自分を星野アイだと勘違いしている一般星野アイ   作:マッキーガイア

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メガネ無い。

ああ、不味い。冷静じゃない。

 

私は足元に転がった野郎の後頭部を踏みつけながらそう愚痴る。

このクソらがマナを押し倒した所を見た瞬間から、目の前が真っ赤になってやる事やってしまった。

別に反省はしていないが、もうちょっとやり様はあった筈だ。

それに…と目の前で胸を押さえている男を睨みつける。胸部の心臓部を目掛けて正拳突きをした為に肺の空気が一気に抜けて骨が食い込んだのだ。そんなに力は込めていないが、しばらくは呼吸をする度に痛みが走るだろう。ああ、イラつく…コイツはもうこれ以上殴れない、理由は単純でこのままぶん殴って気絶させてしまったらこの転がっている男を連れていく奴がいないからである。私としてはマナを押し倒した張本人である目の前の男をぶっ殺してもなんら問題はないのだが、流石に妹の為にもあまり大事にはしたくない。

 

ホントにまいったな…倒す順番を間違えた。

 

「ねぇ…?」

 

「ぶふッ!?」

 

苦しんでいる奴の顔面を握りつぶしながら本棚の側面に押し付けるとますます奴の顔面は潰れていく。

形としては壁ドンである。何もドキドキしないが。

 

「ヨダレ飛んだ〜…きったないなぁ……。」

 

押さえ付ける力をさらに強める。段々と顔の骨の隙間から擦れる様な音が響き出すが構わない。

これはあくまで八つ当たりなのだ。気が済む程度に気絶しない程度に痛めつける。

 

「痛ッ…い……や…やめ…」

 

「辞めて欲しいなら、誠意を見せようよ。

意地悪したらどうするんだっけ?」

 

「わ……わがりまじだ……だから……もうやめ…」

 

「良いよ。」

 

瞬間、パッと手を離す。

奴は体の支えを失うと次の瞬間には顔面から地面に叩きつけられたが、自分で受け身を取った為か気絶までには至らない。だが、不安定だった為か手首の関節を少し痛めたらしい。

 

「ほら、ごめんなさいしよっか?」

 

わたしはそう促す。

すると男は少し顔を歪めた後に、ゆっくりと土下座の形に体を直していく。

素直な子は嫌いじゃないよ。下の方も素直だったからこうなったんだろうけど。

 

「も、申し訳……あ、ありませんでした……」

 

少し不恰好だが及第点。

 

「よしよし、マナ?どうする?」

 

「別に良いですよ。もうどうでも良いです。」

 

「そっか〜。マナは偉いね。こんな事をした人を簡単に許せるんだもん。自慢の妹だよ。」

 

そう言ってマナの頭を撫でようとしたけど、よく考えたらヨダレついてるので辞めた。

 

「じゃあ、帰っていいよ。コレさっさと片付けてね。」

 

そう促すと、男はそそくさと気絶した男の足を掴んで引き摺りながら去っていく。

それを眺めているとふと、隣からマナの冷ややかな視線を感じた。するとどこか冷たい声が響く。

 

「お姉様ってやっぱりSです。」

 

マナの声だ。

 

「そう言うマナはMっぽいよね。」

 

「Mではない事は確かです!とりあえずありがとう御座いました。」

 

「へへへ〜。可愛い妹に変な虫が付いたら大変だからねー。どうって事ないよ!

で?お隣さんは?」

 

マナの隣を見ると誰かが立っている事に気づく。

滑らかな髪質に、整った顔、ちょっとファッションは特徴的だが、それに見合っている容姿をしている。可愛い。美少女だ。

 

「"有馬かな"よ。さっきは助けてくれてありがとう。」

 

「良いよ〜。可愛い女の子が困っていたら助けるのが常識って物だからね。」

 

「何よ、それ。口説いてるの?」

 

「ハハッ。男の時出来てれば苦労しなかったよ…

 

そう呟いて、少し落ち込んだ。

 

 

 

 

……ん?……有馬…かな?

 

 

 

「……有馬…かな?」

 

「………?」

 

あれ?確かに見覚えがある。

この赤い艶やかな髪、このベレー帽的な帽子………。

 

「あっ、もしかして…私の事知ってる?困ったわね〜。まだまだ私も現役って事ね!

もう行き遅れの元天才子役なんて……言わせ……グスッ…」

 

天才子役……?

あれ……?

いや、まさか……だって、そんな筈……今は星野アイはまだアイドルにすらなっていない時代のはずだ。確かに原作崩壊とは言って良いほどに時代が狂ってはいるけど…

 

 

地面が割れる程の衝撃が頭に響く。

 

 

確かに時間軸がおかしくなっていたのは知っていた。

わたしはもう16を超えたし。アイドルにもなっていない。

そもそも星野アイに家族は居ない。

 

だけど、ここまでひどい事になっていたとは…!!

 

今までこの伊達メガネで顔を隠して来た…だけど…

 

 

 

 

 

 

「……………あれ?伊達メガネ……?」

 

 

 

 

 

 

ハンカチで手を拭いて、アルコール除菌をした後に自分の顔に触れる。

いつもならそこにある筈のソレが…今日は無かった。

そう言えば今日はおかしかった。何かいつもより風通りが良かった気がした。何かいつもより身体が軽い気がした。だけど、それが精神的にくる物ではなく…()()()()()だったとは…!!

 

 

「…マ、マ、マ、マ、マナ…マ"ナ"っ…」

 

私はマナに抱き付く。

涙が溢れてくる。

 

「ご……ご、ごべんねえ"え"!!不甲斐ないお姉ちゃんでえ"え"!!!」

 

「ど、どうしたんですか。」

 

「ごべんね"……ごべんね"!

お姉ちゃん妊娠してマナに迷惑かけちゃう!!」

 

「何がどうしたらそうなるんですか!!??」

 

 

その後、泣き止むまでに1時間かかり、いつの間に"有馬かな"は居なくなり。

映画を観て帰ったのでした。めでたしめでたし。

 

 

 

 

 

 

 

 




!?
6位?マジかいな。皆さんありがとうございます…
え、マジか
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