自分を星野アイだと勘違いしている一般星野アイ   作:マッキーガイア

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アクア

「あかねちゃん。

どうやったら妹の彼氏を法律に触れずにあの世へ葬れるかな?」

 

『まず、一回落ち着こうか。』

 

そう友人の黒川あかねちゃんに相談したのが、あれから3時間後の事である。

あれから怒りのあまり目をバッキバキになった私は落ち着くためにゲリラ配信を開始。

スマブラで視聴者をボコボコにして冷静さを取り戻した。

 

ちなみに、視聴者には『鬼畜』『悪魔の所業』と恐れられたという。

 

「でも、マナはまだ中学生だよ!?

きっと相手はロリコンクズに決まってる。向こうが奢る体で話が進んでいたし、同じ中学生が相手ならそんな金銭的余裕なんてないよ!!」

『確かにそうかも知れないけど、一旦落ち着こう?星野さんは傍で電話してる姿を見ただけでどんな人物か確定した訳じゃ無いでしょ。殺すのは早急だよ。』

 

ちなみに此処まで黒川あかねは一切殺す事自体を否定していない。それもその筈、黒川あかねは身内に兎に角甘い節がある。それこそいつもなら身持ちが重いはずの倫理観とか取っ払ってしまう程度には…

友愛でも愛情でもそこに重ねる思いが重いのが黒川あかねである。

まぁ、つまりは星野アイは相談相手を間違えたと言えた。

 

「でも、マナは天使だよ!?相手を疑うなんて事出来ない…天使だよ!?」

 

ちなみに危機察知能力はアイよりマナの方が数段上手である。

まぁ、アイは…お察しなので是非も無し。

 

「きっと、騙されている事にすら気付いていないんだよ!マナ…優しいから!……優しいからぁっ!!」

 

マナがアイ以外と話す時は毒舌キャラなのをアイは知らない。

 

『だけど、友達と遊ぶってだけの話かも知れないよ。奢るって言ったのも何か妹さんに借りがあったりとかする可能性もあるし…』

 

正解である。

気持ち悪いくらい…正解である。

 

「でもでも!あの時、めっちゃときめいた様な乙女ぇ〜な顔してたよ!!」

 

姉に見惚れていた妹の顔である。

 

『星野さん、可愛いからずっと見つめられてついドキッとしちゃったんじゃない?』

 

正解である。

 

「それはあるかも知れないけど!

でも、カラオケとか豚の尻公園だとか男女で行く様な所で…ま、まるでデート見たいな…事」

『人目を気にしてるね。もしかしたらお相手は芸能関係者かも知れない。誰か…はまだ流石にわからないけど、この繁忙期に平日に遊びに行けるくらいでそれなりにお金を持っているとしたら多分、元人気子役だったけど人気が低迷したせいでお金はあるけど仕事が無い役者かも。』

 

正解…ボロクソである。

 

先程の相談相手を間違えたと言う言葉を訂正しよう。

 

『まぁ、これは私の想像の範疇だから外れる事も大いにあるよ。情報も少ないし。』

「ううん、それでもありがとう。私の為に頭を捻ってくれて。少し落ち着いたかも。」

『いいよ。友達が困ってるなら助けてあげたいって言うのは私の本音だし。」

 

「じゃあ、一つお願いしたいんだけど…」

『え?』

「私ね。明日、妹を尾行するんだけどね。」

『うん…』

「私ってさ、尾行とか初めてだから……どうすれば良いかわかんなくて…」

 

 

『え、待って。それ私に聞く?』

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

そうして2日が経ち。いよいよ来た今日がその例の妹の彼氏ブッ〇記念日である。

 

昨夜からあかねちゃんと共にミーティングにミーティングを重ね。完璧なストーカーとなった私は完璧なロケーションで駅前で妹を待つ。

因みにあかねちゃんは来ていない。普通にレッスンで忙しいらしい。

 

「にしても…私がこんな格好するとはね…」

 

今日の私は完璧なストーカーを演じるに当たり。一人モデルにした人間がいる。

 

うん、わかってる。これがどんなに皮肉的で、どんなに罰当たりな事をしているかなんてのは心身ともに理解している。

 

自らの死因に直接的に関わる人間。私が星野アイである以上、決して関わってはいけない人間。

 

リョウスケ。

 

将来的に私を殺す人間。格好をそれに寄せたのだ。

別に私自身に忌避感は無い。正直、うわっ、ひっにく〜〜…くらいの気持ちである。

 

とは言え、あかねちゃんに言われたのだが、私が表に出る確率は1%未満らしく、現時点の情報では事件性は全く無いとの事だ。

まぁ、それなら…とは引き下がる訳にもいかず、自分のこの目で見てやる!となって今の状況である。

 

 

駅横のカフェで茶を啜りながら目線は駅前を見初めて10分。約束の10時より10分前になって、とてとてと擬音が聞こえる様な様子でスポーティなとてもデートに着る服ではない恰好でマナが来た。

 

今日も可愛い。100億点だ。

 

だが、お相手の姿は見えない。男なら先に待っているものでは無いのかと軽く怒りを覚えながらも、さらに数分が経ち、ふと、マナの目が細くなった。

あれは探し物が見つかった時のマナの癖の様なものだ。

 

つまり、奴が来たという事。

 

私はスナイパーライフル(エアガン)を構えた。

周りが「ひぃっ!?」と声を上げるが気にせず相手を探す。絶対に仕留めると心に決めて。

 

『やっほ。早いわね。マナ。』

 

だが、次の瞬間にイヤホンに流れるは以前聞いた女の子の声だけ。スナイパーライフルのスコープに現れたのも赤い髪の以前に見た事がある少女だ。

名前は……誰だっけ。ごめん、名前覚えるの苦手なんだ。

 

『別に良いですよ。最近忙しいのは知っていましたし。』

 

『……やっとちょっと忙しくなったってところね。まぁ、しばらくしたらまた暇になるんでしょうけど。』

 

『言いましたけど。ドラマのエキストラとかは本当に無理ですからね。』

 

『分かってるわよ。そう強制するつもりも無いから安心しなさい。』

 

そう言うと少女はちょっと気まずそうにした。

……うん、だが、平和だ。私の早とちりか…少女二人が会話しているだけ。此処に男が挟まろうものなら即死刑ものであるが、特にその様子もない。

 

私はスナイパーライフルのスコープから目を外そうとして…

 

『実は今日貴方に会いたいって人がいるの。』

 

そして、急に現れた金髪イケメンに引き金に指をかけた。

 

ぶっ殺してやる!決定だ!テメェェの脳天ぶち抜いてや…

 

 

 

 

 

「お客様。他のお客様のご迷惑になるのでスナイパーライフルの持ち込みはご遠慮下さい。」

 

 

「す、すいやせんした……」

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

星野アクアは悪夢を見ていた。

 

少女の姿を認知した瞬間から脳が動かない。その少女の顔が星野アイと重なるのだ。

 

だが、それだけ。顔が似ているだけ、才能を一切感じない。星野アイにあったオーラも何も感じない。

ただそこにいるだけ。

 

はっきり言って気持ち悪かった。

 

欲しい物が目の前にある様で実は無いと言われた様な苛立ち。ただただその存在が歪で…

 

その不快感は母親である星野アイの死体が掘り上げられて他人がその死体の皮を剥いで被っているくらいには不快だった。

 

だが、僕も大人だ。彼女にとってこの不快感は言われの無いものだ。だから我慢する。今の自分の一番を弄ばれてる様に思えても、それは自分の一番でないから我慢する。顔にも出してはダメだ。

 

「貴方は20メートル。まだまだ研鑽が足りませんね。」

 

「なんか、メートルで評価された。」

 

そうしていたらなんかその姿勢が評価された。

 

それから星野マナへ少し質問があると言い駅から数分のカフェに向かう。

現在午前10時ごろ。昼飯時にはまだ早くカフェはガラガラの様子。だが人気店ではある様で少なくとも4、5人程がテーブル席でコーヒーを飲んでいた。

 

カランカラン、と扉を開けると入店のベルが鳴る。

 

俺、有馬、星野マナの順で店に入っていくと窓際の席に全員して座り出したので俺も並びだした。

すると、「ご注文は?」と筋肉マッチョのマスターが聞いてきたので「コーヒー三つ」と答えた。

 

「で、アクアさん私にお話とは。」

 

そうしていると星野マナがそう問いかける。その表情には一つの笑顔も無かった。

 

「ああ。実は君の両親について聞きたい。」

 

「私の両親ですか。」

 

「ああ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は星野アクアだ。」

 

そうすると星野マナ少し目を見開いた。そこに少々の怒気を感じる。

 

「同じ苗字…?つまり、姉さんの婚約者…?なら早々に殺さないと。」

「ちげーよ。色々とぶっ飛びすぎだろ」

 

そう突っ込むと「なんだ違うんだ。」とばかりに早々と鞄に入れていた何かをまた中に突っ込んだ。鞄に入っていた何かに関しては突っ込まない事にした。

 

「同じ苗字である事も考えて、もしかしたら親戚である可能性がある。だからお前の両親について教えて欲しい。」

 

「…?尚更おかしいです。別に親戚だろうが違かろうが私たちにとってそれ重要ですか?」

 

「冷たいな。お前……まぁ、俺が言えた義理もないけどな。」

 

そう呟くと俺は言葉を間違えない様に経緯を話し始める。それは別に大した話でもない。

ただ自分達兄妹の母親と血の繋がりが無いかも知れないと思ったと言う話。それが本当なら本物の両親が誰なのかと言う話。そんな時に有馬から星野マナという少女の話を知ったという話。

10割8分嘘八百だが、そこにはアイを捨てたかも知れない母親を探っていると言う内実が込められている。

だが、母親が誰かという事を伏せるためにミヤコさんには悪いがこう言った嘘を含めさせた。

 

「まあ、理解はしました。納得はしませんが…」

 

ようやく理解してくれたのか、そう言うとマナは話し始める。

自分の顔が父親譲りな事、父親には歳がかなり離れた姉が居たがとっくに絶縁した事、父親が晩婚だったにも関わらず今だに若々しい事。

 

母親や姉の事もいくつか話していたが俺にとってはあまり重要では無かった。

 

つまりは、彼女は親戚であろうとも自分の叔母とは無関係。会った事すら無いのだ。 

 

無駄足だったか、少し気落ちしながらコーヒーを飲み切り代金を払って置く。今はあまり自由に使える金は無いが必要経費として全員分の金を置いた。

 

「ありがとう。後は楽しんでくれ。」

 

もう俺は彼女たちに対して用はない。急ぎ帰宅の準備をする。有馬にいくつか文句を言われたが、それをどうにかして黙らせてから、席を立った。

 

席を立つと隣にある窓がよく見渡せる様になった。

狭ぜまとした店内には似つわかしくない大きな窓、外には忙しなく社会人や春休みを謳歌する若者達がせめぎ合っている。

 

その中のナニかと目が合った。

 

フードを被った男…女だろうか、そいつが俺たちを怒りの籠った…殺気の籠った眼差しで睨みつけている。

その様相はまるで自分の前世や母親の星野アイを殺したあの男の様…

 

トラウマ。

 

だが、内実それだけでは無かった。そのフードの下から覗かせたその瞳に胸を締め付けられた。

 

「………っ。」

 

アイだ。

偽物じゃない、本物だ。あの才能の塊がそこに居た。まるでそこだけ切り取られたかの様にそのまま。

 

「あ、アイっっ!!!!」

 

飛び出す様に店内を駆け出す。頭が色々と一杯だった。

 

なんで?なんで?なんで?

 

心がざわつく。あの星野マナのせいか?あの顔を見たから俺は本物を求めて幻覚を見たのか?

わからない。わからない。

 

そして、外へ出てその何かを知覚した。

 

「あ…アイ?」

 

本物だ。あの天性の瞳、決して忘れるはずがない。そして触れようと近づいた瞬間。

 

喧騒に消えた。まるで影の様に、まるで元々そこに何もいなかったかの様に…

 

 

幻想だったのか…? 

 

違う、あれは紛れもなくアイだ。間違いない。

じゃあ、何故…?

 

とぼとぼと歩き出しながら考える。

 

何故、俺の前に現れた。どうして…どうして。

 

そして、あの怒りが滲んだ様な殺気さえ込められた顔を思い出し…

 

電柱に寄りかかりながら、力無く座り込んだ。

 

 

「……恨んでいるのか…」

 

 

俺はちゃんとした子供じゃない。

多分、それを知ってしまっただろう。きっと、恨まれても仕方ないと思っていたが、死んだ後になってとは……

 

「ごめん…なさい…」

 

そう膝を抱えながら謝る事しか出来なかった。

 




やったね!アイちゃん!妹の彼氏(偽)を精神的に殺す事に成功したよ!
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