青春100%   作:完結の陽炎

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第1話「唯のスキル探し」

 学校は勉強をする場所である。

 それは小学生ながらに分かっている。

 でも家は違うだろうと反発をしたい。

 遊んだり休んだりする憩いの場だから。

 断じて宿題という勉強をするところではない。

 

「しゅくだいイッパイ……さ、さいあくだ!!」

「うっさい!! ちかくでおおごえだすな!!」

 

 放課後の教室。

 正太郎の隣の席に座っている美鈴が注意をする。

 しかも内場が描いた新作漫画を読みながら。

 正太郎は机に突っ伏した状態でイヤイヤを続けた。

 

「サンボウはいいよ。あたまいいから、しゅくだいなんてラクショーだろ。ちくしょう」

「しゅくだい、うつさせろなんていわないよね?」

「うちばのマンガにあったな。でも、そんなブザマなマネはしないぜ」

「ちゃうって!! それはとうじょうがつくったテンカイやろうが!!」

 

 正太郎の前の席に座っている内場からの否定。

 二次創作でアレンジした内容を指している。

 しばらくすると、お手洗いから戻ってきた唯も話に加わった。

 なお、唯の席は美鈴の後ろである。

 

「ゆいもしゅくだいキライ。なんでこんなイッパイだしてくるの?」

「ホンマぎょーさんあってキツイわ。せやけど、やらんワケにいかんやろ?」

「やりたくねえー。いえでやりたくねー」

「だからうっさい。がっこうでいのこりでもすれば?」

 

 最悪の場合、そうするしかないのかもしれない。

 だが下校時間というタイムリミットがある。

 それまでに全ての宿題を済ませられるのか?

 

「はいはーい!! ゆいのいえでべんきょうかい!!」

「ニンジャのいえか。うちばのところ、ちらかってるしな」

「しゃ、しゃーないやろ。マンガにかこまれんとおちつかんのや」

「ふーん、なあサンボウ――」

「いかない」

「まだなにも――」

「いかないったらいかない」

 

 にべもなく断る美鈴。

 視線は内場の漫画に向いたままだ。

 そこで正太郎は次のような発言をする。

 

「しゅくだいのせいで、カクじかんがない。そのマンガもなおせない」

「サッサといくよ」

「ニンジャよりはやっ!?」

 

 唯の部屋で勉強会を開催。

 美鈴がリーダーとしてその場を仕切った。

 おかげでダラダラと長引くことがない

 提出期限が短いものを優先的に片付けてしまう。

 区切りがついたので長居は無用。

 夕飯までには帰らないといけない。

 唯に見送られ、内場は帰りが反対方向になるためその場で別れる。

 途中まで一緒になるのは正太郎と美鈴。

 同じ帰り道で二人が肩を並べて歩く。

 

「やくそく、まもりなさいよ」

「わかってるよ。しゅくだい、てつだってくれたからな」

 

 内場の漫画は正太郎に渡されている。

 美鈴が出した問題点は既にメモで記録済。

 これで心置きなく二次創作に専念ができる。

 

「アンタって、ちょっとかわってる」

「なにが?」

「メモもってるし」

「サンボウみたいにスイスイおぼえられないから」

「キツクいってもきいてくれるし」

「うちばもおなじだ」

「へんなあだ名つけてくるし」

「サンボウはサンボウだろ。かしこいヤツっていみだぞ」

「しってる。そんなよびかた、アンタしかしない」

「うちばはみょうじ、ニンジャはあだなでよんでる」

 

 たまに美鈴は思うときがある。

 もしも正太郎たちと出会えていなかったら?

 他の友達と関わっていたのだろうか?

 まったく想像がつかない。

 独りで本を読んでいるイメージしかできなかった。

 

「サンボウ、あたまいいことはしってたのに。ほかにしらなかったことがあってビックリだ」

「なんのはなし?」

「みんな、しょうせつよまないのに。サンボウだけよんでくれたというはなし」

 

 それは正太郎の中身を見てくれたに等しい。

 美鈴の新たな一面を発見したという意味もある。

 まだ知らない事が他にもあるだろう。

 この時の美鈴はどこか誇らしげだ。

 特別というニュアンスが自尊心を満たす。

 機嫌が良くなった矢先、美鈴の家へたどり着く。

 

「ここだからバイバイ」

「おう、またなサンボウ」

 

 そんな別れ間際にシャッター音が響く。

 カメラを構えて、前髪で目元を隠す少年がいた。

 美鈴が瞬時に反応をする。

 

「なにやってるのバカにい!!」

「おかえりみすず。ああ、キミがみすずのトモダチだね」

「あ、カメラぼっしゅうのヒト、こんにちは」

「あはは。すっかりボクはゆうめいじんだね」

「カメラもちのしょうがくせい、ふつうにめだつから」

「そうかな?」

「そうだよ。あ、まえがみはサンボウとおなじだ」

「へえー、みすずがサンボウか。ボクのいもうと、とってもかしこいからね」

「もおー、よけいなこというなバカにい!!」

「おっとと。じゃあ、またあおうね」

 

 美鈴に強引な押し込みをされて家に入る兄。

 しばらく正太郎はキョトンとして立ち尽くす。

 これらの出来事は、姉の交換日記にも細かく書いた。

 それを読んだ時の綾の反応は……。

 

「クスクスっ」

 

 弟と仲良くしているガールフレンドがいる事実。

 お姉ちゃんとして優しい気持ちになれた。

 精神的に早熟をしているのだろう。

 恋愛小説を書きたくなってくる。

 でも正太郎にはまだ早い。

 だから友情に切り替えて書いてみた。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 唯のスキルをお披露目する日。

 南戸家へ招待をされて動物のクッキーが食卓へ置かれる。

 つかさに教わってようやく作れるようになった。

 黙々を食べる美鈴。

 大喜びで食べる内場。

 そして正太郎は……?

 

「あのサンボウがモンクいわない……に、ニセモノだ!?」

 

 内場の漫画ではダメ出しをするのに、唯の手作りクッキーには何も言わない。

 美鈴が厳しくチェックをするジャンルは決まっている。

 漫画や小説、映画など物語のある創作物だ。

 

「たたかれたいの?」

「イタイのはイヤだ!! ボウリョクはんたーい!!」

「みなみとのクッキー、メッチャうまいわ」

「あ、うちば!! ぜんぶくうなよ!!」

 

 唯としては頑張った甲斐がある。

 数々の失敗を乗り越えての傑作だ。

 それを美味しく食べてくれて嬉しくなる。

 

「ニンジャ。つーさんがつくれるのはクッキーだけか?」

「たぶん、ほかもつくれるとおもうよ」

「なるほど。ほかもつくれるようシュギョーしないのか?」

「それってメーワクにならないかな?」

「でもクッキーだけだと、フツーにあきねえ?」

「アンタ、ぜいたくいってんじゃないよ」

 

 美鈴に怒られたが適当に聞き流す。

 唯が結果を出したことで、スキル勝負は正太郎の勝ち。

 そういうルールだ。

 これで正太郎は唯に願いを提示できる。

 

「ほかのおやつをつくる、べつのスキルをさがす。どっちかえらべ」

「べつのスキルって?」

「クッキーはかいふくスキル。つぎはパワーアップするスキルがいい」

「わーい、おもしろそうだからそっちがいい!!」

「きまりだぜ」

 

 ゲームのような強化スキルは現実に存在しない。

 薬物のトーピングは論外。

 そもそも小学生が思いつくことではない。

 果たして見つけることはできるのか?

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 新しいノートは親に買ってもらう。

 古いノートは綾が大切に保管する。

 正太郎が頼めばいつでもノートを見せてくれる。

 

 1冊目のラストが綾だったので、2冊目は正太郎からだ。

 実際に起きた日常を書くことが多い。

 たまに綾が書く小説があり、その時は正太郎も二次創作で対抗をしている。

 

 今回、序盤から家族の食卓で困っていることを書く。

 いただきます、ごちそうさま。

 食事の礼儀は慣れたから別に問題ではない。

 しかし親からの会話には難儀をしている。

 口に食べ物や飲み物を含んでいるため喋れない。

 呑み込むまで待たせてしまう。

 食事か会話のどちらかにしてほしい。

 黙っていたら気まずくなる。

 食事のペースが乱れる。

 しっかりと対応できる姉が心底羨ましかった。

 こんな悩ましい愚痴を届けた直後に姉がやって来た。

 ドアのノックはしてくれたので部屋へ入れる。

 以前と違い弟に対する接し方が変わってきた。

 

「えんりょがなくなってきたな、ねーちゃん」

「えんりょするからツラくなるんでしょ。言いたいことは言わないと」

「わからないんだよ」

「なにがわからないの?」

「がっこうのきゅうしょく、あっちはワイワイできるのに。いえだとちがう」

「……きっと、トモダチとカゾクのちがいじゃない?」

「そうかも。でもオヤをダマらせるのはダメじゃん」

「ガマンするほうがダメ。おねえちゃんにまかせて」

「えー、マジでなにすんの?」

「だいじょうぶシンパイしないで。わたしはしょうたろうのおねえちゃんだから」

 

 綾は両親へ要望を出す。

 まず一日だけでいいから静かに見守ってほしい。

 理由もちゃんと話した。

 その上で試したいことがあると。

 うまくやれば万事解決するだろう。

 そんな真剣な綾を前に両親が断ることはなかった。

 

「ねー、しょうたろう」

 

 家の食卓で綾から話しかける。

 いきなりのことで両親が驚嘆。

 弟に呼び掛ける姿を見るのは初めてだからだ。

 

「なに、ねーちゃん?」

 

 正太郎が応じた。

 姉と呼ぶ姿も両親は初めて目撃をする。

 夢でも見ているのだろうか?

 父がほっぺをつねり、母の目頭は熱くなった。

 

「しょうたろうのトモダチ、わたしよりおおいね」

「うちば、サンボウ、ニンジャだな。つーさんはねーちゃんのトモダチだろ?」

「うん。つかさはわたしのたいせつなトモダチ」

「ひとりいればジューブンだ。つーさん、ニンキモノでスゴイからな」

 

 親はどうしても威圧的な立場になる。

 それが正太郎にとっては苦手に感じるのかもしれない。

 一歳差しかない姉ならば、友達に近いから対応ができる。

 食事をしながらの会話も成り立つ。

 そして御馳走様をした後のやり取りが重要だ。

 

「しょーたろ。ごはんたべてないトキだったら、おとーさんやおかーさんとはなせる?」

「うん。しゃべるだけ、きくだけ、できるよ」

「わかった。おとーさん、おかーさん、ごはんのトキにおはなしするなら、わたしがきくから」

 

 知らない間に子どもは成長していく。

 それを目の当たりにした両親は感動の一言。

 コミュニケーションも時と場合、そして相手によりけりだ。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 綾の部屋で正太郎がノートを書いている。

 なぜ自分の部屋ではなく姉の部屋でしているのか?

 それは集中できる場所を探し求めてのことだ。

 自分の部屋は雑念が生まれやすい。

 環境の誘惑で継続するのが難しいのだ。

 

「ねーちゃん、いいなコレ」

 

 卓上パーティションで、余計なものが目に入らない。

 壁を背にした配置もあって、後ろが気にならない。

 これらは図書館で借りた本の知識だと姉から聞いた。

 

「おとーさんか、おかーさんにそうだんしたら?」

「あとでやる。あ、えっと……」

「ジショでしょ。はい」

「なんでわかったの?」

「しょうたろうのおねえちゃんだから」

 

 辞書を受け取り分からない漢字を調べる。

 書きたいことには全力を尽くす。

 そのためなら手間も惜しまない。

 

「はいおわった。ねーちゃん、おいとくぞ」

「うん、わかった」

「……」

「どうしたの、しょうたろう?」

 

 苗字は東城で同じなのに下の名前は違う。

 どうして綾なのか?

 どうして正太郎なのか?

 その由来は綾にも分からない。

 言われてみると気になってしまう。

 だから姉弟一緒になって両親へ問い合わせた。

 

 綾は絹の綾織物から来ている。

 繊細で優しく美しい心を持つ上品な女の子。

 正太郎は二つに区分される。

 正が真っ直ぐで正しさを表し、太郎は長男に用いられる輩行名。

 正義感のある誠実な男の子という期待を込めての名付けである。

 子どもの一生に関わる故に親は悩み抜いたらしい。

 

「あ、どっちでもいいけどさ。ねーちゃんみたいなアレほしい」

「しょうたろう、どっちじゃなくて、おとーさん、おかーさんでしょ?」

「とーちゃん、かーちゃん。これでいいか?」

 

 綾に注意されて言い直す正太郎。

 両親からアレの内容を求められる。

 しかし小学生の正太郎では名称がわからない。

 机の上に囲んだ板というジェスチャーで説明をした。

 卓上パーティションのことだと理解をする両親。

 集中力が高まるのでほしいと言ってくれている。

 子どもの成長になるなら買ってあげることに異を唱えるはずもない。

 後日、姉とお揃いの卓上パーティションを手に入れた。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 ご縁というのは日常の中で不思議と作れてしまう。

 それは自然の成り行きともいえる。

 ある日、正太郎と唯がかくれんぼを始めようとした。

 ところが公園のブランコに座って泣いている少年がいる。

 遊びの邪魔になるし、気にもなったので二人で事情を聞く。

 

 名前は真中淳平。

 なぜ泣いているのか?

 貸したゲームソフトを返してくれないから。

 これは見捨てるのも後味が悪い。

 誰に貸したのかを訊いてから、正太郎と唯で取り返しに行った。

 知っている相手だったのが不幸中の幸いである。

 少々荒事になっても二人掛かりなら問題がない。

 正面は正太郎、背後に唯という挟み撃ちで勝負ありだ。

 こうして知り合った訳だが、一つ年上であることが判明。

 その時点で唯は名前の呼び捨てをしており、正太郎はムラビトというあだ名をつけた。

 そんな泣き虫の淳平を放っておけないのか。

 その後も唯は淳平の家に遊びに行くことがあった。

 

 今回はその縁を利用して淳平の家まで連れていってもらう。

 スキル探しでも何か役に立つのかもしれないからだ。

 最近の淳平は映画にハマっている。

 それは将来の夢を抱くようになったから。

 笑われてしまうかもしれないので言わないつもりだった。

 しかしスキル探しをする二人を見て伝えてみる気になった。

 ただ未来を思うだけでなく、実際に行動している二人だからこそだ。

 

「なんだよ。ムラビトからカントクにテンショクか」

 

 淳平の夢は監督になって映画を作ること。

 それを聞いた正太郎はカントクというあだ名付けに変更をする。

 笑われるという淳平の不安は一気に消し飛んだ。

 カントクと呼ばれるだけで嬉しくなった。

 言って良かったと心の底から思えた。

 

「でもじゅんぺー、ちゃんとベンキョーしてるの? セイセキさがってない?」

 

 勉学が疎かになって成績が落ちている。

 実際に親から注意も受けた。

 このままでは好きなものを制限されてしまうかもしれない。

 下手をすれば没収の罰が待っているだろう。

 

「うぅっ……」

 

 さすがにヤバいという危機感はある様子。

 親の権力に子が逆らえるはずもない。

 生きていくためには従う必要がある。

 

「ニンジャ、またなきそうだぞコイツ。なんとかしてやれよ」

「なきむしじゅんぺー、ちゃんとベンキョーすればいいじゃん」

「サンボウみたいなヤツがいればいいんじゃね?」

「えー、そんなヒトがじゅんぺーにいるの?」

「ねーちゃんとつーさん、クラスがべつだからキツイぜ」

 

 学年は同じでも組が違っては関わりにくい。

 淳平のクラスで成績トップは誰か?

 意外な人物が判明する。

 カメラの持込みで没収された人。

 つまり美鈴の兄ヒロシである。

 

「サンボウのにいちゃんがいるならサイキョーじゃないか」

「でもしょーたろ。じゅんぺーとみずすのおにいさん、ナカヨシなの?」

「そんなのしらん。でも、カントクだけでベンキョーできるとおもうか?」

「おもわなーい」

「ひ、ひどい……」

「ひどくない。つよくなるんだよ。レベルアップするためのシレンだぜ」

 

 思い立てば即行動。

 正太郎と唯が淳平を連れて外村家へ向かう。

 インターフォンを鳴らして美鈴が出てくれた。

 

「サンボウ、にいちゃんいるか?」

「いないよ。どっかフラフラでたから」

「マジかよ。せっかくきたのに」

「……ねえ、そのヒトだれ?」

「じゅんぺーだよ。みすずのおにいさんとおなじクラス」

「……トシウエにみえない」

「でしょでしょ。ゆいもそうおもう」

 

 頼りなさげな空気を感じたのか。

 兄という比較対象があるからか。

 美鈴はあまり淳平のことを好ましく感じない。

 なんとなく馬が合わないのかもしれない。

 すぐに正太郎へ視線を変えてしまう。

 

「ところでアンタ、ゆいのスキルさがしはどうなったの?」

「パワーアップスキル、なかなかみつからないぜ」

「そもそもパワーアップってなによ? ゲームじゃないんだから」

「気をたかめて、しゅうちゅうアップ、みたいな?」

「ずいぶんとテキトーね。アンタらしいけど」

 

 心のどこかで納得はしている。

 そんな美鈴の姿にカシャカシャのシャッター音。

 いつの間にか兄が戻って来た。

 

「このバカにい!! なにしてんのよ!!」

「あははっ。みすずのうれしそうなカオ、ボクがのがすとおもうかい?」

「サンボウのにいちゃん、おもしろいヒトだな」

「やあ、またあえたね。なまえ、きいてもいいかい?」

「しょうたろうだよ。とうじょう、しょうたろう」

「ゆいだよ。みなみと、ゆい」

「しょうたろうくんとゆいちゃん。あ、そっちはまなかくんだね」

「そとむらくん、ぼくのことしってるんだね?」

「クラスいっしょだからしってるよ。あ、ボクはそとむらヒロシ。とりあえずあがって」

 

 ヒロシの部屋まで招待をされる一同。

 壁に展示されている写真コレクションが目立つ。

 身内ゆえに妹の美鈴が多く撮られていた。

 

「わぁ、みすずがいっぱいだ。すごぉい」

「サンボウ。うちばのマンガで、コレクターキャラいたよな?」

「アレとはちがうから」

「……あれ? サンボウだけじゃない?」

「あ、しょうたろうくん気づいた? それはキミだよ」

 

 正太郎と美鈴が外村家の前でバイバイをしている写真。

 初めて美鈴の兄に会った日の出来事だ。

 

「サンボウのにいちゃん、しゃしんとるのムズカシイ?」

「そうだね。タイミングとカクドがいのちさ」

「なによアンタ、きょうみもったの?」

「というか、コレクションにするぐらい、とりつづけるのはスゴイとおもう」

 

 飽きることなく撮影をして写真を増やす。

 中々できることではないと感心をしてしまう。

 継続は力なりとはよく言ったものだ。

 

「なるほど。これがサンボウのにいちゃんがもつスキルか」

 

 ここから本題に入る。

 淳平の夢にヒロシが共感をしてくれた。

 勉強を含めて協力は惜しまないと約束が交わされる。

 

「どうしたサンボウ?」

「なにがよ?」

「アイツとにいちゃんがナカヨシってイヤ、というカオしてるぞ」

「してない」

「ゆいしってるよ。ヤキモチだね?」

「おいニンジャ、モチたべたくなるじゃないか。で、マジでどうしたんだ?」

 

 疑問を浮かべて確認をする正太郎。

 美鈴は鋭い目つきのままで答えた。

 

「あのヒトに、いいエイガ、つくれるとおもう?」

「ムラビトからカントクにテンショクだからな。さいしょはレベルひくいからヤバいんじゃね?」

「ゆいは、じゅんぺーがガンバるならオーエンする」

 

 己の夢を果たすために兄を利用しようとする。

 そんな風に美鈴の目には映る。

 要注意人物として警戒する対象となった。

 

「なーニンジャ。なんかコレクションしてるか?」

「コレクション?」

「こんなシャシンみたいに、あつめてるモノってあるか?」

「んーとね、ゆいはキャラクターグッズをあつめてるよ」

 

 ここで漠然としながらも正太郎は閃く。

 コレクションをするほどのやる気。

 それがスキルに関わるのかもしれない。

 そこに手掛かりがあるなら探してみようと。

 

「チョウサするぞ。スキルがみつかるかもしれない」

「ほんと!? じゃあ、とくべつにみせてあげる!!」

「サンボウのにいちゃん、ヒントくれてありがとう」

「ははっ、おやくにたててボクもうれしいよ」

 

 正太郎と唯はその場を離れようとする。

 だが美鈴もついて行くと言い出した。

 別に断る理由もないのでOKとする。

 そして唯の部屋でキャラクターグッズを見せてもらう。

 

「くま、ねこ、いぬ、きつね、ぞう……どうぶつのぬいぐるみか」

「そうだよ。ゆい、どうぶつダイスキだから」

「じゃあ、ペットはかわないのか?」

「おせわがたいへんだからダメって、おとうさんがハンタイするんだよ」

「サイズもイロイロあるな。ってか、このクマでか!!」

「だっこしてねると、すっごくきもちいいんだよ」

 

 アイデアでも思い浮かんだのか。

 正太郎は咄嗟にメモを取り出す。

 たが――。 

 

「ペンをわすれた」

「だらしないね。ほら、コレかしてあげる」

「たすかったぜサンボウ」

 

 美鈴の愛用するシャーペンを借りて走り書き。 

 どうぶつ、ぬいぐるみ、にんぎょう、ようふく、リボン。

 だっこまくら、きょだいぐま、とうみん。

 どうぶつえん、ゆうえんち、ペット。

 

「しょーたろ。なにこれ?」

「アンタのそれ、じゆうはっそうほう?」

「フッ、ねーちゃんじきでんのワザだぜ」 

 

 姉との交換日記を通じて教わった自由発想法。

 思いつくキーワードを書いて連想するだけのシンプルな技法。

 似たような単語、関係がありそうな単語も思うがままに書く。

 

「ねーちゃんだったら、これでストーリーかいてくれそうだぜ」

「しょーたろは、かかないの?」

「これだけではつくれないぞ。マンガとかしょうせつがないとダメだ」 

 

 会話をしつつも正太郎は発想を続ける。

 洋服とリボンに着眼。

 そこから関連付けて裁縫のイメージが出た。

 ボタンの取付や、ズボンの裾上げに役立つぐらいだろう。

 パワーアップスキルに関係がない。

 アイデアが空回りを起こしている。

 

「ねえ、ちょっといい?」

「なんだサンボウ?」

「ホンキでやるつもりなら、ナライゴトにいったら?」

「それってジュクのことか?」

「ほかにもあるでしょ。ピアノ、ダンス、そろばんなどイロイロね」

「なるほどな。でもそれって、ニンジャのオヤがおカネをださないとムリだよな?」

「そりゃそうよ。タダでやってくれるワケないじゃない」

 

 美鈴の意見を受け止める。

 唯の両親に習い事が可能かどうかを後で尋ねてみた。

 結果、唯にやる気があるなら通っていい。

 ただし2つ3つを一気に同時はNGだ。

 それは唯を心配してのことである。

 もっともな事なので反論の余地もない。

 この件は保留となり一時預かりとなった。




 
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