調査、捕獲、破壊   作:ICD

1 / 1
入社

 

 

【ICD機密情報:Lv.5】

 

『名前』:【櫛見(くしみ) 幸之助(こうのすけ)

 

『年齢』:【32歳】

 

『経歴』:【■■小学校卒業】【■■中学卒業】【■■高校卒業】【■■大学卒業後は、不況のあおりでフリーターに】【就職経験:なし】

 

『家族構成』:【両親ともに既に他界】【祖父母も既に他界】【兄妹とは疎遠】

 

『保有資格』:【なし】

 

『試験』:【生存能力は高く、分類『Hu』の可能性あり】

 

『特記事項』:【ICD特殊規定により、『Hu(アノマリー)』として彼の入社を認可。Lv.3以上の監視下においての任務を許可する】

 

『所属』:【調査・破壊遂行部隊『猟犬(ハウンドドッグ)』】

 

『合否』:【合格・規定の調査後、採用通知を通知する】

 

 

 

 

 ========

 

 

 

 

 櫛見 幸之助、三十二歳。

 大学を卒業したのはいいものの、不況のあおりによって就職できず、そこからずるずるとフリーターを続けてしまう。

 そして約十年ほど、バイトを転々として就職先を探していたのだが……最終面接まで行ける会社は年々減っていっていた。

 

 三十を迎えた時に最終面接まで行った会社はもはやなく。

 就職も絶望的……このままバイトで一生を終える、かと思われていた。

 

 だが、ダメ元で出した大手の会社、『ICDコーポレーション』から採用通知が来たのだ。

 何をしている会社かはよく知らないが、何故か履歴書を提出しただけで合格通知が来てしまった。

 

 新手の詐欺か、と思って連絡してみたところ、たしかに合格してるし。

 そんなわけがわからないまま、入社日を迎えることに。

 

「……マジで俺、ここで働くのか……?」

 

 慣れ親しんだスーツを着こなし、都心の超高層ビルの前に俺は立っている。

 周囲では忙しくなくビルに入ったら出たりする人たちばかり。

 聞こえてくる会話から推測するに、どの人たちも色んな会社の取引できているみたいだ。

 

「ドッキリじゃねぇよなぁ……?」

 

 別に俺の人生はエリートってわけじゃない。

 普通の高校を出て、普通の大学に入って、普通に卒業しただけ。

 そんな人生だったのに。

 それが何故、こんな超巨大な会社に。

 

「なんか腹痛くなってきた……」

 

 緊張と場違い感から、帰りたいという腹痛が発生する。

 昔からこうだ、いざという時や、此処一番って時、絶対に腹痛がする。

 一応なんとかなってきたが、この腹痛にはずっと苦しめられてきたのだ。

 

「……ここまで来たんだ。行くぞ!!」

 

 と、勇気の一歩を踏み出そうとした瞬間。

 隣を一人の少女が横切った。

 

 明らか様に俺よりもはるかに年下……いや、見てわかるぐらいに未成年。

 だが彼女はスーツを着ていて……異様だったのは、その顔に大きな火傷傷があること。

 そして髪が、色が抜け落ちたように真っ白に染まっていたことだ。

 

 俺の『行くぞ!』、という声を聞いてか、一度立ち止まって振り向き、こちらを見てきた。

 不審者を見るような目つきで、下から上へと視線が登って行く。

 

「……ここで、何してるの」

「へ?」

「うちの社員じゃないでしょ。どっかの会社から取引に来たような感じでもなさそうだし」

「い、いや、ここの社員……のはず。多分。今日から」

 

 少し不安げに答えると、少女は少し考えた後にスマホを取り出して少し弄り出す。

 そしてどこかに電話を掛けたかと思うと、誰かと話を始めた。

 

「今日のことで……うん、うん。名前。そう……わかった」

 

 何かやりとりした後に電話を切って、俺の方を見直す。

 

「名前、教えて」

「な、名前?」

「名前。早く」

「櫛見 幸之助、だが……」

「コーノスケ……ふぅん。じゃあ、着いてきて」

 

 それだけ聞いて振り向き直し、会社の方を向くと歩き出す。

 俺が呆然としていると、こっちを見る。

 

「来ないの?」

「あ、ああ……!」

 

 急いでついていき、少女の後に続いてビルに入って行く。

 ビル内には清潔感があり、最新鋭とも言えるような機械ばかり揃っている。

 と言うか、逆に最新のもの以外あるのかってレベルだ。

 一階のエントランスだけでもかなり広い。

 

「こっち」

 

 少女はポケットからカードのようなものを取り出し、駅のホームに接されている改札機のようなものに通して、会社の奥に入って行く。

 まだ緑のランプが付いていたため、後に続くと入ることができた。

 あのカード……多分社員証だろうか。

 

「なんだこりゃ……」

 

 奥の方に入った時、驚きでそんな言葉が自然と漏れる。

 そこはまるで……ホテルのロビーのようだった。

 会社という雰囲気がまるでない。

 

「……やっぱ俺、場違いなんじゃ……」

「それじゃ、帰る?」

「……い、いや。どうせ他の会社には入れないんだ。こんなチャンス逃してたまるかよ」

 

 そう、と呟いて歩き続けてエレベーターのボタンを押す。

 少し待った後、エレベーターが到着。

 二人で中に入ると、少女はすぐに扉を閉めた。

 だが、階層のボタンは押さずに止まっている。

 

「どうかしたのか?」

「……今から、先。ここから先、もう何があっても後戻りはできないよ。普通の一生は送れなくなる」

「……な、何、言ってんだ?」

「覚悟は、ある?」

「覚悟、って言われても……」

 

 あまりにも唐突のことに困惑する。

 そりゃだって……こんな質問、普通じゃない。

 覚悟と言われても……。

 

 だが、俺に残された道はもうこれしかない。

 ここに就職できなければ残りの人生、どうしようもないものになるだろう。

 

「大丈夫だ。連れて行ってくれ」

「……ん、わかった」

 

 そう言うと様々なボタンを押し始めた。

 まるでパスワードでも打つかのように、次々とボタンを押す。

 そして三回ほど閉まるボタンを押した瞬間、エレベーターが動き始めた。

 上ではなく、()()()()()()()

 

「なっ……!!?」

 

 エレベーターの一部の壁が開き窓になったことで、その光景が明らかとなった。

 

 下には広大な空間が広がっており、壁に大きく『MHカンパニー』と書かれている。

 白衣とスーツを着た人間が結構な数がおり、ロボットのようなものまで歩いている。

 それだけじゃない、動物もそこらへんを歩き回っていた。

 あまりにも、非現実的な光景。

 

「なんだよ、これ……!?」

「ようこそ。マッドハンター・カンパニー……ICD特務機関へ。私たちは、貴方を歓迎する」

 

 少女はこの広大な光景を背後に、そう言ったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。