仮面ライダーモルテ   作:紅坂 絡

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 死神の兵人を連れ、死神騎士は悪霊の王と交戦する。悪霊の王は死神騎士の想像を絶する力に圧倒されるがそれでも戦いは終わらない。世界の命運は、この戦いで決まるのだ。
『旧約 死神録 命運』より。



♯15覚悟

 その日は様々な死神から本部の出入り禁止を命じられ、僕は仕方なく東京を歩いてまわっていた。様々な店や施設に行ってみたが、何も感じなかった。ふと、2人組の学生とすれ違う。

『次どこ行く?』

『クレープ食べ行きたい!』

寄り道。学生に許されている権利。僕は学校が終わってから本部に直帰しているのでそういう過ごし方をしたこともない。本当なら今頃、誰かに引き取られて平和に過ごしているか、なおちゃんと2人で放課後の寄り道を楽しんでいるかもしれない。でも、そんな日は来なかった。

『よっ!何してんだ?』

『、、、本部出入り禁止だって』

依澄が爆笑する。ムッとした僕は依澄のケツを蹴った。依澄が追いかけてくるので僕は逃げ回る。僕たちは笑っていた。齢12。あの事件まで、後1日。

 

♣︎♣︎♣

 

 後退りする悪霊を追い詰め、僕は悪霊の首を切る。進化してない悪霊は必殺技使うこともなく倒せる連中しか来ない。後ろを振り向くと、1人の女性が男の亡骸を抱いて泣いていた。

「もう少しアンタが早く来てたらカレが死ぬことなかったのに!」

女性は憎悪が宿った目で僕を見る。近くに停めてあったシニガミバイクに乗り、その場を去る。

「恨み言、言われんの慣れたと思ってたのにな〜」

僕の呟きは、夜風と共に過ぎ去っていった。

 

♣︎♣︎♣

 

 6月になり、制服が夏服に変わったのか、街中では夏服の学生をよく見るようになった。他人事のように思っているのは、最近、学校に行ってないからである。まぁ、異動になる前はこういう生活はほぼ毎日だったんだ。今更気にすることもない。

「いや〜前のケータイがまだ生きててよかったよ〜」

前までいじってたケータイを取り出し、アプリを開く。ネットニュースが沢山流れ始めた。だが、悪霊に近いニュースはやっておらず、スコーピオンを倒したネットニュースもフェイク扱いになっていた。

「フェイクか、、、」

「えらく不機嫌やな。どないしたん?」

僕の隣に来たのは金髪褐色の少年、明神麗央だ。

「べっつに〜。不機嫌じゃないよ」

「なんか変やで、お前がハイゾーンと会ってから」

あの時のハイゾーンエビル。依澄の取り逃した悪霊。僕はため息をついてベンチに座り込む。麗央は僕の右腕を見た後、呆れたように話しかける。

「やっぱ外したんやな。いつかやるって思っとったけどな」

「知ってるでしょ?僕は束縛は嫌いなんだよ〜」

僕達が所属してる組織は殲滅命令が出るか出ないかによって一部の悪霊の殲滅の有無が決まる。その中でも危険すぎて殲滅命令が出ない悪霊がいたりする。スコーピオンとかね。僕は殲滅命令が出てない悪霊を無断で倒したり、定例死神会議を無視したりという命令違反を繰り返した。その結果が人格矯正だ。

「でも、悪霊研究部?の人達にはある程度の情報共有を、、、」

「する必要ないよ」

僕は麗央の言葉を遮ると、ベンチから立ち上がる。

「ハイゾーンエビルは今までの悪霊とは違う。正直言って彼らは邪魔」

僕はそういうと、その場を立ち去るのだった。

「、、、相変わらず、優しいやっちゃな」

麗央の呟きは、僕には聞こえなかった。

 

♣︎♣︎♣

〜奏多side〜

 シュミレーターを起動し、エビルライダーの仮想敵を出す。エビルライダーは銃を発砲してくるので、俺は走りながらかわす。かわせない弾丸は鎌を回して弾く。銃撃が止むと同時に鎌を奴目掛けて投げる。エビルライダーはそれをかわすと、俺はエビルライダーに肉弾戦を仕掛ける。

『ナックル』

エビルライダーは銃口を単押ししてモードを変える。そして俺に殴りかかってくるがそれをかわし、顎にアッパーを放ち、ガラ空きの胴体に蹴りを放つ。近くに刺さっていた鎌を抜き、鎌でエビルライダーを斬り裂くと、エビルライダーは倒れ伏し、シュミレーションは終了する。

「はぁ、、、はぁ、、、」

俺は鎌を落とし、その場に座り込んだ。このままじゃダメだ。アリスだけじゃなく、ジンにも勝てない。

「最強の死神って期待されてるんだ、、、こんなところで負けてたまるか」

「頑張るのもいいけど、ちゃんと休んでよ」

そう言って俺の隣に来たのは田井中ヒメさん。あの日以来、会える日には会っており、訓練する時は彼女がスポドリやタオルをあらかじめ用意してくれていたりする。本部内では『蛇芽の通い妻』って言われてる、、、らしい。

「分かってる。でも、最強の期待を裏切る訳には」

「ねぇ蛇芽さん」

田井中さんが真面目な声色で俺に尋ねる。

「蛇芽さんの戦う理由ってなに?蛇芽さんの正義ってなに?」

俺の戦う理由、、、俺の正義、、、俺は田井中さんの問いに答えることができなかった。

「大丈夫!蛇芽さんなら答えを出せるから!」

田井中さんは俺の手を握り、俺の肩に頭を乗せた。俺も力を抜くのだった。

 

♣︎♣︎♣

 

 訓練を終え、俺は田井中さんを家に送っていた。ファンに見られるまたは週刊誌砲喰らったらどうしようと思っている。まぁ、実際には付き合ってないんだが。ちなみに俺たちの手は繋がったまま。離そうとしても田井中さんは離してくれなかった。ふと空を見る。まだ夕方だ。6月になって陽が出てる時間が長くなった影響だろうか。

「もう少し、一緒にいられるね」

「、、、そうだね」

俺たちは、今だけは互いに離れ離れになりたくなかった。

 

♣︎♣︎♣

〜咲良side〜

 夕方の街中を1人歩く。僕はとある路地裏に入ると、ジッポライターを取り出した。蓋を開け閉めし、火を出さずに遊ぶ。カバンからタバコの入った箱を取り出そうとしたところで、

「何してる」

声をかけられた。聞き覚えのある声だ。

「どしたの南條サン。久々なのにテンション低いね〜」

「それはこっちのセリフだ。お前、痩せたんじゃないのか?」

南條サンが珍しく心配そうに僕を見る。それもそうだろう。連日悪霊を狩ってたんだから。僕はタバコの箱を投げた。

「あ、ちなみにアレは偽モン。未成年はタバコダメだからね」

「知ってる」

空を確認する。とっくに暗くなっていたので僕たちは路地裏を歩く。このままどこかの店に入ろうかと悩んでた僕は、南條サンから話しかけられたことで思考をやめる。

「なぜ、学校に来ない?なぜ、距離を置いている?」

「足手纏い。そう言えば理解できるだろう?」

僕はそう言う。だが、彼女は納得できていなかった。

「本当は巻き込みたくないんだろう?兄さんをお前の目の前で失った時みたいに、ワタシ達を目の前で失いたくないんだろう?」

僕の脳裏にあの時の光景が浮かぶ。目の目で両親を、なおちゃんを、そして依澄を、、、

『お前は、、、俺の生きた証だ!』

依澄の言葉が浮かぶ。

「、、、そうだよ!怖いさ!今まで何度も失ってきた!父さんも母さんも!そして依澄も!みんな目の前で死んだ!キミ達まで死んだら、、、」

僕はどうすればいい。そうでかけた言葉は南條サンの一言でかき消された。

「だったら守り抜け!なんの為の死神の力なんだ?守る為だろう!」

守る為、、、僕は思い出した。

 

♣︎♣︎♣

 

『依澄は何の為に戦ってるの?』

『何の為?うーんと、、、守る為。かなぁ』

『守る為?』

『妹と恋人がいるって話したろ?』

『うん。正直あの時の依澄はうざかったけどさ』

『うっせ。でさ、俺は死神になった時に誓ったんだ。妹達を、妹達の生きる世界を守りたいってさ』

『そっか、、、僕にはないな。守りたいって思ったモノ』

『いずれできるさ。大丈夫だって!』

 

♣︎♣︎♣

 

 回想をやめ、僕はつぶやく。

「見つけたよ。守りたいって思ったモノ」

僕は南條サンに向き直り、右腕をだす。南條サンは僕の腕にハルバを巻きつけた。あの後、ハルバは南條サンが持っていたようだ。

『寂しかったぜ。咲良』

「心配かけてごめん。ハルバ」

『それはアイツらに言えよ』

ハルバにそう言われて後ろを向くと、そこにいたのは、レンレン、速水サン、空鈴サンの3人が。

「みんな、、、なんで、、、」

驚いている僕に3人はそれぞれ、

「お前みたいな死にたがりには俺らのサポートが必要だろ?天才さんよ〜」

「ほんの少しの間だけど、守条くんのことは少し分かって来たから」

「死ぬ時は一緒だよ!咲良くん!」

そうそれぞれ言う。そっか、難しく考える必要なんてなかったんだ。たとえ強い敵がみんなを襲ってきても、僕が守ればいいだけだったんだ。

「、、、ありがとう」

僕がお礼を言うと、みんな微笑んだ。僕たちの絆が、少し深まった瞬間だった。

 

♣︎♣︎♣

〜奏多side〜

 空が暗くなってきた。この時間帯は悪霊が出てきてもおかしくない。俺は田井中さんを家に送ろうとした時、目の前から虚ろな目をした男性が歩いてきた。田井中さんが男性に駆け寄ろうとするのを、俺は彼女の手を握って阻止した。すると、男性の後ろから針を模した悪霊が襲いかかってきた。

「フッ」

俺は鎌で針を防ぎ、悪霊を斬る。背後から銃声がしたので鎌を背に持っていって回し、銃弾を防ぐ。

「ほぉ。流石最強だ」

「ん?」

声が聞こえた方を向くと、そこにいたのはスーツを着た初老の男。俺は男に鎌を向けた。

「お前、ハイゾーンだな。俺になんのようだ」

「用?お前を倒しにきたんだよ!」

虚ろ目の男性が悪霊の姿に変わった。首からチョーカーが落ちたのを俺は見逃さなかった。

「それって蛇芽さんが言ってた、、、」

「ほぉ、チョーカーの分析は終わってるのか。流石はE.Kだな」

E.Kのことを知っている?今まで悪霊は死神が組織として行動してたことは知らなかったはずだ。

「まぁいい。やれ、お前ら!」

俺は田井中さんの手を引いて走り出した。ここで1番危険なのは彼女を1人にすることである。俺はスマホのアドレス帳から守条くんの名前を選ぶ。彼は3コール目で電話に出た。

「もしもし守条くん、ハイゾーンが出た!今田井中さんといる!」

『そっちも?こっちもヤバめなんだよね〜』

まさか彼の方にも出たのか!?俺は彼にまた掛け直す旨を伝えて電話を切る。田井中さんを建物の影に隠し、俺はベルトを装着し、カードを挿入して鎌を下ろした。

「変身!」

『スネークグリム』

変身して悪霊の刺突を刃を握って防ぐ。そのまま胴体に蹴りを入れて鎌で斬る。

「あっぶね」

背後から銃の悪霊、ガンエビルが発砲してきたのでジャンプでかわし、針の悪霊、ニードルエビルに命中させる。

『イテー!テメェ!気をつけろこのやろー!』

『オマエがジャマなんだよボケェ!』

仲間割れを始めた。どうやら同胞意識が低いようだ。俺はその隙を見逃さずに鎌にカードを入れる。

『スネーク』

刃にエネルギーが迸る。

『スネークグリムスライス』

鎌で悪霊を2体斬り伏せ、悪霊は訳もわからないといった風に爆散していった。

 

♣︎♣︎♣

〜咲良side〜

 蛇芽の電話を切り、僕は目の前の相手と対峙する。銀髪を逆立てた青年、ジンとワンピースを着ている仮面の少女、アリス。僕の後ろには悪霊研究部の部員の4人。

「これ、詰んでね?」

『あれ?諦めるの?天才サマが?』

挑発してくるアリス。ここで乗ったらみんなが危ない。

『できればこのまま諦めて欲しいのだけど』

「そう言うなアリス。俺がコイツと戦いたいんだぜ」

ジンは刀を鞘から抜いた。僕はハルバをなぞってバゼラードを取り出す。僕は南條サンにアイコンタクトを送る。

『僕がジンと戦闘を開始したらすぐに走れ』

南條サンは頷き、僕はそれを確認するとベルトを装着し、カードを挿入する。

『ラビット』

背後に黒装束でウサギのドクロの死神が現れる。

『ARE YOU READY?』

僕は首を掻っ切る動作をした。

「変身」

鎌を下ろして水晶を割る。

『グリムアップ』

死神が装甲に変わり僕に纏わりつく。

『ラビットグリム』

僕は変身し、ジンに攻撃を仕掛ける。同時に皆んなが逃げる。それを確認してジンに連撃を仕掛ける。ジンはそれをかわし続け、刀を振る。それをかわし、バゼラードを投擲。

「危ないなぁ。手癖悪すぎだろお前」

「最高の褒め言葉どうも〜」

そう軽口を返すが、正直言って余裕はない。

「じゃ、俺も少し本気を出すか」

ジンはそう言うと、左腕を悪霊の腕に変えた。

「さ、第2ラウンドだ」

僕は身構えるのだった。




 自らの道を見つけた守条咲良。だが彼の前にジンが立ち塞がる。一方サマエルは自分の悩みを振り切ろうとしていた。サマエルに新たな力が宿る!次回、仮面ライダーモルテ♯16覚醒
「田井中さんを手に掛けようとしたお前に慈悲はない」

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