ファントム、現れます!!
「な、なんと!報酬は受け取れないと?」
村長が驚きの声をあげる。
「あぁ。気持ちだけで結構だ、感謝する」
「ほが...しかし」
「昨夜も話したが、今回の件はギルド側が正式に受理した依頼ではない。一部のバカ共が先走って遂行した仕事だ...」
「それでも、我々が救われた事にはかわりません。これはギルドへの報酬ではなく友人のお礼という形で受け取ってくれませぬかの?」
「ふむ...そう言われると拒みづらいな」
「おぉぉ!」「700万J!!!」
ナツとグレイが喜びの声をあげる。
「しかし、これを受け取ってしまうとギルドの理念に反する。追加報酬の鍵だけありがたく頂く事にしよう」
「「いらね──!!」」
「「いるいる!!!」」
ナツとグレイ、俺とルーシィで正反対の声が上がった。
ふざけんな!ここまで来て鍵が手に入らないなんてあってたまるか...!!
これで遂にルーシィのおっぱいが俺の手中に...!!3秒だけだけど!!
どうしようかなぁ!シンプルに揉むか...いや、その程度で終わるのはあまりにも勿体ないか...?でも、シンプルだからこそ最高の体験が出来るのかもしれん...他にも色々あるしなぁ!あぁ、師匠がこの場に居ないのが悔やまれる...教えてください師匠!!俺は一体どうすればよいのでしょうか!!
「では、せめてハルジオンまで送りますよ」
「いや、船は用意できている」
俺が自分の世界に入り込んでいる間に帰りの足の話になっていた。
う...船か。ナツと一緒にブルーになりながら歩いていると、目の前に大きな海賊船が現れた。
「まさか強奪したの...?流石エルザ」
俺達は船に乗り込む...というより揺れた瞬間動けなくなったのでナツ共々エルザさんに投げ込まれた。
「みなさん!!ありがとうございます!!!」「また遊びに来てください!!!!」「お元気で──!!」
村人達が俺達に向かって別れの言葉をかけてくれる。
「元気でね──!!」
ルーシィが大声でそれに返す。俺とナツも弱弱しく手だけ振っておく。
「また悪魔のフリフリダンスを踊りましょう!!」「仕事がんばれー!!」「
村人たちが小さくなって見えなくなるまで、俺達への声が続いた...
────────────────────────ー
「帰って来たぞー!!」「来たぞー!!」
ナツとハッピーがマグノリアに着いた事で声をあげる。
「しっかしあれだけ苦労して報酬は鍵一個か...」
「せっかくのS級クエストなのにね」
「正式な仕事では無かったんだ。これくらいがちょうどいい」
「そうそう文句言わないの!」
ルーシィがにっこにこの笑みでグレイを宥める。
「得したのはルーシィだけじゃないか~...売ろうよそれ」
「何て事いうどらネコかしら!!!」
「俺も報酬は貰えるけどな!」
俺もうっきうきで自慢する。
「他になんかあったけ?村の人から...?」
「いや?そうじゃないけどな...ぐふふ!」
「ダメ―!」
ルーシィが俺の口を封じて来る。
「むぅわぐぐぶはぶ」
「分かってるから!こんな所で口に出すんじゃないわよ...!!うぅ...」
さっきまで上機嫌だったのに、顔を赤らめながらこちらを睨んでくる。
「エロい顔禁止!」
ルーシィに頭をチョップされる。
「でもなぁ!こんな時が来るとは思ってなかったからなぁ!!」
「ま、まさか今ここでとか言わないわよね...」
「いや、流石にそれは言わないけど」
「良かった...私にも一応、心の準備って物があるんだから...!も、もうちょっとだけ待ってよ。ちゃんとするから!」
「わかった....................準備できたか?」
「出来るわけないでしょ!!」
ずびしともう一度叩かれる。
「なんだぁ?」
「そういやルーシィがイッセーについてくるよう依頼したっつってたな」
「へぇ...なにを報酬にしたのやら」
「せっ詮索禁止──!!この話はおしまい!!」
ルーシィの叫びにより一旦この話はおしまいになってしまう。まぁいい、ルーシィに心の準備が出来ていないように俺にも準備が出来ていない...じっくり考えよう。
「さて、話は終わったか?それでは早速、ギルドに戻ってお前たちの処分を決定する...私は今回の件は概ね海容しても良いと思っている。しかし最終的な判断を下すのはマスターだ。私は弁護するつもりは一切ない。それなりの罰は覚悟しておけ」
エルザさんが俺達の会話が終わったのを見計らってそう伝えて来る。
「まさかアレをやらされるんじゃ!!」
「ちょっと待て...!!アレだけはもう二度とやりたくねぇ!!」
「アレって何──!!?」
「気にすんな!じっちゃんならよくやったってほめてくれるさ」
「いや、アレはほぼ決定だろう。ふふ...腕が鳴るな」
エルザさんが呟いた瞬間、ナツの顔からだらだらと汗が流れて来る...
「いやだぁぁ!!アレだけはいやだ──!!」
ナツはエルザに引きずられながら叫ぶ。
「だからアレって何なのよぉ...!てか、あんたはあんまりショックじゃ無さそうね」
「まぁ、エルザさんがアレするなら矯正も相まって俺の死は確定してるしな...だからそれまでに心の準備を頼むな?冥途の土産に持っていくから」
「ちょっと不吉な事言わないでよ!!えぇ!?もしかしてあたしも死んじゃう...!!?」
エルザさん以外がトボトボと歩いていると、俺達の姿を見て町の人達がヒソヒソと話している。
「ん?」
何やら街中の雰囲気がおかしい...まぁいいか。ギルドについたら皆に話を聞けばいいか。ほら、そろそろギルドが見え...て...
「これは...」
「俺達のギルドが...!!!」
ギルドが鉄の柱に貫かれまくって半壊している。
「誰が....!!!」
看板がバキバキに砕かれている。ギルドの建物以上に、明らかに人の悪意によって砕かれている...俺達のギルドに、大事な看板に誰がこんな事を...!!
「一体何があったというのだ」
「ファントム...悔しいけど、やられちゃったの」
エルザさんのつぶやきにミラさんが答えてくれる。
「ファントム...だと?」
────────────────────ー
ミラさんに連れられて、ギルドの地下へと入る。主に倉庫として使われているが、今は机や椅子が置かれて仮設の酒場として機能しているようだ。
「お、エルザが帰って来たぞ!」「ナツたちもいっしょだ」
みんながちょくちょくと声をかけてくる。
「見たかよギルドのあの姿!!ちくしょぉ」「ファントムめ!!よくも俺達のギルドを...!!」「今度は奴らのギルドを潰してやろうぜ!!」
やっぱりみんな怒っているようだ。報復の声もかなり聞こえて来る...
「よっ。おかえり」
そんな中、爺さんがのんきに酒を飲みながら俺達に笑顔で声をかけてくる
「ただいた戻りました...」
「じっちゃん!!酒なんか呑んでる場合じゃねぇだろ!!」
ナツがじいさんに詰め寄る。
「おーそうじゃった。お前たち、勝手にS級クエストになんか行きおってからにー!!罰じゃ!今から罰を与える!!覚悟せい!」
じいさんが俺達に手を伸ばしてチョップしてくる。
「めっ!」「痛て」
「めっ!」「あぎゅ」
「めっ!」「...!!」
「めっ!」「あだ!」
「....めっ!♡」「きゃっ!」
最後にドエロい顔でルーシィのお尻を叩いた。このエロジジィ!
「マスター!!今がどんな事態か分かっているんですか!!?」
「ギルドが壊されたんだぞ!!」
案の定エルザとナツに怒鳴られている。ざまぁみろ、ルーシィのお尻を触るだなんて怒られて当然だ。
「まぁまぁ落ち着きなさいよ。騒ぐことでもなかろうに...」
「何!!?」
「ファントムだぁ?あんなバカタレ共にはこれが限界じゃ。誰もいねぇギルドを狙って何が嬉しいのやら」
「誰もいないギルド?」
「襲われたのは夜中らしいの...だから、ケガ人は誰も居なかったんだけど」
「ふいうちしかできんような奴らにめくじら立てる事はねぇ。放っておけ!」
じいさんがふらふらと手を振る。
「納得いかねぇよ!!俺はあいつら潰さなきゃ気が済まねぇ!!!なぁイッセー!!」
「え?あー...うーん...」
ギルド壊されたのはめちゃくちゃムカつくけど、俺達だって建物壊しまくってるし、ファントムの奴らに喧嘩ふっかけられてボコボコにした事もあるしなぁ...誰も傷つけられてないんだし、マスターがこう言ってる以上は...
「少しはイッセーを見習えナツ。この話はこれでおしまいじゃ。上が直るまで仕事の受注はここでやるぞい」
「仕事なんざしてられるか!!!あいつらぶっ潰すんだよ!!」
「ナツぅ!いい加減にせんかぁ!!」
マスターの手がルーシィのお尻に伸びていったので俺はルーシィの後ろに身を潜りこませ、俺の尻を叩かせる。
「ぐぬ、やりおるなイッセー...男のケツ触って気持ち悪いし、漏れそうじゃからトイレ行ってくる」
じいさんはそれだけ言うとさっさと去ってしまった。
「何で平気なんだよ...じっちゃん...」
「ナツ...悔しいのはマスターも一緒なのよ。だけど、ギルド間の武力抗争は評議会で禁止されてるの」
ミラさんが答えてくれる。
「先に手ぇ出したのあっちじゃねーか!!」
「そういう問題じゃないのよ」
「マスターのお考えがそうであるなら...従うしかあるまい」
エルザさんがそう呟いて、それで話は終わった。
にしても仲が悪いのは昔っからだけど、なんで今更こんなくだらない事をしたんだ...?
なんだか少し嫌な予感がする。これだけで終わるならこんな事はしないだろうし、もっと大きな問題に発展するかもしれない...その時は。
ギルドの皆を傷つけるようなら...俺は奴らを赦さねぇ。
──────────────────────
俺とナツとハッピーとグレイとエルザさんはミラさんに合いカギを借りてルーシィの部屋に来ていた。
エルザさんの事だし、ミラさんが合い鍵を持っていて貸してくれるくらいだからルーシィに許可は取っているだろうけど...取ってるよな?なんか不安になってきた...とはいえ折角のルーシィの部屋、俺だけ仲間外れは嫌なので大人しくついてきてしまった。
ガチャリと鍵が開く音がした。お、ちょうどルーシィが帰って来たようだ。
「ただいまー....ああああ!!?」
「おかえり」「おかー」「良い部屋だな」「お、おかえりぃ」「よぉ」
ルーシィが叫んだ。
「多いっての!!」
ルーシィがナツにキャリーバッグをぶん投げる。
「なんてみんなあたしの部屋に勝手に!!」
やっぱ勝手だったのか...
「ファントムの件だが、奴らがこの街まで来たという事は我々の住所も調べられてるかもしれない」
「え、住所!?」
「一人の時を狙ってくるかもしれねぇだろ?」
「だから、しばらくはみんなで居た方が安全だってミラが...だから今日はみんなでお泊り会だよ」
「おまえも年頃の娘だしな...ナツとグレイとイッセーだけを泊まらせるのは私としても気が引ける。だから同席する事にした訳だ...安心しろ、私が居る以上間違いは起こさせん」
「その心配はしてないけど...てか男三人泊まるのは確定だったんだ」
「気晴らしにな!!」「まぁ、暇だし」「ルーシィ可愛いからな!ファントムの奴らに狙われるかもしれねぇ!」
「まぁもう島でやったから今更だしエルザも居るから良いけどさぁ...」
「お前なんだその食いモン!俺にもくれよ!!」「俺はもう寝っからよぉ、騒ぐなよ」「エルザ見て~エロい下着見つけた」「待てハッピー。まずはイッセーを拘束してからだ....す、すごいな...こんなのをつけるのか」「すごいってどんなの!!?どんなのなんだハッピー!!」「黙秘します」
「清々しいほど人の家エンジョイしてるわね...」
それからしばらく、俺達はわちゃわちゃとお泊り会を楽しんだ。
...................
「ねぇ、例のファントムってなんで急に襲ってきたのかな」
風呂上りのルーシィが髪をタオルで吹きながら俺達に話しかけて来る。
ちゃんとパジャマ来てるから何か見えてる訳じゃないけど、髪が濡れているとそれだけでちょっといかがわしい雰囲気が...
「わぷ!」
「卑猥な顔しない!」
ルーシィにタオルを投げつけられた。
「さぁな...今までも小競り合いや個人での喧嘩はよくあったが、ギルドへの直接的な攻撃はこれが初めてだ」
「うぐ...ぐ...!!」
エルザさんが俺にチョークスリーパーをしながら答える。
でもこれはこれで背中におっぱいが当たって...いや落ちる落ちる!!ギブギブ!!!
バンバンとエルザさんの腕を叩くと解放してくれた...死ぬかと思った...
「はぁ...はぁ...!!」
ファントムより先にエルザさんにやられるぞこれじゃあ...
「じっちゃんもビビってねぇでガツンとやっちまえばいいんだ」
「そういう訳じゃねぇだろ。あれでも聖十大魔道の一人だぞ」
「聖十大魔道?」
「評議会議長が定めた大陸でもっとも優れた魔導士10人につけられた称号だ」
「ファントムのマスター・ジョゼも一人なんだよ」
「ビビってんだよ!ファントムって数が多いしよ!!」
「だから違げーだろ。マスターは二つのギルドが争うとどうなるかわかってるから戦いを避けてるんだ。魔法界の秩序の為にな」
「ファントムってそんなにすごいの?」
「戦力は均衡している....実際に争えば潰し合いになるだろうな」
「マスターと互角って言われてるマスタージョゼ、むこうのS級魔導士にあたるエレメント4、そして鉄の
ハッピーがルーシィに説明してくれる。
「
「あい!とはいえ三人以外は聞いたこと無いけどね」
「そんな希少な魔法持ちが三人もこの大陸に集まってるって考えたら恐ろしいわね」
『いや、正確には四人だ...俺の力を滅竜魔法に組み込むのなら...だが』
突然ドライグが口をはさんで来た。
「お前...!勝手に出てこれるのかよ!」
『あぁ。お前の力が高まって来たお陰でようやくこの段階まで来れたんでな。まぁ悪い事ばかりじゃないさ。お前が眠っていても俺が能力を発動して力を高めてやれたりもするしな...』
「へぇ...!ますます便利になってきたな。てか、四人?」
『あぁ...昔俺と対を成す龍が居ると言ったのを覚えているか?』
「
『あぁ。奴もまた、俺のように特殊なラクリマに封印されて人間に適合し宿りながら生きている...お前が赤龍帝ならばそいつは白龍皇と呼ばれている訳だ』
「白龍皇...」
『奴の能力は相手の力を半減させて、自らの糧とするものだ』
「すごい...力を倍加させて周りに譲渡するイッセーとは正反対なんだ...!」
『そうだ小娘...故に俺達の戦いはいつまでも決着がつかなかった。俺が何倍にでも力を高め、奴はそれを半減させて己の力を高め、それに負けじと俺は力を高める...高まる力は留まる事を知らず、俺達はひたすらに周囲の被害も気にせずに殺し合った...そしてついた名が』
「二天龍...」
『そうだ。そして奴は今、この大陸にいる。海を越える程離れられると難しいが...俺には奴の気配が分かる。とても強大なオーラを放っている...お前では比べ物にならんほどにな、相棒』
「そんなに強いのか...」
『あぁ。そして俺達は永遠に惹かれ合い、殺し合う運命にある。それは封印された今も変わらない。赤龍帝と白龍皇の戦いはこれまで何度も行われてきた...そして今回は相棒がその役目という訳だ』
「っ...!」
『まぁ、精々死なないように今のうちに強くなっておくのだな。いくら宿主に恵まれなかったとはいえ、出会って即殺されるような醜態だけは晒してくれるなよ?』
「....わかったよ」
それだけ言うとドライグは意識を沈めていった。
「な、なんだか大変な事を知っちゃったわね」
「あぁ。赤い龍と白い龍の争いは御伽噺で聞いたことがあるが...実在し、あまつさえその片割れがイッセーに宿っていたとは」
「安心しろよイッセー!俺とお前ならそんなやつ敵じゃねぇよ!」
「おう...そうだな」
俺は自分の左手を見つめる。
いやまぁ、ドライグがそうなってるんだし予想出来たっちゃ出来たけれども...何で今までこの事を教えてくれなかったんだか...まぁ、あれか。俺があまりにも弱かったからだ。何が理由で喋ったかはわからないが、ドライグが自発的に籠手を発現出来るようになる段階とやらに俺が進んだ事で喋る気になったのだろうか...?
その日はあまりに眠れなかった。
白龍皇...俺もいつかは出会うのだろうか?
その時、俺は生き残れるのだろうか...