明朝、霊夢と魔理沙は静かな幻想郷の空を箒で駆けている。
「例の外来人は博麗神社に向かってるらしい! 急いで魔理沙!」
「十分急いでる! ここからだとあと一分で着く算段だ」
霊夢は下を向く。しかしそこには瓦礫の山と、多くの人の死体が見えるだけだった。
「いったいどれほど破壊されたんだろう……紫はもう、幻想郷の3/4は壊滅したって言ってた。それだけ破壊されてれば、あいつを倒して済む話なのかもわからない」
「余計な事は考えるな、お前は敵を倒すことだけ考えてろ。巫女の意地、見せるんじゃなかったのか」
「……分かってる。未来のことは、今を乗り越えた後で考えれば良い。私に出来る事は、幻想郷を壊したアイツをぶちのめすだけ――」
突如、二人の乗る箒が高熱を帯びる。魔理沙は霊夢を突き落とし、その直後に彼女は箒もろとも大爆発に巻き込まれてしまう。
「魔理沙!!」
霊夢は空中で体勢を立て直し、周囲をぐるっと一周飛んで魔理沙の行方を確認する。しかし次の瞬間霊夢の身体は内部から爆発し、彼女は力なく胸から地面に激突してしまう。
全身に焼けるような痛みを感じながらも、手を突いて立ち上がる霊夢。そんな彼女の前には、ある男が立っていた。
「……まさか、霖之助さん? なんで、こんなこと……」
「霖之助? ああ、この身体の持ち主か。残念だが俺は違う」
男の周囲には邪悪なオーラが立ちこめており、霊夢はここで初めて男が自分の知る存在では無くなっている事に気づく。
「誰だお前は! 霖之助さんを返せ!!」
「無理だな。奴の魂は既に俺が取り込んだ、たとえ俺が返す気であっても俺が死なん限り返せんよ」
「だったら力尽くで――」
男が指を鳴らすと、霊夢の身体は再び爆発する。彼女の血は周囲に飛び散り、肉体が穴だらけになってしまう。ついに口も利けなくなった彼女は、今度は顔から地面に倒れる。
「冥土の土産に俺の名を持っていけ。俺はミシェル・ノストラダムス、恐怖の大王だ」
男はしゃがんで霊夢の身体に触れ、手の甲に魔方陣を顕出させる。
「じゃあな楽園の巫女。安心しろ、この寂れた土地は俺が上手いこと人類抹消の為の土地として有効活用してやるからよ――」
次の瞬間、男の周囲に16枚の赤い札が出現する。それらは一斉に男の体内に入り、赤い鎖となって男の全身に絡みつき動きを封じた。
「これは……夢想封印? まさかスペルカードを使うだけの余力が残っていたとはな」
「違う。振り向けノストラダムス、お前にとって不倶戴天の敵がそこにいるぞ」
男が振り返ると、そこには緑髪の少女がいた。少女の姿を見た男は血相を変え、少女を睨み付ける。
(あいつ……リグル? でもリグルはコートなんか着ないはずだし、なによりあいつ――)
少女には触覚が無く、前髪がカラフルに染まっていて――右手首に、変な機械が着いている。少女は辺りを見渡し、溜息をつく。
「ギリギリ、って感じだね。でも全てが終わる前に間に合って良かった、まだ取り返しが付く」
少女は機械のボタンに触れ、蓋を開いてテンキーを出現させる。
「篝由良再始動記念だ。潔く犠牲になって貰おうか、ノストラダムス」