俺の名は高瀬ライト(たかせ らいと)。自分が転生していると知ったのは、小学5年生も終わりのころだ。
母が突然の交通事故で亡くなり、そのショックで、俺は自分が転生者であることに気付いた。
「いや、なんか俺30才で死んだあと、転生してきたっぽくて……」
意味不明な俺の言動に、医者は精神的ショックがーPTSDがーどうのこうのと言っていたが、軽く聞き流した。
30才相当の前世の記憶が今の俺の記憶に重なっていくにつれて、母が死んで悲しいという気持ちが薄れていくのを、なんかちょっと都合がいいな……とどこか他人事のように見ている自分が居た。
我ながら薄情な奴だとは思う。すまん母さん。
母の死から、父は仕事にのめり込み、俺は幼いながらに家計を預かることになったわけだが。……わけだが、じゃないが!?
「いやちょっとこの額は多すぎるでしょ。小学生に2桁万円持たせるのはヤバイって」
その気になれば分割なしで家電すら買えるほどのお金を毎月受け取り、母がやっていた家事を執り行う。
俺は炊事(無洗米や冷凍食品がメインなのは、父さんには悪いけど我慢してほしい)と、洗濯と、掃除と、その他もろもろをこなしつつ、自分の進路について考えるという日々を送っていた。
小学校でやっていたバスケは辞めた。母が死んだショックに加え、家事が忙しいという理由で、必須だった小学校の部活動への加入は免除されていた。
「まあ、部活は辞めたけど、内申点はそこそこ稼いだし、なんとかなるだろ。だって俺、転生者だし」
そして、既に出願を済ませていた市立の受験に挑んだが、そこで盛大にやらかした。
「マジかよ……」
私立の受験問題の最後の1ピース。マークシートの最後の1項目は、なんと一つズレていた。
つまり最悪、全部の答えがズレている可能性もあるということだ。100点弱がキレイに吹き飛んだ瞬間である。
(やらかした……全教科100点を取って悲劇の特待生として私立に入学するという俺の完璧な計画が……。どこでミスった? どこでズレた? クソッ!!)
修正しようにも、大問を解くのに時間を使い過ぎ、残り2分。無慈悲にも時間は経ち……チャイムが鳴る。
「はい。回答をやめてください。答案用紙を回収しまーす」
俺は、呆然としながら、自分がヌルゲーだと思っていた私立に落ちたことを悟ったのだった。
私立の合格発表の会場。俺は憂鬱な気持ちでそこに馳せ参じる。合格者の番号一覧の中に、当然俺の番号は無かった。
やっぱ現実ってクソゲーだわ……。帰って飯作って食ってゲームして寝よ。
そう思って振り向くと、ありえないはずの、見知った顔があった。
いや、どう見ても市川(小学生バージョン)じゃん。市川京太郎とその母じゃん。なんでここにいんの? え? いや俺はお前が私立受けてたことは知ってるけど、それはあくまで漫画の中の話で……。
っていうことはあれか? これ僕ヤバ? 俺、僕の心のヤバイやつの世界にいつのまにか転生してたの? え?
ヤバイ。ヤバイヤバイヤバイ。前世の最推しなんですけど。
俺は、山田と市川が推しだ。男女的な恋愛感情ではなく、2人のエモエモな雰囲気や関係性のファンなのである。
俺は、原作クラッシュしない範囲で、最大限、推しを推していくことを決意した。
そして4月。期待と希望を胸に、俺は目黒区の区立中学校に進学することになったのだった。