僕らはその後、LINEグループ「夏休み勉強会」を作り、調整を行った。
その結果、3日間に渡って勉強会が行われることになった。
とはいえ泊まり込みの合宿形式ではないので、特に親の許可を取る必要は無く、それぞれが図書館に向かうような感覚で高瀬の家に集まり、キリのいいところで帰宅するという形で話は進んでいた。いうまでもないが、学年1位の高瀬が小林を、学年2位の僕が山田を、学年4位の関根が吉田を教えるという形だ。
勉強会の開始は夏休み開始から7日後。山田のモデル業の合間だ。
僕はそれまでになんとかほとんどの夏休みの宿題を終え、高瀬に進捗をLINEで報告していた。
「理科の自由研究以外はだいたい終わった」
「おう、こっちも順調に終わっていってる」
「しかし意外だな。市川が理科の自由研究に手こずるとは」
「いや……なんか話の流れで山田に案出ししてもらうことになってて……」
「ほう?」
「初めての共同作業……か……」
「(ウエディングケーキのスタンプ)」
「そ、そういうのじゃないから!!」
思わず台詞を発した僕に、おねえが「どうしたの? 京ちゃん」と声をかけてくるが、マジでそういうのじゃないからな!!
ただ、僕がお題を考えるとなんかつまらないというか、結果が分かり切ってる自由研究ばっかりでやりがいが無いというか……そういうアレだ。
それに山田を勉強会に誘う口実にしたから、勝手に終わらせちゃったら山田が傷つくだろう……。
そう思いながらリビングのソファに座っていると、山田からLINEが来た。
「自由研究のテーマ、砂糖、とかどうかな?」
「砂糖?」
「ほら、お砂糖って、塩と違って温度によって色々な変化をするでしょ?」
「料理は理科だ! なんて言う人もいるし」
「理科の自由研究のテーマにしてもいいんじゃないかな?」
「たしかに塩の結晶とかをテーマにするより面白いかもな」
「あとはどこで実験するかだが……」
「市川、うちに来ない? キッチン広いよ?」
うん……うん?
ちょっと待て。今、女子(やまだ)の家に誘われてるのか僕は。
「べ、勉強会が終わったら、日時を決めよう」
「分かった! お父さんとお母さんには、うちで自由研究するって言っておくね!」
お父さんとお母さん??
あれぇー?? なんか大事(おおごと)になる予感しかしないんだが????
「楽しみ!」
「まずは勉強会を消化してからな」
「うん」
「市川に教わるのも楽しみにしてる」
きょ、距離感~~~~。僕は赤面する。
最近の山田の距離感はなんだかおかしい。僕のことを市川と呼び捨てにしたり、勉強会に参加したり、LINEを教えてくれたり、自分の家に誘ってきたり。
これはアレだ。完全に、友達……の距離感だよな。
友達の距離感。そうだ。これはたぶん、友達の距離感だ。
山田はたぶん、僕を……フツーに友達だと思っている。
そう思うと、なんだか山田をオカズにシていることが、ちょっと後ろめたく思えてきたりして……。
いや、まあ、そうはいっても、生理現象だし? 勉強会でトイレに駆け込む羽目にならないように、ちょっと……一旦、自分の部屋に戻るとするか……。