青春100%   作:完結の陽炎

11 / 58
第10話「唯の演奏と演技のお披露目」

 唯のピアノを聴く機会はあるのか?

 ストリートピアノが弾ける場所を探さないといけない。

 それはヒロシの情報網で瞬く間に特定ができた。

 マナーを守れば撮影もOK。

 唯の写真を撮る気満々のヒロシ。

 見張り役は美鈴と淳平だが、あまり仲がよろしくない。

 

「上辺の口先だけで説得力がない。そんなザマで本当に映画作る気あるの?」

「おい外村、お前の妹すげぇ口が悪いぞ。何とかしてくれ」

「いやいや、これが慣れるとカワイイんだよ真中」

 

 あまりこじれないように内場が間に入って対処。

 それとは別に綾とつかさが雑談をしている。

 綾は地味なおさげとメガネで、いつも通りに影を薄くするスタイルだ。

 

「つかさは音楽よく聞くの?」

「たまに聞くぐらいかな。綾は?」

「私はあんまり……ちなみちゃんは?」

 

 綾に向けられた先にはちなみ。

 その隣にいる正太郎と恋人繋ぎをしている。

 

「機会があれば聞きますけど、ご縁がないのでお姉様と同じです」

「そうなんだ。ちなみちゃん、正太郎のことよろしくね」

「はい任せてください。しょーくんはわたしが幸せにします」

「すっごいラブラブじゃん。いいね弟くん、青春してて羨ましくなるよ」

「そういうつーさんはモテるから選び放題ッスね?」

「体目当ての男子はお断りだよ」

 

 しばらくして唯がストリートピアノで演奏を始める。

 まだ一曲だけしか弾けるものがない。

 穏やかな風を漂わせて涼しげなイメージを浮かべる楽曲。

 テンポもスローで無理なくできる初心者向け。

 楽しそうに弾く唯の姿が輝かしい。

 当然、ヒロシがそれを逃すはずもなくカメラの撮影を怠らない。

 そして終えた後の拍手に照れ笑いを浮かべる唯がいた。

 

「なあ唯」

「なにしょーたろ?」

「他にも弾いてみたいと思っている曲はあるのか?」

「あるよ。唯はね、春・夏・秋・冬の季節に合った曲が弾けるようになりたいんだぁ」

「魔法の火、風、水、土の四大元素みたいなノリだな」

「ちなみに今回弾いたのが、夏におすすめの曲だよ」

「じゃあ残りは春・秋・冬を目標に練習するってことか?」

「うん。次に会えるとしたら冬休みだから、冬の曲にチャレンジだよぉ」

「冬の曲でクリスマスを連想してしまうのはオレだけか?」

「クリスマスいいね。プレゼントもらえるし、ケーキ美味しいし」

 

 ストリートピアノでいい曲を聞かせてもらえた。

 唯への贈り物として漫才をする予定だが、果たして成功するのか?

 参考の題材は、つかさから録画されたお笑い番組が提供された。

 ちなみの要望で、練習場所は正太郎の部屋。

 殺風景なインテリア故に部屋のスペースは広い。

 事前に内場へ電話を入れて話をしておく。

 どんな内容かと言うと……

 

「お笑い番組を見ると、内場の喋り方と相性が良い。だから内場の口調になりきるぜ」

「なんやねん、僕のモノマネで漫才やるんかい」

「あくまで口調な。さすがにちなみの演技みたいに動きまでコピーする自信はない」

「それ、端本やったら僕を完璧にコピーできるみたいな言い方やで」

「ちなみが本気出したらできそうな気がするぞ」

「じ、冗談やろ? けど端本やったらホンマにやれそうやな」

「ん、待てよ? ちなみにオレをコピーさせて、オレが内場のマネをして、小学生時代のやり取りでもやったら、唯にウケるんじゃね?」

「まあ、懐かしんでくれそうやな」

 

 簡易的な台本を作成しながら漫才の練習。

 ちなみに正太郎のマネをさせてみた。

 かなり乗り気になって実演をしてくれる。

 

「おいおい、普段のオレってそんな感じなのかよ?」

「そんな感じだぞ。鏡でもあったら見せてやりたいぐらいだぜ」

「おぉー、見た目はちなみでも男口調が妙にハマりやがる。演技力が上がってね?」

「ったく、褒めても何も出ないぜ。ほら内場のマネやるんだったら、さっさとやろうぜ」

「うむ……よっしゃ、やったるで!! これも南戸を笑わせるための作戦や!!」

 

 ノリにはノリで返す。全力で。

 こうしてモノマネの漫才コンビ練習に明け暮れた。

 しっかりと台本も書いて忘れないようにしておく。

 昔話をネタにする予定で台詞としての暗記はあまり必要としない。

 ちなみの助言もあり、アドリブ上等で練習をしていった。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 唯、内場、美鈴、ヒロシ、淳平、綾、つかさの7名が見物客。

 演じるのが正太郎とちなみの2名。

 一つの部屋で9人はどうあがいても不可能である。

 お金を出し合い、机やイスなど設備があるスタジオを借りた。

 伊達メガネの正太郎と男装をしたちなみ。

 正太郎が内場を、ちなみが正太郎をマネして演技をする。

 夏の教室をイメージして、ちなみが机でうつ伏せ状態で始まった。

 

「あちぃー!! エアコンのない教室なんて最悪だぜ!!」

 

 同じく机で何かを描くマネをする正太郎。

 

「ぐあっ、やってしもうた!? 汗で僕の漫画が!!」

 

 小学時代に唯も見たことがある日常的な光景。

 しかも夏の暑い教室ということで共感性も高い。

 

「内場、漫画で涼しくならないか?」

「アホ、漫画は関係ないやろが」

「じゃあその漫画よこせよ。パタパタするから」

「やめい東城!! 僕の漫画を団扇にすんな!!」

 

 唯と美鈴が笑いをこらえている。

 二人のやり取りは小学生の夏で実際にあった出来事だ。

 クラスメイトだった唯も近くで目撃をしており、美鈴も知っている。

 正太郎にマネされた内場は、恥ずかしそうにメガネを触っていた。

 厳しい先生、山積み宿題、難易度の高いテストなど他の話題も披露。

 上級生の綾たちも学校あるあるで共感をしてくれた。

 

「オレはねーちゃんを超える。それがオレの野望だぜ」

 

 男口調のちなみがキリッと顔を引き締めて宣言する。

 正太郎は伊達メガネをしたまま呆れた様子を演じた。

 

「このクソ暑い中で、よぉ燃えとるのう東城」

「内場のバトル漫画でもあるだろ。最強の敵を倒すために修行する。まさに男のロマン」

「東城の姉ちゃんってそんなスゴイ人なんか? どうにも影が薄いんやけど?」

「チッチッチッ、甘いんだよ内場。あれは仮の姿、覚醒モードのねーちゃんは最強だぜ」

 

 これには綾が俯いて大いに恥ずかしがった。

 なんてことを言ってるんだと。

 後で正太郎を叱ろうと思ってしまうぐらいに。

 それをつかさが微笑ましそうに見守っている。

 

「唯もよく聞いたよ。しょーたろは、いっつもお姉ちゃん目標だもんね」

「それがアイツが書く小説の原動力だから」

「ちょうど僕、あんな感じで聞かされたわ。よぉ覚えとるで」

 

 唯、美鈴、内場がそれぞれ口にする。

 三人とも姉に対する正太郎の対抗意識を熟知していた。

 だからこそ正太郎の向上心も果てしない。

 

「頼むぜ内場!! お前の漫画が必要なんだ!!」

「こぉんのドアホ!! 無理なもんは無理いうとるやろが!!」

「やべえよやべえよ。内場の漫画がないと」

 

 外村ヒロシが提示した一枚の写真で小説を書く試練。

 当時のポーズまでちなみが演じてくれる。

 正太郎が恥を忍んで当時の様子を細かく教えたからだ。

 これにはヒロシが懐かしそうに頷く。

 

「僕が出した課題を正太郎くんは見事にやり遂げたね。あれは実に素晴らしかったよ」

「兄貴が一週間なんて無茶な期限を出さなければ、あれで解決したのに」

「僕なりに考えた結果さ。そう簡単にクリアされては面白くない」

「巻き込まれたあたしたちは、たまったものじゃなかったわよ」

 

 もはや漫才というよりも昔を再現した演劇。

 それでも唯にウケたことは間違いない。

 淳平としては再現度の高さに驚くばかりだ。

 

 ――映画作りであの二人に演じてほしい。

 

 そう考えてしまうのも自然の成り行き。

 この二人ならイケる。

 絶妙にハマり役となるだろうと確信をしていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定