那由多の始まり   作:アフロダイB

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JK転生

真っ暗な視界の中、意識だけが覚醒する。

 

『よっしゃ、成功した。』

 

見知らぬ男の声が聞こえる。

ゆっくりと目を開くと見覚えのない夜空が目に映った。

辺りから漂う静けさから、ここが街中ではないと察する事が出来る。

恐らくどこかの山中ではなかろうか。

顔を少し横に傾けるとそこには医者ではなく袈裟を着た坊主のような男がいた。

まるで状況が読めないが自分なりに推測する。

自分は何らかの不調をきたして病院でも手の施しようが無かったので坊主に丸投げされたのだろうか。

顔を反対側に向けると更に数人の坊主がいた。

全員が自分と同じくらいの年代の男達だ。

ともかく向こうから声を掛けて来るのを待つ理由もないので自分から話しかける事にした。

 

『すみません。

ここはどこですか?』

 

質問を投げかけると大きな違和感を感じて固まってしまう。

自分の声が明らかに高く澄んでいる。

訳が分からないまま黙り続けていると男性が話しかけてくる。

 

『いいか?暴れずに聞けよ。』

 

ドスの聞いた声で脅すように諭される。

敵意は無いようだがそれも自分の行動次第と言ったところだろうか。

何にしてもタダ事ではないようだ。

 

『どこの世界でどう死んだかは知らんがアンタは死んだよ。』

 

何かの比喩なのだろうか?

 

『いや、生きて喋ってるじゃないですか。』

 

『いつもと身体が違げぇだろ?』

 

男が鏡をこちらに向ける。

そこには見覚えのない少女が映っていた。

高校生くらいだろうか、育ちの良さが伺える綺麗な顔立ちをしている。

不思議な事に俺の表情に合わせて向こうが寸分類なく同じ表情をする。

 

『アンタは死んだ。

この娘も魂が死んだ。

娘の身体が死ぬ前に、近い世界でたまたま死んだアンタの魂を突っ込んだ。以上だ。』

 

つまり俺の魂が少女の身体に宿ったと言う事らしい。

 

『アンタはもう一度この世界で生きられる。

俺達は少しだけアンタに仕事を手伝ってもらいたい。win-winだろ。』

 

男達は悪い笑みを浮かべる。

仮に自分が断れば全て無かった事にすればいいと言った所だろうか。

さて、俺の答えはと言うと…

 

『…俺は生きたかったわけじゃない。

なんならようやく辛い人生から解放されたと思ったくらいだ。

だから手伝うかどうかは内容による。』

 

自分の言葉を聞き終えると同時に後ろにいた男が武器を抜こうとしたが手前にいた男がそれを制止した。

 

『大丈夫だ。コイツはやる。

俺達と同じような目をしてるからな。』

 

自分の人相がここまで悪いと思わないが、今となってはどうだろう。

ここ数日で色々な事が一度に起きたから、もしかしたら彼らと同じ顔付きになってるのかもしれない。

 

『仕事は道案内だ。

山の中にいる小娘をある場所に誘導して欲しい。』

 

誘導してどうするのかと聞くまでもない。

いちいち詳細を訪ねるまでもなくロクなものじゃないだろう。

 

以前の自分ならば彼らと戦って返り討ちにあって、自分は正義を貫いたと満足しておしまいだろう。

でも今の自分は知っている。

そんなものを貫いた先にあったのが惨めな人生だった事を。

 

『いいよ。そんなに面倒な事じゃないしな。』

 

戦っても自分が文字通りの死ぬほど痛い目にあってもう一度死ぬだけだ。

だったらせめてこの娘の身体だけでも守り抜いた方がご家族の為だろう。

山の中にいる小娘とやらまで救うのは自分には無理だ。

 

『この娘はどうして死んだんだ?』

 

今さらどうでもいい事だが、気になるのが人間というものだろう。

 

『俺達が殺した。

その娘は山の中にいる小娘と合流する予定だったんだ。

良い作戦だろ?』

 

こんな女の子と小娘とやらに、大の男達がよってたかってだ。

それでも怒りの感情が湧いてこないのは、心が疲れ切っていたからだろう。

続けていくつかの質問を重ねる事にした。

 

『どこの世界で死んだかわからないって言ってたな。

ここは自分のいた世界とは違うって事でいいのか?』

 

『ああそうだよ。

アンタはこの世界の人間じゃない。

似たような世界だったとは思うがね。』

 

目の前の男は心底嫌いなタイプだが、それでも自分にはどうにも出来ないし既に死んでいる異世界の人間が干渉すべきじゃない。

 

『自分は仲間として小娘に接触できるわけだな。

誘導が終わったら自分は何をしてもいいのか?』

 

『そこはどうでもいい事だからな。

殺しても何とか誤魔化せるんだが生きてくれた方が楽だ。

適当に生きてくれや。』

 

人が死ねば大騒ぎになるのは男達の界隈でも同じのようだ。

 

『小娘は何で狙われてるんだ?』

 

先頭にいる男が少しだけ言葉をまとめている。

今さら言葉を取り繕うのは、万が一に自分が暴れ回る事を警戒してだろうか。

嘘でもなんでも気持ちよく仕事させてくれるに越した事はないが。

 

『俺達は退魔師ってやつでな。

霊やら妖魔やら、まぁそう言ったもんを退治して生活をしてるわけだ。』

 

今まで創作でしか聞く事がなかった存在だ。

自分のいた世界でもこんな風に暗躍していたのだろうか。

 

『小娘はそれを早い段階で解決しちまうんだ。

そうなると俺達の生活は成り立たねぇんだ。

アンタも大人なら相場ってもんが理解できるだろ?』

 

理解できる。

そしてゲスい理由も思い浮かべる事が出来る。

 

『要するに霊やら妖魔とやらにもっと暴れてもらって依頼主からの値を釣り上げてから解決したいって事だな?

その為に犠牲者が増えるとしても。』

 

『俺達が食えなくなって退魔師を辞めちまえばもっと多くの犠牲者が出るんだ。

小娘のやってる事はただの理想論。世の中を悪くするばっかりだ。』

 

彼らの言う事が事実なら退魔師の組合にでも堂々と相談すればいい。

なんなら依頼人や小娘に正面切って相談したっていいはずだ。

あれこれと取り繕っているがコソコソ企んでると言う事実がコイツらの正統性の無さを主張している。

 

『善人を気取る気はないが、俺達も一応は善良な市民だ。

無茶はしねぇし出来ねぇさ。

ちょっとばかし躾けてやるだけだよ。』

 

そう言って男達はイジの悪い笑みを浮かべる。

 

ここまでの情報を元に推測すると…

 

小娘は真面目な性格で男達に恨まれている。

男達の目的は小娘とやらに二度と逆らわないような躾を与える事。

この娘は巻き込まれて不幸な事故に見舞われた。

 

そして俺にはどうする事も出来ない、だ。

 

先程の男の言葉が反芻される。

 

『大丈夫だ。コイツはやる。

俺達と同じような目をしてるからな。』

 

その通りだ。

しょせん俺も同じ穴の狢なんだ。

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