青春100% 作:完結の陽炎
平日の泉坂高校で休み時間。
前の席にいる茶髪男子こと勇者に正太郎が折衷案を出す。
勇者ではなく名前で呼んでほしい。
その要求は彼女ができるまで却下。
彼女募集と自己紹介で言った責任は最後まで取ってもらう。
だが唯を友達にしたことを評価して、あだ名の勇者を略して勇を呼ぶ。
これは唯がゆーくんと呼んでいることを尊重しての意味もある。
少なくとも勇者と呼ばれるよりは断然にマシだ。
勇者こと勇はこのあだ名の中のあだ名を了承した。
「勇の電子ピアノ、楽しみだぜ」
「本当に来るつもりか?」
「約束の日だから報酬を受け取る。唯と一緒にな。ところで茶髪は生まれつきか?」
「そうだよ。染めてないから勘違いすんなよ」
「コミさんのトゲトゲ頭に比べたら些細なことだ」
「なんだよ、そんな変なヤツがいるのか?」
「青春100%男の武勇伝は知ってるか?」
「補欠合格の抗議活動で有名な話だな。ああ、思い出したよ。確かにトゲトゲだ。あれは何で誰もツッコまないんだ? おかしいだろあの頭」
「あの非常識な頭は生まれつきらしいぞ。コミさん本人から聞いた」
「なんで先生は注意しないんだよ?」
「知らんよ。認識阻害魔法でも掛かってるんじゃないか?」
「訳わからんぞ」
「同感だ」
シフトの都合でちなみは出勤で内場も古書店のバイト。
美鈴は部室のデスクワーク。
この日が休みでフリーは正太郎と唯だ。
放課後に唯と一緒に自宅の最寄り駅へ到着。
分岐点で唯が帰る道の反対方向へ進んで、勇に案内をしてもらう。
好奇心旺盛な正太郎と唯は寄り道をして中々帰りつけない。
「寂れた商店街か。シャッターで閉まってるぞ」
「ゆーくん、ここって昔からこうなの?」
「この地域に引っ越したのが中学入ってからだけど、その時には既にこうだった」
もはやシャッター通りである。
正太郎が創作をするなら、貧乏神を住まわせて福の神と戦わせる。
そこから地域活性化に向けて人々が立ち上がる物語を作るだろう。
メモに速記でネタを仕込み商店街を通り過ぎる。
街道を抜けた交差点を曲がって住宅街のエリアへ入っていく。
その先の一角にある一戸建てに勇が住んでいる。
「「普通の家だ」」
「同時にハモるな!! 一体どんな家を想像してたんだよ!?」
「唯はボロアパートだと思った」
「オレは橋の下にテント暮らしを期待した」
「アパートはまだ分かるが橋の下って何だよ!? ホームレスを期待すんな!!」
「トゲトゲ頭がまかり通るなら、それぐらいの型破りがあってもおかしくないだろ」
「非常識な髪型と住所を同列に語るなよ!!」
勇が声を荒げても二人は気にしない。
やりたい放題、言いたい放題のフリーダム。
一切の遠慮がない。
「とりあえずお邪魔するか。あ、勇の親は?」
「高校入ってから海外に転勤してるからいない。正月ぐらいしか帰ってこないよ」
「うわーいいないいなぁー。気ままの一人暮らし憧れちゃうなぁー」
「家事が大変じゃね?」
「もう慣れたって。ほら、入るならとっとと入ってくれ」
勇に促されて家の中へ入っていく。
階段を上がって襖をスライドさせると畳のある和室だ。
カーテンを開くと屋根のついたベランダがあって洗濯物が干せる。
ピアノマットを敷いた電子ピアノ、パソコンデスク、物干しスタンド等がある。
ベッドがないので、押し入れから布団の出し入れをしているようだ。
「きっと押し入れに秘密のお宝が眠っているんだよね」
「おいやめろ。勝手に人の押し入れを開けようとすんな」
「えーなんで?」
「お前は――」
「唯!!」
お前呼ばわりはお断りらしい。
ちゃんと名前で呼ばないと唯は機嫌を悪くする。
勇は面倒なヤツだと思いながらも言い直す。
「……唯は自分の部屋を勝手に弄られたら嫌だろ?」
「唯は別にやましいものなんてないから、見たいなら見せるよ」
「見せるなって!! おい東城、止めてくれよ!!」
「あ、悪いな。今さっきまでベランダを調べていたぜ。小説の描写で参考になりそうだから」
「頼むからおとなしくしてくれよ二人とも。電子ピアノの演奏、聴きにきたんだろ?」
「オレはそうだけど唯は電子ピアノを触りたいんだよな?」
「うん!! 普通のピアノとの違いを知りたいから!!」
「とりあえず先に演奏を聴こうぜ」
勇が椅子に座って真剣に弾いている。
緊張をしているのが伝わって失敗が増えていく。
その電子ピアノのリズムに正太郎は英語の歌を乗せた。
一瞬驚きを見せていたが勇の演奏が続けてくれる。
ミスが減ってきた。
大分ノリが良くなってきた。
互いの呼吸も徐々に合ってくる。
――勇は単体プレイより協力プレイ向きだ。
すっかり緊張がほぐれてフルバージョンの演奏に突入。
正太郎はショートバージョンのつもりだったが、勇が望むのであれば歌を続行する。
手加減モード中だから、あとで欲求不満になるのは覚悟しておく。
そして最後まで演奏と歌が完了する。
唯が感動して拍手で称えてくれた。
「東城に助けられた」
「その後の演奏は見事だったぜ。まさかフルーバージョンで来るとはな」
「つい夢中になったんだ」
「大事なことだよ。楽しむってのは創作でも演奏でも通用する心構えだ」
「ねーねー、唯に電子ピアノ弾いてみたいけどいい?」
「ああ、いいぞ」
普通のピアノと電子ピアノで鍵盤の幅も感触も違う。
感覚による戸惑いはあったが、唯は楽しく弾いていく。
勇も知ってる夏の曲で練習をしたこともある。
「カモーン、ゆーくん」
椅子の半分を空けて連弾を誘う唯。
自分より上手い演奏に魅かれて応じる勇。
肩を並べて互いの指が鍵盤を奏でていく。
――あの初めてお披露目した夏の曲が連弾するとまた違った趣になるんだな。
鳴る音の総数が増えるので濃厚な音の響きを生み出す。
正太郎は聞き逃すまいと静かに目を閉じた。
おかげで滾っていた心の高ぶりが落ち着いてくる。
――唯の気遣いを感じる。勇の楽しそうな感じも伝わってくる。
音楽は素人であっても、二人の心は何となく分かった。
演奏が終わる頃には平常心に戻ったのでありがたい。
音楽というスキルの凄さを知った瞬間でもあった。
「実に価値のある報酬だぜ。唯もいい演奏ありがとうな」
「どういたしまして。しょーたろの歌もサイコーだったよ」
「勇はソロの演奏よりもセッションに向いていると思ったぜ」
「うんうん。確かに一人だと緊張ばっかりして、上手くやろうって意識ばかりするもんね」
「で、一緒にやった時はどうよ?」
「ひたすらに楽しかった。それだけだ」
正太郎としては満足できる答えだ。
それこそ勇が活かせる持ち味といえるだろう。
「勇は夕飯を自炊か? それとも外食?」
「手軽なインスタントや冷凍食品だ」
「えー、それだと栄養偏って健康に悪いよぉ」
唯が世話焼きのお姉さん気分で注意をする。
そんなことは余計なお世話とばかりに勇は言った。
「ハッキリ言って面倒なんだよ。買って済ませるほうが片付けも楽だし」
「洗い物が面倒というのは、家事の手伝いを通じて経験済みだから分かる」
「しょーがないな。演奏してくれたお礼に唯がごはんを作ってあげる」
「……東城」
「なんだ?」
「作れるのか?」
「オレは自立する時に備えて、家事手伝いをしてるからある程度は作れる。でも唯の手料理はクッキー以外では食べたことがない」
「待ってくれ。それって他のメニューはダメって可能性あるよな? な?」
「内場の漫画に出てくるヤバい料理のパターンかもしれん。勇、胃薬を用意したほうがいい」
「ちょっと二人とも!! 唯の料理がマズイって決め付けるなんてひどいよ!!」
そもそも材料がないので作りようがない。
買うにしてもお金が掛かる。
また今度ということで先延ばしにするしかないが。
「唯、決めた!! 明日の朝ごはん作りに行く!!」
「鍵もないのにどうやって潜入するんだ元ニンジャ?」
「待て待て!! なんで忍び込もうとするんだよ!? 普通に犯罪だぞ!!」
「かいもーんと叫んで突撃しちゃうとか?」
「城攻めをするつもりか唯? やるなら近所迷惑にならないようにしろよ」
「違うそうじゃないだろ東城!! ダメだって普通に止めろよ!!」
「合鍵を渡して勝手に作っておけという方法は?」
「なんでコイツ――唯に合鍵渡さないといけないんだよ!! 彼女でもないのにそんなマネできるか!!」
コイツ呼ばわりして唯が睨んだので言い直す。
勇が言っていることはもっともな事である。
さすがに恋人でもないのに合鍵は渡せない。
「という訳で唯、友達止まりの唯は、勇の合鍵を受け取る資格がない。朝ごはんを作るなら、勇に開けてもらうしかないぜ」
「わかった。開けてもらえるまでインターフォンを鳴らし続けるね」
「ありがた迷惑すぎ!! その気持ちだけでいいから!!」
「ダメだよゆーくん。どうせ朝ごはんも適当で栄養なんて考えないよね? それに唯の料理がマズイなんて、そんな誤解されたままなんて絶対に嫌だもん!!」
「勇、ここは一回だけやらせてやれよ。それで本人も満足するだろう」
「そう言って次も次もってならないか?」
「少なくとも今ここで断っても引き下がる唯じゃないぜ。唯にもプライドってもんがあるんだ」
「そんなプライドはどこか遠くへ投げ捨ててしまえ!!」
遠慮しようとする勇と押しかけようとする唯。
二人の間で落とし所はあるのか?
ここで正太郎から勇へ問う。
「なぜ美味いメシにありつけるメリットがあるのに断るのか? それは不味いメシかもしれないという不安があるからか?」
「それ以前の問題だろ。年頃の女がホイホイと男の家に入るなって」
「なぜだ? 唯がメシを作って、それを勇が食べるだけだろ? それ以外に何か変なことでもするつもりか?」
「するか!!」
「それなら何も問題はない。あとは時間を指定しておけばいいだろ」
唯がそこまで勇にこだわる理由は何なのか?
ただの友達を心配してそこまでするのか?
勇としては唯の真意を掴みきれない。
それでも押し切られるしか選択の余地はなさそうだ。
「わかったよ。一回だけな」
もし不味い場合は容赦なく追い返せばいい。
逆に美味しかったら、その時になってから改めて考える。
現時点でダメと言っても唯の気が済まないから。
状況に流されて正太郎と唯の携帯番号を交換。
これで自由に連絡が取れるようになった。
「おい、畳の上でゴロ寝すんなよ。無防備にくつろぎすぎ」
「いいじゃん。演奏ってすっごく集中して疲れるんだよ。ちょっとぐらい休ませてよ」
「足をバタバタさせるなってホコリが立つだろうが。あとスカートの中が見えるぞ」
「うわーエッチだ。なになに、ゆーくんむっつりスケベなの?」
「誰がおま――おい東城、何とかし――っていねえ!!」
「あ、本当だ。きっとトイレだね」
「まったく。とにかく唯は女としての恥じらいを持てよ。あと断じてエッチとかスケベじゃないから勘違いすんな」
「本当かなぁー?」
「大体男の恰好させたら男に間違われそうなヤツに誰が欲情なんて――ぐあっ!!」
脛を蹴られてその場でしゃがむように姿勢が崩れる。
そんな勇の背中に押し出してうつ伏せにした。
その後ろへ馬のように跨った唯はプンプンとお怒りモードだ。
「重いからどけ」
女の子に向かって禁句を口にした。
これはお仕置きだとプロレス技の逆エビ固めを決める唯。
両足を抱えられてギブアップを繰り返す勇。
そこへ正太郎が戻ってきたので。
「東城、助けてくれ!!」
「何をやらかした?」
「ええ!? なんでこっちを真っ先に疑うんだよ!!」
「どうせ失礼なこと言ったんだろ? ちゃんと謝っとけよ」
「わ、悪かった!! 悪かったって!!」
「具体的にどう悪くて、どう改善するかと言ったほうが誠意は伝わるぞ。オレだったらそうする」
「男と間違うような言い方をして悪かった。次からはおこちゃま――いたたたたっ!!」
「それは改善じゃなくただの悪口って言うんだよ。自業自得だぜ」
何度か嘆願を繰り返してどうにか許してもらえた。
やられた勇としては仕返しのひとつやふたつしてやりたくなる。
いっそのこと本当に襲ってやろうかと思ったが、流石に乱暴なことはしたくない。
こうなったらスカートをめくって辱めてやろうと悪巧みをする。
「おい勇」
「な、なにもしてないぞ」
「唯のスカートを見てるのバレバレだぞ。唯もそれに気付いている」
「やっぱりスカートの中が見たいんだ。ゆーくんってば本当にやーらし」
「やらしくない。つーか見せろと言ったら見せるのか?」
「そんなに見たいんだったら……」
「おいやめろ!! スカートをたくし上げようとすんな!!」
「え? 見たいんじゃないの?」
慌てふためいて唯の手を押さえた。
首をかしげる能天気さが逆に心配になってくる。
唯に羞恥心があるのか怪しく思えてきた。
勇は親切心のつもりで説教を始める。
「あのな、男って唯が考えている以上にヤバいんだぞ。それこそ襲われて大変なことになるかもしれないんだからな。だからそういう事は軽はずみにやるな。どうしてもやりたいなら彼氏だけにしろ。不特定多数に破廉恥なマネはマジでやめろ」
「なにそれ、まるで唯が露出狂みたいじゃん。そっちこそ変な誤解するのやめてよね」
「なにが誤解だ。パンツ見せようとしている時点で露出狂みたいなものだろ」
「ゆーくんのバーカ。唯は見られても平気な見せパンでガードしてるもん」
「いーや唯は分かってない。男は見せパンであろうとなかろうと関係ないんだよ」
「なんで? 見せパンって見られても平気なパンツのことだよ?」
「そもそも見せつけるパンツでもないだろ。男はな、スカートの中という秘密を覗くこと自体にエロく感じるんだよ。たとえ短パンだろうとスパッツだろうとアンスコだろうとお構いなしだ」
「勇、オレ男だけどマジその辺りよく分からんのだが?」
「だあー!! ややこしくなるから東城は黙っててくれ!!」
勇は勢いのままに唯の肩を掴み、いかに男が危険であるかを説いた。
真面目に心配をしてるんだということを伝えたくて。
他の男に誤解させるようなことをして危ない目に遭ってほしくないから。
「わかったか唯?」
「つまりゆーくんなら危なくないからやっても平気だよね?」
「おーい!! なんでそうなるんだよ!?」
「唯を心配してくれてるし、そんなゆーくんが危ないことしてくると思わないよ」
「ちょっとは疑えよ!! これでも男だぞ!!」
「唯はゆーくんを信じる」
キッパリと言い切ってしまう唯。
真っ直ぐに見つめられては何も言えない。
これは男として認識されていない?
そんな尖った見方をしてしまう。
――こっちも男だって思い知らせてやろうか。
これ以上舐められてたまるか。
そんな男のプライドで意地を張る。
睨めっこ状態で顔を近づけてみた。
――ほら驚いてる。ざまーみろ。
ところが唯が顔を上げて目を閉じた。
これには勇も動揺が隠せない。
――な、なんでそこで目を閉じるんだよ!!
ヤバい方向に進んでいる気がする。
そこで正太郎を助けてもらおうと探したが。
――いつの間にかいなくなってる!? なんでだよ!?
空気を読んだのか正太郎の姿がなかった。
もはや止めてくれる人が誰もいない。
――絶対コイツからかってるぞ!! そうに違いない!!
ここで臆したら笑われるに決まっている。
お子様だとバカにした自分こそガキだろうと言われそうだ。
それは腹立たしくなるので絶対に引き下がってやらない。
――挑発したことを後悔させてやる!! どうなっても知らないからな!!
吐息の感じる至近距離まで顔を近づける。
緊張は……よくわからない。
もし震えていたらそれでストップをかけられるのに。
そんな様子が微塵もない。
――おい本当にするぞ。拒絶するなら今だぞ。
心に問いかけても唯は一向に動かない。
大人しく目を瞑ったまま顔を上げている。
キスを誘っているとしか思えない。
そして勇が動き出す。
「あっ……」
唯が声を漏らした。
その時には既に勇は離れてベランダの景色を眺める。
唯の触れる先は左のほっぺだ。
そこに伝わった柔らかい感触が残っている。
「ねえチューしたでしょ?」
「さあー、気のせいじゃないか?」
「したよね?」
「そういうのって恋人同士でするんだろ? 友達ですることじゃないよな?」
「ゆーくんは唯を恋人だと思ってチューしたの?」
「海外では挨拶のチューがあるんだってよ。どの部分を指してるんだろうな?」
「ここは日本だよ。海外のルールなんて通用しないから」
唯が不満たらたらである。
勇の本心を知りたいようだ。
それをなだめようと勇が言う。
「ほら、そろそろ帰らないと親が心配するぞ」
「そうやって子ども扱いしないで」
「だったら頑張って大きくなれよ」
「むぅー、ゆーくんのバーカバーカ」
「バカと言うほうがバカだ。バカ唯」
「むきー!!」
「がおー!!」
今も勇は不思議に思う。
なんで唯はここまで関わってくるのか?
好意を持たれることは何もしていない。
ただの遊び相手がほしいなら他を当たればいいのに。
しかし……。
――ピアノが素晴らしいんだよな。
それは素直に認める。認めざるを得ない。
唯のピアノは圧倒的に勇よりも上手い。
連弾をした時が純粋に楽しくて良かった。
そんな唯も帰る時間となって渋々と立ち去る。
翌朝にご飯を作りに行くという宣言と共に。
――や、やっと帰ってくれた。なんだよあの台風みたいなチビ女は。
一方、その頃の正太郎はどこにいたのか?
それは――。
「うわあ!? 何でそんな所にいるんだよ東城!?」
部屋の押し入れに正太郎が潜んでいた。
いなくなっていたと思ったらそこに隠れていたのだ。
押し入れから出てきた正太郎は悪びれる様子がない。
「驚かせてやろうと思ってな」
「なにガキみたいなことしてんだよ!!」
「まだ未成年だから間違ってないな。さて唯も帰ったしオレも退散するぜ」
「……見てないよな?」
「安心しろ。オレの口は固い。極秘として扱う」
「それは見たって言ってるようなものじゃないか!!」
「声は聞こえるからな。見てなかったとしても、それで内容はバレてる」
「くっ……なんでアイツはあんなに絡んでくるんだよ」
「さあー、気になるなら本人に訊けよ。いくらオレでも人の心は読めないからな。ま、女心の気まぐれってヤツじゃないか?」
「気まぐれにも程があるって!!」
「ま、とにかく帰るからまたな」
こうして正太郎も帰ってしまった。
一人になった勇は畳の上で仰向けになる。
天井を見上げながらそっと唇に手を添える。
柔らかいほっぺの感触を思い出に浸っていった。
………………。
…………。
……。
早起きをして身だしなみを整える。
学校に出られる準備も昨日の内に済ませた。
忘れ物がないことは確認済み。
勇の携帯に唯からのモーニングメールが届く。
――ハートマークとか付けるな。誤解されるぞ。
ちゃんと起きていることは返信済み。
玄関で今か今かと待ち構えた。
呼び鈴が鳴るとほぼ同時にドアを開ける。
「わわっ、もう急にドア開けないでよ!! ビックリするじゃないか!!」
インターフォンは玄関ドアの近くにあるため、立ち位置次第ではドアにぶつかる危険があった。
それは悪かったと詫びて家の中へ入れる。
唯がコンビニで買った材料で朝ごはんの支度を開始。
制服の上にイチゴ柄をしたエプロンを着て料理をする。
ご飯、味噌汁、ベーコン付きの目玉焼き、野菜サラダで王道メニュー。
対面した食卓で一緒に朝食をとっていた。
「普通に食えるメシで良かった」
「素直に美味しいって言いなよ。それだから女の子にモテないんだよ」
「うるさい。ってか、なんで唯まで一緒に食ってるんだよ?」
「唯もまだ朝ごはん食べてないもん。それに一緒に食べた方が美味しいから別にいいじゃん」
一人で適当に胃の中へ詰めたメシとは違う。
このような温かい食事には馴染みがない。
まして誰かとご飯を共にするのは親以外で初めてだ。
「普通、親が反対してここに来させないんじゃないか?」
「部活の朝練・学級の当番・友達との約束・勉強会など理由はいくらでも作れちゃうよ」
「嘘ついてバレても知らんぞ」
「嘘も方便だよゆーくん」
理解の範疇を越えている。
なにが唯をそこまで動かすのか?
こういうのは本人に尋ねて確認するしかない。
「唯は唯のやりたいようにやっているだけだよ。あまり難しい事は考えないようにしてるんだ。あれこれ考えてると、逆に動けなくなっちゃうから」
淳平と綾がまさにそれである。
唯はその辺りをよく見て反面教師にしていた。
だからといって正太郎みたいに無茶をして突っ走るのも考え物。
さじ加減にも気を付けようとしている。
「ゆーくんの食生活が心配だから、唯が料理をしたいと思って作った。何か変な所ある?」
「誰にでもこんなことしてるのか?」
「ゆーくんが初めてだよ」
「別に慈善事業が趣味って訳じゃないだろ?」
「ゆーくんだったらいいかなって思ったんだよ。しょーたろの命を救った恩人だし、電子ピアノの連弾も良かったよ」
「あれは逆にこっちが助けられたんだけど? ピアノは……正直いって唯がスゲェと思ったし楽しかった」
「唯も楽しかった。また今度やろーよ」
「気が向いたらな」
食べ終わって洗い物までしてくれた。
さらにお弁当のサービス付きである。
別に頼んでいないが、せっかく作った物だからと勇はお礼を言って受け取った。
――通学のラッシュは避けたい。いつも通りに早く出よう。
家を出て通学の道を進む。
隣には唯が一緒に歩いていた。
なぜついて来るのか?
「同じ高校なんだから、行く道が同じになるのは当たり前じゃん」
「別に一緒に行かなくてもいいよな? それとも何か用でもあるのか?」
「お話しをしよ。ただ歩くだけだと味気ないもん」
「そんな無茶振りはお断りだ」
勝手について来てワガママを言われてはたまらない。
突っぱねて放っておく。
ここで甘やかしてもろくなことにならないから。
しかし唯が一方的に話題を振ってきた。
「唯ね、映画制作部に入ってるんだ。活動場所は学校近くの大きな館で、そこを部室として使わせてもらってるの。それでね、別室に高級な生ピアノが設置されていていつでも演奏できるんだ」
「なにぃ!? それって夜も弾いてもOKか!?」
「うん。バッチリ防音がされてるから24時間弾き放題だって」
勇にとっては無視できない夢のような話。
今の電子ピアノも決して悪くはないが、本物のピアノを弾きたい願望は昔から抱いている。
時間制限がないのも大きな魅力だ。
夜間は近所迷惑もあって弾くことができないから。
「なんでそんな豪華な設備が自由に使えるんだよ? レンタルにしても金かかるだろ?」
「天地財閥って知ってる?」
「大企業の天地財閥とコネがあるのか。それヤバすぎだろ」
「ゆーくんは部活どこも入ってないの?」
「無所属の帰宅部だ」
「つまり入ってないんだね」
「入ってなかったら悪いか? 唯には関係ないだろ」
突き放すように言うも唯は意味ありげに笑った。
フフフっと気味が悪い。
一体なにを企んでいるのかと警戒をしてしまう。
「ゆーくん、映制に入って一緒に映画の音楽作ろうよ」
「映制?」
「映画制作部の略称だよ」
勇は校内の掲示板をチェックしたことがある。
そこで部活の募集欄もあったのだが。
「映制の募集なんてなかったぞ」
「あっそうだった!! 今は募集してないんだ!!」
「なんだよ。募集してないのに誘っても意味ないじゃないか」
「あのねゆーくん、今の映制は映研と対決するとぉーても大事な時期なんだ」
「それなら部外者は引っ込んだほうがいいだろ。さっきのは聞かなかったことに――」
「24時間生ピアノ弾き放題」
「……」
「ゆーくんが映制に入ったら、ピアノが自由に弾ける環境が手に入るよ。それってお得だよね?」
「モノで釣ろうとすんな。そもそも映画作りなんて全く経験ないぞ」
「それは大丈夫だよ。唯だってないけど、皆それぞれ役割をつけて協力していくから」
「とにかく募集もしてないのに誘うな」
「募集したら入ってくれるの?」
キラキラとした眼差しで勇を見つめる。
露骨な上目遣いであざとい。
可愛さアピールのつもりだろうか?
やたらと押しの強さが際立っている。
「その映制って何人いて誰がいるんだよ?」
「えっとね……美鈴・内場・しょーたろ・ちなみ・唯の5人だよ」
「部長は誰だ?」
「美鈴。外村美鈴」
「げえっ!! 人を射殺すような目付きをした女が部長かよ!!」
「ひどいよゆーくん。美鈴は確かに厳しいけど、優しい所も一杯あるんだから」
「無理だ無理!! 同じクラスにいるけど、おっかねえから近付きたくない!!」
勇にとって美鈴は非常に怖い存在である。
正太郎に盾とされた時も美鈴の睨みで恐怖をした。
明らかにオーラが違う。
とても威圧的で敬遠をしたくなる。
「しょーたろは平気なのに美鈴はダメなの?」
「東城は感情が豊かで熱い男って感じだけど外村は全然違う。目が鋭くて言い方キツイし容赦ない冷たい感じするんだよ」
「それはゆーくん誤解してるよ。ほら二人は仲いいでしょ? 話してみたら怖くないってば」
「あーなんか互いに勉強の問題を出し合うのを見たけど、何を言ってるのかサッパリだったぞ」
「唯もアレは全然わからないから。二人がとっても賢いんだよ」
「賢いで済むようなレベルじゃないだろ」
電車に乗って学校の最寄り駅に下車する。
駅の改札を抜けて通学路を進んでいく。
唯の過去話で泉坂高校へ進学をした経緯を聞かされた。
中学の時点で映制としての下準備をしてきたのだからイヤでも本気が伝わってくる。
ピアノで曲を作ることがどれだけ大変なことか。
唯の演奏が凄まじいのも納得である。
「学校に辿り着く前に、ひとつだけ言いたい事がある」
「なにゆーくん?」
「一人称、自分のことを名前で呼ぶのってどうなんだ?」
「可愛くない? 他との違いも出ていいと思わない?」
「先生の前でもか?」
「まさか。さすがに公の場では私だよ。ありきたりで可愛くないからあんまり使わないけどね」
「女の可愛い基準がよくわからん」
「そういうゆーくんは一人称どうしてるの?」
「使わない」
「えー!! それって不便じゃん!?」
「俺って偉そうだし、僕って柄でもないし、私って女っぽいし。どうしても名乗り出ないといけない時は、こっち呼びするか、自分と呼ぶか……どれもしっくり来ないけどな」
一人称で自己主張をしない。
それが相手から見れば印象を薄めているのかもしれない。
自然と話をしなくなり関わりも少なくなるから。
「唯みたいに勇って呼ぶのは可愛くていいんじゃない?」
「なにが悲しくて自分をあだ名で呼ばないといけないんだよ」
「新しい自分を作ってるみたいで楽しいじゃん」
「そんな発想ができるのは唯だけだ」
「そんなことないよ。ちなみは昔だけどあだ名で使い分けをしてたもん」
「知らんよそんなこと」
「じゃあ英語で一人称使うとかは?」
「アイとかミーとかマイか? どこの西洋かぶれだ。そんな呼び方してるの聞いたことないぞ」
勇は一人称に制限をかけた生き方をずっと続けていくのか?
さすがに公の場では私を使わないといけないだろう。
しかしプライベートではあまり使う気になれない。
「やっぱ唯は勇が一押しでおススメだよ」
「なんでそこまで勧めするんだよ強引だな」
「だってゆーくん、なんか生き辛そうに見えるから」
「余計なお世話だ。ほら学校着いたぜ。この話は終いだ」
打ち切って下駄箱へ靴を履き替える。
教室へ入って自分の席へ荷物を下ろした。
まだ誰も来ていないはずだが。
――すでに東城の荷物がある。早いな。
どこか別の所へ行っているようだ。
勇は座ったまま試しに勧められた一人称を呟く。
「勇……なんか英語のユーみたいに聞こえる。おかしいつーの」
生きているだけで楽しそうな唯。
他とは違う自己アピールをしても恥ずかしいと思わない。
それだけ自分に絶対的な自信を持っているのか。
勇は少しばかり羨ましく思えてしまう。
「わー、こっちもガラガラだね」
教室の戸を開けて唯が入ってきた。
何の躊躇もなく勇の前の席へ座って向き合う。
誰もいない教室でヒマだから遊びに来たようだ。
「学校は勉強する所で遊び場じゃないぞ」
「なんだよ。唯を子ども扱いするな」
「そんな前も後ろも分からないスタイルで――いたっ!!」
勇が机に置いたテキストで叩かれる。
角でやらない程度には優しいつもりらしい。
「教科書は武器じゃないぞ。返せ」
「ふーんだ。謝るまで返さないよーだ」
教科書を手にしたまま逃げようとする唯。
出口へ立ち塞がる勇。
もう一つの出口へ行ったらそっちを追う。
フェイントをかましてきた。
出口を少しだけ開けてすぐ離れる。
小柄だけに身のこなしが早い。
勇が捕まえようとしてもヒラリとかわされてしまう。
「ちょこまかと動くな!! 教科書返せ!!」
「だったら謝りなよ!! 女の子のスタイルをバカにしたゆーくんが悪いんだよ!!」
「事実だろうが!! こんな事してる時点で子どもだ!!」
机が障害物になって思うようにいかない。
廊下に出られたら追い付ける自信がない。
面倒事は避けたい。
これ以上、唯に遊ばれてしまうのも腹が立つ。
教科書を返してもらうために取引を持ちかけた。
「その教科書の見返りは謝罪でいいんだな?」
「さっきからそう言ってるじゃん」
「……悪かったな」
「心がこもってない。上辺だけのお詫びなんて通用しないんだから」
「謝れと言っておいてふざけんなよ!!」
「イヤイヤ謝ってるのバレバレだからね!! 女の子の勘を舐めないでよ!!」
交渉は決裂である。
力づくで取り返すしかない。
なりふり構わずに追い回して必死になった。
冷静に少しずつ出口を開けていく唯。
そしてギリギリのスペースから横っ飛びの要領で脱出に成功。
「はい唯の勝ち。これなら接客バイトのほうが大変だったよ」
「そもそも勝負なんていつしたんだよ?」
唯は教室から出られて達成感を味わう。
そう簡単に捕まってたまるかと見せつけた。
朝から疲れさせて来る唯が疫病神に見えてしまう。
「取引だよゆーくん。映制に入ってくれたら教科書返してあげる」
「話にならん。そもそも募集してないだろうが」
「そこは唯にお任せだよ」
「そうまでして入ってほしいのか?」
「ゆーくんとピアノを演奏して、スゴイ映画を作りたいから」
「ここで断ったら教科書パクったままかよ?」
「女も二言はないよ」
「……」
「ゆーくんの教科書、唯が頂いていくね」
「待て待て!! それないと授業で困るから!!」
「だったら早く返事してよ。時間は待ってくれないんだから」
「わかったよ!! 入ればいいんだろ入れば!!」
「よろしい。詳しいことは後で伝えに行くから」
やっと教科書を返してもらえた。
その代償として映制への入部を余儀なくされる。
本当に入部できるかは今の時点で分からない。
授業中に正太郎の携帯に着信メールが届く。
相手は唯からで相談事があるようだ。
次の休み時間に踊り場で待ち合わせを指定している。
了解の返事を出して授業を受け続けた。
終了のチャイムを合図に指定先へ向かう。
唯は待っていたので正太郎から切り出した。
「勇を映制に入れたいか?」
「まだ何も言ってないのによくわかったね」
「三手先を読む。ヒロシ兄さんの教えだ。でも美鈴は反対するだろう」
「うん。だからしょーたろに相談したいの」
「それなら簡単だ。唯と勇が協力をして、美鈴にピアノの演奏を聴かせてやればいい」
「実力を示せってこと?」
「そうだ。唯が単体で演奏するよりも、勇と協力したほうが素晴らしい演奏になることを証明すればいい。美鈴は監督の立場上、勝率が高くなるほうを選ぶだろう」
勇のような存在を当時は想定していなかった。
前提は映研を上回る良い映画を作って勝利をすること。
そのためなら多少の変更をしても勝ちに行くべきだ。
「でもゆーくんは美鈴が苦手で、人前の演奏だと緊張するって」
「美鈴の苦手は唯が間に入ってフォローしろ。人前のプレッシャーは練習して慣れろ。時間作ってオレたちで観客になってやる」
「いいの?」
「オレとしても男手は欲しいんだよ。内場は体力ないし、オレだけだと力仕事で負担かかるから。勇をメンバーに加えることで、オレにもメリットがあるから協力する」
「ありがとう。しょーたろに相談してよかったよ。アッという間に解決だ」
「でも失敗は許されないぞ。美鈴はそういう所マジで容赦ないからな」
「知ってる。それでも唯とゆーくんでやるよ」
「ずいぶんと勇を気に入ったようだな。もう付き合えば良くないか?」
「うーん。なんか世話のかかる子どもみたいで、今はそういう気分になれないよ」
「勇もそう思ってそうだ」
「唯を子ども扱いしてくるんだよ失礼しちゃうよね」
どっちもどっちである。
正太郎はそう思っても口には出さない。
用は済んだのでお互いに自分の教室へ戻った。
「なあ東城」
「なんだ?」
残り少ない時間で勇に声を掛けられる。
大体の察しはつくが黙って先を促した。
「映制って募集していないよな?」
「してないな」
「……どうやって入れるつもりだろう?」
「詳細は唯に聞け。オレの口からは言わん」
「なんだ。もう知られているのか?」
「さあな。ほらチャイムが鳴ったから授業受けようぜ」
正太郎は授業中に携帯メールを送信する。
内場とちなみに事情を説明するためだ。
どちらも時間を作り、観客役として付き合うことを了承。
昼休みに唯が勇もお昼一緒にと誘ったが断られる。
現時点では部外者であり、美鈴にビビってしまうから。
今は仕方ないかと唯は素直に引き下がった。
「唯、最近なにかあった?」
「どうしたのちなみ? 唯はいつも通りだと思うけど?」
「いい事でもあったのかなって。美鈴もそう思わない?」
「別に。興味もないわ」
「相変わらず素っ気ない。内場くん、こんな美鈴だけどよろしくね」
「なによちなみ、そんな保護者みたいな言い方して」
「任せて下さいお義母さん」
「貴方も乗らない」
「そうなるとオレはお義父さんだな。娘をよろしく頼む」
「アンタにだけはそれ言われたくない」
「なんでオレだけ悪い意味で特別扱いなんだよ!?」
正太郎の場合は冗談ではなく本気だから。
実際に娘という親子感情で美鈴への恋愛感情がない。
それが分かるだけに美鈴も正太郎には言われたくない。
「唯、美鈴は手強い相手だぞ。悔いがないように最善を尽くすがいい」
「うん。唯は絶対に負けないよ」
「一体なんの話よ?」
「いずれ分かる。それまでのお楽しみだ」
「……貴方とちなみもグルね」
「さすが美鈴や。監督の眼力が半端ないで」
「それぐらい出来て当たり前の美鈴ってカッコイイね」
「おだてても無駄よ。何を企んでるのかは知らないけど悪い事じゃないんでしょ?」
「それオレに言ってるのか?」
「全員に向けてよ」
「なら代表してオレが答えよう。犯罪行為でないことは断言する。悪い話でもない。ここまで見抜いた美鈴へ一言ヒント。映制のためになることだ。以上」
それで充分と受け取ったのか。
美鈴はそれ以上の深追いをしなかった。
唯が勝利のピースサインを正太郎に送る。
正太郎もピースでやり返した。
このやり取りでちなみが呼び掛ける。
「しょーくん」
ただの一言に込められた感情。
そこに気付ける正太郎は即座に応じた。
「構ってほしいって顔に書いてある。唯の相手が終わったからいいぜ。かかって来いよちなみ」
格闘漫画のノリで手招きをしての挑発。
それでちなみが遠慮するはずもなく急接近。
正太郎の背中に抱き着いてきた。
「どこまで髪を伸ばす? さっちゃんレベルまで?」
「似合わないかな?」
「ちなみの望むままやってみればいい。何事も試すことで得られるものはある」
「しょーくんならそう言うと思った。もし似合わなかったら言ってね」
「思ったことはありのまま言うぜ。オレは元より世辞を出せないから」
日頃からのスキンシップで慣れているのだろう。
美鈴たちに見られても一切の照れが見られない。
その余裕が二人の付き合いの深さを物語っている。
「見せつけられとるで美鈴」
「放っておきなさい。どうせ言っても無駄だから」
「あとで唯も試してみようっと」
「唯、ああいうことは付き合ってからするものよ。それともお相手がいるのかしら?」
「うーん、内緒」
ついに唯にも男ができたか。
昔からの付き合いで感慨深くなる美鈴。
いずれは紹介されるかもしれない。
その時を楽しみにすることにした。