仮面ライダーモルテ   作:紅坂 絡

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 オシリスは駆けた。悪霊を狩るために。オシリスは駆けた。人々を救う為に。アラン・チャールズは死神の敗北を予知する。少年は降霊術の術式を錬金術で錬成した腰当てに施した。悪霊に死神が負けたみたいに。死神と共に悪霊と戦う為に。
『旧約 死神録 駆死神』より。


【弐】仮面の死神、思惑悩み
♯11進化


 深夜の渋谷区。路地裏に怪人を追い込んだ犬を模した仮面の死神は『悪霊』と呼ばれている怪人に切先を向ける。悪霊は咆哮を上げると死神の頭上を飛び越えようとする。が、

『今だ!咲良』

僕は銃の引き金を引いて悪霊を撃ち落とす。死神が悪霊を剣で斬ると、悪霊は爆散した。死神が変身を解くと、青の髪に赤いメッシュが入った青年の姿に変わる。青年は僕に近寄ると、ひとつの瓶ジュースを渡す。

『おつかれ!ナイスアシストだぜ。咲良』

『アンタの合図のお陰だよ。依澄』

僕は瓶を受け取ると、蓋を開けて飲み始める。彼のアシストになって2ヶ月が経つが、未だに死神になれない。首に掛けてる羽根のネックレスを見る。依澄が孤児院の焼け跡から見つけてくれた奇跡的に無事だったなおちゃんから僕へのクリスマスプレゼント。ネックレスをしばらく握り締めた後、僕は中身を一気飲みする。齢12の2月。僕は焦っていたのだ。

 

♣︎♣︎♣

 

 仮想敵を鎌で斬り伏せていく。その間にも、俺はジンと名乗った敵のリーダー格と思わしき青年のこと。エビルライダーに変身したアリスのこと。そして、

「はぁ、、、はぁ、、、もっと強くならなきゃな。守条くんには負けられないや」

スタークルと呼ばれる新しい力を手に入れた天才死神のことを。全ての仮想敵を斬り伏せた後に俺は床に仰向けになる。すると、誰かが俺に水を差し出した。

「おつかれさま。蛇芽さん」

「田井中さん!?なんでここに?」

田井中ヒメ。姫雛鳥の片割れ。有名人だが、彼女は死神じゃないはずだ。

「ヒナの検査の付き添いに来たの。そしたら蛇芽さんが訓練漬けになってるから引っ張り出して欲しいって本部長の人が」

「御堂本部長に心配掛けちゃったなぁ、、、そろそろやめておくよ。水ありがとね」

俺は立ち上がるとペットボトルのフタを開けて飲み始める。そして訓練室から出る。その後ろを田井中さんがスキップ交じりについてくるのだった。

 

♣︎♣︎♣

〜咲良side〜

 通学途中、僕はいつも通りラジオを聴いている。ラジオMCの女の人は今日もテンションが高く、眠気が覚めかけていた。

『今日のマチナカニュース!深夜に潜む怪物の話』

悪霊のことじゃん。まぁ、死神がニュースの影響で仮面ライダーと言われるようになってからどこのメディアも悪霊や死神の事を大体的に取り上げることが増えた気がする。まぁ、その原因を作ったのは命令違反した僕だけど。

『午後23時のアポロモールにいた警備員の話なんだけどさ、モール内のアポロの広場に怪物が現れたらしいんだ。怖くなった警備員は慌てて逃げたから命に別条はないらしいけど、怖い話だねー』

悪霊に関しては都市伝説やオカルトに近い噂程度だと大人は思っているのか、こうやってラジオのネタに使う位には何も思ってないのだろう。

「ま、その悪霊を殲滅してるのは僕だけどね〜」

僕は学校への道のりを気だるげに歩くのだった。

 

♣︎♣︎♣

 

 後日談で説明した通り、空鈴サンも同好会に加わったので、部員が5人になったから悪霊研究部になった。部室は相変わらずだが、少しものが増えたように感じる。速水サンはレンレンと一緒にサイトをチェックしてる。南條サンは本部への定期連絡だろう。ライブでの一件で、僕は死神ブラックリストの最上位になったらしい。非常に嬉しくない。その証拠に、

『どうした咲良、元気ないな』

「この現状に嘆いてるんだよ。ハルバ」

僕は右腕につけてる腕輪に返事をする。神谷総監曰く、監視用の特殊腕輪らしい。特殊GPSが入ってる、外すのは不可能までは分かるが、

『なんで嘆いてる?同好会が部活になり、お前さんの推しと同じ空間にいれてラッキーじゃないか』

「その分、監視も厳しくなって、さらに喋る腕輪もつけられてんだよ?最悪なんだけど〜」

「いいじゃん。ハルバのおかげで、咲良くん学校によく来るようになったからさ」

そう空鈴サンが言うが、僕の気分は上がらない。っていうか空鈴サン距離近くない?まぁ、幸せってことにしておこう。因みにハルバの名付け親は姫雛鳥の2人。

「ハルバは正式名称になりました。空鈴先輩のお陰です」

そう南條サンがお礼を言っている。レンレンがハルバに触れようとすると、

『オレサマは死神以外には触れるのは無理だ。諦めてくれよ。南雲蓮』

「ちぇ。分解してみようと思ったのによ」

レンレンは持っていたプラスドライバーをしまう。速水サンがふと南條サンに聞く。

「気になったんだけどさ、美澄ちゃんってなんで死神助手をしてるの?」

「、、、言えません。今は」

南條サンはそう言うと、部室の前の依頼箱に依頼が入っていないか確認しに行ったみたいだ。それにしても、南條サンが組織に参加した理由か、、、

「あんたの影響だろうね。依澄」

「ん?どした?咲良」

「なんでもないよレンレン。ソシャゲしようぜ〜」

「あ、それ私もやってる!」

「私も入れてよ!」

僕は呟きを誤魔化し、2年生組でソシャゲするのだった。

 

♣︎♣︎♣

〜奏多side〜

 訓練室で鎌を振る。前から迫ってくる斧を鎌で跳ね返し、背後から迫ってくる斧を紙一重でかわす。左右から迫ってくる斧には鎌を土台に飛び上がり、右の斧を跳ね返す。着地と同時に左右前後から斧が迫って来たので回転して全部の斧を跳ね返す。次の斧の攻撃を警戒してると、終了のサイレンが鳴った。俺は目隠しを外す。

「新記録更新。でも、まだまだだな、、、」

目隠しをもう一度しようとしたらいつの間にか手元から消えていた。すると俺の頬に水のペットボトルが当てられる。

「休憩しなよ。蛇芽さん」

「、、、田井中さん」

訓練室から出て、俺はベンチに座る。俺の隣に田井中さんが腰掛ける。田井中さんの首には許可と書かれていたカードがぶら下がっていた。

「ずっとやってたんでしょ?ちゃんと休まないと」

「ちゃんと休憩時間はとってるよ。」

「だーかーらー」

田井中さんはスマホを取り出すと、俺にメッセを飛ばす。俺はメッセを開いて確認する。

【ヒメ:明日11時に駅前集合!1日私と遊ぶこと!】

と書かれていた。

「どういうこと!?訓練室の予約は!?」

「御堂さんがキャンセルしましたー」

「え〜、、、」

人の予定をキャンセルしやがって、、、あのおっさん。

「明日!ちゃんと来てよ!」

田井中さんは走り去った。俺は訓練室に戻ろうとしたが、踏みとどまり、自分の部屋に戻るのだった。

 

♣︎♣︎♣

〜咲良side〜

 『っていうことがあってさ』

「なに?惚気?」

最強の死神から電話が来たんで何かと思ったらまさかの惚気。深夜のアポロモールを見回りながら僕は蛇芽の話に耳を傾ける。正直こういう時に聞く話じゃない。

「仕事中だから後にしてくんない?」

『悪霊退治かい?』

「うん。丁度目の前にいらっしゃるみたいだからさ〜」

僕は電話を切った。目の前には剣を模した怪物。今までは生物モチーフだったのに。

『我々は進化を遂げた!お前ら死神なんざ怖くないわ!』

進化、、、生物以外に物体の情報を得てそれをモチーフに体を作れるようになったということか。でも、物が悪意を吸い取ってそこから出てくる悪霊が物体を模した悪霊。ちょっと混乱しそうだ。僕はハルバに命令する。

「ハルバ、ちゃんと記録しててよ」

『了解だ』

悪霊が僕に斬りかかってくるのでそれをかわし、蹴りを放つ。更にもう1発。そしてパンチ。蹴りをもう1発放とうとするが、奴が剣の腕でガードしてたので足を止める。

『どうした?怖いのか死神』

「生身なんだからそりゃビビるって〜」

僕は奴と距離を取ると、ベルトを装着。ホルスターからカードを取り出し、挿入する。

『ラビット』

背後に黒装束でウサギのドクロの死神が現れる。

『ARE YOU READY?』

「変身」

鎌を下ろして水晶を割った。

『グリムアップ』

死神が装甲に変わり僕に纏わりつく。

『ラビットグリム』

モルテに変身した僕は奴を見据え、いつもの台詞を言う。

「始めようぜ〜。今宵は死神の時間だよ」

 

♣︎♣︎♣

〜心花side〜

 守条くんが変身して戦っている様子を陰から覗き見る。敵の剣をかわしたり、捌いたりしながら的確に拳や蹴りを与えている。苛立ちを感じたのか、敵は腕の剣から衝撃波を放った。彼はそれをかわし、蹴りをもう1発当てる。

「すごい、、、」

思わず私はつぶやいていた。小さい頃にテレビで見たヒーローと怪人の戦い。でもこれはそんな次元を超えた戦いなのだと悟る。

「そうだ。これ試そ」

彼はベルトからカードを抜くと鎌を上げた。ホルスターにしまい、別のカードを取り出すと、ベルトに挿入した。

『スコーピオン』

背後にサソリの骸骨が現れる。

『ARMS READY?』

「アームド」

鎌を下ろす。

『グリムアームド』

サソリの骸骨が装甲の一部に変わり、彼の装甲の一部と入れ替わる。

『アームドスコーピオン』

彼は姿が変わったモルテの装甲を確かめる。両腕にはハサミが装備されており、後ろには収納されているサソリの尻尾が。

「命令違反して倒したサソリくんの力、使わせて貰うよ」

守条くんはハサミを構えて歩き出すのだった。

 

♣︎♣︎♣

〜咲良side〜

 敵の剣をかわし、右のハサミで攻撃する。相手の体に火花が散り、悪霊は後方に飛ぶ。僕は背中から尻尾を出し、悪霊向けて突きを放つ。相手は両腕の剣で防いだ。が、計算通りだ。俺はそのまま尻尾を収納する勢いを利用してハサミで攻撃。胴体がガラ空きになった瞬間に連撃する。

「どらららら!らぁー!」

悪霊は吹っ飛び、地面に倒れ伏す。悪霊が立ち上がったと同時に再び僕は攻撃を仕掛けた。

『ぐはっ!?アリス様から聞いてはいたが、、、強いな、、、』

「そりゃどうも〜」

殴って、剣を避けてを繰り返す。僕たちが互いに距離をとった時にはお互い肩で息をしていた。

『しぶとい死神め!これで終わらせてやる!』

悪霊は剣先にエネルギーを貯める。僕はラビットグリムに戻り、鎌を上げる。右足にエネルギーが迸る。僕は悪霊に向かって走り出した。アイツの攻撃の発動までにはインターバルがあるだろう。でもわざわざ待つつもりはない。僕は鎌を下ろしてジャンプした。

『ラビットグリムブレイク』

僕は空中で前転して蹴りを悪霊に喰らわせる。吹っ飛んだ悪霊は地面に倒れ伏し、

『そ、そんな、、、進化した筈なのに、、、』

僕が着地したと同時に悪霊は爆散した。

「ゆっくり、お眠り」

 

♣︎♣︎♣

 

 変身を解いた僕は隠れている速水サンの元へいく。速水サンは僕の戦いに興奮したようでアポロモールを出るまでずっと僕に話していた。

「じゃあ、噴水公園の怪物を倒したのも守条くんなの?」 

「そうだよ〜」

陽炎街に来てから戦った2体目の悪霊だ。そういえば、あの時はまだ同好会を作ろうと南條サンは言ってなかったけど自分が引き受けた初めての依頼だ。随分と懐かしいな。

「帰ろっか。バイク乗ってくでしょ?」

「うん!」

僕は速水サンと2ケツしながら学生寮に帰るのだった。

 

ED:道明寺ここあ「Horizon」

 

♣︎♣︎♣

〜奏多side〜

 守条くんに電話を切られてから長い時間が経過した。悪霊がいたのは仕方がないと思うけど、いきなり切る必要はないと思う。

「自由だよな〜守条くんは。君たちみたいに死神は始末候補って襲ってくる単純な性格だったら苦労しないのにね」

俺の足元には3体の悪霊が倒れていた。俺は悪霊の首を跳ね飛ばすと、悪霊は消滅する。仕事を終えた俺は帰ろうとすると、

『やぁ。こんばんわ』

声が聞こえた方を振り返る。そこにいたのは仮面をつけてワンピースを着た少女。アリスだ。

『じゃ、始めましょう』

アリスは銃のスロットにウルフのカードをセットした。

『ウルフ』

アリスの背後に狼の悪霊が現れた。

『ARE YOU READY?』

アリスは銃口を押し込み、離す。

「決行」

『エビルアップ』

悪霊が装甲に変わり、アリスを包み込む。

『エビルライダー』

エビルライダーになったアリスは俺に銃口を向ける。

『あなたの処刑を決行する』

俺はニヤリと笑い、装着してるベルトにカードを挿入する。

『スネーク』

背後に黒装束でヘビのドクロの死神が現れる。

『ARE YOU READY?』

俺は右手でフィンガースナップをする。

「変身」

俺は鎌を下ろして水晶を割った。

『グリムアップ』

死神が装甲に変わり俺に纏わりつく。

『スネークグリム』

サマエルに変身した俺は鎌を構える。

「正義の死神の御成だ」

 

♣︎♣︎♣

〜ジンside〜

 アリスとサマエルが戦っている様子をビルの屋上から眺める。そんな俺の隣にアキネがワインを持って近づいてきた。

「どう?アリスは。強くなったでしょう?」

「あぁ。サマエル相手に互角に立ち回れている」

俺はアキネから受け取ったワインを一口飲んで、近くに置いてあるカードを手に取る。

「コイツを使う時が近い」

ジンはニヤリと笑う。カードには白のウサギが描かれていた。

 




 死神、蛇芽奏多は田井中ヒメとのデートを楽しむ。一方、守条咲良は敵の新たな思惑に気づきつつあった。次回、仮面ライダーモルテ♯12告白
「ねぇ、貴方は死後の世界を信じますか?」

新章【弐】仮面の死神、思惑悩み

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