私は人知を越えるモノに『異世界戻りの既婚TSおっさんがその妻から緑色の紙を叩きつけられるRTA』をやらされているに違いない 作:劇団おこめ座
しばらくTS成分はありません。
おっさんとイケメン成分をお楽しみください。
迷宮都市エルフィンランドは、堅牢な門と壁に囲まれており、中は領主の住む館、商業区、居住区、ダンジョン区画に分かれている。
領主の住む館は当然、迷宮都市エルフィンランドの当主のグアテラ子爵やその家族等が住んでいる場所で、その中の居住区以外のところで迷宮都市の運営などを行っている。
商業区、居住区は読んで字のごとく、その都市の商いや住居に特化した区画である。
ダンジョン区画とは、その迷宮都市にあるダンジョンそのものやダンジョンの入退場や戦利品の販売、ダンジョンに出入りする者に提供する飲食等の販売をするギルドと呼ばれる労働組合みたいなものがある。
ダンジョンから出る戦利品が迷宮都市エルフィンランドの主要な産業である。
迷宮都市エルフィンランドの人口は9割方が人間であり、残りの1割の中に犬や猫の耳等を持った人間、亜人やエルフがいる。
エルフィンランドは、近くにエルフの里があるから、という意味の他に、グアテラ子爵の妻アメジとの関係を周りに示したものとも言われている。アメジはエルフの里から下りたエルフの女性だ。妻でさえエルフである親エルフ派のグアテラ子爵の領内では、エルフの殺人や略取誘拐は罪となる。
その中で、エルフたちがこつ然と消えていっている。悩みもなく、周囲との人間関係に困っていなく、金にも困っていなく、しばらく街に滞在している者までが消えている。
ここ数年、アメジからの便りもない。便りがないことは良いことだと解していたが事態は急変している。
調査をさせていたエルフが持ってきた情報では、親エルフ派のグアテラ子爵そのものが何かを噛んでいるようだ。
エルフ達がどこに行ったのか、そしてエルフの里に脅威のある現象なのか早急に確認することが任務である。
エルフィンランドのどら焼きは日持ちもするし、美味しいそうだ。
調査費用は多めに渡している。
意味はわかるな?
エリン
エルフの森と人間の領域となる草原の狭間で、私は切り株の上に座ってエルフの言葉で書かれたエリンの手紙を読み終えた。
どら焼きあるんだ。
私も異世界転移したのだから、他の日本人も異世界転移しているのかもしれない。
つまり、これは、『異世界で現代の料理をギフトを使って無双しちゃいました、そしてなぜかみんなに愛されます♪』系の奴が広めたんだろう。
こっちは、申し訳程度の言語チートしかなく、MP0でくそゲロ不味い魔力草を食いながら歯を食いしばってエルフ達に虐げられて生きているのに。
いつかそいつの口の中に程よく新鮮な魔力草を口いっぱいに詰め込んで失神させてやりたい。
まあ、そんなことは半分くらいどうでもいいのだ。
エルフの里唯一の人間である私がエルフィンランドの調査に出るのはまあ必然になることだった。
半分奴隷のような扱いをされている私を、平然とエルフの里に出すというのもおかしな話だ。もしかしたエルフの里の情報を流そうとするんじゃないか、ということも考えられるはずだ。でもまあ、長のエリンは私はそういうやつではないと評価したのだろう。
「どうしたんだ? 母……長からの手紙に何かおかしなことでもあったのか?」
それに側にはハクラクがいる。
表向きは監視ということになっているが、長エリンによる強力な助っ人である。ハクラクはとんでもなく強いチートキャラクターだ。
大型モンスターも真っ二つに出来る剣の使い手で、さらには各種魔法も使いこなしてしまう万能チートキャラクターなのだ。お前、チーレム異世界転生した存在だろ?、と思わず聞きたくなる時もあるが、性格がマジ神、マジイケメン。このころは特に言うことなしのレベルである。
日本に来た頃には、触手に目覚めたヤバい人になっているけど、性格はいい人なんだ。性癖だけ問題なんだ。
「とりあえず、これから私は認識阻害の効果のある指輪をつけて行く。人間に見えるそうだ」
そう言って私に、変哲もないシルバーの指輪を見せた。
「ハクラクなら幻術で誤魔化せるだろう?」
その言葉を聞いてハクラクは首を振る。
「常時幻術を維持できるのは適性の高いスズキ殿だとかでなければ難しい。また、幻術を解除することも容易な術師や、透視効果のある魔眼であれば簡単にばれてしまう。この指輪は実は母上の集めた数少ないアーティファクトの一つで、簡単に見破られるものではないそうだ」
アーティファクトってなんか響きがロマンを感じる。
「その、アーティファクトってなんなんだ?」
「ダンジョンなどから産出されたりする魔法のアイテムや装備の中でも特に効果の高い物と言えばいいのかな。ちなみに、この指輪一つの価値は、そなたのホテル馬小屋が一気にホテルエルフの里に建て変わるくらいの価値がある」
日本にある1万円くらいの価値しかなさそうなシルバー製の指輪に見える物が、そんなに価値があるものだとは、とマジマジと見つめる。というか、ハクラク、私の
なお、ハクラクがその指輪をつけると、耳が人間の耳になったくらいで他に変化はなかった。
迷宮エルフィンランドを囲う塀と門をくぐる。ハクラクはスルーされて、私だけボディーチェックされた。見た目の良さはやはり正義らしい。ファック。
ボディーチェックをされた後、私たちは難なくエルフィンランド内へたどり着き、ダンジョンの代行管理が任されている施設、通称『ギルド』に赴いた。
ギルドの中は革の鎧を着てほほにや額に切り傷をつけた厳つい戦士や全身に金属鎧をつけた西洋の騎士見たいな格好をしたやつ、とんがり帽子を被った尻上がりに『うぃっち』と呼ばせたさそうな胸のデカい若い魔女、白いフードなどを着こんだはぐれの聖職者みたいなやつ、手を開いて空いた指と指の間にナイフを刺して遊んでいる小柄で猫背の男たち、そんな奴らがテーブルについて昼間っから酒を飲んでいた。
一瞬こちらを向いたが、興味を持った者はいなく、またゲラゲラと仲間と酒を飲み始めた。
初めてのギルドで絡まれるイベントはこの世界ではメジャーではないらしい。
「冒険者のふりをして、ダンジョンに潜りつつ、休息日に街の噂を聞きつつ、子爵の情報を得るか……」
ハクラクの小声を聞いて、受付と書かれたスペースに向かう。そこには美人の受付嬢がいて、というそういうフィクションの流れではなく、そこらで酒を飲んでいる冒険者というのか、そういうやつらよりも明らかに怖いおっさんが座っていた。
スキンヘッドで顔の表情筋肉すら鍛えているんじゃないかというくらい盛り上がった筋肉、顔の至る所、頭頂部にも切り傷や打撲痕、腕をつなぎ合わせたような傷に、口はえぐり切られたようにほほのところまで割かれ、その治療のために縫合して何とか人間として見えるように処置された痕がある。
戦士として戦い、戦争で捕まり拷問を受けて命からがら逃げだして、ギルドで働けるくらい色んな仕事を手広くやって信頼を得て、というような生活をしてきたんだなと勝手に想像した。
「なんだ、依頼か?」
「いや、仕事を探していてね。この街は初めてなんだ」
「左にあるクエストボードに張り付けられているやつが仕事だ。あと、常時依頼されているのは魔物の討伐と素材や食用になる魔物の買い取りはさらに奥のクエストボードに書いている」
「助かる」
ハクラクは手慣れた感じで、ヤクザよりも怖そうなおっさんとあっさり会話をして、クエストボードの側に進んだ。
私もそれに従いハクラクの横に並ぶ。
クエストボードには、昔懐かしいタイラントボアやラッキーラビットの討伐及び確保の依頼や、聞いたこともない魔物やダンジョン内に住まう出現するゴブリンやオークの間引きを依頼するもの、薬草となる野草の納品、そもそも薬を作成しての納品等が多種多様に書かれていた。
「ダンジョン目当てに来たという名目で行動しよう。街の外のモンスターは大体他のギルドでも被る。あえてここに来た理由にはならないからダンジョンに関連する依頼を中心にこなそう」
ハクラクはそう私にぎりぎり聞こえる程度の音量で言いながら、紙を取り出し、討伐対象となるモンスターやダンジョンで入手してほしいとされているアイテム等を記載し、受付に戻る。
「宿屋を紹介してもらいたい」
ハクラクの顔を一瞥した怖そうなおっさんは右手の掌を出した。
そこにハクラクは銀貨1枚を渡した。なるほど、情報料を取るんだな。
「宿屋ならエルフィンランドに腐るほどある。ダンジョン目当ての冒険者が大量に外から来るからな。狩る予定の魔物はなんだ」
「とりあえず、オークを狙おうかと」
「それくらいの層なら、アナグマ亭がいい。部屋は個室だし鍵もある。金は少々かかるが、オークを狩るなら1日程度潜っただけでその宿なら1週間程度泊まれる程度は稼げる」
強面のおっさんは親切にいろいろ教えてくれた。ギルドで働き、情報料を受け取る以上は、あしらうような仕事はしない。そりゃそうだ、冒険者に仕事をして稼いでもらえれば、座っているだけでお金が落ちてくることになる。初対面の冒険者に無駄に冷遇する必要なんてどこにもない。
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