あっという間に日々は過ぎ、終業式(夏休みのはじまり)は明日に迫っていた。
放課後の図書室で、僕はまだ、山田にLINE交換をしてくれと言えていない。
……っていうか言えるわけあるかよーー。相手はあの学園カースト頂点の美少女、山田なんだぞ!! コミュ力に天と地ほどの開きがあるんだぞーー!!
「や、山田は……」
「ん? どうしたの市川」
「山田は、夏休みの宿題、いつごろ終わらせるタイプ?」
「んー。最終日までかかるタイプ、かな」
「そ、そうか」
……は、話が終わってしまった。
「市川はいつごろまでに終わらせるの?」
……つ、続いてた。
「5日あれば……自由研究以外は終わる……」
「5日!!!! すごい!!!!」
「そ、それでなんだが……。早めに宿題を終わらせるために、勉強会を開こうという計画があって……」
「勉強会?」
「高瀬の家に集まって、せ、成績上位陣が……そうじゃない人に勉強を教える……的な……」
……うわあ……今絶対キモイ顔してるぞ自分!! すまん高瀬……山田は誘えそうにない……!!
「え! 市川に教えてもらえるの!?」
……食いついた!?
「ま、まあ……いちど解いた内容なら……教えられんこともない……と、思う」
「行く!! 勉強会行くことにする!!」
「!?」
……めっちゃ食いついてるなオイ!!
「ほ、ほら、最終日より前に宿題が終われば、その分遊ぶ時間が増えるから……」
……そ、そうだよな。宿題が早く終わるなら、大抵の奴はそれで万々歳なんだ。山田も夏休みは遊びに行きたいだろうしな。
「あれ? でもそのころには市川は宿題ぜんぶ終わってるんだよね。市川側にメリットってあるの?」
……くっ。そこに気付いたか。何て言えばいいんだ。山田に勉強を教えられること自体がご褒美ですとかさすがにキモくて言えないぞ。あ、そうだ。
「えっと、予習と復習は大事だ」
「真面目か!!」
「あと、自由研究のネタに困ることがあるから、斬新な発想を期待している」
「え、それって……市川と共同研究ってこと?」
……しまった。絶対キモイと思われた。高瀬……骨は拾ってくれ……ぐはっ(死)
「分かった!! いい案考えておくね!!」
……い、今なら行けるか??
「あの……勉強会の詳細を詰めるために……連絡を取り合う手段が必要で……LINEを……交換できたら……」
……僕にも、自分の顔がキモイことになっている自覚はある。だが、このタイミングを逃せば、一生山田とLINE交換などできん気がする。ここが正念場だ。
「LINE……うん。市川とLINE交換する。……バーコード、出すね」
「あ、うん。いま読み取る」
ぴろん。図書室に通知音が鳴る。
「『きょう』?」
あ、しまった。主に家族連絡用のLINEだから、下の名前のほうを登録してしまっていた。
「市川……京太郎の『きょう』?」
「あ、うん。名前、分かりづらいから変えたほうがいいか?」
「ううん。このままでいいよ。よろしくね、市川」
「山田とLINE交換してしまった……」
その日の夜、ベッドにごろごろと寝転がって、僕はもだえていた。
ぴろん。通知音。
高瀬からだ。
「山田とLINE交換できたか?」
「できた」
「さすが俺のライバル。こっちも小林と関根と吉田に話を通して、勉強会の予定を取り付けたんで報告だ」
「ありがとう」
「高瀬がいなかったら、山田とLINE交換なんてできなかった」
「そうかな?」
「え?」
「俺が山田にLINEを聞いても、たぶん教えてくれなかったんじゃないかな」
「?」
「市川だから、教えてくれたんだと思うぞ」
僕はその意味を考えて……。
そんなわけないと思いながら、また、ベッドの上でごろごろともだえる羽目になったのだった。