僕は依澄の亡骸をそっと地面に置くと、バゼラードを握りしめて男に斬り掛かる。
『あああぁぁぁああああぁぁぁ!』
男は飛び上がると、黒い炎に包まれて怪物に変わる。
『激情家だなぁキミは。なにかを失う度にそう怒る。もっと怒れ!』
心の中が怒りに飲み込まれる。憎い。憎い憎い憎い。目の前にいる、コイツが憎い。
『殺す!お前を、殺す!!』
僕はもう、アイツしか見えていなかった。
♣︎♣︎♣
翌日の放課後、久々の部室で、僕たちはレンレンと速水サンから問い詰められていた。
「なんで生徒会長が悪霊のことを知ってんだよ!」
「ハイゾーンにスタークルが敵わなかったって本当!?」
「そんでもって!炎の悪霊って一体!」
「「どうなってるの!?」」
「あ〜、うるせー」
僕は途中から耳を塞いでいたが、関わってなかった彼らからしたら驚くことだらけだろう。
「まぁまぁ落ち着いて2人とも。私も、気になる事ばかりなんだから」
ヒナサンはそう言い、僕の方を見る。確かに、やつの事は、僕が説明しないとダメみたいだ。
「カイナって呼ばれた奴も警戒すべきだけど、それよりも危険なのは、輪廻だよ」
「輪廻って、、、あの炎のやつか?」
黙って話を聞いていた立川会長の問いに、僕は頷く。やつのことは、3年間、忘れた日なんてなかった。
「南條サン、奴の狙いはキミだ」
「ワタシが?なんでそう思う?」
南條サンの質問に、僕は仮説を交えて答える。
「僕の心を完全に折るためだろうって考えてる。あの日みたいに」
「あの日?」
「依澄を殺したのは、アイツなんだよ」
「え?」
僕はそう伝える。そして、依澄だけじゃない。あの日、あの炎が、あの子を燃やしたのを、僕は覚えてる。僕は話を聞いている立川会長に聞く。
「で、アンタはどうすんのさ?立川会長」
「こんなことを知ったんだ。黙ってられない。俺も、この部活に加えてくれ!」
そう言うと思っていた。優しい人なのだろう。それでも、いつもの僕なら断っていた。でも、
「いいよ〜。知った以上、アンタにも協力してもらうから」
「助かる!」
僕は承諾した。やっぱり、彼らのお陰で、僕も変わってるのかな。
「あ、あの咲良が承諾した!?」
「明日は嵐が来るかもしれませんよ」
「咲良くん、病院行く?」
「え、どうなってるのこれ?」
前言撤回。やっぱり彼らは関係ないみたいだ。
♣︎♣︎♣
〜奏多side〜
グリムガンナーについて調べた後、性能実験に関する資料を探しているが、未だに見つからない。
「あの資料が結構古いヤツだからなぁ、、、もしかしたらもうないのか?」
となると、やっぱりあの人に聞くしかないみたいだ。俺は資料を片付けると、資料室を出る。この武器について知っているのは、現状、この人しかいないだろう。当時、性能実験に立ち会った人。
「入る時のノックを忘れるとは、お前らしくないな。蛇芽」
「急いでたんですよ。御堂本部長」
御堂本部長。かつて、『練磨の死神』と呼ばれた男。
「急いでいたのは何故かな?」
「グリムガンナー」
「!?」
御堂本部長は目を見開いた。どうやら、何か知っているみたいだ。俺は更に続ける。
「降霊する資格のない者でも強制的に死神を纏えるシステム。ただし、反動が強く、性能実験の被験者の内、数十名は死亡。俺はそこまでしか知りません」
俺がそう告げると、御堂本部長は詳しく話す。
「残りの3人の内、2人は副作用にて戦えない体になった。それが私だ」
「もう1人は?」
「辞めたよ。今頃、普通の生活を送っているはずだ」
生き残ったのが3人。その内2人が戦えない体になり、御堂本部長じゃない方がE.Kをやめた。なら、後1人は一体。
「そして最後の1人。私の親友は、行方不明だ」
「親友?」
『練磨の死神』に親友がいたなんて。きっと強い死神だったのだろう。気になるが、話は終わっていない。
「ここからが本題です。この武器と類似したものを、悪霊が、アリスが使用していました」
「私も、報告書を見た時、同じことを考えていた。だが、お前が言いたいことは、それだけではないのだろう?」
そう。まだ話は終わってない。むしろ、ここからなのだ。
「どこからか、情報が漏れてます。もしかしたら、また、『東京乱舞』のような大事件になるかも」
「ふむ」
東京乱舞。かつて、大量の悪霊が東京にある旧本部を襲った事件。俺はあの場にいなかったが、御堂本部長や、あの少年、守条くんは経験している。
「やはり、居るのかもしれないな」
どうやら、俺と同じ結論にたどり着いたみたいだ。
「内通者」
俺たちは一体、どうなるのだろう。
♣︎♣︎♣
御堂本部長との話を終え、俺は訓練室で鎌を振る。いつものように目隠しをし、迫り来る斧を鎌で弾く。不規則に振り下ろされる斧を回避し、弾いた別の斧を、回避した斧にぶつける。弾かれた2つの斧が、同時に俺に向かってくる。
「はぁ!」
俺は鎌を土台にしてジャンプした後、鎌で斧の紐を斬る。斧は地面に落下し、その少し後に俺は着地。アラームが鳴る。俺は目隠しを外した。
「わっ!」
「うぉ!?」
いつの間にか目の前にいたヒメさんに冷たい水を触れられる。
「冷たいよ〜。ヒメさん」
「今の、守条くんっぽかったよ」
「え?そう?」
「うん。似てた似てた」
そう笑うヒメさん。俺はヒメさんから水を受け取り、一気に飲み干す。今日の本部長とのやり取りで、この組織が危険にさらされていることは分かった。だけど、大事にする訳にはいかないだろう。
「ヒメさん」
「ん?」
「帰ろう。俺、腹減ったよ」
「私も!」
俺とヒメさんは2人で訓練室を出た。今日の事は、ヒメさんには伝えない方がいい。
♣︎♣︎♣
〜三人称side〜
御堂本部長と死神最強の蛇芽奏多が話し合ってるのが聞こえた1人の青年が、部屋の扉に耳を当てる。
「情報が漏れてる?内通者?」
聞こえた単語に驚く。青年はその場から急ぎ足で離れると、誰も居ないことを確認する。そして笑い声をあげた。
「ふふっ、、、あはは!あはははは!やっぱり、流石だなぁ蛇芽奏多さん。俺のことに気づくなんて」
青年は1枚のカードを取り出すと、それを本部の外へ投げる。カードは小型のネズミに変わる。
「流石、輪廻さんの品だ。まだ日が出てるのに動けるとは」
青年は訓練室に向かうのだった。彼は死神なのだ。
「やれやれ、、、死神も楽じゃない」
♣︎♣︎♣
〜咲良side〜
夜になるまで適当に街をぶらついていた僕は、夜になると西3番街にシニガミバイクで向かっていた。こうやって1人でバイクの風を受けるのがまた気持ちいい。目的地の空き地に来ると、2つのグローブと野球ボールを持った呼び出し人、蛇芽がいた。僕はバイクを降り、尋ねる。
「一応聞くよ。なにこれ?」
「ボールとグローブ」
そういうことじゃない。
「キャッチボールでもしないかい?暗闇でのキャッチボールとか、案外楽しいと思うけどね」
そう言って、僕にグローブを投げてくる。僕がグローブをはめたのを見計らって、蛇芽がボールを投げた。
「よっと。まぁまぁの球だね〜」
僕は蛇芽にボールを投げ返す。蛇芽がキャッチしようとした瞬間、ボールの向きが変わる。が、蛇芽はそれを見抜いていたのか、キャッチした。
「変化球、、、どうやって身につけたんだい?それ」
「たまたまテレビ見て覚えた。案外簡単だよ〜コレ」
そう言い、僕は今度は普通に投げる。
「何か話でもあるの?」
「あぁ。君には話しておこうと思ってさ」
ボールを投げ合いながら、会話する。言葉とガチのキャッチボール。僕達、そこまで仲良かったっけ?
「アリスが使ってた武器、覚えてるだろう?」
「うん。あのナックルと銃の融合みたいなやつでしょ〜」
「それと類似したやつを、E.Kの資料室で見つけた」
「それ、本当?」
驚きのあまり、ボールを取るのをミスしてしまう。地面で跳ねたボールをグローブで回収し、蛇芽へ投げる。
「あぁ。本部長にも確認をとった。その武器自体は、ロールアウトはされなかったみたいだけどね」
「でも、その武器の情報がなんで悪霊が知ってるのさ〜」
「それなんだけど、君も同じ結論にたどり着いてるんじゃないか?」
蛇芽の強めの球をキャッチし、それを投げ返す。今度は急に下向きに行くように。蛇芽はギリギリでキャッチする。
「、、、組織にいると思うね。内通者」
『その通り』
僕たち以外の誰かの声が聞こえた瞬間、僕たちはこの場じゃない何処かへと飛ばされた。
♣︎♣︎♣
目を開けると、謎の空間に僕と蛇芽はいた。携帯を起動する。予想通り圏外。なら、右腕の相棒に声を掛ける。
「ハルバ。起きてる?」
『、、、』
反応無し。どうやら連絡手段はないようだ。
「守条くん。これって」
「ヤバいかもね〜」
僕と蛇芽は同時に上を見上げる。上にいたのは、、、
『グルルル』
超巨大な悪霊。僕と蛇芽は同時にベルトを巻く。僕はスタークルを。蛇芽は初めて見るカードを取り出した。
「あれ?チャージは?」
「改良したからチャージ無しでも使えるよ〜。そっちは?」
「新戦力さ。かなり強いぜ」
「へぇ〜」
僕たちはカードを挿入する。
『スタークル』
『アブソリュート』
背後にイナズマに囲まれて黒装束でヘビのドクロの死神と、3つの星のモニュメントに囲まれたウサギのドクロの死神が現れる。
『『ARE YOU READY?』』
僕は首を掻っ切る仕草を。蛇芽は右手でフィンガースナップをした。
「「変身」」
ベルトの鎌を下ろす。
『スターグリムアップ』
『アブソリュートグリムアップ』
死神同士が拳を合わせて、それぞれの死神が僕らに装甲として纏われる。サマエルにイナズマが両肩と腕に纏われ、ドクロにバイザーのようなゴーグルが装着された。僕にも星のモニュメントがアーマーとして追加される。
『スタークルグリム』
『アブソリュートグリム』
僕はバゼラードの刃先を悪霊に向ける。サマエルは肩に鎌を担いだ。
「さぁ、天才と最強。ダブルで死神の時間だよ」
「正義の死神の御成だ!」
巨大な悪霊との戦闘中、輪廻によって大ダメージを負った守条咲良と蛇芽奏多。殺されそうになる蛇芽奏多を前に、モルテの新たな力が覚醒する。次回、仮面ライダーモルテ♯20「黒渦」
「もしかして、、、咲良くん、なの?」
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