自分を星野アイだと勘違いしている一般星野アイ 作:マッキーガイア
俺は多分、嫌な奴なのだろう。
こんな事言うつもりなんてなかった。有馬の顔が見られなくて顔を逸らす。また、逃げたな俺…なんて少し自虐した。
事実は事実であり、俺の言った事はすべて俺が思った事だ。発言の否定は出来ない。
だからこそ、この場で最も醜いのは現状を見れていない『有馬かな』でも、主演であるにも関わらず楽観的な態度を取れている『鳴島メルト』でもこんな状況になると分かっていながらこんな企画を通した『鏑木勝也』でも無い。この中で最も醜く歪んでるのは俺…『星野アクア』だ。
一番、中に醜いものを渦巻かせている。
恨み辛みだけじゃ無い。多分俺はあの星野アイを見て幻滅してしまったのだと思う。そんなの星野アイでは無いと、ただの人間である筈の星野アイを神格化して人間らしい一面を見て幻滅してしまった。
一番ショックだったのは俺が…一番人間らしい星野アイを見ていた筈の俺が、『星野アイ』の一面を
別にアイに恨まれても少し辛いけど理解は出来る。そう言う母親がいる事を知ってるし、その中では一番納得できる答えだ。現実はそう甘くは無い。全ての子を受け入れられる母親なぞ存在しないのだ。
「すまん、言い過ぎた。」
俺は有馬に頭を下げると少しして頭を上げて逃げる様に後ろへ振り向いた。
ここまで顔を見れていない。人の辛い表情なぞ見たいと思えるほど人間は辞めてない。
心が重い。喉の奥の筋肉が萎縮している。たぶん、辛いのだろう。そんな事思えるほど出来た人間性では無いくせに…
俺は醜い人間性のまま死んでいくし、死んでも馬鹿は治らないが如く、また転生しても俺は醜いままだ。
綺麗で誠実で真っ直ぐで…ルビーの様になれたら良かったが、もう、そうも言ってられない。
俺は汚いままで結構だ。
だから、こそ…だからこそ
「なら、アンタが私を助けなさい。」
俺は真っ直ぐなやつに弱い。
去り行く足を押し留め、後ろへ振り向く。その時有馬かなを見据えた俺の顔は酷く歪んでいただろう。
如何にも正気か?と言う顔で正気か?と心で呟いていただろう。
それを見つめていた有馬かなの表情は強かった。
「……正気か?」
「正気よ。むしろ助けさせて下さいって懇願するくらいじゃなきゃ。ここで私を助け出せるのはアンタくらいなんだから。」
そう有馬かなは自信満々に言い放つ。
「お前馬鹿だろ。ポッと出の俺に何が出来るってんだよ。数分程度の出番しかないんだぞ。俺は……。」
「むしろ、出来ないの?」
下から覗きこむ様にそう言い放つ。ニヤニヤと笑いながらもその言葉には自信がこもっていた。
「私が出来るって言ったのよ?それ以上の説得力なんかどこにもないじゃない。」
「……仮に出来るとして俺になんの得があるんだよ。」
そう俺が問いかけると、有馬かなは「ずばり!」とばかりに俺に人差し指を突き立てた。
「私とお近づきになれる!」
「自惚れんなアホ。」
「自惚れなんかじゃないし。私美少女だし。」
「自惚れ以外の何物でもないな。むしろお前の自惚れでプールが作れる。」
「聞こえませーん。私が美少女な事実は覆れませーん。
………待って自惚れでプールってどう言う事?」
クソッ、なんだか色々と馬鹿馬鹿しくなってきた。
恨みとか辛みとかもうどうでも良い。辛い事も今は後回しにしてやる。
「いいぜ。助けてやるよ。」
取り敢えず目の前のやつにギャフンと言わせてやろうと思った。
そうするとスタッフに呼ばれて、撮影位置に着くためにまた振り返った。
「待って!自惚れでプールって!!何ぃっ!!??」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「……の、のうが……」
星野家、居間。
星野アイは死んでいた。理由は単純、唐突のNTRで脳を破壊されたからである。
なんか今日あま最終回で有馬ちゃんがストーカーに惚れた顔してた。何度も見た事がある面だ。幼馴染も隣の席だったマドンナも似た様な顔をしていたのだ。めっちゃ辛い。前世の学生時代のトラウマが蘇ってきた。
「つらたん……まなぁ〜…まなぁ〜……」
泣きながら妹を手探りで探し始める。そうしていると仕方なさげに椅子から立ち上がった様な音がして、それから私の手に冷たい女の子らしい小さな手が重なった。
「まな〜…かなちゃんすとーかーとけっこんしちゃったぁ……もうこのせかいはおわりだぁ…おしまいだぁ…」
「何言ってるんですか。ドラマの中の話でしょ?ってか、ドラマの中でもストーカーと結婚してないけど。」
「いいや。あのかおははつじょうしためすのかおだった…もうやだ…わたしはまなとけっこんする。」
「結婚は出来ないので内縁の妻という事で。」
「んな馬鹿な事言ってないで早くご飯食べちゃいなさい。」