どうきゅうせいのおしごと! 作:ゆーき
「私の覚悟が足らなかったわ…。『戦刃翔を倒す』ではダメだったのね…」
「……(お灸を据えすぎたか?)」
「だっ…だったらっ!私はっ!『戦刃翔』を殺す棋士になるわっ!」
「はぁ?」
「っていうか、あんたバカぁ?9歳の女の子相手になんて将棋打ってるのよっ!あれから毎日夢で思い出すのよ?なかなか寝付けないのよっ!夜、怖くて1人でトイレに行くのを躊躇するぐらいのトラウマよっ!殺される。本気でそう思ったわっ。家がこんなんでも平和ボケしてる日本人なめんなっ!でも、私を対等の将棋指しとして扱ってくれたのは少しだけ感謝してあげる。これまであなたとお父さんの対局は何度も何度も並べたけど、今までは何が凄いのか全然わからなかった。あなたと指して始めて意味がわかったわ。『戦刃翔』。そうっ!お父さんが認めた棋士に勝つには生半可な覚悟じゃダメなのね。だからっ!師匠っ!あなたを殺す為に弟子にして下さい!!!」
「……」
「なっ!なによっ!不満でもある??」
「はっ…はははははっ。『殺す為』かぁ〜。いいな。天衣。今まで聞いた口説き文句の中でも今のは最高だ。わかった。何度でもこい。俺はいつでも相手になってやる。俺を殺す為の手段なら幾らでも教えよう。でも、お前にできるのか?」
「やってみせるわっ」
「わかった。今日から天衣は俺の初?(でいいよな?)弟子だ。さて、早速だが将棋が強くなるにはどうすればいいと思う?実は解はでているんだ。残念だが人はコンピューターには勝てない。つまり演算力・記憶力、そして膨大な対局数つまり経験だ。それら全てソフトを上回れば人類最強だぜ?」
「そんなのできるわけないじゃないっ」
「まぁ、普通はそうだな。だが、鍛えて損はないだろう?さて、演算力つまり脳の情報処理能力だ。速読速聴から始めよう。1日1時間でいい。移動時間で十分賄えるだろう?但し、毎日続けろ」
「それが将棋に関係あるの?」
「まっ。騙されたと思って続けろ。次に記憶力だが…これは特別な訓練はいらん。今のままでいい。できるだけ棋譜を読み込んで自分のものになるまで記憶するんだ。あとはそうだな。学校の授業を一字一句聞き漏らすな。加えて、教科書でも丸暗記するか。学業は大事だからな。できれば、大学はでておけ」
「将棋だけで十分よっ。他の事に時間を割く余裕なんてないわっ」
「引き出しは多いほうがよいぞ。それに何が将棋に役立つかわからん。全く関係のないと思っているものが、ふとした時、閃きに繋がるかもしれんだろ?そうだ!心理学なんかもいいかもしれんぞ」
「で?本当は?」
「どうせ学校に友達なんていないんやろ?」
「うるさいわねっ!友達なんて私には不要よ」
「だったら学校にいる時間ぐらいは真剣に勉強しとけ。真面目で成績がよければ教師達はある程度融通がきく。嫌でも中学は卒業せなあかんからな。味方にしといて損はない。それに、女子高生・女子大生はある意味女の子なら誰でも手にできる期間限定のブランドだ。もらえるもんはもらっとけ」
「し…師匠もそういうの好きなの?」
「全く興味ないが?さて、本題はここからだ。コンピューターではできない事。それは自分の感情を完全にコントロールする。そして、相手の感情を読み切り、コントロールする事だ。俺もそうだったが天衣には対人戦の経験が絶対的に不足している。相手は用意してやるから土日はひたすらVSな。ここで重要な事だがな。初手から一手も無駄にするな。どんな相手にもだ。何故そこに駒を置き、これから何がしたいのか?今、相手はどんな事を考えているのか?ひたすらに考えろ。対局時間は目一杯使え。そして、いっぱい負けてこい」
「いやよ。勝たなければ意味がないわっ」
「もちろん勝てるなら勝っていいぞ。そんな余裕は直になくなるけどな。おそらく最初の一〜二局が限界じゃね?あと、先手の場合は角換わり、後手の場合は一手損角換わり。相手が格下の場合は交換した角の使用を禁ずる。どうだ?楽しそうだろう?もし、1日の勝率が3割を超えるようなら読みをさぼったからだと思え。ちなみに一局でも負ける為の将棋指したら破門♪最後に天衣の世間へのお披露目はマイナビ女子オープンなっ。優勝して、『空銀子』に勝ってこい」