道化師として歩むハンター世界   作:あずき@

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第5話

「ワー。カワイラシイ オヘヤダナーー………」

 

部屋は流石、豪邸だけあってかなり広かったが置かれているものは至って普通の子供らしい物が多かった。

 

勉強机に漫画や小説が詰まった本棚。特撮ヒーローのフィギュアに檻の中の赤ん坊。

 

(ど う い う こ と な の?)

 

「座って」

 

そう言ってイルミは手近にあった金糸の刺繍が施された座布団を渡してきた。

 

「イヤイヤイヤ!あの檻に閉じ込められてるの赤ん坊だよね⁈ 」

 

「アレはボクのお気に入り」

 

「お、お気に入りって……」

 

(マジでどういうことだ? そもそもあの子は誰なんだ…?

 

邸宅内でしかもイルミの部屋にいるということは、イルミの弟か? ってことはあの子がキルア⁉︎

 

でも確かイルミとキルアって10歳近く年が離れてなかったっけ? 僕の存在が原作とのズレを生んだとか……?

 

ってか、そもそも原作のヒソカって何歳なんだ⁇

 

……わからん。何が一番わからないってーーー)

 

「何故か今、僕がその赤ん坊を抱いていることだ」

 

「??? どうかした?」

 

「いや…なんでもないよ。ところで今更だけどこの子はイルミの兄弟なのかな?」

 

「うん。後、ペット」

 

「………僕も昔、親に内緒で雀を飼ってたことがあるんだ。

 

厳しい稽古にヒーヒー言わされて毎日ヘトヘトだった僕をピーちゃん…あぁ、ピーちゃんてのは雀の名前なんだけどね? そのピーちゃんがいつも癒してくれた。

 

でもある日、僕はピーちゃんを檻に閉じ込めていることに疑問を感じ始めた。

 

『僕はいいかもしれないけど、果たしてピーちゃんはどうなのだろうか?』『今のピーちゃんの状況は、屋敷内に閉じ込められた僕となんら変わらないんじゃないか?』ってね。

 

だから僕は泣く泣くピーちゃんを外へ離してやったんだ。

 

でもその瞬間、待ってましたと言わんばかりに、どこからともなく現れた野良猫に食べられてしまった……

 

その時、僕は確心したよ。『大切な者を護りたいならば付かず離れずが寛容なんだ』ってさ……」

 

(フフ……僕からしてみれば忘れたい過去ではあるが、イルミの情操教育に少しでも役立てばこれも悪くはないか、と思い吐露した訳だ。

 

…訳だったんだけどな〜………)

 

「く〜く〜……」

 

「寝てらっしゃるーーー!(小声)」

 

ベッタベタな展開ではあるが、中々堪えるものがあったらしく打ちひしがれるヒソカ。

 

そんなヒソカを見てキャッキャッと無邪気に笑うキルアの存在が虚しさに拍車を掛けていた。

 

溜息を吐き肩を落としたヒソカは、チラリとイルミに視線を向けると、そのままゆっくり近づいてそっとベッドへと運んで行った。

 

「ま、色々あったもんな。ゆっくりお休み」

 

「ん〜…ヒソカ……大好き………く〜…」

 

ヒソカはフッと笑みを浮かべて「僕もだよ」と小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

早朝、イルミの部屋の前には、タイトな黒の燕尾服に身を包んだ執事と思しき男が立っていた。

 

男は扉をノックする。

 

「イルミお坊ちゃん。朝で御座います。起きて下さい」

 

返事がないのでノックと呼び掛けを繰り返すが、幾ら経っても反応はない。

 

男は溜息を吐いて扉をそっと開けた。

 

すると次の瞬間、突然、男の胴体に向かってイルミが激突してきた。

 

「ぐふっ⁉︎ ………お、起きてるじゃないですか。返事くらいしてくださいよ」

 

男がそう言うとイルミは寂しそうな表情を浮かべて言った。

 

「だったら前みたいにイルミって呼んで」

 

「それは……難しいですね。今は雇われの身でイルミお坊ちゃん専属の執事ですから……」

 

「そんなのどうでもいいよ。ヒソカはヒソカなんだから」

 

「ははは…それはそうなんですけど……参ったなぁ」

 

ゾルディック家でイルミ•ミルキ•キルア専属の執事として雇われてから早3年。

 

イルミは未だ僕に名前呼びを強要してくる。

 

そりゃあ僕だって昔みたく気兼ねない感じで接したいのは山々だが、現在の立場でそんなことをしてしまえば瞬く間にミケの晩飯に早変わりだ。

 

3年前、どうせ行く当てがないからと安請け合いしない方がよかったかな……?

 

しかも問題はまだあって実はそっちの方が厄介だったり……

 

「あーー⁉︎ ヒソカ、また兄貴とばっか喋ってるゥーーー‼︎ ず〜〜る〜〜い〜〜〜!」

 

イルミの部屋の前で駄々を捏ね出すキルア。

 

「ムッ! ヒソカはボクのだから! ボクとだけ話してればいいんだよ‼︎」

 

するとキルアがピタリと動きを止めてゆらりと立ち上がる。

 

「兄貴ってさぁ…そんなんだからヒソカに呆れられるんだよ。

 

ヒソカは人の言うことをちゃんと聞く、イイ子が好きなんだよ。そう、僕みたいなね‼︎」

 

どうだ、と言わんばかりのキルア。

 

イルミもイルミで真に受けているのか悔しそうにしている。

 

「コラコラ。いけませんよ? 2人共、仲良くしないと」

 

「でもォ〜…」

 

「だってェ〜…」

 

「……キライになりますよ?」

 

「キルア愛してるッ‼︎」

 

「僕だって大大大〜い好きッ‼︎」

 

「はははは……ハァ…」

 

と、まぁ毎朝こんな調子だから堪ったもんじゃない。

 

その後、2人を食卓に行くよう促して、今度はミルキの部屋へと向かう。

 

「ミルキ坊ちゃん。朝で御座います。起きて下さい」

 

「ん〜…今、忙しいからまた後で〜」

 

「ハァ……またか……入りますからねーー⁉︎」

 

ヒソカが勢いよく扉を開けると中ではミルキが10台以上あるモニターを前に複数の美少女ゲームを同時にプレイしていた。

 

「あっ! か、勝手に入るなよ‼︎」

 

「勝手じゃありませんよ。ちゃんとノックもしましたし、断りも入れました」

 

「うぅ……そんなの聞こえなかったもん!」

 

「言い訳は後で聞きますから下へ行きましょう」

 

「……いいよ? ただしこの子の攻略方を教えてくれたらね!」

 

そう言ってミルキは一個のモニターを指差した。

 

「ハァ……仕方ないですね。わかりました。教えますから、ちゃんと約束は守って下さいね?」

 

するとミルキは「よっしゃッ!」と、とても嬉しそうにガッツポーズをした。

 

 

 

 

食卓には、ゼノ、シルバ、キキョウに、未だツンケンし合っているイルミとキルア。それとは対照的にニコニコと満面の笑みを浮かべたミルキが席に着いていた。

 

と、その時、後ろで控えていたヒソカにゼノが話し掛ける。

 

「しかしいい拾い物をしたわい。あのミルキを部屋から出させることが出来るのは、世界広しと言えどお前さんだけじゃろうな」

 

「勿体無い御言葉です」

 

「……何も謙遜することはない。ゾルディック家全員がお前を評価している。

 

優秀な執事であり一流の掃除屋(クリーナー)だとな」

 

そう言うとシルバはニヤッと口角を吊り上げる。

 

「ありがとうございます。これからも皆様のお役に立てるよう精進して参ります」

 

「あら? 今朝は私(わたくし)だけメニューが異なりますの?

 

フフフフ………これはいったいドウユウコトカシラ」

 

キキョウが怒りに震え出す。

 

「奥様。それは決して嫌がらせなどではありません。

 

以前より御身体の調子が芳しくないと仰られていましたので私(わたくし)が直々に配合した薬草を、お料理の毒気を中和しない程度にブレンドさせて頂いたものです。

 

因みに献立に関しましても美容と健康に良いとされるものを、と私が「素晴らしいわ! ヒソカさん!

 

アナタは執事などではないわ。立派な私の息子よッ‼︎」

 

「うっ………恐悦至極に存じます」

 

「ヒソカは最初から家族……ボク『だけ』のお兄ちゃん」

 

「イルミお坊ちゃん……」

 

「そうそう! 僕なんかヒソカがいるからこの家にいるようなもんだもん‼︎

てな訳でヒソカはず〜〜〜っと僕の側から離れないこと‼︎ いいね⁉︎」

 

「キルアお坊ちゃんまで……」

 

「……まぁ、同好の士としては認めてやるよ。か、感謝しろよ⁉︎ ボクは滅多に褒めたりしないんだからな‼︎」

 

「ミルキお坊ちゃん……うぅっ…皆さん、ありがとうございます。私…いえ、僕も皆とこうして一緒にいられて幸せだよ‼︎」

 

その一言を皮切りに食事そっち退けでヒソカに抱き付くイルミとキルア。ミルキはミルキでチラチラと羨ましそうにその様子を見ている。

 

そんな心温まる光景を眺めながら食前酒を嗜む保護者組なのだった。




どうも。あずき@です。

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