俺達が色々と見回っていると、大きな破壊音が聞こえた。
そちらの方に行くと俺達以外が全員揃っており、ついでに俺達が探していたデブはナツにぶっ飛ばされていた。
そしてエルザさんからエリゴールの目的がララバイを定例会のマスター達に吹く事であったこと、魔風壁なるものが駅を囲うように張られており脱出できない事、それを解除できる可能性があった男が俺達が追っていた奴によって重症な事を教えて貰った。
「すみません。俺達がこいつをすぐに捕まえれてたら...!!」
「いや、仕方がない。壁を通り抜けるように潜る魔法の使い手だった...そうそう捕まえる事は出来なかっただろう」
「...まぁとにかく、この魔風壁を突破しない限り俺達は先に進めねぇ訳だ」
「あんたの魔法で凍らせたり出来ないの?」
「出来たらとっくにやってるっつの」
「くっそ通れねぇ!!...イッセー!!全力の力を俺によこせ!!」
「よせ。単純な力でどうにかなる結界じゃない...それに、ここで二人の力をいたずらに浪費するのは得策では無いぞ」
「じゃあどうするってんだよ!!」
「俺の力でも突破は無理、エルザさんもグレイもナツもハッピーも突破出来ない...そうだ!ルーシィの星霊でこの壁をどうにか出来る奴は居ないか!?」
「む、無理よ...みんながどうにもできない壁を私の星霊でどうにかなんて...」
ルーシィが自分の鍵を見ながら答える...
「いえ、ちょっと待って?」
「な、何かあるのか!!?」
「魔風壁をどうにかする事はできないけど、外に出るだけならいけるかも...!!」
「何!!?」
「この前のクエストのバルゴって星霊覚えてる?昨日私の家に来て、エバルーが逮捕されて契約が解除になったから私と契約したいって...」
「あのゴリラか!!そうか、あいつは地面に潜れる!」
「そう...!ちょっとあの外見が怖くて契約を後回しにしてたんだけど、今はそんな事言ってられないもんね!」
ルーシィが鍵を構えて詠唱を始める。
「我、星霊界との道を繋ぐ者。汝、その呼び声に答え
「お呼びでしょうか、ご主人様」
召喚の煙が晴れると、そこに居たのはゴリラではなくめちゃくちゃ可愛いメイド服の美少女だった。
「美少女星霊キター!!!」
「やせたな」
「あの時はご迷惑を...」
「やせたっていうか別人!!?あんたその恰好...」
「私はご主人様の忠実な星霊。ご主人様の望む姿で仕事をさせていただきます」
「前の方が迫力あって強そうだったぞ?」
「では...」
「バカ!!お前くだらねぇ事言ってんじゃねぇぞ!!せっかくのメイド美少女をもう一回あのバケモノに変えるつもりか!!」
「あんたがメイド服好きなのは知ってるからちょっと落ち着きなさいよ...」
「へぇー、かわいらしいじゃねぇの」
「やはり流石だな、ルーシィ」
「何が...?じゃない!今は時間が無いの、契約後回しでもいい!?」
「かしこまりましたご主人様」
「てか、ご主人様はやめてよ」
「では主様と」「却下」
「では女王様と」「却下よ!」
「では、姫と」「...そんなトコかしらね」
「そんなトコなのかよ!つーか急げ!」
「では、行きます...!」
バルゴが地面を掘り進んでいく。
「良いぞルーシィ!」「痛!!」
エルザがルーシィの頭を抱き寄せて鎧にぶつける。
「おし、あの穴を通っていくぞ...!って、何してんだナツ」
ナツは影の魔法の男を背負っていた。
「俺と戦った後に死なれちゃ後味悪ィんだよ。このまま連れてく...どうせこのキズじゃまともに動けねぇだろ」
「....そうだな」
俺達は穴をくぐって外に出た。ちなみに穴は真っ暗で前が見えなかったので何も見えなかった...ちくしょう。
「ぷはっ!!すごい風!!」
「姫!下着が見えそうです!!」「自分の隠しなさいよ」
そんなやり取りが聞こえたのでその方向を見るとバルゴの下着が丸見えになっていた。
「うおっ!!丸見え...!」
ガン見しているとルーシィが無言でこっちに近づいてきた。
「私の星霊をやらしい目で見てんじゃないわよ」
ポカンと頭を殴られた。痛い...
「全く...あんた女の子なら誰でも良いワケ?」
「そんな事はないって!でもそれとこれとは別というか...」
「何が違うかわかんないんですけど...」
「いいから急ぐぞ!!...ん、ナツは何処に行った?」
「ハッピーも居ないぞ?」
「...あいつらエリゴールを追って行っちまったんだ!」
「なんだと...!?急いで追うぞ!ナツだけでは万が一があるやもしれん!!」
俺達は止めていた魔動四輪の所に走った。
「壊されている...!?」
「あいつら随分と用意周到なこった...!」
「やむを得ん。幸い今は駅周辺には誰も居ない。今は一刻を争う。少しだけ借りていこう...」
エルザが放置されていた別の魔動四輪に乗り込む。
「全力で飛ばす...!しっかり捕まっていろ!」
俺達が乗り込むのを確認するとエルザはアクセルを全開にした。
ギャリギャリと音を立てながら四輪が火を噴く。
「きゃあ!ちょっと早過ぎない!!?」
「仕方あるまい...!このままではここいらのマスターが全滅するのだぞ!!?」
「うぅ...今日一日でどんだけ乗り物に...ほんとに死ぬ...」
────────────────────────────ー
「な...なぜ僕をつれてく...?」
しばらく進んだ所で今までずっと黙っていた影の男が話し出した。
「しょうがないじゃない。町に誰も人が居ないんだから、クローバーのお医者さんにつれてってあげるって言ってんのよ。感謝しなさいよ」
「違う!!何で助ける!!?....いや、そうか。僕を人質にエリゴールさんと交渉しようと...それは無駄だよ。あの人は冷血そのものだ。僕なんかの為に...」
「うわー暗ーい...イッセーもなんか言ってやんなさいよ」
「死ぬ...」
「あんたも今は真っ暗だったわね」
「死にてぇなら殺してやろうか?」
グレイが男の肩を掴む。
「生き死にだけが決着の全てじゃねぇだろ?もう少し前を向いて生きろよ。お前ら全員さ...」
「グレイ...」
そこまで喋っていた所で急に魔動四輪がスリップする。線路から外れてしまったようだ。
「きゃあ!」「危ねぇ...!」
ルーシィが慣性で飛びそうになったので抱き留めてなんとか抑える。
「あ...ありがと」
「ダメだ気持ち悪すぎる...うぷ!」
「きゃ──!!ちょっと!私に抱き着きながら吐こうとしないでよ...!」
「何やってんだお前ら...」
「すまん。少しハンドルが効かなくなった...問題ない、飛ばすぞ」
「一瞬...一瞬だけ休憩...」
俺のか細い命乞いは無視されてそのまま出発した。
「おぉぉ...気持ち悪い...」
「だからせめて離してってば...!力強!?これじゃ介抱も出来ないじゃない...!」
「ルーシィ...助けて...」
「分かったから離してよ...ってかほんとに離れないじゃん!んー!!!」
「お前らいちゃつくならよそでやってくんねぇか?俺の名言が台無しだろうが...」
「そんなんじゃないのに...もぉ」
「なんでちょっと満更でもなさそうなんだよ...」
「はぁ!?どこがよ!」
「どこをどう見てもだよ...」
うぅ...気持ち悪い...ルーシィにしがみついていないと気持ち悪くて倒れそうだ...いや、もしかしたら抱き着きたいだけの可能性も無くはない...
それからしばらく進むとナツとハッピーが立っているのが見えた。
「ナツ──ー!!」
「お!遅かったじゃねぇか。もう終わったぞ」「あい」
「そ...そんな!エリゴールさんが負けたのか!!?」
「けっ、こんなの相手に苦戦しやがって。
「苦戦?どこが!!圧勝だろうが、なぁハッピー!」「微妙な所です」
「何はともあれ、見事だナツ。これでマスター達は守られた...ついでだ。定例会の会場へ行き事件の報告と笛の処分についてマスターに指示を仰ごう」
「クローバーはすぐそこだもんね」
そこまで話していた所で急に魔動四輪が動き出した。影の男が運転してるらしい。
「危ねーな!動かすならそう言えよ!!」
「はっ!油断したなハエども!!笛は...ララバイはここだー!!ざまぁみろー!!」
捨て言葉だけ吐くとさっさと進んでしまった。
俺達は一瞬茫然とした後、すぐに動き出した。
「.....追うぞ!!」
「あいつー!せっかく助けてやったのにぃ...!」
「え...今から...走るのか...?」
「当たり前だろ!あいつにマスターを殺されてぇのか!!?」
「は、ハッピー...?」
「おいら魔力切れ」
「終わった...」
俺はなけなしの力を振り絞って皆を追いかけた...
──────────────────────────ー
クローバーに到着する頃には酔いも完全に醒めたが、とっくに夜になっていた。
...もう手遅れなんじゃと思いつつも、俺は定例会の開場が近づいてくるタイミングに合わせるように倍加を始めておく。
ついに到着すると、影の男が笛を地面に落とし俺達のマスターに向けて頭を垂れていた。
よかった...!ギリギリで失敗したんだ!
「まいり...ました...」
「マスター!!」
「何ぃ!?なんでお前たちがここに!!?」
「ご無事で何よりです...この男は...」
「うむ、最後の最後でわしの言葉が届いたようで何よりじゃ」
「いや。しかし、ほんとにギリギリだったが...やっぱマスターは流石だ。俺達が心配する必要も無かったみてぇだな」
「なぁに、わしを思って行動してくれた事は素直に嬉しいわい」
などと喋っていると、何やら不穏な音が聞こえてきた。
『...軟弱な魔導士共だ...もう我慢できん。こうなったら、俺自身で喰ろうてくれるわ...!』
ララバイから煙が溢れて、巨大な木の巨人が現れた。
「いかん!ゼレフ書の悪魔じゃ...!」
「ゼレフ書の悪魔!!?」
「何百年前に居た伝説の黒魔道士ゼレフが遺した生きた魔法の総称よ!何百年も前の負の遺産がこんな時代に姿を現すなんて...」
どっかのギルドのマスターが俺達に教えてくれる。
「誰から喰らってやるか...決めた、全員だ...!」
ララバイが呪いの音を口から発する。
「ナツ、グレイ、エルザさん...!受け取れ!!」
『Transfer!!』
俺は3人の元に近づいて、最大まで溜まっていた力を譲渡する。複数人に力を譲渡すると、8割まで出力が落ちてしまうが、逆に言えばたった2割のロスで複数人に同じだけ力を譲渡出来るという事でもある。理屈は良くわかってない。
「よっしゃあ!!」「こりゃあいい!」「イッセーの力はこれほどまでか...行くぞ!!」
各々ララバイに向かって突撃する。
「あやつ
エルザが黒羽の鎧に換装し、足を切断する。そのままの勢いでもう一本の足も切り飛ばした。
「あれは黒羽の鎧...!しかし、それだけでは説明出来んほどの威力の斬撃じゃぞ...!」
『おのれ貴様らァァァ!!!』
ララバイが膝を付きながらも魔力弾をマシンガンのように放つ。
「アイスメイク...
グレイがその魔力弾を全て氷の盾...というより壁で受け止める。
「なんという造形魔法の速度だ...!!一瞬でこれほどの盾を氷で!!」
「造形魔法?」
「魔力に形を与える魔法の事だよ?そして、形を奪う魔法でもある...」
「へっ、こりゃあいい塩梅だ...アイスメイク、
グレイが造形した氷の槍は、一度上空に上がった後に急降下し、ララバイの全身に穴を開けた。
「最後は俺だぁぁ!!右手の炎と左の炎を...合わせて...!!火竜の煌炎!!!」
ナツが放った炎はララバイに着弾すると同時に何倍にも膨れ上がって大爆発を発生させる。
ララバイはとっくに完全消滅しており、ナツの炎はそれでも止まらず周囲を破壊し尽くした。
「これが
「そうじゃろそうじゃろ...!これがわしのガキども.....」
爺さんが俺達を自慢しようとしたが、途中でだまりこくり俺達にもついて来るよう手招きしてくる。
「なんだ?....って、あ」
よく見ると定例会の開場が跡形もなく崩壊していた。
「誰かあいつらを捕まえろ!!」
「おっしゃ任せろ!!」「お前は捕まる側だよ!!」
ナツがマスター達と漫才している間に俺たちは逃げ出す。
「マスター、申し訳ありません...顔に泥を塗ってしまって」
「いいのいいの、どうせもう呼ばれないでしょ」
「ねぇ、あんたこの前俺達のチームで物壊してるのはナツばっかりとか言ってたけど...力の譲渡なんかしてないわよね?」
「い、いやぁ...そんな事は無きにしもと言いますか...」
「あい。大体雑誌に乗るような事件は譲渡の力が使われてました」
「やっぱり...!ナツも大概だけど、あんたの力が一番質悪いじゃない!見なさいよこの破壊規模...!絶対ナツ一人じゃこうはならなかったわよ!?」
「まぁいいじゃないかルーシィ。イッセーの助力がなければあの悪魔にララバイの音を奏でる隙が出来たやもしれなかった。許してやってくれ」
「エルザさんは止める側じゃないの!!?」
「だっはっは!久々にすっきりしたぜ!」
「笑い事じゃねぇぞナツ...!お前もっと考えて魔法使いやがれ!ついでに無駄に力を与えたお前も同罪だぞイッセー」
「うるせぇよグレイ!全力でやった方が楽しいに決まってんだから、そりゃあやるだろ!」
「ちゃんと加減せんかバカタレ!竜と竜の力が掛け合わさったら碌な事にならんのはわかりきっておるじゃろうが!」
「すみません...」
「全く...気をつけなさいよね?あんたらの評判が下がるとあたしが困るんだから...」
「うわぁ、露骨にイッセーとナツの強さを利用するつもりだよ...わーるいんだー」
「うるさいバカネコ!そんなんじゃないわよ!私は純粋に同じチームの仲間としての提言をしてるの!」
「ルーシィ!!正式に俺達とチーム組んでくれるのか!?」
「....まぁ、やっぱあんたらが一番付き合いやすいし。放っておいたら何しでかすかわかんないから...しょうがなく見ててあげるだけよ!」
「.....よっしゃーーー!!!」
「カカッ!よろしくなルーシィ!」「あい!」
「うん!」
「仲睦まじい所結構じゃが、今逃げとるからの?ワシら全力で...」
「じゃあ競争だ!負けねぇぞイッセー、ルーシィ!...グレイはまぁどうせ負けるだろうけど」
「んだと聞き捨てならねぇなナツ!!お前こそビリっけつだ馬鹿野郎!!」
「あははは!」「くくっ...!ぷはは!」
一も二も無く俺達は駆け出した。
「全く...帰るぞ、
「「「おー!!」」」