。

待っているのはもちろん"あの子だ"。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ちち!はは!」

 

「ん?」

「え?」

 

アーニャは一点を指さす。

その先に視線を向けると3人の表情はぱあっと花が咲くように明るくなり、待ちきれないと言わんばかりにお互いが歩み寄る。

 

 

「先生、ヨルさん、アーニャちゃん!」

 

「「「!!」」」

 

全員が再会を果たした。

 

「アリー!」

「アイリスさん!」

「お姉さん!」

 

全員がこの瞬間を待ち望んでいた。

ティファニー・ラドナー……ではなく、

真実の名を持っていた"アイリス"を。

 

 

「…ッ…アイリスさん。抱きしめても良いですか?」

「ヨルさん……」

 

ヨルは荷物をロイドへと手渡しアイリスを強く抱きしめる。まるで子供をあやす様に、強く、優しく――

 

「会いたかったです。ずっと……ずーーっと……」

「私もです……ヨルさん。」

 

文通や電話は交わしていたが実際に再会するのは10年以上ぶりだった。東西の冷戦時代が終結し、ここまでくるまでかなりの時間を要してしまった。

 

ヨルの瞳から一筋の涙が零れおちる。

様々な思いを抱えていたヨルにとってこの日をどれだけ待ちわびていただろう。

 

ロイドとアーニャもそっと寄り添い、ヨルの背を優しく撫でた。

 

 

 

「……お姉さん。」

「アーニャちゃんも久しぶりだね。すっかりお姉さんになって。」

「えっへん。」

 

視線を引き込むような明るいピンクヘア。あの頃の女の子というより"少女"へと成長を遂げたアーニャ。背中まで伸びる長い髪の毛はくるくると綺麗に巻かれており、恐らく父親のロイドが手を加えたのだろうと察す。

 

「いや、あまり変わってないぞ。こいつに限っては。」

「ちち!ヒドイ!アーニャも立派な皇帝の学徒(インペリアル・スカラー)……しかも最高学年に進級もできたもん!」

 

イーデン校は13学年存在する。

あの頃は入学したてだったのに気づけば最高学年。スカラーのローブを羽織った写真が送られてきたこともあった。そしていつもアーニャの隣には"ダミアン・デズモンド"の姿があることもアイリスは知っていた。

 

「最後に会った時はこーんなに小さかったのに。……なんだか不思議な感じだね。」

「お姉さんは……変わらない……美人……」

「そんな事ないよー?さすがに歳もとったし……"それに"――」

 

 

"それに"とアイリスは自身の脚元に視線を落とす。

 

 

「…………」

 

ひょっこりと脚元から顔をのぞかせる男の子の姿。光る赤い瞳。

 

 

「"母になりましたから"。」

 

促すようにアイリスは男の子の背を押し、自身の前へと立たせる。そして傍でしゃがみこむと優しく微笑むのだった。

 

 

「"ウィルフレッド"?ご挨拶は?」

「……こ、……こんにちは……」

 

見慣れない人達の姿にドキドキと緊張を見せる。男の子はロイド達のことをあまり知らなくとも、フォージャー家はこの子が何者なのかもちろん把握していた。

 

「こんにちは。君がウィル君だね。」

「お写真で見るよりも可愛くてカッコイイです!」

「…おじとお姉さんに似てる……」

「当たり前だろう。」

 

青空を透かしたような美しい青い瞳

艶やかでクセのない黒い髪

 

少し目尻が跳ね上がった切れ長の瞳は父親のそれと全く同じだ。

 

 

 

Wilfred(ウィルフレッド)――"平和"な世界が彼を守ってくれますように。"平和"な世界をこの子が創ってくれますように……」

 

再びアイリスの背後に身を隠し、隙間から3人の様子を伺うウィル。

 

「そんな思いを名前に込めました。気軽にウィルと呼んであげてください。」

 

息子を見下ろす優しい表情。

アイリスは母親になっていた。

 

 

「……ピーナツ食うか?」

「アーニャ。"食べる?"だろう。それにまだナッツは早い。」

 

「ウィルさんにたくさんお土産も持ってきたのですよ?本が好きだと聞いたので――」

 

グイグイと詰め寄るアーニャとヨル。

興味を示し始めたウィル。

打ち解けるまでそう時間はかからなそうだとロイドとアイリスは安堵の色を見せるのだった。

 

 

「ふふ。アーニャちゃんもヨルさんもありがとうございます。」

 

アイリスは目の前の時計塔を見上げると再び3人に視線を向ける。

 

 

 

 

「お昼ご飯を用意してるんです。ウィルも今日は保育所を早退させてるので4人でご飯――」

 

 

刹那、アイリスの視線が固まった。

ゾワッと背筋が凍りつくような嫌な感覚を感じた彼女は反射的に背後に視線を向ける。

 

 

 

「……アリー?どうした?」

「アリーさん?」

「…ママ?」

 

 

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「――"僕"の可愛いアイリス」

 

 

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人混みに紛れる音。

自分の名を呼ぶ声。

 

こちらに刺さるような視線を感じる――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ……ごめんなさい。誰かが私を呼んだ気がしたんですけど気のせいでした。」

 

「?そうか。ならいいんだが。」

 

無数に行き交う人混み。

知り合いか誰かに声をかけられたと錯覚したのだろうとロイドとヨルは特に気に止めることなく笑みを向ける。

 

しかしアーニャだけは違った。

 

 

 

「……((お姉さん。なんか変。))」

 

アイリスの心を読み取るアーニャ。

彼女の心の奥底から底知れない嫌な何かを察する。

 

 

 

「――では行きましょうか?タクシーを呼んでるのでそのまま家に向かいましょう。」

 

なんらいつも通りの穏やかな微笑み。

そんな彼女の顔色には見覚えがあった。

 

その瞬間を黄昏……ことロイドが見逃すわけもなかった。

 

 

 

 

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アイリスとユーリの自宅にたどり着くフォージャー家御一行。真新しい家では無いが暖かみを感じる素敵な家。過去に併設されていた診療所は今は自宅と一体化しており、少し離れた場所で新たに大きな診療所があった。

 

良い環境、暖かい住民たち。

整頓された畑、果物の成った大きな木。

 

東国の時とは大きく違う本来の彼女の姿にロイドは視線を奪われる。

 

 

 

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「ご馳走様でした。」

 

新鮮な野菜が使われたサンドイッチ。お手製のスープ。近くの牧場から譲り受けているという濃厚なミルク。空になった皿を前にアイリスは満足気だった。

 

「お口にあったようで良かったです。」

「とても美味しかったです!アイリスさんのお料理を毎日食べられるなんてユーリは幸せ者ですね。」

 

食事を終えた5人。

皿を片付けているとヨルも同じく片付けを手伝い始める。キッチンに肩を並べるアリーとヨルの姿は微笑ましかった。(そして以前よりも家事をこなせるようになったヨルに安心するロイドとアーニャも伺える。)

 

 

「そういえばユーリは?帰りは遅いのでしょうか?」

「一応予定では夕方には帰ってくる予定です。仕事が溜まってるみたいで。最近は持ち帰って仕事をしている事も多いです。」

 

 

「大変だな。たしか小中高一貫校だったか?」

「はい。イーデン校のような創立何百年っていう歴史が深い学校では無いのですが…この辺りでは一番の名門校ですからね。」

 

 

「おじが教えてる教科は?」

「主に理数科目だよ。でも基本的にどの教科も得意で免許も持ってるし。だからこそ色んな事に駆り出されて大変そうなんだよね。ちなみにクラブの顧問もしてるの。」

「何のクラブ?」

「"フェイシング"。」

「……何となく想像出来る。」

 

アイリスと同じく文通や電話は日常的に行われているがユーリがここまで多忙なのはあまり把握していなかった。元は外交官。そして頭も良い。教員の仕事は向いているに違いないが正直意外だった。

 

"あのユーリ・ブライア"が東国の外交官を――地位が高い外務審議官をも辞め西国へと国籍を変えたのは誰しもが衝撃を受けていたのを覚えている。且つ、全く違う職種へと転職。東国で教員免許を取り直し、西国の教員になる為に数々の試験もこなしてきた。

 

当初は酷くバッシングもあった。冷戦状態が無くなったとは言えど元は敵対していた国同士。自国を捨て他国の教育者になるというのは色んな意味で厳しいことも多かった。

 

しかし全ては"家族"の為だった。

祖国を立ち去るという大きな選択。当時はユーリ自身も酷く疲弊していたに違いないだろう。

 

だからこそ――妻であるアイリスは夫であるユーリを心の底から尊敬していた。

 

 

 

「……よしっ!片付けも終わりましたしお部屋に案内しますね?先生とヨルさんは2階の部屋を使ってください。必要なものは準備してますがもし何かあればいつでも言ってくださいね。」

 

「ありがとうアリー。」

「ありがとうございます。アイリスさん。」

 

エプロンを手際よく脱ぎ、今度はウィルと遊ぶアーニャへと視線を向け直す。

 

 

「アーニャちゃんは昔使ってた診療所の部屋を使って?ウィルの部屋でもあるんだけどベッドもあるし。寝る時ウィルは私とユーリさんの寝室で寝てるし。」

「アーニャどこでも寝れるから大丈夫。寧ろ一緒に寝てもいい。」

「最近夜泣きもあるからしんどいよ?」

「問題ない。任せて。」

 

"グッ"と親指を突き立て自信満々な顔を向けるアーニャ。ようやく会えた"従兄弟"という存在に彼女自身も嬉しそうだった。血は全く繋がらないが関係ない。ウィルもアーニャに早速心を開き始めている。

 

 

「…………」

 

和やかな雰囲気の中。ロイドはアイリスの背に視線を向けなおす。

何やら彼女に用事があるらしい、第三者には聞かれてはならない内容。

 

今更だがロイドとアイリスは西国一の組織、WISEの諜報員(スパイ)だ。アイリスは組織から抜けたも同然だがロイドとの仲は変わらず。"父と娘"、"先輩と後輩"、"先生と教え子"。様々な関係性がある。

 

だからこそ2人でしか語れない内容は未だに存在するのだ。

 

 

 

 

「……ヨルさん。」

「はい?なんでしょうか?ロイドさん。」

 

ロイドはヨルの元へ向かうとそっと背中へ手を添える。

 

「久しぶりにアリーとふたりっきりで話してもいいかい?」

「勿論です!――では私はアーニャさんとウィルさんとお散歩にでも行っていますね?」

 

"さあ行きましょう!"とヨルはウィルの手を引き、そしてアーニャも空気を察するとふたりの後をついて行く。

 

 

「「……」」

 

家に残されたふたり。

何も言わずともお互い椅子に腰かけると視線と視線をぶつけ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて……お久しぶりですね。"先生"。」

「ああ。元気そうでよかった。」

 

朗らかに微笑むロイド。応えるようにアイリスも嬉しそうに微笑み返す。

 

「ハンドラー達はお元気ですか?」

「変わらず元気だ。」

「フランキーさんは?」

「あいつも相変わらずだ。」

「フィオナ先輩は?」

「ここ数年、俺よりも任務をこなしてる。いつもお前を気にかけていた。――それと"式"には間に合うそうだ。」

「良かったです。……やっと皆に会えるんですね。」

 

「ああ。……皆、お前に会えることを楽しみにしてるさ。」

 

ロイドの大きな手がアイリスの頬へと伸びる。久しぶりの感触にアイリスは寄り添うように瞳を閉じた。

 

いつも何時もロイドに救われた。

戦争孤児となり、さ迷っていたあの時、黒い鎖(ブラックチェイン)に利用されていたあの時。真っ暗闇の世界から救い出してくれたのは紛れもなくこの男だった。

 

WISEに所属の後、諜報員(スパイ)として生きていくツテを与えてくれた黄昏。"朝顔"という暗号名(コードネーム)を与えてくれたのも黄昏。オペレーション〈梟〉の合流を推し進めたのも黄昏だと聞いている。

 

そして――命からがら救い出してくれたのも"黄昏"だった。

 

今、自分の頬を優しく撫でるこの人物こそが自分の人生を創ってくれた恩人なのだ。勿論いい事ばかりでは無い。苦しいことの方が多かったかもしれない。

 

だが生きている。

私はこの男に生かされ"アイリス"として生き長らえているのだ。

 

 

そんなことを脳裏で考えていた時。ロイドはアイリスから手を離すとそっと傍らの鞄から"あるもの"を取り出した。

 

 

「……アイリス。お前に渡したいものがあるんだ。」

「え?なんですか?」

 

取り出された一枚の写真。

ロイドはそれをテーブルに置く。

 

 

「……写真………」

 

大昔の写真だった。

恐らく今のウィルと同じ年頃だろうか。

フリルの付いた可愛らしいワンピースを纏い、リボンで結われた髪の毛。

 

そしてモノクロで分かりにくいが隣で笑っている少年の姿も確認できる。

 

写真の端は焦げた跡。

爆撃を受けた家に唯一残されていた家族の印――

 

 

 

 

 

 

「――"レノルド・カーウォーディン"」

「……ッ」

「あの男の自宅から見つけたものだ。……俺と夜帷が見つけた時には既に秘密警察の連中が荒らしていたんだが……」

 

アイリスは恐る恐る写真に手を伸ばす。

写真の中で微笑み合う少年少女はやはり自分とあの男に違いない。

 

 

「お前が去った後、ユーリ・ブライアが嗅ぎ回っていたことに気づいた。"何かある"と俺と夜帷は考えた。」

「…………」

 

西国へ逃げ果せたアイリス。

残ったユーリのその後の行動。

 

やけに秘密警察の内部を嗅ぎ回るユーリの行動に黄昏は即座に違和感を覚えた。

 

最終的に"秘密警察に隠された汚職"を突き止めたのだが。その裏に隠されていたレノルドという青年の話。

 

 

「"お前の実兄"だったと……知った時は驚いたさ。」

「……」

「国家公安局、当時の秘密警察の局長の汚職。それに繋がっていたのはお前の兄の存在。」

「……」

兄妹(きょうだい)揃って…………お前たちは国のくだらない喧嘩に巻き込まれた被害者だった。」

 

もう何年も前のことだが未だにあの件に関しては深い爪痕を残している。

 

東国の秘密警察、公安のトップとも言える人物が西国の青年を買っていた。そして利用し、破滅させ、亡きものとして都合のいい使い方をした。

 

衝撃的な内容に国中が震撼した。

戦争で傷つくのはいつも罪のない子供たちだった。

 

 

「…………」

 

じっと写真に視線を落とし続けるアイリス。

顔が何かぼんやりと感情を現しているように見えた。憎むべき、愛すべき唯一生きていた肉親の存在。

 

しかしその兄は居ない。

 

 

 

 

 

 

「――"たんです"……」

「ん?」

「私は……最後の最後で兄に助けられたんです。」

 

写真をテーブルに戻し、真っ直ぐとロイドを見据えた。その瞳は変わらず感情を移さずぼんやりとしている。

 

 

「あの時……兄は私の頭に銃口を突きつけました。」

 

安全装置を解除する時の生々しい鉄の音が鼓膜を叩いた記憶。

 

 

「そして……兄が倒れた時、……気づいたんです――」

 

アイリス命を守るためにユーリは引き金を引いた。

 

そして兄が握っていた銃を無意識に拾い上げたあの時。

 

 

手のひらに残る感覚、感触、重み。

部屋に漂うツンとした火薬の臭い。

 

 

「"弾が装填されていなかった"んです。」

「……」

 

和やかだった雰囲気は一転した。例えようのないシリアスな空気と哀しみが漂う。

"兄が私の頭に銃を突きつけていた"という事実を耳にしたロイド自身も表情には一切出さないが動揺していた。

 

あの時、あの現場で何かがあったことは理解していた。レノルドの死体が一切出てこなかったという不審な点も引っかかっていたが……

 

 

 

「…………ッ……」

 

全て闇に葬られた真実。

受け入れきれなかった妹の苦しい思い。

 

兄に間違いなく恨まれていた。

だから兄は容赦なく自分を痛めつけた。

酷い拷問に罵声、憎しみに溢れた鋭い眼光はアイリスの脳内に一生残っている。

 

なのになぜ……兄は弾を装填していなかったのか。

たまたまなのか?試したのか?

もしくはユーリに殺される事を望み、死を覚悟していたのか?

 

一生理解できない。

一生答えが見つからない事。

 

だからこそアイリスはひとり苦しみ続ける。

 

"これが兄の狙いだったのかもしれない"

 

 

 

「……私が兄を壊した……」

「アリー、それはちが」

「私のせいだったんです。何もかも。」

「……ッ……」

 

アイリスの口元に疲れた笑みが描かれる。焦燥に疲れきった笑顔だった。眉を引っ提げているのに笑っている。喩えようのない難しく複雑な表情。

 

 

 

 

「昔……私が黒い鎖(ブラックチェイン)に居た時……私を買った男と街を歩いていた時――」

 

 

 

┈┈┈

 

 

 

 

東西戦争真っ只中――

 

荒廃した街。

飢えた人々や死体が転がる淀んだ街。

 

 

 

「……ッ!アリー!!アリーーーッ!!」

 

青年は探し続けていた妹をついに見つけ出した。

 

 

「僕だよ!お兄ちゃんだ!……やっと見つけ」

 

刹那、強い力で手を振り払われる青年。

怯えたような、冷ややかな青い瞳を向けられ混乱する。

 

まるで全てを否定するような……悲しい瞳。

 

 

振り払われた反動で青年は力なく座り込んだ。

そして立ち去っていく後ろ姿を――青年は静かに見据える。

 

 

 

┈┈┈

 

 

 

 

 

「幼かったあの時の私の感情は……正直覚えてないんです。薄情ですよね……」

 

アイリスの言う事は真実だった。

正直本当に覚えていない。

ただその時の"景色"を何となく覚えていた。

 

 

「男と歩いているみすぼらしい自分の姿を見られたくなかったのか。家族全員死んでいたハズなのに……その現実を受け入れられなかったからなのか。」

 

家族のことは忘れたつもりだった。

死んでしまったものを思い続けるのは地獄だ。いっその事全てを忘れ、楽になりたいと子供ながらに考えたこともあった過去。

 

だが心の奥底では罪悪感が残っている。

記憶にはほとんど残っていないのに、自分が酷いことをしてしまったと無意識に体は覚えているものなのだ。

 

 

「……ただあの時……私と同じ青い瞳を持った少年に声をかけられた時……私は酷い顔をしていたんです。」

 

自分の顔など見えるわけもないのに感覚が覚えている。

 

「希望を見つけた兄の姿、瞳に……私の汚れた姿が映ったことを酷く嫌悪したからかもしれない。」

 

"羞恥、暗澹、汚辱、凶弱、怯懦"

 

負の感情に襲われたあの瞬間。

 

 

 

 

「もしあの時……私が兄の手を握っていたら……」

「……」

「兄は真っ当な道を歩めたかもしれない。兄も悪い大人の手に落ちていなかったかもしれない。」

 

最愛の妹に棄てられた。

その感情が彼を地獄に突き落とした。

感情も何もかもが欠落していく。頭のネジが次々と外れ落ちていく度に狂っていく。

 

 

"レノルド・カーウォーディン"

そう名乗った兄と再会したあの時の違和感。

 

瞳は穏やかに見えていたのに、自分の胸の奥を抉るような強い何かを感じたのを覚えていた。

 

そしてそれは今も感じる。

 

 

「たまに兄が夢に出てきます。私を愛してくれる夢。優しく抱きしめて子守唄を歌ってくれる夢。」

 

愛おしいと言わんばかりのあの表情で――僕の可愛いアイリスといつも呟く。

 

 

「……それと……私を酷く罵って、何度も何度も私を殺そうと、狂ったような視線を向ける兄の夢。」

 

真っ暗闇に堕ちきった瞳が鋭く睨みをきかせ、何度も何度も胸にナイフを突き刺されるような悪夢。

 

兄はどこまでも追いかけて来る。

たとえこの世にいなくとも、亡霊のようにこちらを見てくる。

 

「ふと街中を歩いている時、居ないはずなのに兄につけられているような感覚、視線……そんなものを感じることもあります。」

「……ユーリくんは気づいてるのか?」

「気づいていないです。私が稀に街中で敏感に反応している時は不思議そうに私を見ていますが……理由までは分からないはずです。」

 

言えるはずもなかった。

もう何年も前のこと。それに兄を殺したのはユーリという事実。

 

最愛の夫にこれ以上過去の事を思い出させたくもない。ユーリは口には決してしないがあの時の自分の行動は忘れているはずもない。

 

最愛のアイリスの肉親を殺した事実。引き金を引き、凄まじい音と共に血を流しながら倒れ込む青年の姿。

 

忘れられるはずがない。

だからこそ無闇矢鱈に思い出させたくないのだ。

 

 

 

「――すまん。色々と思い出させすぎた。」

「…………」

「過去のことだ。お前は今を生きているんだ。……囚われる必要は無い。」

「………」

「"自分のせいで"なんて言うんじゃない。……いいな?」

 

 

ロイドの手がアイリスの手を優しく包み込んだ。

 

"もういいだろう"

"もう過去に捕われる必要は無いじゃないか"

 

 

 

 

「幸せなことを考えるんだ。…幸せなこと。」

 

 

ロイドの声は穏やかな波を保ったまま、部屋の四隅に溶け出してゆく。

 

 

 

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈┈┈

┈┈┈┈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"……許さない。"

 

 

 

 

 

 

手を振り払われた青年。

その心は復讐心に燃えていたのだった。

 

 

 

┈┈┈┈┈┈┈

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

以下、作者コメント

 

 

 

ほんっっっとうにお待たせしました!

完結から2ヶ月?

たくさんの方からDMやらマシュマロやらXのメッセージやらでこちらの作品の感想を本当にたくさんいただけて。。

かつ続編も楽しみにしてますと言われ続けたのになかなかアップできず本当にごめんなさい!

 

つづきますよー!

もう一話だけでも続編がよみたい!という方のみ回答お願いします。

  • よみたい!
  • 心の中に留めておくので不要!
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