私は人知を越えるモノに『異世界戻りの既婚TSおっさんがその妻から緑色の紙を叩きつけられるRTA』をやらされているに違いない   作:劇団おこめ座

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美少女おっさんと変態エルフのジョブチェンジ

 ハクラクを現代日本で飼いならすだけでは、エルフの里の長エリンは納得しないだろう。一応留学だ。生活だけでなく、学業や経済を学びエルフの里に還元してもらいたい。

 とりあえず、社会勉強のためコンビニでアルバイトさせてみようか、と思ったが、妻からストップがかかった。

 

「防犯カメラがあるからやめましょう。コンビニでは帽子を被って仕事できないでしょう」

 

「何か問題があるのか?」

 

「カメラなどの機械は幻術を誤魔化せません。映像として見たら、普通にエルフが働いていることに気づかれます」

 

 普段から妻が外出の時に帽子を被っていたり、昔から携帯電話のカメラを向けると嫌がって写ろうとしない変な癖があることに疑問に思っていたが、そういうことだったのか。

 そこで、私はハッとした。

 

「じゃあ、周囲に私のことばれてんじゃね?」

 

「一部の人には怪異として思われているでしょうね。幻術で作り上げた40代のあなたが写るはずのところを、本来のピンク色の頭髪の少女としてカメラに映るんですから」

 

「うわ、確かにそりゃあ怪異だわ」

 

 例えば、警備員さんが防犯カメラをじっと見ていて、すぐそばを美少女が通ると思って見ていたら、40代の冴えなさそうな人生に疲れたおっさんが通過してくるんだ。自分の心の病気を気にするね。

 あれ、そういえば、出社する時に同じ年代の警備員さんが蒼白な顔をしているのって私のせいなんじゃないだろうか。今度から魔力で飛び跳ねて屋上階から出社しよう。

 

「常に帽子を被っている仕事なら……配達業ならどうでしょうか」

 

「車の運転ができないし、仮にできるようになっても、運転免許証をどうやって入手するか……昔だったら戸籍もアナログだったからいくらでも誤魔化せたのに、今だと洗脳して作り上げたとしても、いつかばれるかも……」

 

 平然と妻が犯罪の臭いを漂わせる言動の数々をしゃべり始める。私は、聞こえない、見えない、知らないと心の中で呟き、それについて深く考えることはやめた。

 

「危ない橋を渡らない方がいいか……」

 

「ふーん、仕事に就クのも大変なんですかー でも、エルフの姿で居てもみんな普通に接シてクれましたヨ 写真?もたくさん一緒に撮りまシた」

 

「まじで?」

 

「秋葉原とか中野とか池袋。特に池袋では色んな女性の方が一緒に写真を撮ってクれまシた」

 

「それ、東京の3大オタク街……コスプレだと思われてる」

 

 日本に最初に来た時、来るのしばらく遅いなあと思っていたが、オタク街巡りしていたのかよ。

 その出たちから、きっと、コアな外国人のコスプレーヤーだと思われたのだろう。

 その本当の姿は三食が触手でも構わない、というか三食触手におやつも触手がいいと思っている変態エルフだ。

 

 おもむろに変態エルフのハクラクは私のパソコンを立ち上げて、youtubeの画面を立ち上げた。

 

「それでね、youtuberなら稼げると思ってチャンネル作りまシた」

 

 ハクラクはどや顔を作って私たちにパソコンにつながったモニターを見せた。

 ちょ、おま、幼稚園児や小学生の将来の夢のような仕事をマジで始めようとか……でも、サイトはこの短期間でしっかりと作り込まれている。こいつ、まじで収益化まで考えて動いている?

 

「エルフが魔法を使っちゃいまシた、とか流せばみんな魔法見たことないから視聴数爆上がりでショ」

 

「ダメです。他のアニメ化した漫画に似たような話があるからだめです」

 

 訴訟起こされたら大変なんだぞ。いや、そんなに目の敵にはされないと思うけど、大人の事情は非情になることが多いのだ。

 

「いや、そういうことじゃなくて、魔法はダメでしょ。目をつけられる」

 

 妻の言う通りだ。魔法なんて特異なものは、何者かに目をつけられて、利用されるような気がする。ずっと、後ろを付けられて家を特定されて、脅迫されて魔法を使わされ続ける毎日だ。

 政府に狙われたり、隣国の政府にさらわれたり……まあ面倒なことになることにまちがいない。

 

「兄さん、魔法使えるだなんて、魔法の使えない人ばかりの世界では合成映像だって言われて飽きられるのが落ちよ。それにね……そんな簡単にユーチューバーで収益化なんてできるわけないでしょ。思い付きで魔法を使って人を魅せたからって、誰も長く見てくれないわ。古今長生きしているユーチューバーは得意分野、特にね好きなことを語って、多くの人たちを魅せているの。つまりね……兄さん」

 

 妻は机をドンと叩いた。

  

「好きなことを語れよ」

 

 

 

 おい、どっかで聞いたようなセリフだな、と思ってハクラクの方を見ると、ハクラクは強い稲妻が全身に走ったかのように顔をキリっとしまらせた。現代日本で緩みに緩んだ顔をが嘘のようだった。

 ハクラクはサイト画面をすぐに内容を変え始めた。

 それを見た妻は

 

「きっと、兄さんなら大丈夫よ」

 

と野球で応援しているチームの勝ち試合が決まったので『もう見るまでもない』とテレビから離れていくようなちょっと格好いい人に見えた。そりゃあ、妻にとっては自慢の兄貴だ。超優秀で、長の側で働いていた凄腕だ。15歳で巨大アリを叩ききる異世界の主人公みたいなやつだ。

 私も安心してその場から離れた。

 

 1週間後、彼の最初の動画がアップロードされた。

 平成中期のオタクファッションで体を包んだ、エルフの美丈夫がゴリゴリのエロ触手同人誌をページを画面に表示させながら、熱く語っていた。著作権などについては作者から許可が下りているらしい。どうやら東京で一緒に写真を撮った仲で、快く許可してくれたそうだ。

 初めての投稿からかなりの視聴数を得たのだが、当然、見せているページが全て触手が暴れん坊化して性欲を持て余す画像であったので、動画どころかアカウントがBANされた。

 

「好きなことを話シてお金を稼ぐだなんて、虫がヨすぎたのか……ナウシカの王蟲の触手は日本固有の遺産だと語っただけなのに」

 

 ハクラクがBANされた画面を見ながら落ち込んでいた。でもね、お前のやったダメなこと、エロ載せちゃいけないっていう社会一般的な規約違反だからな。

 

 

 

 そういうわけで、私が在宅ワーク状態なのをいいことにプログラミングを教えている。いつか、魔法とプログラミングの間に何らかの共通点を見つけて、エルフの里で役立ててもらおう。

 まあ、将来的に仕事を手伝ってもらおうと思いプログラミングの勉強をしてもらっているが、意外と面白いみたいではまりつつある。

 あと、結局、ハクラクは自称エルフの似非魔法使いyoutuberとしてデビューした。真顔で魔法です、とエルフが謳いながら魔法をぶっ放しているのだが、説明文で、フィクションですと断り書きを入れている。

 その界隈では謎の技術による合成動画ということで、映画関係者から注目され、評価されている。




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