「普通は別小(※べつしょう。別の小学校のこと)の奴なら、卒アル開示タイム!となるのかもしれんが、今回は諸事情でパスする」
「パス!?」
僕はそんなことしてもいいのか? いやできるのか!? という表情をする。だが、卒アルでいじられるのを回避できたのは素直に嬉しい。
「今日、市川の家に来たのは他でもない、今後の方針について語るためだ」
「今後の方針……とは?」
……情報処理部の今後の活動とかについてか?
「うちの中学校の公式サイトを見れば分かることではあるが、終業式の後には夏休みが、始業式(夏休みの終わり)のあとには林間学校がある」
「夏休みと……林間学校……」
僕は苦悶の表情を浮かべる。こういう学校行事には滅んでほしい。友達いないと辛いんだよ……。今はイケメン中学生の高瀬がライバルになっているから、もし同じ班になったらギリギリ耐えられるかもしれんが……。
「成績優秀な俺たちのことだ。夏休みの宿題くらいなら、自由研究のような面倒なやつ以外は数日で終わるだろう」
「終わるだろうな……」
「だが終わらない奴らもいる」
「……!?」
まさか!? ガタッ!!
「気付いたか、市川よ。あわよくば家庭教師……あるいは、夏休み中盤の勉強会……という可能性に」
「……!?!?」
「ああ見えて関根(※萌子のこと)は頭がいい。吉田(※にゃあのこと)もまあまあだ。しかし小林(※ばやしこのこと)と山田(※メインヒロインの山田のこと)は、それぞれ女子バスケ部と仕事のモデル業が忙しくて勉強がおろそかになっている」
「……そこで、だ。俺の家のリビングを提供する。勉強を頑張ったらゲームしてもよいという条件で、俺は小林に、市川は山田に勉強を教える計画だ」
「ちょ……なんで……無理……」
ちょっと待ってくれ高瀬……。
なんでそこでいきなり僕が山田担当になるんだ……。
無理っていうか普通にキモがられて「マジキモイ」って言われて死ぬ未来しか見えないんだが……。
「ちょっと待ってくれという気持ちは分かる。まだ俺たちと女子の仲良しグループはLINE交換すらしていない、いわば知人……知人から友達へ、友達から友達以上恋人未満、そして恋人になるにはまだまだ交流が欠かせない。それがこの夏休みというイベントだったというだけのこと」
ご、強引すぎる……。
「次に、なんでという話だが、俺たちは恋バナをし合った仲。お互いの恋を進展させるのに何の躊躇もない。山田だって図書室で宿題をしながら『市川に教えてもらいたいんだけどなー』とか思っているかもしれないだろう」
お、思ってないだろう絶対……。
「そして、無理かもしれないと思っているだろうが、勉強を教えるのがそんなに無理か? 俺たちは成績カースト上位陣! 教えようと思えばいくらでも教えられる頭脳を持っているんじゃないのか? 頭脳は活用してこそだぞ!」
こ、これは正論すぎて反論できない……。
「そして林間学校という学校行事だが……」
「林間学校……」
「これは極めて個人的な見解だが、市川はWiki(※ここではWikipediaのこと)の林間学校のページを読むといいと思う」
「高瀬がそこまで言うなら、まあ、み、見てみるか……」
19世紀中頃のヨーロッパでは、長期休暇中に虚弱児童を自然が豊かな場所へと引率して、そこで数週間の生活を送らせることにより健康の増進を図る処置が活発となった。これはドイツ語でフェリーンコロニー(Ferienkolonie)と呼ばれ、日本語の直訳では「休暇聚落」となる。医学史家の杉浦守邦によれば、このフェリーンコロニーが日本に最初に紹介されたのは1888年(明治21年)のことで、当時、ベルリンに留学中の瀬川昌耆が辻新次宛の書簡で、ドイツの学校衛生事情に関して言及したのが始まりとされる。その後、瀬川や衛生学者の坪井次郎らが貧困家庭の虚弱児を対象とした慈善事業としてフェリーンコロニーを周知するとともに、結核予防の観点から日本への導入を求めた。1910年代初頭には、フェリーンコロニーは「夏季休養団」や「避暑保養所」といった名称でいくつかの小学校で実施されるようになっていった。
1910年代中頃からは、フェリーンコロニーと同時期に日本に紹介されていた「ワルドシューレ(Waldschule)(ドイツ語版)」の訳語である林間学校の呼称が定着した。ワルドシューレは虚弱児を守るため森林に建設された常設型施設で、一般の学校と同様に学科も教える現在の病弱児養護学校のような施設である。当初、ワルドシューレは「森林学校」などと訳されていたが、森林学校では農学校と同様に林学でも教えるように見え混同を招くため、三島通良が言語の「林の内の学校」により近い林間学校の使用を提案し勧めていたものである。この林間学校の語が後にフェリーンコロニーの活動をも指すようになり、広まることと(長いので以下略)
なんだこれ!! なんだこれ!! めちゃくちゃカッコイイに溢れているイベントじゃないか!!!!
「やはり市川……俺の見込んだライバルだな。林間学校の良さを分かってくれたか……」
「うん! 行く! 絶対行く!」
「男と男の約束だぞ、市川!」
その後、僕と高瀬はハイテンションなままLINEを交換した。
ん? あれ? なんか今日、僕は高瀬に流されるままに夏休みと林間学校のフラグを立ててしまったのでは??
そう気付いたのは、高瀬が帰った後の夕食時のことだった。なるほど~後の祭りってのはこういうことかぁ~。くっそ~!!
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