どうきゅうせいのおしごと! 作:ゆーき
「今日もいい天気だ」
売れても占い商店街を歩き、通い慣れた職場に向かう。15分に一度は必ず聞こえる電車の音。大阪梅田から徒歩圏内にも関わらず昔ながらの落ち着いた街並み。飲食店が軒を並べ、多くの人が行き交う雑踏が好ましい。そんな俺が生まれた場所。大阪市福島区を俺は愛している。そんな街の中心に職場があるなんて、どんなに恵まれているんだろう。今日も関西将棋会館は平和……
「オシッコォォォォォォォォォォォォォォ!!」
「誰か!清滝先生を止めろっ」
「50にもなって、なにやってんのや!!」
目の前で清滝鋼介九段が騒いでいる。
よし!帰ろう♪
「師匠!!バカな真似はやめてください!!」
「放さんかい八一ぃぃぃぃ!!わしは……わしはここでオシッコするんやぁぁぁぁ!!」
「か…かける!いい所に…一緒に師匠を止めてくれ」
「いややけど?」
「かける〜」
目の前で情けない声を出しているのは九頭竜八一竜王。史上4人目の中学生棋士となり、最年少タイトルホルダーだ。正真正銘の将棋星人である。俺との付き合いもそれなりに長い。
「こ…この状況で!電話してる場合じゃないだろっっっ!!」
「じじいが錯乱してるぞ。迎えにこいっ」
「おっお前…誰に…」
「桂香だが?」
「桂香さんを呼び捨てにすんなっ」
「いや…幼馴染だぞ?」
「オシッコォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」
今日も関西将棋会館は平和だ。
俺の名前は【戦刃 翔(いくさば かける)】。B級2組に所属するプロ棋士だ。超高校級の絶望とは関係がない。そして、目の前で錯乱しているじじいが師匠という事実もない。家が近所という事もあり、昔から付き合いはあったがな。なぜかって?既に銀子と八一が内弟子でいたから……ごめんなさい。嘘です。ごめんなさい。俺が本格的に人と将棋を指すようになったのは中学に進学してからだ。中学生の男子がクラスメイトの女の子の家に通う事ができるか?無理だろ…。
「はぁ〜。おいっ。じじい」
「なんじゃっ」
ドスっ!!!
「か…かける?」
「じじいは自分で柱に頭をぶつけて失神した。OK?」
将棋会館の職員達は完全にひいている。
「それとも失禁のほうがよかった?」
ぶるぶるぶる。一同揃って首をふる。
「戦刃君。間に合った?」
「最悪の事態は回避できたんじゃないか?今は…そこで寝てる。とりあえずお前んちに送還するぞ。八一、銀ちゃん、またな」
「姉弟子!!」
「気づいてなかったんか…」
……
「ごめんね。うちのお父さんが…」
「連敗中の八一に勝って喝いれたかったんやろ?それなのに『恩返し』されてもうたからな〜。気持ちは分からん事もないけど……いや、やっぱただのアホやな」
「お父さん。この対局が八一君の立ち直るきっかけになればって」
「ある意味きっかけにはなったんちゃうか?」
「翔は助けてあげないの?」
「これだけは自分で乗り越えんとな。知らんけど」
次の日、八一からSOSの電話がかかってくる。JSと銀子の修羅場?うん。桂香に丸投げしよう♪