舞台上の演者へ、どうか惜しみない歓声を。
「■■■■先頭!■■■■3バ身から4バ身!恐らく勝てるだろう!恐らく勝てるだろう!もう大丈夫だぞ■■■■!2400、3バ身から4バ身、5バ身リードで逃げ切った!!」
私が、トレセン学園へ……レースの舞台、その壇上に登るきっかけになったレース。
あの日見た、全てが計算され尽くしたかのような、完璧な走り。
後続を一切寄せ付けない、理論上最強の走り。
全身に漲る筋肉、涼しげな表情。
戦場を貫く一筋の光芒のように輝く、あの勝負服。
まさしく、王者だった。あの背中に憧れた。
きっと、その時私は……運命に出会ったんだと思う。それからは走って走って……走って。
─────そして今日から、私のトゥインクルシリーズが始まる。
私の名前はブレイズダンサー。ウマ娘だ。
ウマ娘は強烈な特徴のある人がとても多い。少なくとも、普通のヒトと比べたらね。
もちろん、私もその1人。黒髪ベースに、赤のメッシュが入った奇抜な髪。髪が生えてからこの赤がなくなったことはないから、きっとそういう存在なんだと思う。そんな髪を、赤と黒で分かれるように長い一本のおさげに結んで、ついでに赤いアホ毛もある。前髪ぱっつん、左右はウェーブ。前髪にも一筋の赤。
この時点でなかなか強烈だと思うけど、まだまだ。私の目はかなり珍しいことに、左右の虹彩の色が違う。つまりはオッドアイ。右が青、左が赤。これも生まれつき。
尻尾はごく普通に黒。耳も黒。大きさはそれなり。
で、耳飾りは右につけるのがしっくりきた。あの人と似たような、水色のリングを付け根に嵌めている。
胸は……かなり大きい方。流石にステイヤーの魔王様には及ばないけど、それでも上から数える方が早いと思う。でもそこはレースには関係ないよね?
そんな私の、大事な大事な最初の三年間、その目標は……。
「トレーナー、契約した時にも言ったけど……■■■が獲れなかった三冠、取りに行きます」
ウマ娘に生まれたのなら誰でも一生のうち一度は夢見る、世代最強。世代の頂点。
つまりは、クラシック三冠だ。
共に目指すトレーナーは、女性だ。栗色の髪にぴょんと伸びる一本の髪が目立つ、青い目に確たる信念のある人。
正確無比でハードな坂路トレーニングに定評があるんだけど……それが祟ってか、トレーナーとしては担当のウマ娘とは長続きしていないらしい。
どうしてだろう?ついていけなかったのか、故障が多発したのか、それとも……■■■が特別だったのか。
契約を結ぶ前、少しだけ体験したんだけど……確かにキツい。今までのトレーニングがリハーサルですらないと思い知った。
でも、だからこそ。強くなれる。三冠を取れる。そう感じたし、何より……。
「私も……三冠には思い入れがあります。厳しいトレーニングにはなりますが、しっかりついてきてください、ブレイズダンサー」
「はい!」
トレーナーも、三冠への想いは凄まじいものがあった。最初の挑戦で三冠を取り逃がして以降は結果が出てないから、私に賭けているみたいだ。
「では、まず今の実力を確認しましょう。2400、行けますか?」
「勿論です!」
2400mで想定するのは当然、東京2400。つまりはダービー。
簡易なスタートラインに立って、トレーナーの合図で飛び出す。
同時にハナを奪おうとする
先頭をキープ。そのまま1コーナー、2コーナー。
向正面、外からこっちを伺うライバル。被せられると
1200、1400……1600、ここ!
緩い3コーナーで下りを使って一気に加速、ドリフトしながらキツい4コーナーを抜けて……あとは駆け抜ける!
1800、コーナーが終わる。2000、ここから
「……ゴール!」
ゴール板を駆け抜けた。息は絶え絶え、完全にバテている……。デビュー前とはいえ、スタミナが課題なのは自覚していた。
「はぁ、はぁ……タイムは!?」
「2分30秒3、デビュー前なら『上出来』と思います」
「……ありがとうございます。でも……ダービーまでには22秒台で走れるようになっておかないと」
「勿論です。着いてこれますね?ブレイズ」
「当然です!」
「では、息を整えて坂路に行きましょう。ブレイズ、貴方は本質的にはインターミディエイトまでが本領だとは思いますが……スタミナは努力で補えます」
「はい、トレーナー!今度こそ、それを証明しましょう!」
とはいえ、まずは無事にメイクデビューを果たすこと。それが最初の目標だ。
8月3週目の日曜日、中京レース場。芝・1600m。
そして、いきなり勝って……三冠への第一幕にしたいな。
目標:メイクデビューに出走
中京レース場 芝・1600m
まずは1人。彼女の憧れのウマ娘、ご存知の方も多いのではないでしょうか?
彼女の成し遂げられなかった目標、ブレイズダンサーは引き継いでいます。