「犠牲にだと? フフ、ハハハハハ!!!」
「今のお前に、そうなる以外の未来があるとでも?」
「夢想封印? だかなんだか知らないが、こんな物爆破して仕舞えば良いだけの話だ」
辺り一面にパチンという音が響く。次の瞬間、男の身体が爆音と閃光を伴って爆発する。ごうごうと立ち上る煙が晴れると、そこには全身がボロボロになり血を吐く男が居た。
「驚いたな。夢想封印で紡がれる鎖はエネルギー体、本来はお前の「指さした物を爆弾にする能力」は作動しないはずなんだけど」
「何でお前がそれを――」
「まあ、色々あってね。でも、死人には関係無いことでしょ」
「貴様!!」
男は少女を指さす。それから中指を親指を合わせて鳴らすも、何も起らなかった。絶望の表情を浮かべる男に、少女は顔を近づけて言う。
「無駄だ、お前の「歴史に穴を開けて存在を消す」力も通じない。私が歩んできた私の歴史は今――無かったことになっているしな」
少女は黒い両手剣を出現させ、思いっきり振り上げたのち男の身体を袈裟斬りにする。おびただしい量の血を拭きだして男は倒れ、少女はその返り血をジャケットとシャツに大量に浴びてしまう。
「うわっ、これ一着しかないのに……」
ガッカリした様子で服をつまむ少女。その様子を、霊夢は呆然とした様子で見つめていた。
視線を感じた少女は霊夢の方を向き、倒れている彼女に駆け寄る。
「酷い傷だ。前と違って手酷くやられている……傷を塞ぐ、ちょっと痛いだろうけど我慢して!」
少女は霊夢の背中に手を当て、手の甲に魔方陣を展開する。少女の手が触れている箇所は緑色の淡い光を放っており、やがてその光は全身を覆い傷口をみるみる内に塞いでいく。
「貴女、何者?」
「篝由良、しがないタイムトラベラーさ。ごめんね、さっきは君の十八番を無断で使ってしまって」
「何で使えるのよ。他者のスペルカードはたとえ手に入れたとして使えないはず」
「この特殊な装置のお陰だね。私はこの世界にいるあらゆる能力者の能力・スペルカードを使用できる」
「……何それ、イカれすぎでしょ」
「いいや? 能力やスペルカードの種類を切り替えるのは手間が掛かるから、せいぜい戦闘中に使えるの2、3人の物くらい。そう考えると程よい塩梅じゃない?」
「知らない。私は他の誰かのスペルカード使えないし」
篝が手を離すと、霊夢はすぐに立ち上がる。霊夢の服も身体もすっかり元通りになっており、彼女はそれを全身をくまなく観察して確認する。
「あなた、魔理沙の行方を知らない?」
「君の少し後ろにいるよ。息はあるけど……少し危ういかも」
「治せる?」
「もちろん今すぐ治す。ただ彼女の場合骨もかなり逝ってそうだから時間かかるかも、どこか安全な場所で治療に専念したいな」
「ならウチの神社に来なさい。どうせ私も一度帰る必要があった、帰宅ついでに案内してあげる」
「ありがとう! じゃあ彼女は私が運――」
「要らない、私が運ぶ。情けない姿を一杯見せたんだ、少しくらい威張れる様なことさせて欲しい」
「……わかった」
魔理沙を担ぎ上げて背を向ける霊夢。篝は彼女の二歩後ろに立ってその背中を追う。その静寂の中で、篝は密かに考えていた。
――これから原住民から自分に向けられるであろう、謂れの無い怒りをどういなすか。
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