DxD TAIL   作:min-can

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手に入れます、日の出!

「失礼しまぁす♡金髪のメイドさん募集を見て来ましたぁ♡すみませーん、誰かいませんかぁ~?」

 

 ルーシィがエバルー公爵の家の玄関で声をあげている。

 俺達はそれを後ろの木陰から見守っていた。

 

 くそ...もしもルーシィに指一本でも触れてみろ...ソッコーぶん殴ってそのまま本のありかを聞き出してやる...

 

 そんな決意を秘めてルーシィを見守っているとルーシィの横の地面が盛り上がって、巨大な何かが出てきた。

 

「...デカすぎんだろ」

 

 それは、メイドだった。どこまでもデカいメイドだった。

 デカいって何がだって?おっぱいじゃねぇぞ、全部だ...

 

「おえっ!」

 

 滅茶苦茶デカくてゴリラなメイドが現れた。最悪だ...パンツもろ出しじゃねぇか!!イチゴパンツなんか履いてんじゃねぇよ!!!せめて普通の履きやがれ!!!

 

「ご主人様!募集広告を見て来たそうですが」

 

 ゴリラがそう言うと、メイドが出てきた穴から男が現れた。

 

「ボヨヨヨ~ン!!我輩を呼んだかね...ふぅんどれどれ...」

 

 エバルー公爵がルーシィを至近距離でジロジロと見つめている。

 

『Boost!!』

 

 俺は気が付けば赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を起動していた。ナツとハッピーに速攻押さえつけられる。

 

「ぐ...そのまま抑えててくれ...!」

 

「お、おう...」

 

「ほんとイッセーはルーシィが好きだね」

 

 当たり前だろ!!あんなエロ可愛い美少女これから後何人会えるか分かったもんじゃない!!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆はもう玉砕済みだしこれが最後のチャンスかもしれないんだ...!!!

 

 そうこうしているうちにエバルー公爵の吟味は終わったようだ。

 

「要らん!!帰れブス!!」

 

「は....????」

 

『Boost!!』

 

「お、おい!まじで落ち着けって...!!」

 

 ナツが本格的に俺を取り押さえる。

 

「帰んなさいブス!」

 

 ゴリラがルーシィを持ちあげる。

 

「良いか?我輩のように偉~~~~~い男には、美しい娘しか似合わんのだよ」

 

 そう言うと、ゴリラとエバルーが出てきた穴から更に何人かのメイドが出てきた。

 

「まぁご主人様ったら!」「お上手なんだからぁ」「ブスは帰んな!!しっしっ!」

 

 それらはおよそメイド服を着て良いとは思えない冒涜的な容姿だった...

 なんか力が抜けた。

 

 そのままルーシィは放置されてしまった。あ、蹲って震えてる...

 

「ルーシィ!!」

 

 俺はルーシィの元へ駆け寄った。

 

「イッセー...ねぇ、私って...ブスじゃないわよね...」

 

 ルーシィがちょっと涙目になっている。あの野郎...!!

 

「当たり前だろ!!最高に可愛いに決まってる!!」

 

「でも、ブスって...あんなにはっきり、全員に..」

 

「あんなのあいつらの頭がおかしいだけだ!!気にすんな!!少なくとも俺にとっては最高の美少女だ!!」

 

「う、うん...ぐすん。そうよね。私、ちゃんと可愛いわよね!!」

 

「誰に聞いてもそうに決まってる!!あいつらルーシィを泣かせやがって...!!絶対に許さねぇ!!」

 

「...そうよね!あのオヤジ絶対許してやらないんだから!!!」

 

 俺はルーシィに手を差し出し立ち上がらせる。

 

「うし...こうなったら作戦Tしかねぇな!」

 

「TOTSUGEKI!!」

 

 ナツとハッピーもこちらに近づいてくる。

 

「よし...!!いくぞ!!」

 

 ──────────────────────────

 

 さっきまでの勢いはどこへやら、俺達はルーシィの提言で屋敷の最上階の方の窓から侵入する事になった。

 

「なんでこんなコソコソ入らなきゃならねぇんだ?」

 

「言ったでしょ?下手な事すれば軍隊呼ばれて私達犯罪者よ?ばれないように侵入しないといけないの。そこんところちゃんと分かってるんでしょね!イッセー、ナツ!!」

 

「「はい...」」

 

「でもルーシィもさっきイッセーと一緒に怒ってたよね」

 

「えぇ許さないわよ!あんなに好き勝手言われたんだから!!だから本を燃やすついでにあいつの靴とか隠してやるわ!!」

 

「うわ小っさ...」「あい」

 

 ナツとハッピーがドン引きしていた。

 

「いいからさっさと窓開けてよ!時間無いんだから」

 

「あいあい」

 

 ナツが手の熱で窓ガラスを溶かして内側から鍵を開ける。

 

「ここは物置か何かかしら?」

 

「見て見て、ナツ、イッセー」

 

 ハッピーが骸骨を被っていた。

 

「お!似合うぞハッピー!」

 

「そうか?俺はいつものハッピーがいいと思うけど」

 

「あそこから出れそうね...慎重に行くわよ!!」

 

「ねぇルーシィも見てー」

 

「うるさいネコ!!...あんたちょっと外に人がいないか見て来てよ」

 

「えぇ...しょうがないなぁ」

 

 ハッピーが扉を開けて周囲を見回す。

 

「誰も居ないよ」

 

「そ。それじゃあ出発するわよ!」

 

 ルーシィが屈んでハイハイしながら進んでいく。

 お...お...!見えそう...!!ゴリライチゴで腐った目が浄化される...!

 

「見たら絶交だから」

 

 ルーシィがこちらを睨んでくる。

 

「.....はい」

 

 俺は下を向きながら進むことになった。ちくしょう...

 

「おい、こうやって一個一個部屋の中探していくつもりなのか?」

 

「当然!見つからないように任務を遂行するのよ。忍者みたいでカッコいいでしょ?」

 

「に...忍者かぁ!」

 

「忍者と言えば、イッセーの名前って...」

 

 ルーシィがそこまで呟いた所で廊下の床が盛り上がりだした。

 

「侵入者発見!!!」

 

 さっきの冒涜メイド達が現れる。

 

「ハイジョシマス!!」

 

 ゴリラが襲い掛かるが、ナツがマフラーを忍者のようにまき直し、全員蹴り飛ばした。

 

「まだ見つかる訳にはいかんでござるよ、にんにん」「にんにん!」

 

「普通に騒がしいから...」

 

「とりあえずナツが暴れちまったし一旦どっかに隠れようぜ。誰か来るだろうし」

 

「そうね...ここにしましょ!」

 

 ルーシィが適当に選んだ部屋には大量の本が収納されていた。

 

「図らずも目的地に到着したな」

 

「えぇ...それにしても、エバルー公爵って頭悪そうな顔をしてる割には蔵書家なのね。これ全部読んでるとしたらちょっと感心しちゃうかも」

 

「お...俺も本は...!あんまり読まないけど...」

 

「張り合わなくて良いわよ...はぁ、こんな中から一冊を探し出すのはしんどそうね」

 

「とりあえず俺はあっちから...」

 

 そこまでルーシィと話している所で俺は我慢できなくなった。

 

「お前ら騒ぎすぎだろ...!ちょっとはまじめに探せ...って!」

 

「金色の本はっけーん!!」「うぱー!!」

 

 ナツが手に持っている本には日の出の文字が。

 

「おぉ!日の出(デイ・ブレイク)!!」「見つかったー!!」「うっそだろおい!!」「こんなにあっさり見つかっちゃっていいわけ!?」

 

「さて、燃やすか」

 

 ナツが今から炎で燃やそうという所でルーシィが日の出を奪い取る。

 

「ちょっと!これ、作者ケム・ザレオンじゃない!!うっそぉ!あたし大ファンなのよー!!ケム・ザレオンの作品全部読んだはずなのにー!!未発表作って事!!?」

 

「いいから早く燃やそうぜ」

 

「何言ってんの!これは文化遺産よ!!?」

 

「仕事放棄だ!」

 

「うっさい!!それじゃあ燃やしたって事にしといてよ!これはあたしが貰うから!!この世に一冊しか無いって言ってたんだから、これ燃やしちゃったらもう二度と誰も読むことが出来ないのよ!?」

 

「ま、まぁまぁルーシィ落ち着けよ...あんまり騒ぐと...」

 

「なるほどなるほど。貴様らの狙いは日の出(デイ・ブレイク)だったか。泳がせておいて正解だった!!我輩って賢い!」

 

 声のする方を振り向くとエバルーが床から飛び出してきた。

 

「コソ泥共が躍起になって探しているのが何かと思ったらそんなくだらん本だとは...」

 

「えっ!?くだらないならこの本貰っても良いかしら?」

 

「ふん!美人ならともかく、お前のようなブスになぞパンの一かけらだってくれてやらんわ」

 

「なんですって!!」

 

「何でもいい!燃やしちまえばこっちのもんだ。よこせルーシィ」

 

「ダメ!!」

 

「おい!!仕事だぞ!!!」

 

「...!...じゃあ...せめてここで読ませて!イッセー、私を守って!!」

 

「了解!!!」

 

『Boost!!』

 

「えぇい気に食わん!!来い、バニッシュブラザーズ!!」

 

 エバルーが叫ぶと二人の人影が隠し扉から現れた。

 

「ようやく仕事の時間か」「仕事もしないで金だけ貰ってちゃママに叱られちまう」

 

「あ、あの紋章!!傭兵ギルドの南の狼だよ!!」

 

「こんな奴ら雇ってやがったか」

 

「バニッシュブラザーズ!!あの本を奪い返せ!!そして殺してしまえ!!」

 

 俺達が臨戦態勢に入るとルーシィが突然立ち上がった。

 

「ナツ!ちょっと時間を頂戴!この本には何か秘密があるみたいなの!!イッセー私本読んでるから担いで逃げて頂戴!!」

 

「分かった!!」

 

 俺はルーシィをお姫様抱っこする...おぉぉ!!

 不慮の事故だけど片手におっぱいの感触が...!!前回はガッツリ掴んだといえ一瞬で良く感触が分からなかった...!けどなんだこの幸せな感触は...!!これが!これこそがおっぱい!!!

 しかもこんなに近くにルーシィと密着した事無かったからあれだったけど、めちゃくちゃいい匂いがする!!しかもおっぱい以外も柔らかくて軽くて...これが女の子の体なのか...!!!

 

「...あんた後で覚えときなさいよ」

 

 ルーシィが顔を赤らめてこっちを睨んでくる。

 ちょっと怖い!!でも可愛い!!ご馳走様です!!!

 

 俺はいつもより何倍も元気に駆け出した...!!

 

 ────────────────────────────────

 

 現在、エバルーの家の下水道に隠れていた。ルーシィは風詠みの眼鏡という魔法アイテムで速度を上げて本を読んでいる。しかも俺の譲渡の力も使ったので尋常ではない速度で読書が完了した。

 

「まさかこんな秘密があったなんて...」

 

「ほ、ほんなひみふはあっはんは...?」

 

「....ふん!」

 

 ルーシィはそっぽを向く。俺は下水道に到着してルーシィを下した後往復ビンタされて頬が腫れてしまっている。

 でもいいんだ。これ以上ないくらい幸せだったから、これくらい代償なんてことはない。

 

「ボヨヨヨ...風詠みの眼鏡を持ち歩いているとはおぬしもなかなかの読書家よの」

 

「やばっ!」

 

 ルーシィの腕が壁から生えた手に捕まれていた。

 

「さぁ言え、何を見つけた...?」

 

「あぅっ...!痛っ!!」

 

「へめぇ...!!!ルーヒィにさはるんはねぇ!!!!」

 

『Boost!!』

 

 俺は顔を出してきたエバルーの顔面を思いっきり殴りつける。

 

「ぶへぇ!!」

 

「きゃあ!」

 

 エバルーはあまりの衝撃に手を離したようだった。そのまま壁が崩れて全身が露になる。

 

「ルーヒィ!!」

 

 俺はルーシィの手を掴んでエバルーと逆方向に引っ張る。

 

「ふん!!!」

 

「ぶへぇ!!」

 

 俺はもう一度エバルーに近づき、腹を殴りつけて気絶させた。

 

「...さ、流石の手際ね...ちょっとカワイソウかも」

 

「ルーヒィはいひょうふはっはは!!?」

 

 俺はルーシィの両肩を掴んで詰めかける。

 

「何言ってるか分かんないわよ...その...えっと、ごめんね?あんたが悪いとはいえちょっとビンタしすぎたわ...後、助けてくれてありがと」

 

「い...いいんはよ。おれははるかっはんはし」

 

「だからわかんないって...」

 

 ルーシィが水筒の氷を包んだハンカチで俺の頬を拭う。

 

「はい、これでちょっとは腫れも引くでしょ」

 

「むぐぐ...あひはと...」

 

 ハンカチを押し付けてそっぽを向いてしまった。

 

「...まだ、おこってるか?」

 

 倍加した身体能力で少しづつ腫れが引いてきたので会話できるようになってきた。

 

「...も、もう怒ってないわよ。充分仕返しはしたし、助けてもらったからこれでさっぱりチャラ!」

 

「お、おう...」

 

 ルーシィが立ち去ろうとした瞬間、横に何かが居た。

 

「貴様等...この我輩にこんな事をしてただで済むと思うなよ...?開け処女宮の扉!!バルゴ!!!」

 

「嘘!!!!星霊だったの!!?」

 

「もう意識が戻ったのか!!?」

 

「バルゴ!!奴らを殺してしまえ!!!」

 

「承知しました」

 

 ゴリラが地面に潜る。

 

「...ぺっ!ルーシィに手ェ出してみろ!!お前ら一生立ち上がれなくしてやるからな!!!」

 

 俺は頬を腫らしていた内出血を口内を噛み切る事で吐き出した。

 

『Boost!!』

 

 俺はルーシィを片手で抱き寄せる。

 

「悪い!どっから来るか分かんねぇから俺に捕まっててくれ!!」

 

「ちょっと...!」

 

「大丈夫!ルーシィは絶対、俺が守ってみせるから!」

 

「う...うん」

 

 後ろに振動を感じたので俺は飛び上がる。後ろからゴリラが飛び出してきた。

 

「ふごっ!!」

 

 俺はエバルーを踏み台にして更に距離を稼ぐ。

 

「よし、ルーシィはここで待っててくれ!」

 

「待ってよ!私も魔導士なんだから、ちゃんと戦えるわ!」

 

 ルーシィが鍵を構える。

 

「....そうか。じゃあ、やるか!」

 

「えぇ!開け!巨蟹宮の扉...キャンサー!!」

 

「ルーシィ...今日はどんな髪型にするエビ?」

 

 ルーシィが初見の星霊を呼び出す。蟹っぽい美容師が出てきた。

 知ってた。やっぱり星霊に過度な期待をするのはやめた方が良いかもしれない。今の所、牛、ゴリラ、蟹だし...しかも語尾がエビ。

 

「空気読んでくれる!?戦闘よ!!いけるわね?」

 

「当然エビ!」

 

 ゴリラがドスンドスンと巨体を引きずりながら走って来る。

 

「ルーシィはエバルーを!こいつは俺がぶっ倒す!!」

 

『Boost!!』『Explosion!!!!』

 

「了解!!任せて!!」

 

 ルーシィがエバルーの方に走るのを見てゴリラがエバルーを守るように立ちふさがった。

 

「ルーシィの邪魔すんな!!!!」

 

 俺はゴリラへと殴り掛かる。両腕で顔面をガードしてきたが、それを片手で力任せにこじ開けて顎を思いっきり殴りつける。ゴリラはそのまま少し浮かんでから後ろに倒れた。

 良いのが入ったし、これでこいつは戦闘不能のはずだ...!さっきエバルーやれなかったからちょっと自信無いけど!!

 

「ありがとうイッセー!!」

 

 ルーシィがゴリラの体を飛び越えてエバルーに肉薄する。

 ...めちゃくちゃちゃんと動けるんだな...守る守るって余計なお世話だったかもしれない。

 

「おのれ!!我輩の美しいバルゴまで!!!貴様だけは許さん!!」

 

 エバルーが俺の方へと地面を潜って来る。

 

「あんたの相手は私...!!」

 

 ルーシィが鞭を一瞬浮上したエバルーの腕に巻きつけて捕らえる。

 

「ぐ...!ちょこざいな!!」

 

「んん...!!」

 

 ルーシィがエバルーを引っ張るが抵抗が強くてうまく引っ張れないようだ。

 

「俺に任せろ!!」

 

 エバルーの元に駆けつけて思いっきり蹴り飛ばしてやる。

 

「ぐはっ!!」

 

「...!今よキャンサー!!」

 

「エビ...!!」

 

 ルーシィが吹き飛んだエバルーを引っ張って位置を調整し、キャンサーが早業でハサミを入れまくる。

 

「ごはっ!!」

 

 空中で血を吐いたエバルーはそのままルーシィの鞭捌きで地面に叩きつけられた。

 ドゴンと音がした方を向くと白目を向いたエバルーの体から毛という毛がふぁさりと落ちていった。

 

「ふん!これで少しはこいつのキモさもすっきりしたわね」

 

「ルーシィ...!ナイスファイト!!」

 

 俺はルーシィの方に駆け寄って手を掲げる。

 

「ほとんどあんたにやってもらった気もするけど...うん!」

 

 ぱぁんとハイタッチで良い音が鳴った。

 

「流石は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だな!」

 

「ほんと...?私、ちゃんとできてた?」

 

「あぁ!めちゃくちゃ立派に戦えてたぜ!ルーシィも星霊も!!」

 

「......ありがと!」

 

 ルーシィが破顔する。

 

「....っ!!」

 

 俺はつい顔を逸らしてしまった。

 今の笑顔はちょっと可愛すぎる...

 

「な、なによ急に顔逸らして...」

 

「い、いや...ルーシィってかわいいなって」

 

「なっ...!ちょ、ちょっとやめてよ!!急にそういうの!!」

 

 ルーシィがバシンと俺の腕を叩いてくる。

 

「......」

 

「......」

 

 お互い、ちらちらと視線をよこすだけの気まずい時間が流れる...

 なんだこれ...俺こんな気まずい雰囲気になった事無いからどうすれば良いか分からねぇ!

 

「と...とりあえず!こいつらは倒せたしナツ達と合流してその本を渡しに行かないとな!!」

 

 俺は逃げる事にした。うぅ...俺の意気地なし...今の絶対いい雰囲気だったのに!!

 

「そ...そうね!早くカービィさんに伝えなきゃいけない事もあるし!!い、行きましょ!!」

 

「......」

 

「......」

 

 俺達は逃げるように走り出した。

 

 ────────────────────────

 

 その後ナツと無事合流してエバルー邸を後にした。

 結局ナツはバニッシュブラザーズとの戦いで大した傷を負っていないし、ルーシィに叩かれた俺が一番重傷だった。いや、流石にもうモミジが残ってるだけだけど。

 

「イッセーその頬どうしたの?」

 

 ハッピーが聞いてくる。

 

「これか...?名誉の負傷だ!」

 

「何が名誉の負傷よ!!自業自得でしょ?...まったく、ちょっと良いかもって思ったらすぐこれなんだから」

 

「なんて?」

 

「何でもないわよ!!」

 

 ずんずんとルーシィは先を歩いていく。

 

「なんだ?」

 

「まぁ、多分俺が怒らしたからかな...一応仲直りしたはずなんだけど」

 

「ふーん。ま、飯でも食えば機嫌治るだろ!ルーシィだし」

 

「お前の中のルーシィはどうなってんだ...?」

 

 ....それからしばらく、俺達はメロンさんの家に到着した。

 

 ──────────────────────────ー

 

「これは一体、どういうことですかな?」

 

 メロンさんはルーシィの差し出した本に困惑する。

 

「私は焼却して欲しいと伝えたはずですが...」

 

「それだけならカービィさんにだってできるはずですよ」

 

「だったら私が焼却します!こんな本見たくもない!!」

 

 本を掴んだメロンさんにルーシィが語りかける。

 

「あなたがなぜこの本の存在が許せないのかわかりました。父の誇りを守る為です...あなたはケム・ザレオンさんの息子さんですよね」

 

「な、なぜそれを...」

 

「この本を読んだ事は?」

 

「いえ...しかし、父は駄作だとはっきり言っていた。これを書いたことを恥じてすらいたのです。ですから、こんなもの読む必要もありません...」

 

「だからって父ちゃんの本読みもせず燃やすのかよ、あ?」

 

「ちょっと待てってナツ、大丈夫だから」

 

 俺はナツを止める。

 

「そうかもしれません...しかし、私にはどうしてもこの本を消さなければならない理由がある...」

 

 そこからメロンさんの父への思いが語られた。

 

 家族をほっぽり出して何年もくだらない駄作本の仕事に従事していた事への恨み、それを恥じて腕を自ら切断し作家を辞めた心の弱さへの怒り、それらを直接吐きかけてしまった事への悔恨...そして、そのすぐ後に自殺してしまった父への尽きない後悔の念、だからこそ最後にこの本を消し去る事でせめてもの償いを、偉大だった父の名誉が死の原因となったこの本で辱められる事のないように..安らかに眠れるように...

 

「だからこの本は消し去らねばならないのです」

 

 メロンさんが本に火を近づけた瞬間、本は光始めた。

 

「な、なんだこれは!!」

 

「ケム・ザレオン。本名ゼクア・メロンはこの本に魔法をかけたのです...文字の入れ替わる魔法を」

 

 表紙の「DAYBREAK」by KEMU・ZALEONの文字が「DEAR KABY」by ZEKUA・MELONへと入れ替わり、その瞬間本のページが開かれて全ての文字が踊り始めた。まるで夜空に浮かぶ星々のように、きらめく流星のように...駄作を形作った文字達は解放されたようにきらきらと輝いて本来の色と居場所をを取り戻していく。

 

「おぉ!」「きれー」「すっげぇ...」

 

「彼が作家をやめた理由は、最低な本を書いてしまった事の他に...最高の本を書いてしまった事かもしれません。カービィさんへの手紙という最高の本を」

 

「父さん...」

 

 メロンさんが本をパラパラとめくり、涙を流し始めた。

 

「私は...父を理解できていなかったようだ...」

 

「当然です。作家の頭の中が理解出来たら本を読む楽しみが無くなっちゃいますから」

 

「ありがとう...この本は燃やせませんね」

 

 メロンさんは涙を流しながらも幸せそうな顔をしていた。

 

「じゃ、俺達も報酬はいらねーな」「だね!」「えぇ!?」

 

 俺もナツの言葉に俺も頬が緩んでしまった。

 

「俺達は本を燃やすっていう依頼を達成してないしな。結局終わった後もどう考えたって報酬に見合ったクエストじゃなかったし!」

 

「ちょっとイッセーまで!?」

 

「さて、かーえろっ。メロンも帰れよ、自分の家」

 

 ナツはそう言って出て行ってしまった。

 

「ほら、行こうぜルーシィ。今度はちゃんと報酬に見合ったクエストに連れていくからさ!ちゃんと働いてちゃんと稼ごう!」

 

「えぇ...ちょっと...もう!分かったわよ!」

 

 俺達はギルドへの帰路に付いた。

 帰りはもちろん歩きで。急ぐ用事も無いし絶対馬車になんか乗りたくねぇ。

 

 ルーシィも最初は報酬について小言を言っていたけど、最後には笑顔で納得していた。

 

「それにしても、何十年も魔力が消えないなんてすごい魔力だよな」

 

「えぇ、若い頃は魔導士ギルドに居たみたいだからね...そこでの冒険を小説にしたの!憧れちゃうなぁ」

 

 そう語るルーシィの瞳はきらきらと輝いていた。ケム・ザレオンの事が本当に好きなんだろうな。

 

「やっぱりなぁ」

 

 ナツが急にいやらしい顔になった。

 

「何か気付いたのか?」

 

「おう、この前ルーシィの家に遊びに行ったときに俺達から隠した紙束があってよ」

 

「ちょ、ちょっと!!!」

 

「あれ、自分で書いた小説なんだろ!」

 

「やたら本の事に詳しいわけだー!」

 

「えぇ!そうなのか!!?」

 

 ルーシィはどんどん顔が赤くなっていく。

 

「ぜ...絶対他の人には言わないでよ!!」

 

「なんで?」

 

「まだ下手糞なの!!」

 

「いや、誰も読まねぇから」

 

「それはそれでちょっぴり悲しい!!」

 

「はいはい!!俺読みたい!!」

 

「っ...!イッセーはダメ!!イッセーだけは一番ダメ!!!」

 

「んなっ!なんで...!」

 

「恥ずかしいから!!」

 

「なんだよまだ喧嘩してんのか?」

 

「そんなんじゃないわよ...もう」

 

 ルーシィは俺を追い越してこっちに振り返る。

 

「ちゃんと自信作が出来たら見せてあげるわよ...だから、それまではおあずけ!」

 

「...絶対だからな!」

 

「うん!」

 

「俺はいいわ」「あい」

 

「言われなくてもあんた達には絶対見せないわよ...!」

 

 そうして俺達の帰路は楽しく続いていった。

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