自分を星野アイだと勘違いしている一般星野アイ   作:マッキーガイア

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今日あま1

実写で成功するのはアメコミヒーローものくらいである。

 

海外の豊潤な資金で撮影スタッフは子供の頃からの熟成した愛を持ってその作品をコミック内から現実へ引き出す。そしてその責任を果たす。

例えハリウッドであっても…

豊潤な資金だけではダメなのだ。

熟成した愛だけでもダメなのだ。

 

だからこそ、日本の実写は失敗する。豊潤な資金も無し、熟成された愛も無し。

そう、昔は思っていた。

 

「実写版『今日あま』は名作。」

 

私は今絶賛非難轟々の『今日あま』実写ドラマ版についての感想をそう締めくくった。理由は単純明快、ヒロインの子が可愛い…以上である。それ以外はクソ。

 

可愛いは正義なのだ。それ以外はクソだろうと可愛ければ名作なのだ。つまり実写版かぐや様も名作だ。

 

ってか、あのドラマ自体ヒロインの子を可愛く見せる為だけに作られたみたいなもんでしょ。じゃなきゃあんな酷い出来にはならない。つまり、製作陣の判断は正しかった。ヒンナヒンナ。

 

「え、あの棒読みの主役の子?

ごめん、イケメンは無理」

 

イケメンは陰キャ時代に好きになった女の子全員掻っ攫って行きやがったから嫌いだ。幼馴染も隣の席だったクラスのマドンナも全部掻っ攫って行きやがった。

NTRは即死刑、あーゆーおーけー?

寝てから言え?……ごもっともでござる。

 

「ってか、え?マナ。あんな可愛い子と友達だったの?画面で見るのと現実で見るのとは全然違うね。」

 

「それ本人の前では言わないであげてです。」

 

「無論。今度、サイン貰ってきてくれる?私のサインあげるからさ。」

 

そう言いながらラブスターのサインを引き笑いする妹に押し付けた。

 

有馬かな、やっとこさ思い出した彼女の正体……あれだ。重曹を舐める天才子役。凄いよね、重曹を舐めたら天才子役になったなんてシンデレラストーリー。とりあえず、掃除用重曹でない事だけは祈っておこう。

 

そして私はティーン!と来た。

 

やっぱこの世界の時間軸狂ってんやな。

星野アイに家族がいるなんてやっぱ変なんだもん。そりゃあ色々狂うわな。

有馬かなもJKになるわ。そりゃ。

 

つまり、有馬かながJKになって、私に家族が居て、星野アイがアイドルになっていない。もう私が触れなくても原作崩壊しまくっている。しょうみ、ここまでやっちゃったらもう駄作だ。盛り上がる部分全部消し去ってるもん、どんな二次創作だよww私にご都合主義過ぎないか?

 

まぁ、私が可愛いから名作なんだけどね!!

 

 

 

 

 

「はぁ……『今日あま』最終回観よ。」

 

「なんでため息吐いたんですか?」

 

 

私は最強である。

私は最強である。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

正直、やる気は無い。

 

どうでも良い、どうでも良くなった。

 

身体が冷たくなるのを感じながら、有馬かなに連れてこられた撮影現場を睨み付ける。

 三流の演出、三流の演技、三流の脚本。有馬はこれをどうにかしたいらしい。

やる気があった頃ならともかくもうどうだって良い。

 

星野アイが俺を恨んでいると言う事実は酷く俺の核心を貫いていた。

俺の生きてる意味、将来の夢。すべてそれに注がれていたのにもう関係ない。

 

 有馬にまるで抜け殻みたいと言われる。ああ、正しくそれだ。

 

有馬に何があったの?と聞かれる。

どうでも良いだろそんな事。

 

有馬かなは戸惑っている。

別に………どうでも良い。

 

そうしているといつもならどうでも良い様な考えが頭をよぎるのだ。

ああ、俺は今ちゃんと生きているのだろうか…と。

多分……生きてないだろうな。

2回目の人生を不意にしている。

 

従来、やり直しとは1回目よりも良い結果を残す事が大前提である…だが、俺の場合は焼き直し。

 

何も救えてないし、何も成せていない。

 

いや、むしろ前回より悪くなっている。

 

「いっそ、死ぬか。」

 

いや、そこまで自棄になっていない。そんな勇気もない。死ぬ事が辛い事なのは一番分かっているつもりだ。

 

「というか、なんで今ショックを受けているんだっけ。」

 

ふと、何を考えれば良いのかわからなくなってから、そう呟いた。

 

星野アイが俺のことを恨んでいたから?普通の子供じゃないと知られたから?

 

カメラマンに呼ばれ、ついに俺のシーンを撮る事になった。

やる気は無いがある程度仕事をしなければ。

 

 

 

鳴島メルトは大根役者である。声の上下も分かってないし、身体の演技も見所がない。ただ言われてやっている事を最低限以下でやっているだけ。

 

「なんだコイツ?」

 

やる気と言う物がカケラも感じない。いらない事をしていない分マシかと言うべきか…

 

いや、それを俺がとやかく言う権利は無い。やる気がないのは俺も同じなんだから。

 

「アクア。」

 

ふと、そう呼ぶ声がして、後ろへ振り向くと有馬かなが立っている。先程と違い幾分機嫌がいい。

 

「何が裏方志望よ。じゅーぶん演技できてるじゃない。」

 

「こんなの練習すれば誰にでもできる。俺自身にはなんの魅力も才能も無い。」

 

「そう卑下するのもどうかと思うけど。私はアクアの演技好きよ?」

 

「それに何の意味があるんだよ。」

 

「意味はあるわよ。アクア今にも死にそうな顔してるし。」

 

そう指を差しながら言う有馬に俺はそっと目線を逸らした。

 

「死ぬつもりは無い。」

 

「メンタルはもう死んでるじゃない。」

 

「お前のメンタルには負けてるのは確かだ。」

 

そう言うと俺は周りを見渡した。

 

「この現場は無理だぞ。

駄作を作る気満々だ。誰かに言われなかったのか?

それとも見え透けた嘘を信じたか?『このドラマは成功しています』なんて馬鹿な嘘を…」

 

はっきり言って有馬かなのこのドラマへの気合いの入れようはおかしい。

脚本と配役を見ればわかる。このドラマはあくまで役者の宣伝。有馬かなはもはや添え物でしかない。

 

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