morning glory   作:鈴夢

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フィオナ先輩の嫉妬

 

 

 

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――バーリント総合病院

職員専用食堂――

 

 

 

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時刻は正午過ぎ。

院内の関係者たちが食堂で楽しげに食事を取る中、事務員"フィオナ・フロスト"は黙々と端の席でミートソーススパゲティを食べ進めていた。

 

美しい顔立ちでどこか謎めいた雰囲気を醸し出す彼女。好意を抱く男性も一部に存在するそうだが、取っ付き難いその性格と見た目に、近寄るものは誰一人として現れなかった。

 

 

「((…さて。先輩の妻の座を奪取する為に作戦を練らなくては。テニスでは大敗したけど、きっと何か隙があるはず。――ヨル・フォージャー…絶対に引き摺り降ろして…))」

 

脳内で"黄昏先輩の妻ポジション奪取作戦"を企てる。そんな彼女の背後に黒い影が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィ・オ・ナ・先輩」

「!?」

 

フィオナの背後から"ヌッ"と、まるで幽霊のように現れたのは研修医の"ティファニー・ラドナー"。

"夜帷"と"朝顔"

性格も何もかも正反対の2人。

そんな2人の関係性は院内でも有名で"何故あの2人が"とその組み合わせに疑問を抱く者が大勢いた。

 

 

「一緒にランチ食べません?」

「……」

「前座りま〜す。」

 

有無を聞かず目の前の席に腰を下ろすティファニー。その様子をじっと、無表情で見据えるフィオナの様子は傍から見ると本当に何を考えているのか読み取ることが出来ない。

しかし、ティファニーは臆することなくニコニコと微笑みかける。

 

 

「先輩のスパゲティ美味しそう。私もそれにすればよかったなあ。」

「……あなたは相変わらず子供みたいなものばかり。」

「えー?オムライスですよ?ケチャップでハート描いてもらったんです。」

 

"ほら、可愛いですよね?"と自慢げにオムライスを見せつける彼女はフィオナの言う通り"子供"。

キッチンの男性シェフと顔見知りなのか、いつもお願いしているらしい。

 

呑気に合掌し、いただきますと口にした彼女を見ていると、本当に"朝顔"という暗号名(コードネーム)を持つスパイなのか?と疑ってしまうほどに幼い。

 

 

「そういえば。この後外務省の定期検診に行くのよね。」

「さすが先輩。情報早いですね。」

「あなたの任務の進捗はどうなの?」

「――それは――――」

 

 

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「――え?ユーリさんが?」

 

数日前。ヨルと2人で3番街の人気洋菓子店でお茶会を開いた日の事。

目の前でニッコリと満面の笑みを浮かべるヨルから思いがけない言葉が放たれた。

 

 

「はい。ユーリがティファニーさんとお話がしたいって。都合が合えばモーニングかランチでも、と。」

 

さすがに"ディナー"という言葉が出ないところが彼らしい。紳士ということなのか、はたまた自分に全くもって"そういう"興味が無いということなのかは不明だが、少しは自分に好感を抱いてくれている様子。

 

…いや。もしかしたらあの日のタクシー代を返せ、なんて理由かもしれない。

 

 

「別に私は構いませんが…何故?」

「私も詳しくは聞いていないのですが。お話が楽しかったみたいで。…ユーリは昔からお勉強が得意でしたし、ティファニーさんと難しいお話をしてる時楽しそうでしたよ?」

 

初対面のあの時。

実は自分の事以外にも彼と話が盛り上がったのは事実だった。

 

化学や物理学。宇宙工学。はたまた歴史の話などでかなり盛り上がった記憶…

 

「ティファニーさんかなりお若いのに色々なことを知っていますし。ユーリと相性がいいのかもしれません。」

「…相性が、良い…」

「…って、ごめんなさい!いきなりこんな事言われても戸惑いますよね?」

「いえ。むしろ私も嬉しいです。――今度直接お会い出来る機会があるかもしれないので――」

 

 

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「…てな感じで。今日の定期検診でお会いできたら私から声をかけてみようかと。」

「なるほどね。」

 

ほぼ単体で別任務に勤しむ後輩の状況を何かしら気にかけるフィオナ。ぶっきらぼうで無愛想でも自分の唯一の後輩であるティファニーの事は何だかんだ心配らしい。

 

 

「とりあえず、何とかなりそうです。」

「…ティフィーに恋愛絡みの任務なんて無理だと思ったけど。」

「大丈夫ですよ〜。何なら"先生"が練習台になって手取り足取り指南してくれるって話…」

 

「てっ…"手取り足取り!?"」

 

ティファニーの発言に思わず声を荒あげるフィオナ。そしてそれと同時に手に持っていたフォークを強く握りしめると瞬時に折れ曲がる。

 

 

「((…手取り足取り?恋愛の指南を"先輩"が!?それって……もしかしたら、あんな事やこんな事まで?))」

 

「せっ…先輩?」

 

「((やはり、もっと早くに私がオペレーション梟に合流すべきだった。…そうすれば私がユーリ・ブライアを陥れる役を務めることが出来たかもしれないのに。…そうすれば、私が先輩に――恋愛の指南…))」

 

フィオナの脳内にロイドとのあんな事やこんな事の妄想が膨れ上がっていく。

完全にコントラストを失ったその瞳、そして一切の表情の変化が現れないフィオナの様子。対しティファニーは"またいつもの感じ"、と呆れ顔のままオムライスを口に運んでいた。

 

 

「……万が一、ティフィーが彼を落とせなかったら。私に任せなさい。」

「え?」

「無理だと思ったら、即私に代わりなさい。」

「いや、それはないと…」

 

「いいから代われ。((この、顔だけ良しのクソガキ。))」

 

「――はい。((相変わらず読めない先輩。))」

 

目を細め、じとーーっと冷めた視線を向けるティファニー。

相変わらず、フィオナ先輩(この人)は訳が分からなかった。

 

 

 

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