青春100%   作:完結の陽炎

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第33話「映研の再起と映制の受験」

 映研の活動結果は散々なものであった。

 外部の賞はおろか嵐泉祭のランキングに掠りもしない。

 部室はこれまで通りのボロい物置小屋を使う。

 来年の映画作りは次の夏休みを迎えないとほぼ撮れない。

 寒い冬に夏のスタイルで撮影なんて出来るはずもない。

 よって活動は来年に向けての部費確保でバイトをするぐらいである。

 新入部員については全くやって来る気配がない。

 結果が伴っていないのに入りたがる物好きはいない。

 

 定期テストでも淳平とさつきが赤点を取って補習を食らう。

 担当は黒川先生。

 補習のための講義を行ってから補習のプリントを渡す。

 それが終わるまでは帰れない。

 

「なんで小宮山が赤点じゃないんだよ」

「あのトゲトゲ、意外と頭いいのか?」

「そんなことない。あり得ないって」

 

 力也の成績が上がったのはこずえのおかげである。

 こずえに相応しい男になろうと必死で勉強をしたからだ。

 単純であるが故に型破りの結果を叩き出したのである。

 

「ほらそこの二人!! 喋る余裕があるならとっととプリントを済ませろ!!」

 

 黒川先生もヒマではない。

 他に仕事があるのにも関わらず、生徒のために補習をしている。

 叱り飛ばされて黙って補習のプリントと向き合う。

 ヒーヒー言いながらもどうにかして終わらせて解放された。

 

「あたし、役に立たない勉強嫌い。絶対あんなの将来使わない」

「気持ちはわかる。オレも映画一筋で生きていきたい」

「あーもうムカムカする。こんな時は――」

「さつきさん!! お待ちしておりました!!」

 

 狙いすましたように天地が現れた。

 それでさつきの機嫌が一気に良くなる。

 絶妙なタイミングだったようだ。

 

「おう天地。あたしのうさ晴らしに付き合え」

「はい!! 喜んでご一緒します!!」

「じゃあな真中」

 

 さつきが天地を連れて去っていく。

 まるで女番長と舎弟の関係みたいだ。

 とても天地財閥の御曹司には見えない。

 

 ――天地は幸せそうだな。北大路も満更でもないみたいだ。

 

 天地は他の女に見向きもしない。

 どれだけモテたとしてもさつき一筋を貫く。

 そんな想いを抱く天地にさつきは一切の手加減をしない。

 もっと強くなれと空手を通じて期待を寄せている。

 

「ほら綾、彼氏の補習が終わったみたいだよ」

「う、うん」

「なに照れてるの。そろそろ慣れなよ」

 

 下駄箱まで行くと待っていたのは綾。

 その間のヒマつぶしに付き合ったのがつかさだ。

 つかさが淳平に向かって言う。

 

「次からはもっと勉強しなよ真中くん。留年であたしたちの後輩なんてならないように」

「う、うん。努力するよ」

「それじゃあ綾、また明日」

「うん。またねつかさ」

 

 淳平は靴箱から靴を履き替える。

 周りを見ると嫉妬という重々しい男子生徒たちの気配。

 もしうっかり綾がドジで転び怪我をしたとしたら?

 淳平はしばき倒されてしまう自分を想像した。

  

「か、帰ろうか」

「う、うん」

 

 お互いに緊張してしまっている。

 淳平から綾の隣に行って手の甲で軽く触れる。

 

「あ……」

 

 綾の小さな反応があった。

 そのまま手の甲をつけたままで様子見。

 ジーとしてて綾も手の甲で軽く押した。

 押して引いてで奇妙な駆け引きをする二人。

 譲り合いでもしているかのようなやり取り。

 やがてどちらともなく掌を重ねて握り合った。

 

「……」

 

 お互いに押し黙ったまま、校門を出て帰り道を歩く。

 何か話したほうがいいのか? 黙ったままがいいのか?

 どちらがいいのか淳平は判断をしかねてしまう。

 ただ流されるままに静かにしているだけだ。

 

 ――東城の手が細くて柔らかい。この手で脚本を書いてくれてるんだ。

 

 綾がチラチラと淳平の顔を見ている。

 好きな人の様子が気になって仕方がないようだ。

 淳平のほうも綾のドジが発動しないようにチラチラの様子見。

 そのため、時折お互いの目が合うことがあって咄嗟に逸らし合う。

 何かいけないことをしているかのような気持ちになる。

 それを打ち消そうと綾から話しかけた。

 

「も、もうすぐ冬休みだね」

「あ、うんそうだね」

「当分、部活できることがないよね?」

「そうだな。バイトするぐらいしか思いつかないよ」

 

 ここで会話が途切れる。

 次の話題を振るために今度は淳平から切り出した。

 

「冬休みはヒマ?」

「えっと、特にすることはない……かな」

「冬のシーズン中、いい映画やってるんだよな」

「あ、それなら正太郎からお勧めの映画教えてもらったよ。それで行って来いみたいな感じで」

「へえー、それならせっかくだし一緒に見に行くか?」

「うん行く」

 

 綾としてはありがたいことである。

 押し付けられたまま誘う勇気がなかったから。

 上手く事が進んで幸せな気分に浸ってしまう。

 そんな嬉しそうな姿を抱きしめたい衝動に駆られる淳平。

 でも手を繋いでいるだけで充分だと理性で抑え込む。

 

 ――あれ以来、恥ずかしくて名前で呼べない。今更苗字も呼べない。

 

 嵐泉祭以降、名前を呼ばずに話しかけてしまっている。

 それは綾も同じだ。

 お互いに名前を呼ばない会話で今も進めてしまった。

 

 ――とりあえず今は嬉しそうだし、このまま家まで送って終わりとしよう。

 

 これ以上は調子に乗ると痛い目を見そうだ。

 欲張りを控えて東城家までたどり着く。

 帰ろうとした所で正太郎が出てきた。

 家のポストに入っている新聞やチラシを回収している。

 

「おかえりねーちゃん、いらっしゃいカントク」

「正太郎ただいま」

「あ、どうも東城」

「えっ?」

「あ、違う違う!! 弟のほうだよ弟!!」

「なんでねーちゃんが反応したんだ? 下の名前で呼ばれてるならスルーできるだろ?」

 

 正太郎の言葉にお互いに気まずそうにしている。

 それだけで呼び合ってないことがバレバレだ。

 

「カントク、下の名前呼ぶぐらいでビビるのはどうかと思うッス。ねーちゃんもねーちゃんだ。付き合ってる彼氏の名前ぐらい呼んでやれよ」

「う、うるさい。正太郎には関係ないでしょ」

「関係あるだろ。今、カントクが苗字で呼んで間違って反応したじゃないか。だからオレが苗字、ねーちゃんは名前で呼び分けをする。カントクにとって名前で呼ぶ特別な人がねーちゃんだ。もっと自信を持てばいいんだよ。それはスゴイことなんだって」

 

 心の中で唯は例外だと言い訳をしておく。

 あれは淳平にとって妹のような立ち位置だから恋人と同列に語れない。

 唯も淳平に対しては世話を焼かせる情けない兄みたいなもので恋愛とは別物だ。

 

「せめて二人っきりの時に呼び合って練習をすればいいんだよ。そうすれば人前でも自然に呼べるようになるだろうさ」

 

 言いたいことを言って正太郎は家の中へ戻る。

 その場で二人だけになった淳平と綾。

 お互いに名前を意識していることは間違いない。

 

「な、何事も練習が必要だよな?」

「そ、そうだね練習……する?」

「お、お先にどうぞ」

「そちらからどうぞ」

「いやいや、オレよりもと――あ、ううっ……」

 

 東城と綾、どちらも言葉を詰まらせた。

 情けない事この上ない。

 それでも呼ぼうとしてくれたことに変わりがない。

 その努力に引っ張られるように綾も呼ぼうとする。

 

「じ、じゅ……じゅぺ……ううっ……」

 

 淳平という呼び方がとにかく長い。

 これが淳だけだったら呼べたかもしれない。

 なお、正太郎は弟だから長くても平然と呼べる。

 見られると恥ずかしくて言えない。

 だったら見られない状態なら言えるかもしれない。

 そう考えて綾は淳平と背中合わせになった。

 

「お願いこのままでいて」

「わ、わかった……あ、綾」

「あ……じゅ、淳平く、ん」

「綾」

「淳平くん」

 

 お互いにしゃがんでしまい、顔を手で隠して悶える。

 羞恥心のゲージが溢れてしまう。

 しばらく時間を置いて何とか立ち上がった。

 

「ま、また明日な……綾」

「う、うんまた明日……淳平くん」

 

 燃え上がる恥じらいで逃げるように走り去る淳平。

 綾は家の中へ入り、自室のベッドへ飛び込む。

 近くの枕を抱きかかえて左右にゴロゴロと寝転がる。

 表情が緩み切って幸せ絶頂の少女がそこにあった。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 淳平は綾と映画を見に行く約束をした。

 懸念事項としてあるのは寝坊の遅刻である。

 合宿の日みたいな事は二度とあってはならない。

 目覚まし時計は二度寝のリスクで頼りにできない。

 冬休みなので唯に頼もうかと思ってヒロシの家へ向かった。

 

「やあ真中、どうしたんだい?」

「唯いる?」

「ああ、冬休み中はいるよ。美鈴と一緒に受験勉強中さ」

 

 受験と聞いて淳平はためらってしまう。

 去年の経験者として、冬休みは最も重要な時期だ。

 それなのに自分の勝手な都合で唯を巻き込むのは流石に気が引けた。

 

「ごめん何でもない。邪魔したな」

 

 こうなったら誰にも頼らずに自力で起きるしかない。

 そう決意して目覚ましを二つ用意してタイマーをセットした。

 全然眠れないのでDVDの映画を見る。

 夜更かしをしてしまっての遅い睡眠となった。

 夢の中では淳平と綾がイチャイチャしている。

 キスをせがむ綾に応じようとする瞬間。

 

「ぐあっ!!」

 

 ベッドから床へ落ちて顔面の痛みで目が覚める。

 夢の影響で寝相が悪かったようだ。

 

「大丈夫!? 淳平くん!!」

「……へ?」

 

 まだ夢の続きを見ているのだろうか?

 いるはずのない綾が淳平の部屋にいた。

 脱いだコートを片腕に、長袖セーターとチェック型スカートに冬用ストッキングを着ている。

 

「な、なんで?」

 

 交換日記を通じて正太郎から指摘された点が二つある。

 一つは待ち合わせをしている間にナンパをされるかもしれない危険性。

 二つは淳平が合宿と同様に寝坊をして遅刻をする可能性。

 以上の問題点から、直接淳平の所へ行くほうが確実だ。

 綾が来た時は淳平の母が対応してくれてよろしく頼まれている。

 本当は起こそうとしたけど、幸せそうに寝ていたので起こせなかった。

 そのように説明を受ける淳平は焦ってしまう。

 すぐに着替えて準備ということで綾は部屋の外で待った。

 

「待たせてごめん。行こうか」

「うん」

 

 手を繋いでゆっくりと落ち着いて進む。

 綾も足元に気を付けて歩行をしている。

 多少ぎこちない移動だが当初よりは改善された。

 

「それでどんな映画を勧めてたの?」

「私たちが本当に作りたかった映画に近いって言ってた」

「本当に作りたかった映画……」

 

 そう言われて淳平が興味を持たないはずがない。

 実際に見せてもらおうと映画館へ向かった。

 入場開始の時間に映画館スタッフへ購入したチケットを見せてシアターへ進む。

 チケットに印字された座席番号を見つけて座ると。

 

「あ、どうも真中先輩に東城のお姉ちゃん、ご無沙汰しとります」

 

 隣に片手を上げて爽やかな挨拶をする内場。

 メガネ越しの穏やかな笑顔で愛嬌を振りまく。

 以前よりも少し体格が大きくなったようだ。

 

「内場もこの映画を見に来たのか?」

「せやねん。受験勉強の息抜きちゅう事で美鈴を誘って来とります」

「美鈴ちゃん?」

「あ、ポップコーン買いに行ってて今は席を外しとります。美鈴は映画館で見る時はポップコーン食べる派なんで」

 

 内場は映画のデートに誘い、具体的に上映する映画を美鈴に選んでもらった。

 そして映研で本来したであろう身分違いの悲恋映画をチョイス。

 その結果が今ここにある。

 

「この映画を選んだのは真中先輩ですか?」

「あ、いや東城のおススメだって……あ、綾が言ってたから」

「なるほど。東城のことやからお節介焼いたんやろうな。アイツらしいわ」

 

 綾という名前について内場はあえて流した。

 野暮なことをしないのが内場の優しさである。

 正太郎の気遣いに対しても理解が早い。

 そんな会話をしていると。

 

「お待たせ貴方、ついでにホットココア買ってきたから」

「おおきに美鈴。あ、隣に真中先輩と東城のお姉さんがおるで」

「……選んだのは綾先輩?」

「正確には東城がお姉ちゃんに勧めたんやて」

「ふーん、映研に対しての皮肉が満載ね」

「励ましも混ざっとるやろ。次は頑張れみたいな」

「そう? アイツ脚本を変えたことに対して激怒してたじゃない。創作家に対しての侮辱に他ならないって。この映画を勧めたのだって、それに対しての当てつけなんでしょ」

「そういう事は思うても言うてやりなや。映研にも色々と事情があったんやと軽く流してやるもんやで」

「とんだお人好しね貴方は。そのホットココアみたいに甘いわ」

「辛口の美鈴と甘口の僕でええ塩梅になるやろ。こういうのはバランスが大事なんや」

「……言ってなさい。ほら映画が始まるから静かに見るわよ」

「了解や」

 

 耳が痛くなる美鈴の批判を内場がオブラートに包んでフォローをする。

 二人の間に割り込める余地がどこにもなかった。

 淳平と綾は何とも言えない表情でスクリーンに視線を向ける。

 そして映画鑑賞に浸っていくのであった。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 映画のスタッフロールが流れてのエンディング。

 淳平と綾は二つの意味で涙を流す。

 一つは純粋に悲恋映画のストーリーに感動をしたこと。

 もう一つは映研で自分たちがした愚かさを思い知ったこと。

 

「さすが名作の映画やな。僕もちょい泣けそうになったで」

「素直に泣いていいのよ。これはそういう映画だから」

「美鈴はポップコーンをムシャムシャして平然な顔で見とったな」

「冷血な女に見えた?」

「ちゃうちゃう。見惚れてまうぐらい美人やったで」

「……貴方、ちゃんと映画を見たの?」

「もちろんや。何ならこの後の天地レストランでテストしてもらってええで」

「そうさせてもらうわ……それで思い知った? アンタたち映研のしたことが、どれだけアイツにとって悲しい思いをさせたことか」

「まあまあ落ち着き美鈴。東城も改善を促すためにこの映画を勧めたんやろうし、東城の狙いは充分に果たせとるで」

 

 正太郎に心の痛みを与えた映研のやり方にかなりご立腹の美鈴。

 特に淳平の判断力や決断力の悪さ等が鼻についた。

 同じ監督として遺憾の意を向けてやりたくなる。

 すっかり意気消沈となる淳平と綾。

 それを優しくフォローを入れてくれるのが内場である。

 

「僕ら泉坂高校に受験するんで、お二人の経験を参考にしたいんです。特に中学と高校の違いはメッチャ興味あるんで。もし良かったら一緒に天地レストランでお話を聞かせてくれませんか? 将来の後輩を助けると思うて」

 

 後輩となるだろう内場に頼まれると断りにくい。

 先輩として力になれるのなら、映研の愚行に対しての償いになるだろう。

 二人は快く了解をして天地レストランへ行くことにした。

 

「貴方ってへりくだった態度をとることが上手いのね」

「美鈴や東城ができんことは僕が引き受けるで。それが映制の力になるやろ」

「……アイツが貴方をいい男すぎるって褒めてたけど、その意見にあたしも同意するわ」

「僕から言わせれば、東城のほうがええ男やで。あの端本が心底から惚れ込むほどやし」

「あたしに言わせれば、アイツは変わり者よ。そのちなみとまともに付き合えるのだから」

「端本は嫉妬さえなければ普通の女の子やろ?」

「そのヤキモチが狂気を感じさせて怖いのよ。知ってるでしょ?」

「せやな。絶対に東城は渡さんし手放さんちゅう覚悟と本気は伝わっとるで」

「一時期、あたしが恋敵として見られていたのかと思うとゾっとするわ。もし貴方と付き合ってなかったらと思うと……ね?」

「全部察したで。結果的に丸く収まって何よりや」

 

 淳平と綾が聞こえない距離と声でのやり取り。

 美鈴にとって内場は欠かせないパートナーだと再認識をした。

 自分にできない補いをしてくれることが大いなる助けである。

 

 天地レストランのテーブル席へ案内をされた。

 さつきとつかさの北西コンビがウエイトレスをしている。

 冬休み中はこのお店で接客のバイトをするらしい。

 忙しそうに働いているから不用意な声掛けはしない。

 各々が注文をしてパスタやサンドイッチなどの軽食をとる。

 そして淳平たちの経験談を聞かせてもらった。

 自然な流れで内場が映研の内情を探ることにも成功する

 その手腕は美鈴も舌を巻くほどだった。

 

「なるほど。ほな映研の活動は来年の夏ぐらいまでは、ほぼオフなってしまいますな」

「部費を稼ぐためにバイトするぐらいかな。あとは部室の掃除とか」

「僕ら部室を見学させてもらいましたけど、えらいボロボロでエアコンがないのはキツイと思いましたわ」

「そうなんだよ。だから夏場は他の涼しい所でやるしかなくてさ。でも今みたいな店だとお金が掛かるし、満室だったら待たないといけないから苦労したよ」

「僕らみたいに少人数なら誰かの部屋でやれますけどね。増えてしまうと流石にキツイですな」

 

 嵐泉祭以外で映画を作って外部へ発表をしないのか?

 それも考えたようだが、そんな簡単に出来るほど甘くはないようだ。

 皆の都合もあり、あまり活動日程を増やしすぎると息切れをして続かなくなる。

 予算や資材などその他諸々で乱発できない事情もあるらしい。

 

「ありがとうございました。あ、二人はこの後にどこか行く予定を考えとりますか?」

「いや特には……綾は?」

「ううん、淳平くんの行きたい所があればと思って」

「お二人が読書嫌いじゃないなら、中間古書店を見てみるのもええかもしれません。東城が言うてましたけど、古書店は掘り出し物を探す楽しさがあるそうなんで」

「そうだな。綾がいいならそこに行ってみようかな」

「うん。私、そこに行って素敵な本があったら見てみたい」

「内場ありがとう。オレたちそっち行ってみるよ」

「こちらこそ、ええ情報ありがとうございました。また今度会えたら、こうしてお話ができると嬉しいです」

 

 お互いに気持ち良く会話を締めて別々に離れた。

 内場はニコニコしており、美鈴は怪しげな目を向ける。

 その掴み所のなさに見覚えを感じたからだ。

 

「貴方って意外にしたたかね。もしかして兄貴の影響?」

「せやな。カメラを教えてもらった関係で、若干ヒロシさんの影響は受けとるかもしれんわ」

「アイツが知ったら、貴方に交渉を任せるかもしれないわよ」

「あれは東城やから出来ることや。下手に出る僕より、強気な東城のほうがええんよ。特にヒロシさんみたいな相手なら、絶対に東城がやったほうがええで」

「……確かにそうね。でも状況次第では貴方にも協力してもらうから」

「もちろんや。今みたいな状況やったら僕に任せてくれてええよ」

 

 頼れる内場の魅力に美鈴が惹かれてしまう。

 もっと好きになってしまって心が躍る。

 内場の袖を右手でつまむことで甘えたいと何気なくアピール。

 左手が無意識に触り、可愛く見せたいというクセが出ている。

 それを知ってか知らずか、内場は笑顔のままハッキリと言う。

 

「好きやで美鈴。これからもよろしく頼むわ」

 

 美鈴のハートは確実に射止められた。

 溢れる想いが収まりそうにない。

 コツンと内場の胸におでこを当てておねだりをする。

 

「人目のつかない所に行きたい」

「今、親おらんから僕の部屋に来る?」

「うん」

「わかった。僕も二人だけの時間を過ごしたいから」

 

 色っぽく見える美鈴に内心でドキドキとする内場。

 恋する女の子は綺麗で可愛く見えてしまう。

 それは美鈴とて例外ではない。

 こうして内場の部屋で甘いひと時を過ごしていった。

 

 一方、淳平と綾は中間古書店へ立ち寄る。

 店員が綾と覚えていて軽く会話をした。

 自由に本を見て回っていいと歓迎を受ける。

 

「自由に本を見てみるから。綾もオレのことは気にしないで見てくれ」

「ありがとう淳平くん」

 

 早速、色々な本を見て回ったが綾が気になった点が一つ。

 本棚の下にある隙間にノートが挟まっていたことだ。

 好奇心でノートを開いてみると、中間が書いた小説を目にする。

 過去に戻って人生をやり直す楽しそうな物語だ。

 ジャンルとしてはタイムリープやタイムトラベルの系統になるだろう。

 短編で続きがないからか尻切れトンボの印象を与えた。

 あとがきに書かれていたことに注目。

 これを読んだ人は感想を書いて本棚の下へ隠してと指定があった。

 作者の望み通りにして綾は本棚の下へ隠し入れる。

 綾は気を取り直して他の書物を見て回った。

 そして幾つかの本と巡り合って買うことにする。

 

「良かったな綾。いい本と出会えて」

「うん。淳平くんは買わなくていいの?」

「また今度にしようかと思ってさ。今回は見るだけにしておく」

 

 淳平の財布事情もあるのだろう。

 深入りはせずに中間古書店を出た。

 綾としては色々と収穫のある出来事だったといえる。

 内場とのやり取りが良かったのか。

 既に二人は名前で呼び合えていた。

 呼んだからといって周りがからかって来ることもないから。

 むしろ心地よいとすら思えてきた。

 

「あの映画はとてもいい映画だと思った。大切なのは自分の意思なんだって。他人の意見でねじ曲げちゃダメだってよく分かったの」

「オレもそうだよ。悲恋だからこそいい映画になっていたもんな。だからこそ嵐泉祭で発表したアレはない。評価されないのは当たり前だと思った」

「美鈴ちゃんが怒るのも当然だよ。正太郎のために怒ってくれて本当に申し訳ない気持ちになっちゃった」

「あれが映制の監督なんだよな。すごい貫禄を感じた」

 

 二人で反省会を開いている。

 決して後ろ向きではない。

 次へ活かすための布石とするためだ。

 

「オレ、次こそ最高の映画を作る。そしてアイツらに認めてもらって、さらにスゴイ映画を作るんだ。そのためにもアイツらに協力してほしいからさ」

「うんそうだね。皆で力を合わせたら絶対にいい映画になるよね」

「だからこそ勝つ必要があるんだ。アイツら映制に」

「やろう淳平くん!! 私、今度こそ間違えないから!!」

「ああ一緒に夢を追いかけよう!! これからだよオレたちの夢は!!」

 

 ガシッと力強く握手をする淳平と綾。

 監督と脚本家として真剣な目をしていた。

 こうして映研の再起を図っていくのである。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 泉坂高校の入試を受けるための教室。

 指定の席へ座った正太郎は腕時計を外す。

 本番の試験を相手であるならば手加減は無用だ。

 

 ――かかって来いよ入試共、お前らなんてボコボコにしてやんよ。

 

 脳内では入試科目を敵として見立てて戦闘態勢に入る。

 鉛筆は持った。消しゴムもある。予備の鉛筆も備えた。

 万全に筆記具という名の武器を整えて構える。

 そして試験開始の合図が鳴った。

 

 ――どんな問題であろうと容赦しない。攻略あるのみ。

 

 リズムよくスラスラと問題を解く。

 脳内では剣舞で無数の敵を斬り倒すイメージだ。

 速読のスキルで時短を狙う。

 その都度チェックをして思い込みのミスも防ぐ。

 

 ――マークシートも記述も両方対策済みなんだよ。

 

 どちらでも戦えるように受験勉強は済ませてきた。

 時間が余ったら全体の見直しを徹底的に行なう。

 倒れた敵にトドメを刺すイメージだ。

 

 ――オレならこの問題はこれで引っ掛けてやるし、こっちはもうちょっと捻るかな?

 

 二次創作をする時のクセが出てしまう。

 問題文に対してこうすればいい、ああすればいいを考える。

 もし許されるのならば、問題用紙を改造してみたい。

 さすがに非常識だと分かっているのでそんなことはしないが。

 

 ――この問題を作った人は、もう少し難しくしていいと思う。名門校だし。

 

 試験を作成した者の視点まで想像を巡らせる。

 やることがなくなってヒマになったからだ。

 脳内では戦場で見張り役をしているイメージである。

 終了の合図が響く。

 次の科目との対戦までには少しの間が開く。

 正太郎は手加減モードに切り替えての小休憩をとった。

 

 ――空手の瞑想と呼吸法で気持ちの切り替えと精神の回復だ。

 

 さすがに試験場で正座または座禅をするのは不可能。

 狭い椅子の上でそんなことはできない。

 仕方がないので椅子に座ったままで実践。

 漫画のような完全回復はありえないが、気休めでもそれなりの効果はある。

 

 ――もうちょっと休憩時間があれば、空手のウォーミングアップで身体をほぐせるのに。

 

 それは仕方のないこと。

 戦場の敵は悠長に待ってくれないのだと心に言い聞かせる。

 こうして次の科目までに出来るだけの備えをしてから腕時計を外す。

 手加減は一切なしだ。

 

 ――さあ、かかって来い。

 

 戦士のような目つきで次々と試験科目に挑んでいく。

 正太郎の想像では無双が繰り広げられた。

 映制という心の旗を掲げて、それを背負うが如くの受験。

 誰かの為とするならば映制の為。

 誰一人欠けてはいけないからこその本気だ。

 

 ――皆が頑張ってるのに、オレひとりだけ不合格なんて敗北は許さん。

 

 どのような問題でも油断はしないし慢心もしない。

 回答と見直しの基本を忠実にして挑み続けた。

 

 ――あ、この問題はこう変えたほうが面白いかも。

 

 ヒマになったら改造ネタを考えてしまうのはご愛嬌である。

 こうして全ての受験科目が完了。

 映制メンバーが泉坂高校の入口付近で集合をする。

 正太郎が労いつつも皆に受験の調子を尋ねた。

 

「僕は全般的にやれる限りのことは出来たと思うで。あとは運任せや」

「唯、英語がちょっと自信ないかも。ちなみは?」

「うん、わたしも英語が難しかったと思う。美鈴は?」

「特に問題ないわよ。あたしは、そこの誰かさんみたいに非常識なこと考えたりしないから」

「おい、なんだよ非常識って?」

 

 聞き捨てならないと睨みつける正太郎。

 どこ吹く風かと気にせずに美鈴は答える。

 

「どうせアンタのことだから、試験問題を改造したいとかバカなこと考えたでしょ?」

「失礼な。ちゃんと手加減なしに回答を全部やって、見直しもやって、それでもヒマができた時だけだ」

「どの科目でそれやったの?」

「全部」

「……バッカじゃねーの。本番でそんなマネするのアンタだけよ」

 

 改造を考える正太郎は異常だが、それを推察できる美鈴も大概である。

 もはや余裕の域を越えている。

 内場とちなみ、唯はひたすらに唖然とするばかりだ。

 

「安心しろ。これはあくまで考えただけで、問題用紙を実際に改造したりはしてないから」

「そういう問題じゃない」

「試験の問題だけに――うぐっ、ツッコミのローキックは痛いぞ」

「やかましい」

「つーかさ、あれだったら美鈴の問答やってるほうがマジ難しいって。受験科目よりも難易度高いってどんだけヤバいんだよ」

「失礼ね。人を化け物みたいに言うんじゃないわよ」

「それは化け物に失礼だ」

「今度は張り倒すわよ」

「暴力反対。本気を出して消耗が激しいから遠慮してくれ」

 

 そう言ってちなみバリアを発動させる。

 単純にちなみの後ろに回って盾にするだけだ

 そんな正太郎の頭をちなみが背伸びをして掌で撫でる。

 

「ち、ちなみ?」

「頑張ったしょーくんが偉いなって」

 

 正太郎は姿勢を少し低くした。

 ちなみが背伸びをしなくていいように。

 大人しくナデナデを受けているが赤面までは隠せない。

 

「わー、しょーたろの顔が真っ赤だ」

「あれは確かにハズイで。せやけど甘んじて受けるのが東城なんやな」

「変わり者には変わり者がお似合いってことよ」

 

 ちなみの気が済んだところで正太郎は深呼吸を繰り返す。

 まだ顔が火照って感情が安定しない。

 すっかりちなみに翻弄されてしまったから。

 

「ちなみ、人前で頭ナデナデは遠慮してくれ。変な気分になる」

「うんそうだね。カワイイしょーくんを他の人に見せたくないし」

「男にカワイイを言わないのが定番だぞ」

「男女平等なら男がカワイイって言われてもいいと思うんだ」

「だったら女がカッコイイもありだよな?」

「だね」

「まあ理屈が合ってるならカワイイは言ってもいいや。でもナデナデは人目のない所でやろうな」

「はーい」

 

 話がまとまったようである。

 合格をしたら皆でお祝いの乾杯がしたい。

 そんな希望をする唯に反対をする者はいなかった。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 泉坂高校の合格発表で映制メンバーの全員が受かった。

 美鈴の部屋でお祝いの乾杯をする一同。

 ふとした思いつきで、正太郎は英語で美鈴に話しかける。

 しかし即答をされて数倍の量を早口で返された。

 むむむ状態の正太郎は、筆記体を使って引っ掛け問題を見せる。

 それも呆気なく看破。

 より難しい問題を筆記体でやり返されてぐぬぬ状態の正太郎。

 腕時計をつけての手加減モードだが、本気を出しても美鈴に勝てる気がしない。

 ちなみが気になって筆記体の紙を見てみると。

 

「わたし、こんな眩暈がしたの、小学生の時にしょーくんの小説を見た時以来だよ」

「僕もちょい見せてや……な、なんやこれ? 全く読めんけど暗号か?」

「ねー唯にも見せて見せて……な、なにこのミミズみたいな文字? これが英語?」

 

 三人は正太郎と美鈴の筆記体が分からない。

 すると正太郎がブロック体の英語に書き換えて三人に見せた。

 これなら読めるだろうと。

 

「あ、あのしょーくん。これ何て読むの? 通訳がないとちょっと厳しいかな」

「ああ、専門用語を混ぜたから分かりにくいか」

「唯、全然わかんなーい。なんかすっごく難しいことを言ってる感じだよぉー」

「ここの序盤から中盤ぐらいは専門用語ないけど読めないか?」

「こんな英語、唯は習った覚えない」

「あ、そっか悪い。高校レベルの英語使ってるから、分からなくて当然だ」

「東城、僕らまだ中3やで。なんで高校レベルの英語を使っとるんや?」

「英語を教えてくれた美鈴を超えてやろうと思ってさ。ほら内場の漫画にあっただろ? 師匠を超える弟子のカッコいいシーン。あんな感じになってやろうと対抗したが……現実は漫画のようにいかないものだな。トホホだぜ全く」

「僕の漫画を見てそこまでやるのは東城だけやで。普通は誰もやらんから」

 

 美鈴はこっそりとため息をつく。

 正太郎の異様なまでの対抗意識が成長の源。

 ライバルがいればより強くなるタイプだ。

 圧倒すればするほどハマってやる気を出してくれる。

 そのため美鈴も己の研鑽には一切の妥協をしなかった。

 正太郎を上回るだけの見えない影の努力。

 それは誰の想像にも及ばない範疇である。

 言うなれば正太郎が今の美鈴を君臨させたといっても過言ではない。

 

 ………………。

 …………。

 ……。

 

 中学の卒業式。

 去年は在校生代表として送辞をした美鈴。

 今年は卒業生代表として答辞を行なった。

 トップとして堂々とした振る舞いを見せてくれる。

 

 ――うわあ、ヒロシ兄さんが泣きながら撮影してる。美鈴、絶対に恥ずかしいと思ってるだろな。同情するぜ。

 

 兄のヒロシが保護者側で参加している。

 泉坂高校の学ラン姿でカメラを構えて感動の涙を流す始末。

 これでもかと妹の美鈴を撮りまくって幸せの最高潮だ。

 去年は卒業生ゆえに出来なかったことを今まさにやっている。

 

 ――って、オレも人のこと言えないや。ねーちゃんとかーちゃんが一緒に来てるしな。でも大丈夫か? ドジるなよ絶対にドジるなよ。

 

 姉のドジで身内の恥を晒したくない。

 だから卒業式に来るなと言いたいのは正直なところ。

 しかし家族としての情があり、拒否をするのも些か了見が狭い。

 もし参加するならドジをしないようにと条件に付けた。

 母親がいるから大丈夫だろうと信じるしかない。

 

 ――卒業式って堅苦しいけど、一生に一度だと思えば我慢できるよな。

 

 卒業証書を受け取るまでの作法が何気に面倒である。

 事前に練習をさせられているので別に難しくはない。

 さすがに空気は読めるので、この場でバカをやる卒業生は誰一人いなかった。

 保護者も見ているから尚更である。

 

 ――そういえば去年に卒業生の退場時、ねーちゃんがコケそうになっていたな。

 

 その時は緊張をして足元がお留守になったのだろう。

 姉がプレッシャーに弱いことはよく知っている。

 たたらを踏んでも間一髪で踏ん張って耐えたのが印象的だ。

 そんなことを思い浮かべながらも段取りは進んでいく。

 そして卒業生退場として拍手を受けながら出口のほうへ行進。

 さりげなく保護者側をチラリと見る正太郎。

 目立たないようにするためか、久しぶりの三つ編みとメガネという変装スタイルだ。

 その綾がハンカチでメガネをズラしながら目元を押さえている。

 それにつられて母も泣いていた。

 

 ――ああもう、卒業式だから泣くなとは言わないけど、オレが退場した後で泣いてくれ。恥ずかしいんだよマジで。

 

 本番中のため見なかった事にして大人しく退場をする。

 綾が泣いていたことはちなみにも見られていた。

 そのことを言われてしまったが、恥ずかしいから見なかったことにしてほしいと返事をする。

 なお、この点については美鈴も同じ。

 やはりヒロシの反応に恥ずかしい思いをしていた。

 お互いに姉と兄の違いはあるが、身内で恥ずかしい思いをした同士である。

 

「高校の卒業式で、またあんな恥ずかしい事になるのか?」

「次から来るなって言いたくなるわね」

「同感だ。あれは本当に恥ずかしい。でも次も参加するのは目に見えている」

「仕方ないわよ。次の卒業式でラストになるだろうから、そこは割り切りなさい」

 

 同時にため息をつく正太郎と美鈴。

 ボヤいても仕方がない。

 やるべきことを終えたら帰るだけだ。

 

「唯は先に帰るから。またね」

 

 卒業式を通じてピアノの新たなアイデアが浮かんだ唯。

 早めに帰って曲作りをするようだ。

 それを見送った正太郎はちなみへ声をかける。

 

「ちなみ、最後に屋上の見納めしないか? 泉坂高校では屋上は使えないだろうし」

「うんいいよ。美鈴はどうするの?」

「この後は彼と一緒に寄り道してから帰るから」

「せやからまたな東城、端本」

 

 美鈴と内場と別れてちなみを連れて行く。

 ファンクラブの連中が涙を流すもそっとしてくれる。

 ちなみは今まで見守ってくれてありがとうとウインクして演技のサービスをした。

 これにファンクラブの面々が昇天してしまい、満足な笑顔で倒れてしまったのは余談だ。

 そして屋上に移動した正太郎とちなみがお互いに向かい合う。

 

「第二ボタンの起源は、第二次世界大戦時における軍服の第二ボタン。神風特攻隊による死亡不可避のイベントが始まりだと言われている。まさに二度と生きて帰れないヤツだ。なお、第一ボタンにしなかったのは、外れると目立つしだらしなく見えるから」

「しょーくん物知りだね。歴史でそういうの習わないのに」

「ねーちゃんが去年の卒業式で、カントクとの思い出作りに第二ボタンをもらった話を聞いたことがあってな」

「へえー、そうなんだ」

「オレは二次創作の使い手でもあるから、これにアレンジをする」

「アレンジ?」

「第二ボタンは二度と生きて帰れないという悲恋が元ネタだ。いかにもねーちゃん好みだと思うがオレは違う。まだ死んでやるつもりはないので第二ボタンは渡さない。縁起でもないし。その代わり……これをやるよ」

 

 ブレザー制服のネクタイを外してちなみに差し出す。

 驚きながらも大切に受け取ってくれた。

 ここで正太郎は説明をする。

 

「身に着けてきた時間が長く、胸に最も近い位置にある。それが本命の彼女に渡す意思表示となる。インターネットの受け売りだが、オレもその発想に同意だ。これなら死亡フラグも発生しない」

 

 堂々と言ってみせる正太郎。

 そんな彼の胸へ飛び込んで来る、

 しっかりと抱きとめてちなみの髪をそっと撫でた。

 彼女の耳元で高校でもよろしくと伝えると何度も頷いてくれる。

 こうして屋上での思い出作りを成し遂げた。

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