今回は、夏合宿編に入るという事で少し短めでお送りします。
クラシック期7月。ウララとアマガスとガーネットの夏はこれから始まります!
第7R「海に行こう!」
◆◇◆◇◆◇◆
「海に行こう!」
7月中旬の某日。
唐突にそう切り出したガーネットの言葉がトレーナー室に木霊した。
実に早いタイトル回収である……ゲフンゲフン。
「いきなりどうしたんですか?」
「夏といえば砂浜に海!暑い日差しの下でかき氷を片手にサマーバカンスだよアマガスちゃん!」
「いやホントにいきなりどうしちゃったんですか」
何故か掛かり気味で変なテンションなガーネットの手には何処から持ってきたのか海水浴場の宣伝チラシが握られており、先程からずっと海へ行きたいと主張を繰り返している。
───現在のトレセン学園は多数の生徒達が夏合宿に出た影響で閑散としていて、いつもは喧騒を湛えている廊下でさえ今はシンと静まり返っているのだが、そんな廊下にも響く程の声量による主張が私のウマ耳にダイレクトかつクリティカルにヒットし続けていた。
それ故にそろそろ目眩を起こしそうな領域に差し掛かってきているが、こればかりは譲れないと言わんばかりに言葉が飛んでくる。
目的は分かる。夏だもんね。海は魅力的だよね。私も、何も無ければ自家用車でふらっとツーリングにでも出ていたかもしれないし。
まぁ今はウマ娘になった影響で、取得した免許関連はトレーナー資格以外全て使えないけど。
……それはさておき。海へ行きたいという気持ちは分かるものの、残念ながら今はそういう訳には行かないのである。
天春麗の後任としてサクラアマガスがハルウララのトレーナーとなったことによる諸々の手続きを済ませなければ、何も行動出来ないのだ。
ウララはもちろん、ガーネットにもその事情は伝えてあるはずなのだが……
「うーみー!海に行こーよー!」
……ずっとこの調子なのである。
聞き分けがないとかそんなレベルじゃないぞ? と思った私はガーネットに理由を訪ねてみた。
最初こそ『私が行きたいから!』とか宣っていたのだが、たづなさん式説得術(笑顔で説明要求)をすると直ぐに理由を話してくれた。
「トレーナー室に来る途中で偶然ウララちゃんを見かけたんだけど、多分同級生の子達とのお話の最中だったのかな? その子たちと夏合宿で海に行くんだって話をしてたみたいなんだけど、羨ましそうな反応の後で少しだけ寂しそうにしてたものだから……どうにも気になっちゃって」
そう苦笑いしながら言うガーネット。
そういえばと思い返してみたら、ウララから海に行きたいと聞いた事は無かったなと気付いた。
そんなウララが、私やガーネットに言うでもなく友達との会話の中でそう零していたとあれば……
「ガーネットさん」
「なぁに? アマガスちゃん」
「今日中に抱えている事を全て片付けます。なので、助力をお願いします」
「あっははっ♪ そうこなくっちゃ!! がってんしょうちのすけだよ!!」
私の心を読んだかのように笑顔で応えるガーネット。
もしかしたら顔に出てたのかもしれないが、そんな事はもうどうでもよかった。
今ここに、私ことサクラアマガスとガーネットの両名によるミッションが生じた。
───ウララを海へ連れてゆく。迅速果断、不言即実行であるッ!!
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次の日。
2人揃って目元に隈をこさえながらもタスクを消化し切ったことで予定がかなり空いたため、仮眠もそこそこに色々と準備を始めた。
まず先にウララの予定を聞き、何も予定が無いことを確認した後に海に行くことを伝えた。
『海行くのぉ!? やったぁ〜!! いつ行くの? いつ行くのぉ!?』
「急な話だけど、何もなければ明日からにするつもりだから、親御さんにちゃんと話をしておくんだよ」
『はーいっ!!』
その後ガーネットが自動車免許を所有していることが分かったため、軽バンをレンタルして必要になりそうな機材を積み込んで粗方の準備を済ませた。
「お疲れ様でした……いやぁ、流石に疲れましたね」
「おつかれぇ〜……もうクタクタだけど、明日からが本番だもんね!! 今日はちゃんと休んで明日に備えよっか♪」
「ですね。それじゃあ今日はこれで解散としましょう。また明日よろしくお願いしますね」
「はぁい♪」
そうして2人でトレーナー寮に戻った後、楽しみな気持ちと心地よい疲労が誘う眠気に身を委ねるのだった。
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更に次の日。
朝5時集合とかなり早めな集合時間にしたのだが、めちゃくちゃ笑顔で早起きしてきたウララが私達が来るよりも前にトレーナー室に待機していた。
「あっとれーなぁー!! おはよぉ〜!!」
私を見つけた途端、物凄い勢いで突っ込んできて……またしても私の胸に埋まった。これもう確信犯でしょ。
「うんむむぅ〜!!」
「こらこら……全くもう、テンション高いねぇ」
少し遅れて寝惚けまなこのガーネットとも合流し、忘れ物の確認を済ませた私達は軽バンを駐車している広場まで歩き始めた。
その最中、ウララがふと私に尋ねてきた。
「ねぇねぇ、トレーナー。海にはトレーニングのために行くんだよね?」
「えっ? いや違うけど」
「違うのっ!?」
驚くウララにどういう事なのか話を聞く。すると。
「海に行くって話だったから、夏合宿なのかなって思ってたんだ〜」
こんな返答が帰ってきた。
成程。そういえば、ウララのクラスメイト達も夏合宿で海に行ってるんだったっけ。
……もしかして、羨ましそうにしてたのって『海に行く』ことではなく『海に合宿しに行く』ことだった?
「ウララが望むなら、海で遊びつつもトレーニングも出来るようにするけれど、どうする?」
「するする、するよっ!! トレーニングも遊ぶのもどっちもするっ!! 」
それとなく希望を聞くと嬉しさが大爆発し始めたウララの願いを聞き、ガーネットと無言で見つめあってから互いに頷いた。
───そこからの行動は早かった。
ウララには広場で待つように指示し、私とガーネットでトレーニングに使う機材を追加で持ってきた。
積載重量がそろそろ気になり始めるレベルの物量となったが、ここまで来て止まることはもう考えられなかった。
タイヤのバーストだけは怖いが……そこはもう、無事に海へ着ける事を祈る以外にはないだろう。
「それじゃあ行くよぉ〜!! れっつらぁ〜?」
「ごぉ〜!!」
「ゴー……って、いや古くない?」
さぁ、海へ向けて出発進行だッ!!
感想・評価等、お待ちしています。m(_ _)m
※第1話にて誤字指摘があり、それを受けて無事修正致しました。
指摘してくださった方には御礼申し上げます、ありがとうございました!