自分を星野アイだと勘違いしている一般星野アイ 作:マッキーガイア
ウチの学校には有名人がいる。
とは言え、テレビに出る様な有名人ではなく、いわゆる学校内外で少々逸話を持ちすぎたが故に有名になった類の有名人だ。
星野アイ。
黒く輝く美しい髪を一纏めに縛りあげ、度数の入っていない牛乳の瓶の底の様なメガネで顔を隠しているが、その美貌が一切隠れていないが故にこの間なんか1日の間に連続12回告白されたと言う美少女。
毎日、靴箱でラブレターによる雪崩を起こし、最近はファンクラブまで発足されたとか。
正直そんな逸話持ちの美少女は漫画かアニメの中にしかいないと思っていたが、世界は広いらしい。
肌寒い昼下がり、春の訪れが待ち遠しい雪の積もった学校の中庭のベンチに彼女、星野アイとわたしは雪を退けて座っていた。
そこに会話は無い。
寒くて喋る気力も無いというのもあるが、何よりこの静かな時間が好きだったというのがある。彼女もきっとそう思っている筈だ。だってそうでなければこの冷たいベンチに二人して座る必要なんて無いから。
そんな中わたしはそんな沈黙を破る事にした。別に珍しい事でも無い為、特に気取る様子も無い。
「星野さんって頑なに素顔を見せようとしないよね。」
何気なくその牛乳瓶の底の様なメガネを見つめる。今どきこんな昔ながらの瓶底メガネ等めずらしいとしか言えないだろう。
とは言えあまり屈折の見えないガラスのため、伊達メガネなのは確定だろう。
「え、私のコレ素顔だよ?」
そうあっけらかんと彼女は言い切るがその内面に少し陰りが見えたのを私は見逃さなかった。
「でもそれ明らかに伊達メガネだよね。それに星野さん昨日の席替えで率先して後ろの席に行ってたでしょ。目が悪いなら前に行くべきなのに…」
あまり質問攻めしたいわけでは無いが彼女の異様なまでの顔への忌避感に思わずそう問いただしてしまう。
因みにこれも珍しい事では無いため、星野さんはあまり気にした様な様子は見せない。
「うーん、確かにこの眼鏡は伊達メガネだし、私の目も悪く無いよ。」
「じゃあ、男避けとか?
あまり効果なさそうだけど。」
彼女を俯瞰して見る。美しい大和撫子の様な艶やかな髪質、その中に埋まる様に宝石の様な凹凸の少ない綺麗な肌。そんな宝石をよそにルーペで広げたかの様な星の輝きを宿す大きな瞳がこちらを覗いている。
隠そうとしてむしろその余地にオーラがはみ出ていた。
「あはは…確かにそうかもね。
でもね。大事な事なんだ。」
「どうして?」
「この眼鏡外すとね。妊娠しちゃうんだ。
わたし。」
「?????????」
なんか意味のわからない事を言い始めたなこの美少女。
メガネを外すと妊娠する…?
つまり、それは『襲われる』と言う事を端的に表しているのだろうか…いや、流石にそれでも「レイプされる」とかそう言う表現になる筈だ。いきなり『妊娠する』なんて表現を使うはずがない。
「……いや、まさか…」
正直言ってこの美少女、ど天然である。
誰かにそんな適当なホラを吹き込まれても信じるかもしれない。
『眼鏡を外すと妊娠する』というのは何者かによる予防策の様な気がしてきた。
「名前は星野
なんだこの美少女、もう産んだ子供の名前を考えてる。しかも海外ですらも忌避されるタイプのキラキラネームだ。
「あ、そう言えばミヤコさんちの子供の名前もルビーって言う名前だったな。
同じ星野だし、仲良くなれるかもね。」
将来設計し始めた!?
ちょっと天然が行きすぎてるよ!?
「そう言えば、劇団ララライのオーディション受かったんだって?凄いよね。」
混乱の最中、急に私の話題に移行する。
彼女のマイペースさに感嘆しながらも、少し眉を上げた。
「それ去年の夏頃の話だよ。もう6ヶ月以上経ってる。」
「あれ?そうだっけ?」
「そうだよ。まぁ、たしかに星野さんと一緒の時はあまりそう言う話しないけどさぁ…」
「ごめんごめん。でも、あのあかねちゃんが芸能人かぁ…テレビとかに出るのかなぁ…」
「まだまだその域には行かないと思う。というか入ったばっかりだしね…
私も今は劇団に集中したいし。」
そう言うと持っていた箸を箸箱に入れた。カシャっとプラスチックが擦れる音が響く。
「星野さんも演技得意そうだし、ララライこない?」
「え、ヤダ。妊娠しちゃう。」
「意味わかんない断り方しないでよ。」
流石に設定に無理が出始めたので修正します。
修正版を書いてたらタイトル詐欺始まったので作品変えます。