私は人知を越えるモノに『異世界戻りの既婚TSおっさんがその妻から緑色の紙を叩きつけられるRTA』をやらされているに違いない   作:劇団おこめ座

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美少女おっさんと迷宮都市エルフィンランド 3

 ダンジョン区画の中にあるアナグマ亭へたどり着く。

 2階建ての木製の建物で、看板は丸く崩した文字で『アナグマ亭』と書かれていた。

 入ってすぐの受付には17歳くらいの茶髪、茶色い瞳の若い女性が立っていた。ハクラクを見てぽわーんとしていた。このイケメンめ!

 

「1泊、食事付きで泊まりたい。明日、チェックアウト後にダンジョンに潜るので昼食用の弁当を作ってほしい」

 

「……え、あ……はい! お部屋は2部屋でよろしいですか?」

 

「いや、2人部屋にしてくれ」

 

「えっ……」

 

 急に受付の女性は私とイケメンハクラクをちらちらと交互に見ながら赤くなっていた顔がさらに赤くなっていく。今にも頭の上に蒸気が上がりそうだ。

 一体どんな妄想をしているんだ。

 というか、この世界の人間側の常識って男二人で同じ部屋に泊まるってそういう意味なの?

 

 通された部屋は妙に小綺麗でまさに活けられたばかりの花が花瓶に刺されていて、ダブルベッドが設置されていた。さらには芳香剤、というか香水のようなもののような匂いもあり、冒険者家業の男二人が泊まるような部屋じゃない気がした。そういう趣向の人もいると思うが、大多数は違うと思うし、いきなり通される部屋とは思えない。

 そもそも、準備周到過ぎないか?

 しばらく、私は思案し、受付の女性に

 

「予約した人と間違えていませんか?」

 

と話をしたところ、やはり間違いだったらしく、別の普通の2人部屋に移された。

 先ほどの部屋は予約必須の大人のお部屋で、チェックインの予定時間に訪れ、ハクラクのイケメンぐらいに気が動転していたものだから勘違いしたらしい。予約者の名前くらい確認した方がいいんじゃないかと心配になった。

 

 翌日、お弁当を受け取って、早速ダンジョンに潜った。

 ダンジョンはいわゆる洞窟系のダンジョンであった。明かりとして、ハクラクが小さな火を5歩程度前とすぐそばに浮かび上がらせていた。その方が安全だかららしい。

 なお、1層は異世界系フィクションの王道、ゴブリンたちの巣窟だ。なめてかかると、ゴブリンの卑劣な罠にはめ殺しされて、尻の穴を何かではめられるかもしれないし、ただ食べられるだけかもしれない。とりあえず、ハクラクは女性用の薄い本の刑にされかねない。

 幻術でゴブリンたちに気づかれないように暗殺チックに殺していった。

 3層に進むと、薄くて情熱で熱くなる本の有名筆頭男優のオークさんが現れた。日本に戻ったころの美少女姿になった私が無防備に近くを歩けば、18禁ものまっしぐらになること間違いないやつだ。でも安心してください。このころのエルフの里にいた私は間違いなくただのおっさんである。薄い本が熱くなる展開はないので全年齢対応なのだ。

 オークは二足歩行の豚で、より人間に近くなった感じだ。身長は2メートルから2.3メートルくらい。ぶよぶよの脂肪が体を守っているそうだが、ハクラクからすればいとも簡単に一刀両断してしまう。

 しかし、調子に乗って大量に殺したり、さらに奥に潜ることはしない。

 ダンジョンは予期せぬ危険がある、ということもあるが、戦果やドロップアイテムによって目立つのは控えるためだ。その他大勢の一員として隠れる必要がある。

 本来の目的はダンジョン探索ではなく、消えたエルフの調査であり、その関係者にグアテラ子爵が既に上がっている。ギルドを隠れ蓑にしながら冒険者やギルド、そして住民たちに私たちを信用させながらポロポロと噂話やさらなる有力情報を引き出させないといけない。

 お金で情報を買うことはできるが、私たちがお金で情報を買ったことはまた誰かにその情報を買われるのだ。お金で解決するわけにもいかないのだ。ましてや、貴族が関わっている以上は、情報を流す側も命が狙われるかもしれないと思うものだ。

 

 オークの討伐証明は左耳だ。倒す度に急いで私はオークの左耳を切り取り、汚いずた袋に放り込んだ。放置しているとオークの体が灰となって消えてしまう。オークの体が消える代わりに、ドロップアイテムが残る。オークのドロップアイテムはオーク肉、特上オーク肉、オークの装備、各種ポーション等がある。

 それらをギルドに持ち込むと、受付のヤクザよりも怖そうなおっさんは

 

「結構多いな」

 

と呟いた。ハクラクは慌てることなく、さも当然そうな雰囲気をまとい

 

「初めて潜ったからちょっと頑張りすぎた。それに調子が良かったからだろう。多分、アナグマ亭の弁当が旨かったからかな」

 

 そう言うと、怖そうなおっさんは不愛想な顔が急に笑顔になり

 

「だろ? あそこの飯は旨いんだ」

 

と得意げにアナグマ亭を褒めたたえ、数分近くアナグマ亭を熱く語った。実はアナグマ亭の関係者じゃないのかなと思ったが、こういう時はあまり深く聞かない方がいい。

 怖そうなおっさんの反応を見る限り、あからさまに倒した数が多い、というわけでもないようだった。平時は今回の8割くらいの倒す数に抑えようとハクラクと話しあった。

 

 ダラダラと過ごす冒険者のように見せるために、1週間はダンジョンに潜らない。

 そもそも、ダンジョンに潜ることが目的ではない。

 エルフの行方とグアテラ子爵の調査だ。

 エルフの里から出た所謂諜報活動的なお仕事をしているエルフ達からの情報を元に、私とハクラクの架空のバックストーリを作り、エルフィンランドの酒場で知らない人間達と何かと理由をつけて混じって酒を一緒に飲んだ。

 

「最近来たばかりだから、いろいろ教えてくれないか?」

 

と言いながら、エールというビールみたいなやつやおつまみを話に行った卓上に積み上げて話をする。すると、大体機嫌が良くなるし、ぺらぺらと自分の自慢話を混ぜながら話してくれた。

 もちろん、よく人を見ながら大丈夫そうなやつかどうかをよく吟味しなければならない。失敗もある。相手になめられたと思われたようで因縁をつけられ時には、こちらは悪気はなかったと言いながらソイツの酒を追加で注文してさっさと離れた。

 とりあえず、友好的なやつを適度に探す。あんまり探し過ぎると、諜報員か何かと疑われるから、誰とも話さないでハクラクと酒を飲み続ける日を半分程度にする。

 なお、ハクラクが比較的数少ない女性冒険者に声をかけると、ころっと女性冒険者は気分よく同席させてくれた。この顔面チート野郎め。まあ、私は妻一筋なのですが、たまに腹立ちますよ。

 女性たちの輪に簡単にはいるハクラクが本当に羨ましいと思い、アナグマ亭で酒を飲みながらハクラクとそのことについて話した。

 

「昔からエルフのお姉さん方で勉強させられたから、何を言えばいいかとか、何をしたらいいかっていうのはなんとなくわかる。ほら、スズキ殿だって奥さんとの生活で何をしてほしいかとか何を渡したら喜ぶとか、わかるだろう?」

 

「まあ、それは妻限定だなぁ」

 

「私の場合はありがたいことに何人もかまってくれたから、こういうことは慣れている。もしかしたら諜報員として育てられていたのかもしれない」

 

「そういうつもりのエルフのお姉さんのお近づきでご指導はちょっと悲しいね」

 

「そうだな。でも、こういうことを想定して指導に当たるつもりで一生懸命かまってくれたのだとしみじみ考えながら思い出せば、尊敬の念しか感じない。……特に一人、とても世話になった方がいた」

 

 ハクラクは遠くを見つめるような感じに、口にまたエールを含んだ。

 

「私からすればたいして年上ではないのだが、スズキ殿から考えれば凄く年上に感じると思う。近所に()()()()()お姉さんなんだ。懐かしいな」

 

 その言い方に私は含みを感じた。基本的にエルフの里から出ないエルフが多いとされている。

 ハクラクはしゃべりすぎたと思ったのか、話題を変える口実みたいに店員に料理と飲み物を追加で注文した。

 飯はまあまあ旨かったのだが、ハクラクのこの話が気になってしまい、あまり味わえなかった。




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