DxD TAIL   作:min-can

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戦争、終結です!

「うぐ...!!」

 

 しばらく歩いていると興奮状態が解けてしまったのか、腹の傷が痛みだした。

 途中で蹲る...

 

「っ...はぁ、はぁ...」

 

 フラフラと壁に寄り掛かる...限界かもしれない。でもまぁ、これだけ離れたらなんとかなるだろ...

 そう思ったが背後から凄まじい魔力の波動を感じる。まじでどれだけの戦いしてるんだあの二人...

 

「くそっ...もうちょっと離れた方が良いか?」

 

 今の俺には四人分のそりを引っ張るのはとてつもない重労働なんだが...

 そう思っていると、急にドクドクと心臓が鳴りだして視界が黒く染まり始める。

 

「あ...え?」

 

 ばたりと横に倒れてしまった。糸が切れてしまったように体に力が入らない。

 

『.....無茶しすぎたな、相棒。二度の禁手化(バランス・ブレイク)に数々の戦闘とそれに伴う負傷...特に腹部と頭部の損傷が不味いな』

 

「く...そ...」

 

 せめて、みんなをもっと安全な場所に運ぶまでは...そう思うが、体は全く言うことを聞いてくれない。

 体が寒い...あれ...これ、俺もしかして死ぬのか?

 

 待ってくれ...まだ、これからだろ...!!

 こんな所で終わる訳には...!

 

『すまんが俺も限界だ...無理に無理を通し過ぎた。しばしの別れだ』

 

 それだけ言うと、ドライグの気配も消えてしまった。

 ...俺、一人になってしまった。

 ちくしょう...誰か居ないか...?ルーシィ...

 

 ──────────────────────ー

 

「.....!!......」

 

 気が付くと、誰かが近づいてきて叫んでいる。と言っても耳鳴りが酷くてまるで声は聞こえないが。

 

 肩を揺らされる...勘弁してくれ。ただでさえ体が怠いのに、揺らされたら余計に...

 何かが俺の体を抱く...あったかい...

 

「......あ...」

 

 その熱が体に伝わる毎に、少しづつ体に力が入るようになってくる。

 

「....!!...セー!!」

 

「ル....シィ...?」

 

「イッセー...?良かった!!!...もう!!死んじゃったかと思ったじゃない!!!」

 

 ぎゅうっと抱きしめられる。

 

「あれ...?俺、何して...うぐっっ!!」

 

「え...?って、ちょっと何この怪我...!!」

 

「あ?...あぁ...ちょっとな」

 

「ちょっとじゃない!!...こんな傷どうしたら...!!」

 

「だいじょう...ぶ...すぐ、立つ...から...」

 

 俺はルーシィに少し避けて貰って、立つために手を地面に着く。

 

「う...ぐ...!」

 

「無茶しないで...!こんな時くらい素直に頼りなさいよ...」

 

 そう言ってルーシィが俺の体に手を回して体勢を変えるのを手伝ってくれる...

 

「づっ....ふ、ふっ...はぁ...」

 

「とりあえずここで待ってて...!私、すぐにアンタの事運べる人を探してくるから!!」

 

「いや、その必要は無い...」

 

 ふと声が聞こえたので後ろを向くと、エルザさんが頭を押さえながら立ち上がっていた。

 

「私が運ぼう...不甲斐ない姿を見せてしまったからな」

 

「エルザ...!!」

 

「治療セットだ...これで応急処置してやってくれ」

 

 エルザさんが救急箱を換装する。

 

「ぐ...あ...?あん?」

 

 少し騒がしくなったからか、グレイも目が覚めたようだ。

 

「グレイ...?ちょうどいい、今すぐ起きてくれ」

 

「イタタ...!!一体何が...って、イッセー!?どうしたその傷!!」

 

「ジョゼと戦って怪我しちゃったの!!今すぐ治療しないと...!!」

 

「今から出来るだけの処置をして、その後グレイの魔法で傷を凍結させてくれ。本来は良くないが、ここまでの怪我なら血行を少しでも抑える方がいい」

 

「...分かった!」

 

「みんな大げさだな...こんなの別に大した傷じゃ...」

 

「んなわけあるか...!!治療するぞ!」

 

 それから、三人がかりで体中グルグル巻きにされてしまった。

 

「この場で出来る事はこれ以上無いな...後は安静にして、医者に診てもらうのが良いだろう」

 

「あぁ...にしてもなんだこの意味わかんねぇ魔力のぶつかり合い。片方がマスターなのは分かるけどよ」

 

「....白龍皇だ。俺が引き寄せた...らしい」

 

「白龍皇!?...そうか、赤と白の龍が揃ってしまったのか...お前の怪我もそれが原因か?」

 

「まぁ...あいつ、めちゃくちゃ強かった。ジョゼを片手でぶっ倒しちまって...俺も必死で戦ったけどさ、結局まともに一撃を食らわすことも、出来なかった...あいつには、聞かなきゃいけない事...いっぱいあったのに...何も...何も!!出来なかった...!!それ以外だって、俺...何にも...何にも...!!」

 

 思い出すと悔しくて涙が零れそうになる。結局俺は最後まで、何も守る事が出来なかった...全部、全部傷つけられて...しまいには自分の体までこの始末...情けないったらありゃしない。

 

「そうか...私もだ。ジョゼに勝つことが出来なかった。お前と共に戦う事すら、叶わなかった...」

 

 エルザさんが俺の首に腕を回し、優しく抱いてくれる。

 

「その想いは取って置け...きちんと治療してから、共に強くなろう...」

 

「........う゛ん」

 

「イッセー...もぉ、泣かないでよ。あんたは私の事ちゃんと守ってくれたって言ってるでしょ?」

 

「ルーシィ...ぐす、泣いてないっての」

 

「つまんない嘘つかなくていいわよ」

 

 ルーシィが俺の頭を胸に抱く。

 ...なんだこれ。普段の俺なら大興奮する場面のはずなのに、全く、そんな気分にはなれない...けど、暖かい。

 

「けっ、一回負けたからってなんだ。お前がそんなんで挫けちまうような利口な人間かよ」

 

 グレイが笑いながら皮肉って来る。

 

「...うるせぇ。分かってるよ...ありがとう、ルーシィ、エルザさん...もう、大丈夫だから」

 

 俺は二人を少し押して離す。

 

「ルーシィ、エルザさん。肩...貸してくれ。づっ...っ...」

 

「うんっ...!」「あぁ」

 

 俺は二人に肩を貸してもらいながら立ち上がる。

 皆に励まされたからか、不思議と少しづつ体に力が戻って来た。

 

「後の事はマスターにお任せしよう」

 

「おう...」

 

 俺達は皆で身を寄せながら、ボロボロの体を引きずってギルドの方へ帰って行った。

 

 ────────────────────────

 

 ファントムのギルドの残骸から降りて、ギルドに向かうと...みんなが歓声をあげてくれた。

 きっと俺達の勝利だと祝福してくれているのだろう...内容的には負けまくりだったけど...って、もう気にしないって決めたのにまだ考えちまってるな。

 

 俺達がみんなの所にたどり着く頃には、魔力のぶつかり合いは終わっていた。

 ...一抹の不安がよぎる。じいさんはすさまじい魔導士だけど、それはヴァ―リも同じ事だ。しかも、あいつには半減の能力がある。一度でも食らってしまったら敗北は必至だ。

 

 だけど、そんな不安とは裏腹に...じいさんはナツと一緒に俺達の元に現れてくれた。

 

「...じいさん!!」

 

「イッセーか...安心せい。あやつなら仲間が現れて、他の用事があると言って消えてしまったわ...それにしても大変な奴と因縁があるものじゃな。全く...好き勝手暴れおって...老体には堪えるわい」

 

 じいさんが肩をゴキゴキと回す...良く見ると、体中ボロボロで血が出てしまっている。

 恐らく直接殴られたりはしていないんだろうから、これ全部魔力のぶつかった余波だけで出来たものだろう...どんな戦いだったんだよ。

 

「そっか...」

 

「イッセー!お前、すげぇ事になっちまってんじゃねぇか!!大丈夫か!?」

 

「ナツ...はっ、お前もボロボロだろうが」

 

「あ?こんなのかすり傷だっつの!」

 

「はは...流石だな」

 

「まぁな!流石つったらよ...!お前あの鎧すげぇな!!勝負しようぜ!!!」

 

「今は勘弁してくれ...」

 

「んだよ!いっぺん戦ってみたかったんだけどな!」

 

 ナツが小石を蹴って少しいじける。

 どんだけバトルが好きなんだっつの...もう今日一日で一生分の戦いをした気分だぜこっちは。

 

 ──────────────────────

 

 全員集合してから、しばらく...ある程度話も落ち着いた所で自然と俺達の視線はギルドの方に向かってしまう。

 俺達は皆でギルドの残骸を黙って見つめる。

 

「こりゃあまた...派手にやられたのう」

 

 マスターが呟く。

 

「あ、あの...マスター...」

 

 ルーシィが申し訳なさそうに呟く。

 

「んー?おまえもずいぶんと大変な目にあったのう」

 

「私...」

 

「もぅ、そーんな顔しないのルーちゃん!」

 

 横から声が聞こえた。そちらを見ると、シャドウギアの面々が揃っていた。

 

「みんなで力を合わせた大勝利なんだよ?」「まぁ、ギルドは壊れちまったけどな」「そんなのまた建てりゃいいんだよ」「ウイ」

 

「レビィちゃん、リーダス、ジェット、ドロイ...」

 

「話は聞いたよ...でも、誰もルーちゃんのせいだなんて思ってないよ?」

 

「違...でも...」

 

「ルーシィ」

 

 じいさんが声をかける。

 

「ギルドとは...楽しい事や、悲しい事を、全てとまではいかないがある程度共有できる仲間の事じゃ。一人の幸せは皆の幸せ、一人の怒りは皆の怒り、一人の涙は皆の涙...君にはみんなの心が届いているハズじゃ。君のすぐ傍にはたくさんの仲間が居る...君は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員なのだから」

 

「マス...タァ...みんな...!!ぐす、ひぐ...!はい!...はい!!」

 

 ルーシィが俺の胸に顔を埋めて泣きじゃくる。

 

「イタタ...一応怪我人なんだけどな...」

 

「ひっぐ...!ごめ...うぅ...!!」

 

「...冗談だって。さっきのお礼じゃないけど、俺の胸なんかで良かったらいくらでも使ってくれ」

 

「う...ん...ぐす!...ひぅ...」

 

 俺はルーシィを軽く抱きしめる。さっき、抱きしめられてすごく安心したから...俺ので足しになるかは分からないけど、少しでも慰めになればいいや。

 

「イッセー...ぐす...」

 

「ん?」

 

「ありがと...!私、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆が...大好き...!」

 

「...俺もだ」

 

「うん...!後、....のことも、.....」

 

「...?」

 

 良く聞こえなかった。でもまぁ、良いか。

 思えばあり得ないくらいに連戦に次ぐ連戦、強敵に次ぐ強敵で無茶苦茶な一日だったけど...こうして大切な仲間を抱きしめられる事に、生きてる事に感謝しないとな。

 

 

 って、あれ...?

 綺麗に心の中で今回の事をまとめようとした瞬間...ふらりと体が揺れて俺の意識は完全に落ちた。

 

 ────────────────────────────────ー

 

「....あえ?」

 

 気が付くと知らない場所に眠っていた。青々しい匂いに包まれている。

 

「....っっ!!」

 

 動こうとすると、全身に痛みが走った。

 

「...起きたかい。すぐに動こうとするんじゃないよ、あんた全身内出血まみれの裂傷まみれだったんだから...ほんと、あんな体でとりあえず生きてられるあたり龍ってのは人の身に宿ってもろくでもないもんだよ」

 

「あんた誰...」

 

「私はポーリュシカ。あんたの治療をしてる...分かったら一切喋るんじゃないよ。これ以上この部屋が人間臭くなったらかなわない」

 

 ...あんたも人間だろうが、と一瞬言いそうになったけど言ったら殺されそうな程の剣呑な雰囲気を感じるので黙っておく。

 

 ふと、ベッドの腰の辺りが不自然に沈んでいるのを感じる...そこを見るとルーシィが眠っていた。

 

「あ...ルーシィ...」

 

「...ふん、そこの小娘か。さっさと出て行けと言ったんだけどね、絶対看病するってうるさくって話を聞きやしないから、無理矢理こき使ってやったよ...ほら、これを飲みな」

 

 俺はおばあさんに無理矢理口の中に薬をぶち込まれる。

 

「ん──っ!!ん──!!!」

 

 苦っっっっが!!!なんだこれ!!!

 

「薬草を煎じた薬だよ...まぁ、あんたらみたいな半人外ならすぐに効果が現れるだろうさ。全く...自分の腕を差し出してまで戦おうだなんて、どれだけあんたらは争うのが好きなんだか...ただでさえ人外なのに、更に外れようってんだから救えない話だね」

 

 それだけ言うとおばあさんは足を振り上げた。

 

「ほら起きな小娘!!!」

 

「あ痛──!!」

 

 ルーシィが思いっきりお尻を蹴られていた。

 

「...あんた!!いきなり蹴るってなぁ!!」

 

「しゃべるんじゃないよ!!!」

 

 スパァンと葉っぱのうちわのようなもので叩かれる...地味に痛い...

 

「イタタ...って、イッセー!?目が覚めたの!!?良かったー!!」

 

 ルーシィが俺に抱き着いてくる。

 

「うぉっ...!!ルーシィ...!?」

 

「ほんと...良かった...あんた体中凄い事になってたんだからね...!?」

 

「うぉおお!!」

 

 今...まさに今俺の体がすごい事になってます...!!ルーシィの胸が俺の胸の中で押しつぶされてすさまじい弾力が...!!!それにルーシィのいい匂いが...!!うぉぉぉ...!!

 

「良かった...本島に良かった...!」

 

 ルーシィが俺の顔のすぐ横で声を震わせていた。

 

「そ、そんなにやばかったんですか...俺」

 

「ふん。普通の人間なら二回は死んでたよ...龍の性質に救われたね。いや、それのせいであそこまでの怪我をしたと見るべきか」

 

 そうなのか...!?それにしてはもうかなり体が回復してる感じがするけど...あの薬そんなに即効性あるのか?

 

「...あんた...腕のキズはどうしたんだい」

 

「腕...?」

 

 見ると、完治こそしていないが塞がりかけのキズがそこにはあった。

 あれ?さっきまでもうちょっとしっかり怪我だった気がしたんだけどな...

 

「す、すごいっすね...ポーリュシカさんの薬」

 

「いや、そんな即効性は...」

 

 え?ポーリュシカさんの薬じゃないんですか?原因不明の治癒って逆に怖いんですけど...

 

「まぁいいか。あんたらの体は人間の常識で当てはめても仕方ないしね」

 

「そ...そっすか...」

 

「さて。怪我の方はもうここで治療しなくても良いだろうね。後はその左手か...」

 

「左手...」

 

 手を見ると、やはり龍の鱗と爪が生えていた。改めて見るとちょっとグロテスクだな...

 

「はっきり言ってそれは自業自得だ。完治は出来ないしさせる気も無い」

 

「....はい。分かってます」

 

「ただまぁ、マカロフの頼みだ。やれることはやってやるが、あまり期待はしない事だね」

 

「じいさんの...はい、お願いします!」

 

 そりゃまぁ、一生付き合っていくつもりはあるけど...それでも人間の手に戻る可能性があるならそうしたい。折角じいさんが言ってくれてるんだしな!

 

「その為には...そこの小娘!あんたにはキリキリ働いてもらうよ」

 

「わ、分かりました...!」

 

「それじゃあこっちに来なさい...あんたにやってもらうことがいくつかある」

 

「はい...!それじゃあ行ってくるね。大丈夫!絶対私がその手、治してみせるから!!」

 

 ルーシィがむん、と気合を入れている。可愛い...

 

「ありがとうルーシィ」

 

「うん!」

 

 ルーシィはポーリュシカさんに連れられて外に出ていった。

 ...ルーシィが必要な作業で、こんなになっちまった腕を治す方法。見当もつかないな。

 

 そんな事を考えていると、外からルーシィの叫び声が聞こえた...え、大丈夫か?

 

 

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