【本編完結済】距離感のバグったTSっ娘と親友がイチャイチャする話   作:エイジアモン

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34.トマト鍋

 

──駿太朗 View

 

あれから数日後、夏休みの宿題を睦巳の家で一緒にやっている。

もう何日目かで、順調に宿題が進んでいてこの調子なら8月の早い内に終わるんじゃないかと、そう思える。

 

そうなれば残りの夏休みは睦巳と思いっきり遊べるし家でゴロゴロとしていても良い、多少部活はあるけどだとしてもそこまで拘束時間が長いものではないので問題はないだろう。

 

行きたい所だってある、水族館に行って涼みながら魚を見たり、イルカのショーなんかを見るのも良い。

涼しい所ならプラネタリウムや映画館なんかも良いだろう、それこそネットカフェなんかで漫画なんか読んでダラダラしていても良い。

個人的には今度は2人で海に行きたい気持ちがあって、人目を気にせず遊びたい。

 

他にも夕方か夜あたりに展望台に行って、満天の星空を見ながら睦巳に俺の気持ちを……気持ちをどうするつもりだ?

今の関係で告白なんか出来ない、俺は目的を忘れたのか。

 

本当はイチャイチャするのだって、口づけするのもおかしい。

今更な話だけど、睦巳の距離感が異常なほどに近く、受け入れてくれて、甘えさせてくれてるからさせて貰えているに過ぎない。

 

分かっている、だけどしたいもんはしたい、ずっとイチャイチャしていたい。

それに睦巳が許してくれているんだから、線引きした所までは良いはずだ。

ただひたすらに睦巳に甘えて甘えて、そうしていたい。

 

でも告白は、それは違う。

 

俺はあくまで睦巳が立ち直るまで、吹っ切れるまで支えるだけ、そのはずだ。

それが達成されたなら、友達に戻り、いや男女間だから友達ですらないかも知れないけど、睦巳がちゃんとした相手を見つけるまで応援ぐらいはしても良いだろう。でもそこまでだ。

 

甘えたくてイチャイチャしたい癖に、ちゃんとした相手を探すまで応援するつもりだなんて、なんて都合が良くて勝手なんだ。

睦巳の事を思うのならば甘えるのだってしないほうが良いはずなのに。

 

でも甘えたい、我慢が出来ない。

睦巳が許してくれているから、そう言い訳をして、ここまで来ている。

 

◇◆◇

 

「なあ駿、今日は鍋やるから一緒にどう?ってさ、晩ご飯食べてけよ」

 

いつもなら夕方には解散になる所なんだけど、今日は晩ご飯をご馳走してくれるらしい。

断るのも悪いので、当然ありがたくお受けさせていただきます。

 

「良いね、鍋好きだしご馳走になろうかな」

「まあ駿は断らないと思ったよ、こんな暑い時期に鍋なんて、俺はちょっと嫌なんだけど」

 

分かってないな睦巳は、暑い時期だから熱い鍋が良いんだろ。

 

「エアコンが効いた部屋で、熱い鍋を汗をかきながら食べる事はとても贅沢で最高な事だと思わないか?」

「……いやまあ確かにそうだけどさ、結局熱くて汗かくわけじゃん、それがなー。それに夏の鍋って辛いもんばっかってイメージあってさ、余計汗かきそうだ」

 

そう言えば何の鍋なんだ?あんまり辛いのはちょっと苦手なんだけど。

 

「そういや何の鍋なんだ?」

「いやそれがまだ教えてくれなくて、秘密なんだってさ、隠すような事でもないのにな」

 

うーん、まあ楽しみにしておくか。

 

……なんか今日はもう宿題やる気失せたな、睦巳もそんな感じの様子だ。

睦巳がニヤッとして、何か言いたそうだ。

 

「なあ駿、久々に膝枕してくれよ、飯の時間まででいいからさ」

 

膝枕か、そういえば最近は全然やってないな、イチャつく時はバックハグだったからな、偶にはいいだろう。

 

「そういえば久々だな、よし、こっちおいで」

 

俺は睦巳のベッドの上に腰掛け、睦巳を呼んだ。

睦巳は嬉しそうに仰向けに横になり、俺に頭を預けた。

そして俺の手を取り、両手で包み込むように抱え、こう言った。

 

「あたま」

 

まるで子供のように言われ、そこで気付く。あ、これって甘えているのか!と。

睦巳の髪を優しく撫でる、嬉しそうに目を細める睦巳が可愛くて、ちょっと無理して上から口づけをした。

この姿勢だとこれが精一杯だ。

 

睦巳は何も言わず、俺を見つめていて、俺も無言で睦巳をただ見つめていた。

美人で可愛く、この世で一番だと俺は思う。

その後はお互いに目を閉じ、静かで居心地の良い雰囲気で過ごせた。

 

◇◆◇

 

食卓に就く、おじさんは仕事が遅くまで掛かり、間に合わないという事だった。

睦巳の隣に座る、鍋はトマト鍋だった、辛いものじゃなくて、俺も睦巳もホッとした。

 

トマト鍋はトマトの酸味がとても具材に合っていて美味しく、好みの鍋の一つだ。

辛い事も無く、食べやすい、有り難いことだ。

 

睦巳は口と胃袋が小さくなった影響だろうか、以前のように早食いしたりせず、女の子らしく一口が小さく、可愛い食べ方になった。

それでも女の子としては食べるほうな気がするけど、俺が沢山食べるので比較すると少食に見える。

 

「熱ッ!?」

 

睦巳が豆腐を口にした時にそれは起きた。

豆腐は熱いものは内部まで熱く火傷しやすいとは思っていたのだが、睦巳はそれを小さくしてヒョイと口にした、それは想像以上に熱くて、皿に豆腐を吐き出した。

 

「これ睦巳!吐き出して!もう駿太朗くんの前でみっともない!」

 

おばさんがそう怒る、普通の反応だと思う、だが俺は睦巳が吐き出したこの豆腐くらいなら平気で食べられる自信がある。まあ吐き出すのがみっともないのはそれはそう。

 

睦巳は直ぐに水を飲んで冷やしていたけど、よほど熱くて火傷でもしたのか、あひゅいいひゃいと、多分熱い痛いだと思うけど、ひゅいひゃい言っていた。

 

「睦、ちょっと見せてみろ」

 

火傷してるかもと思ってそう言い、睦巳にこちらを向かせた。

 

こちらを向いた睦巳に俺は目線の高さに合わせる為に顎を軽く掴みクイと上げる。

顔を近づけるも睦巳が口を開けない。

 

「睦、口を開けて舌を出してくれ」

「ん!?あ、ひゃ、ひゃい!」

 

口を、睦巳の出した舌をよく見る。

 

「少し赤くなってるな……火傷してそうな感じするし、氷でも当てておいたほうが良いんじゃない……ん?」

 

ふと周りを見ると、おばさんが手で口を覆って驚いたような顔をしていて、睦巳は顔を真っ赤にしていて目が泳いでいる。

一体どうしたというのか。

 

「おばさん、氷ありますか、睦巳の舌を氷かなんかで冷やしたほうが良いと思います」

「……あ!そ、そうね!ちょっと待っててね」

「睦はとりあえず水を飲んで冷やせ」

 

と水の入ったコップを渡した。

睦巳は頬を赤らめたままコップを受け取り、視線を逸して水を口に含んだ。

 

おばさんが氷を取り出して、睦巳が使えるよう準備した、これでとりあえずは大丈夫だろう。

 

おばさんが妙に嬉しそうな楽しそうな口ぶりで俺の事を話す睦巳の様子を話だした。

 

「いつも睦巳はね、駿太朗くんの話ばっかりしててね──」

 

睦巳は氷を舌に当てつつも顔を真っ赤にして何やらおばさんに抗議をしているようだがなんとも聞き取りづらい。

 

そしてそんな睦巳も可愛さ爆発している。

俺と2人きりじゃ無い時は"私"と言うし、なんと無く仕草も可愛い女の子の様に見え、新鮮に映る。

今の睦巳が元男だなんて、誰も信じないだろう。

 

睦巳の抗議にもかかわらずおばさんは止まらない。

 

「駿太朗くんもこんなにカッコよく、頼もしくなっちゃって、睦巳は本当に幸せね」

 

そして最後に。

 

「駿太朗くん、睦巳をお願いします」

 

とお願いされてしまった。

これはつまり、そういう事なのだろう。

頼まれるまでもなく、と言いたい所だけど、今俺はあくまで親友として睦巳が立ち直るまで支えているだけで、お願いに応える事は出来ない。

だけど、母親を目の前にしてそう答える勇気も無い俺は

 

「大丈夫です」

 

とあいまいな返事しか出来なかった。

睦巳は何か言いたげな顔をしていたが特に何も言わず、おばさんと話を続けていた。

 

2人をよそに俺の気分は落ち込んでいた。

 

それでも食べ終わる頃には平常どおりに戻り、食卓を後にした。

トマト鍋は美味しく、2人の雰囲気も良かったため、俺が落ち込んで空気を悪くするのは悪いと思ったし、この空気に混ざりたくて会話にも参加した。

 

◇◆◇

 

別れ際、睦巳の部屋で抱き合い、深い口付けを交わしていた。

稚拙だった舌の動きも段々と慣れてきて、お互いの呼吸のようなものが合うようになってきた。

心地良さ、感度が上がり、終わった後に苦労する。

 

終わって落ち着いた後に。

 

「明日さ、家に泊まってけよ、女からの誘いだからな、断るなよ」

「あ、ああ、分かった、準備してくるよ」

 

と明日泊まる事になった、また何か良からぬ事を企んでそうだけど、逃げ道は塞がれていて受けるしか無かった。

 

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