共和国軍の急降下爆撃隊   作:鈴名ひまり

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First blood

 敵ファイターとの戦いを終え、V-19の編隊は次々に母船に帰還していく。

 

 先程通信から聞こえてきたところでは、地上軍が無事展開し、集結した分離主義勢力に攻撃を開始したとのことだった。

 

 あとは彼らの働き次第だが、スターファイター部隊の仕事が終わったわけではない。

 

 補給を完了次第すぐに再出撃し、離脱を図る敵船団を追撃せよとの指示が来ている。

 

 ルーデルは編隊の最後尾を飛び、部下たちが全員着艦したのを見届けてから発着口をくぐった。

 

 整備兵とアストロメク・ドロイドがやって来て手早く補給を開始する。

 

 補給を待つ間、パイロットたちは戦果の話で盛り上がっていた。

 

 人造兵士でもそういう所は普通の人間の兵士と変わらないのだな、と少し意外に思う。

 

「キャプテン、補給完了しました」

 

 整備兵が伝えてくると、ルーデルは「ご苦労」と鷹揚に返して中隊を呼び集める。

 

「休憩は終わりだ。出撃する!」

 

 部下たちはきびきびとファイターに乗り込み、ルーデルは彼らと共に再び空中に躍り出る。

 

 既に軌道上に敷いた封鎖線は破られており、分離主義勢力の艦艇が次々にジオノーシスから逃げ出している。

 地上軍は奮戦して大いに敵を打ち破ったらしいが、いかんせん敵の数が多過ぎる。

 

 それを聞いて、この戦いは戦略的には負けだろうとルーデルは考えていた。

 

 集結した分離主義勢力の撃滅は達成できそうもなく、重要人物を捕らえたという情報もない。

 多くの敵を屠ったとはいっても、所詮はドロイドの群れだ。

 またどこかの工場で大量に作られてすぐに補充されるのだろう。

 

 それでも、任務とあらば無駄に思える戦いにも赴かねばならないのが兵士というもの。

 嘆いていてもそれこそ無駄だ。

 

「グループⅠ、震盪ミサイル用意。全機で同時に敵艦の艦橋付近のシールドジェネレーターに撃ち込め。グループⅡは俺に続け。敵艦の艦橋にありったけ撃ち込むぞ!」

『グループⅠ、了解!』

『グループⅡ、了解!』

 

 応答と共に中隊は二グループに分かれ、離陸していく敵艦に向かって飛んでいく。

 

 程なく、ルーデルたちは巨大な球形の宇宙船が離陸していく現場へと辿り着いた。

 

 地上から光弾が無数に打ち上げられ、宇宙船に追いすがるが、シールドに阻まれてダメージは与えられていない。

 

 ドアノッカーのように虚しい対空射撃を続ける地上軍の後方から幾条もの太い光線が伸びて宇宙船に当たるが、それも防がれる。

 

 だが、その攻撃によってシールドが発光し、その輪郭を薄らと浮かび上がらせたことで、ルーデルは気付く。

 

「シールドは下面に集中している!ガンマ中隊!地上軍に撃たれてる敵艦をやるぞ!」

『了解!グループⅠ、先行突入します!』

 

 指示を出すと、前方を飛ぶグループⅠの六機が降下を開始する。

 

 ルーデルも一拍置いてから彼らを追う。

 

 だが、敵も上方が無防備になっていることには気付いていたらしく、そこをカバーする一手を繰り出してきた。

 

『グループⅠ、目標ハンガーベイより敵ファイターの発進を確認!数五十以上!』

「まだスピードが乗っていない!落下速を乗せて食い破れ!」

『了解!』

 

 羽虫の大群のように湧いて出て、飛び上がってくる数十機のドロイドファイターの群れに、グループⅠのV-19六機が果敢に突っ込んでいく。

 

 後続のグループⅡの援護を受けながら一塊になって突破口を穿ち、そこに雪崩れ込むが、その途中で二機が被弾し、火を噴きながら脱落していった。

 

 残った四機はすれ違ったドロイドファイターを引き離して爆撃コースへと直走るが、今度は宇宙船からの対空砲火が待ち構える。

 

 怯むことなく突き進む四機だが、光弾が右端の一機を直撃し、木っ端微塵に吹き飛ばした。

 

 これでグループIは半減。

 防御を固めた敵の艦橋シールドを破るには火力が足りない。

 

 ルーデルは舌打ちして緊急ブーストを使い、加速した。

 

「グループⅡ、コースそのまま!グループⅠは俺に続け!」

 

 襲いかかってくるドロイドファイターをブラスター砲の掃射で追い散らし、グループⅠをも追い抜いて中隊の先頭に躍り出る。

 

『隊長!?』

 

 部下たちが驚きの声を上げるが、ルーデルは構わずに発射準備を命じた。

 

「グループⅠ各機!震盪ミサイル発射用意!俺の合図で一斉に撃て!」

 

 部下たちが「応」で返し、速度を上げる。

 楔形の編隊が整った時にはもう敵艦が目と鼻の先に迫っていた。

 

 まだだ。

 もう少し、シールドに激突する直前まで引きつけて──

 

「撃て!!」

 

 ルーデルの命令で四機のV-19から一斉に震盪ミサイルが発射される。

 

 一機ごとに二発、時間差を設けて発射されたミサイルが計八発、敵艦のシールドジェネレーター目掛けて飛んでいくのを尻目にルーデルたちは敵艦を避けて機体を引き起こし、上空へと退避する。

 

『グループⅡ、敵艦の艦橋を破壊!敵艦、炎上しております!』

 

 グループⅡからの報告に敵艦の方を振り返ると、確かに頂上から黒煙が噴き上がっている。

 

 だが、あれではすぐに立て直されてしまう。

 

「ガンマ中隊!集合せよ!敵艦のエンジンをやるぞ!」

 

 ルーデルは中隊を呼び集め、敵艦の艦底部にあるリパルサーリフトエンジンへと回り込む。

 

 させじと再びドロイドファイターが群がってくる。

 

(これはちょっと当てが外れたな)

 

 ルーデルは内心毒づいた。

 

 母船の司令塔を破壊すればコントロールを失い、機能を停止する──それがドロイドファイターの弱点だったはずだが、どうやら克服されてしまっているようだ。

 

 コントロール艦をやられても自立行動が可能なよう改良されているのか、コントロール機能を艦橋以外の場所に搭載しているのか──いずれにせよ、ドロイドファイターはまだ動いている。

 

 これは近づくにも骨が折れそうだ。

 

 そう思ったその時、向かってくるドロイドファイターが数機爆散した。

 

『こちらデルタ中隊!援護する!』

 

 通信機から味方の声が響き、十機ほどのV-19がドロイドファイター目掛けて突っ込んできた。

 

 ありがたい。

 これで敵ファイターの群れを抜けられる。

 

「ガンマ中隊!震盪ミサイル発射用意!目標は近いぞ!」

 

 応答してくる部下たちの声がまた一人か二人分、減っているのが分かったが、攻撃を止めるわけにはいかない。

 

 犠牲になった者のためにもこの敵艦だけは何が何でも仕留めなければならない。

 

 照準コンピュータが敵艦のリパルサーリフトエンジンをロックする。

 

「撃てぇぇぇえええ!!」

 

 放たれた十数発の震盪ミサイルが青白く輝くスラスターへと吸い込まれていき、盛大に爆発する。

 

 敵艦の上昇が止まり、ゆっくりと落下し始める。

 

 ルーデルたちは墜落に巻き込まれないよう素早く敵艦から離れ、編隊を組み直した。

 

 そのまま補給のため母船に戻ろうとしたルーデルだったが、ふと視界の隅に動くものを捉えた。

 

 見ると、墜落していく敵艦から宇宙船が数隻飛び出してくる。

 サイズからしておそらくシャトルだ。

 

 上昇していくシャトルの周りを数機のドロイドファイターが飛んでおり、明らかにシャトルの搭乗者を護衛している。

 

 直感で重要人物が乗っていると分かった。

 

「ガンマ中隊!任務追加だ。脱出した敵シャトルを追うぞ!」

 

 操縦桿を倒し、シャトルの一団の方へと向かう。

 

 残った六機のガンマ中隊機が後に続いた。

 

 

◇◆◇

 

 

「よもやスターファイター一個中隊如きにやられるとはな」

 

 全速力で宇宙へと向かうシャトルの機内で、通商連合の艦長【ラシュロス・ドファイン】は毒づいた。

 

 一隻でも多くの味方を逃がすために殿を買って出たはいいものの、地上からの攻撃に意識を取られている間に敵スターファイターの接近を許し、差し向けたヴァルチャードロイドもあっさり突破されて艦橋とリパルサーリフトを破壊されてしまった。

 

 立て直しは不可能と早急に脱出を決め、混乱する乗員たちを率いてシャトルに乗り込んだが、かなりギリギリだった。

 

 決して敵を侮っていたわけではない。

 地上からの攻撃を防ぐために船体下部にシールドを集中している隙を突いてくるスターファイターがいることは予想していたし、実際に現れるとすぐに待機させていたヴァルチャードロイドを発進させた。

 

 ただ敵の練度と度胸と機転が予想の一つか二つほど上を行っていたのだ。

 まさか共和国があのような精強な部隊を有していたとは。これは認識を改める必要がある──そう思っていると、コックピットから操縦士のドロイドが警告してくる。

 

『艦長、後方ヨリ中隊規模ノ敵機接近!』

「何だと!?」

「何としつこい──!」

 

 同乗する部下たちが動揺するが、ラシュロスはさもありなんと思った。

 彼ら共和国軍の目的は自分たち分離主義勢力の撃滅なのだ。

 降伏するでもなく、シャトルで逃げ出した自分たちを見逃してはくれまい。

 

 だが、こちらも従容と撃ち落とされるわけにはいかない。

 

「直掩機を向かわせ、足止めせよ。味方艦隊にも応援を要請するのだ!」

『ラジャラジャ』

 

 すぐに直掩のヴァルチャードロイドが反転し、迫り来る敵スターファイター中隊へと向かっていく。

 

 だが、長くは持つまい。

 シャトルにはドロイドファイターの管制機能はなく、直掩機は自身のプログラム通りの戦いしかできない。

 高い練度を持つ敵ファイター相手ではすぐにやられてしまうだろう。

 

 ラシュロスの予想は裏切られなかった。

 

『艦長。直掩機、全滅シマシタ』

 

 操縦士の報告に機内はざわつく。

 

「何と!早すぎではないか!」

「一体どうなっておるのだ!」

「追いつかれてしまうぞ!もっと飛ばさぬか!」

 

 部下たちが騒ぎ出すが、直後に機体が大きく揺れ、悲鳴に変わる。

 

「う、撃たれているぞ!」

「反撃しろ!」

「シールドを!シールドを後ろに集中しろォ!」

 

 情けなく泣き喚く部下たちに頭痛を覚えるラシュロスだが、実際かなり不味い状況だ。

 

 直掩機を失い、撃たれ放題に撃たれている。

 もう次の瞬間機体が火を噴いてもおかしくない。

 

「エネルギーを後部シールドに回せ!応援が来るまで耐え凌ぐのだ!」

 

 そう命じたラシュロスだったが──

 

「ええいどけぃ!」

 

 しゃがれた怒鳴り声と共にコックピットに乱入する者が一人。

 

「し、将軍!?何をなさるおつもりですか!」

 

 思わず、追いかけて大声で問いかけたラシュロスだったが、下手人は操縦士のドロイドを操縦席から引き剥がし、ラシュロスの襟首を引っ掴んで副操縦士席に放り込んだ。

 

「敵機の位置を指示せよ!」

「!将軍、まさか──」

「シールドでは持たん!反撃するのだ!さっさとせぬか!!」

 

 恐ろしい剣幕で怒鳴る将軍。

 

 常人なら震え上がるところだったろうが、ラシュロス・ドファインは豪胆な男だった。

 

 その恐ろしさは彼の目には勇猛さ、頼もしさに映ったのである。

 

 

「はい!グリーヴァス将軍!」

 

 




グリーヴァス将軍とラシュロス艦長の縁ってもうレジェンズなんだっけ?
調べだけどよく分かりませんでした──
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