スケジュール管理をミスってこんな時間に投稿……お盆時期が重なったとはいえ、反省しなきゃなぁ。
では気を取り直して……
今回のお話は、夏をエンジョイする3人のウマ娘のお話です!
◆◇◆◇◆◇◆
暑い日差しが容赦なく降り注ぐ7月中旬の某日。
トレセン学園から出発し、無事に海水浴場へと到着した私とウララとガーネットの3人は、早速車外に出て外の景色を眺めた。
雲ひとつない快晴の空と凪いだ海が、彼方の境界線を青く滲ませている。
そんな光景に爽やかな清涼さを感じながら、そよぐ潮風に思わず目を細めた。
「わぁーいっ!! うみだーっ!!」
「ウララちゃ〜ん!! あんまり遠くに行かないようにね〜!!」
浜辺まで飛んで行くように駆けていったウララへ注意を促す
ガーネットの声を尻目に、私はバンのトランクから荷物を下ろし始めた。
炭とドラム缶バーベキューコンロ、各種食材に炭酸飲料。
テントにビーチパラソル、あとはレジャーシート。
ビーチボールや浮き輪なんかも、とりあえず引っ張り出した。
途中から手伝いに加わったガーネットと一緒に諸々の設営を終えると、ひとしきりはしゃぎ回って帰ってきたウララがガーネットの元へとやってきた。
そして一緒に水着へと着替えると、再び海に向かって走り出していった。
無邪気に駆け回る2人の姿をぼんやりと眺めながらに思う。海へ来た甲斐があったなと。
特にウララなんかは、はちきれんばかりの笑顔を浮かべて遊んでいる。
対するガーネットも確かにはしゃいでこそいるが、そこはやはり年長者であるためか、思ったよりも落ち着いているように見えた。
そんな対照的な様子のせいか、この2人が並ぶと年の離れた姉妹のようにも見える。
天真爛漫な妹と姉───ふむ。ふむふむふむ。
「あぁ〜……本当に来てよかったぁ。眼福ここに至れり……ありがたやぁ、ありがたやぁ〜」
うむ。心が雪がれてゆくようだ。
そんな感じで2人を眺めていたら、不意にガーネットと目が合った。
私の方を見てふんわりとした笑みを浮かべたガーネットは、ウララになにか声を掛けるとこちらへ向かってゆったりとした足取りで近寄ってくる。
「ほら、アマガスちゃんも一緒に遊ぼうよ♪」
「ゑっ」
そんなことを言いながらクルリと後ろを向かされ、背を押される。
向かう先は駐車しているバン……ま、まさか。
「アマガスちゃんも水着持ってきてるんでしょ〜? 早く着替えて海に行こうよ♪」
「い……ぃいやいやいやっ!! 確かに一応水着は持ってきてますけどっ!! 私なんかが2人に混ざるとかなんかもう色々申し訳ないというか罪深いというかなんというか!!」
背中を押すガーネットに対して抗議の声を上げる。
カワイイ女子2人に混ざるという行為には、色んな輩に狙われそうな危険を感じるのだ。
俗に言う、百合の邪魔になる男は絶対許さないって奴だ。
今の私はウマ娘ではあるが、それでもと魂が告げている。あの聖域は、決して穢してはならないとッ!!
「えぇ〜? ウララちゃんが待ってるのにー?」
「すぐ着替えてきます」
私の愛バ(ウララ)が待っていると言うのならシカタナイネ。ウン。
……そんなこんなで決死の覚悟を決めた私は、いそいそとバンの裏に隠れながら水着が入った鞄を開いた。
するとその中から、一通の見慣れない封筒が出てきた。
これは一体なんだろうと思った私は封を開いて中の便箋を見たのだが……そこには、とんでもない事が書かれていた。
『───率直に書きます。
もっと着飾りなさい。そして、それに慣れなさい。
本当は取り上げたかったけれど、あなたの詰め込んだ方も必要になると思うので、不本意ですが中身はそのままに、私がチョイスした水着を新しく入れておきました。
是非それを着て、その姿を写真に収めてもらって、私の携帯に送ってください。
期待して待っています。母より。』
ワナワナと震える手で鞄の中をあさると、その中から薄桜色の割とフリフリな水着が出てきた。ご丁寧に着用後のイメージ写真まで添付された状態で。
写真を見る限りでは、通常の水着にパレオという割とありがちな組み合わせであるようだが……問題はそこではない。
なにこれ。死の宣告? よりにもよってあの二人の前に、この水着姿を晒せと?
「アマガスちゃーん、まだー?」
「あっ……はい、もう少しだけ待ってください」
ガーネットからの催促を受けたため、とりあえず自分で持って来た方の水着を着てからガーネットの前に戻ったのだが……
「えっ……アマガスちゃん、それ競泳水着……」
思ってたのと違う、という様な反応と表情に出迎えられた。
何やら期待していた様子だが、いいのだ。私はこれでいいのだ。
誰がなんと言おうと、私はこれで───
「あれぇ? トレーナー、この水着ってトレーナーの水着〜?」
───緊急事態宣言発出!! 今それを表に引きずり出されるのは非常に不味いッ!!
「ウララちゃん、それ貸して!!」
いつの間にか戻ってきていたウララが手にしている水着を見た私の反応から察したガーネットが、即座にウララの元へと駆け寄る。
私も必死に手を伸ばしたのだが……それよりも先に、件の水着はガーネットの手に渡ってしまうこととなった。
ウララを経由して水着を奪われた私は、きっと産まれたての子鹿のようになっていたのだろう。
そんな私を見て少し……というか、だいぶん掛かり気味になったガーネットが、水着を片手に鼻息を荒くして私に迫ってくる。
「アマガスちゃーん? どうしてこっちを着たがらないのかな〜?」
「それは、その……」
「トレーナー!! 絶対似合うよっ!! その水着、着よーよぉ!!」
「えっと、あの……」
「ほらほら、ウララちゃんもこう言ってる事だし……私も見たいし、着て欲しいなぁ? いいよね、いいよね?」
「あ、あうう……」
───こうして、目の前のカワイイ悪魔2人に心を粉砕された私は、詰め寄られてどうしようもなくなったことも相まって抵抗する事すらままならず、終始なされるがままとなるのだった。ちくせう。
─────
───
─
「わぁ……っ!! とっても可愛いよ、トレーナー!! まるでお姫様みたいっ!!」
ぴょんぴょん跳ねながら、興奮した様子で感想を述べてくるウララ。
「アマガスちゃんって、もしかして何処かの令嬢だったりしない? 可愛いのもそうなんだけど……どことなく気品を感じるよ!?」
そして、それを上回るレベルでめちゃくちゃ掛かっているガーネット。
今までの流れから褒め殺しを覚悟したのだが、想定していた方向とは別のベクトルの賛辞が弾丸の如く飛んできた。
「あ……あんまり、見つめられると……その、は、恥ずかしいです……」
震えて掠れた声で必死に主張するがそんなものは当然聞きいれては貰えず、2人のテンションはさらに上がってゆく。
それ所か、ガーネットは私の必死の主張を受けてさらに掛かり具合を深くしていた。悪ノリ全開のオタク同然である。
そのトークの圧はマシンガンを通り越し、ウララの援護も相まってか最早ガトリングと比喩できる領域に達していた。
「あっあのっ!! 私の事はもういいので、そろそろ海で遊びませんかっ!!」
2人の言葉責めからどうにか抜け出せないかと話を逸らしたのだが、それは過ちであったと直ぐに気付かされる事となる。
「いいよぉ!! 早く行こうトレーナー!!」
「もぉ〜〜〜しょうがないなぁアマガスちゃんは〜〜〜♪♪♪」
半ば貞操の危機すら感じる中で波打ち際まで移動してから遊び始めたのだが……
(この格好……布面積が小さいのもあるけど、全体的にヒラヒラしてるせいか、とても心許ない!!)
私が取る行動一つ一つでパレオが舞い、吹き抜ける風が普段露出しない部分の素肌を撫でる。
そのせいか、ソワソワとした落ち着かなさが羞恥心を私に抱かせた。
それに付随し、周囲からの視線が物凄い刺さるのだ。
おかげで顔が火照って火照って仕方がない。
「えっへへ〜♪ それそれーっ♪」
「ひゃんっ!? ちょ……ウララ、やめてっ!!」
そんな私の心境を知らないウララが巻き上げた海水が私に掛かる。
少しだけヒンヤリした海水が私の背中やヘソ辺りに掛かると、その冷感故か反射的に身体をビクリと震わせ、しゃくりあげた様な変な声が出てしまう。
このままじゃ何かもう色々危ない。そう思った私は、どうにかならないかと助けを求めるように周りを見渡した。
すると、少し離れた位置でひとりプルプルと震えているガーネットを見つけた。
そのあまりの不審さに身構えていると───
「……んもぉーっ!! アマガスちゃん可愛過ぎでしょ〜!!」
「ひゃああっ!?」
───突如として、物凄い水量の飛沫が私に向かって飛んできた。
「ウララちゃんに水を掛けられてひゃんっなんて言っちゃってさぁ!! さっきからの反応もずぅ〜っと生娘のそれだしっ!! 普段とのギャップがスゴすぎてもうヤバヤバだよぉ〜!!」
「あうっ!?」
迫り来る言葉の弾丸と水圧を避ける暇もなかった私は、当然それを全身に喰らってしまい……そのあまりの勢いに尻もちをついてしまった。
「あっ!? ご、ごめんね、やり過ぎちゃった……大丈夫アマガスちゃん!?」
そんな私を見て流石に少し冷静になった様子のガーネットだったが……
「ふ、ふふふふふ……」
「あ、アマガスちゃん?」
……今更冷静さを取り戻しても、もう遅いわァ!!
「よくもやりましたねぇぇぇぇ!? これはお返しですっ!! 2人ともおとなしく喰らいなさぁぁぁぁいっ!!」
「あっちょっ、きゃあっ!?」
「あははははっ♪ トレーナーが怒ったぁ〜♪」
……その後、羞恥心がオーバーフローして吹っ切れた事で、久方ぶりにはっちゃけた私を交えた3人で夕方まで遊んだのだった。
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先に海から上がってシャワーを浴びてきた後、遊び過ぎてクタクタになりながらも設営したテントまで戻った私は、早速晩御飯の準備に取り掛かった。
炭を適度な隙間を作りながら山の形に盛り、その中に着火剤を仕込んで火をつけてから団扇で扇ぐ。
良い感じに炭に火が入ったのを確認したら山を崩し、同様に適度な隙間を作りつつ新たに炭を追加した後でまた団扇で扇いでゆく。
そうして追加した炭全体に火が回ったら準備完了。次は焼いていく食材を脇に用意していく。
醤油とみりんで作ったタレで事前に味付けをしたトウモロコシをアルミホイルで包んで網の端の方に乗せておく。
ハラミとカルビ、ホルモンなど買ってきた肉や、トレセン学園の厨房を借りて予めカットしておいたピーマンやしいたけ、アスパラやニンジンなんかの野菜類も真ん中に色々乗せていき、反対側の端っこにはホタテやつぶ貝、エビやイカなんかを乗せたら、あとは両面が焼き上がるまで様子を見守る。
「うわぁ〜……アマガスちゃん気合入ってるねぇ」
「わぁーっ!! すっごく美味しそうっ!! 早く食べたい食べたい〜っ!!」
そうしている内にウララとガーネットが加わり、設置しておいた椅子に各々が座るのを見てから割り箸と紙皿と紙コップを配ってゆく。
全員に行き渡ったらクーラーボックスを開き、氷水に沈めておいた飲み物を適当に取り出した。
「お茶とにんじんジュースと炭酸ジュースがありますけど、2人は何を飲みますか?」
「にんじんジュース!!」
「私は炭酸にしようかな?」
それぞれの紙コップに希望の飲み物を注ぎ終えた頃、いい具合に焼けた肉類が今宵の宴の始まりを告げた。
ウマ娘の食欲を満たすべく食材は沢山買ってきてあるので、今夜は長く楽しめそうだ。
「焼けたら食べ始めちゃっていいですよ」
「わぁーい!! それじゃあ、いただきまーす!!」
「それじゃあ私も先に頂いちゃうね、アマガスちゃん」
「はーい。火傷には気を付けてくださいね〜」
カルビを頬張り、ほっぺに手を添えて顔をふにゃふにゃに綻ばせているウララ。
そんな様子を微笑ましく見ながら、炭酸ジュースを片手にホルモンを頬張るガーネット。
2人の反応を楽しみつつ、私も隙を見てはお茶と一緒にハラミを食べ始めた。
うん……やっぱり、こうして食べるお肉は格別だな。とっても美味い。
「へっへーん♪ 次はニンジンだぁ〜!!」
「あっ私も食べたい!! ウララちゃん、私のも取って欲しいなぁ〜」
「いいよぉ!! トレーナーも食べる〜?」
「うん、貰おうかな」
そんなこんなで、ウララが取ってくれた焼きたてのカットニンジンを頬張った、その時だった。
(あれ……? ニンジンって、こんなに美味しかったっけ……?)
そう。何故か普段よりもとても美味しく感じられたのだ。
いや、これはそんなレベルじゃないな……下手をすれば、これまで食べてきたモノのどれよりもウマいかも知れない。
これは、一体どういう事だろうか!?
「おいし〜♪ 網で焼くニンジンもサイコーだね、トレーナー!! ……トレーナー?」
「アマガスちゃん? どうしたの?」
少し焦げ目が付いた焼き加減ながらも口の中いっぱいに広がる優しい甘さが、ポリポリとした歯触りと共に口の中をシアワセで満たしてゆく。
そうしてゆっくりと咀嚼を終えてから……名残惜しみつつ、コクりと飲み込む。
そんな喉越しにすらも、今は多幸感を覚えた。
え、これ本当にただのニンジンだよね?
「───ああ、美味しい……♡」
「あ、アマガスちゃん……目が完全にイッちゃってるよ……」
「トレーナーがヘンになっちゃった……」
……こうして、夏の海の夜は賑やかに耽けていくのであった。
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