セミが鳴いている……高瀬の家に集合時間の30分前に着いてしまった。
って、なんで玄関に山田が立ってるんだ!! 暑いだろう!!
「や、山田も早く着いたのか?」
「あ、市川! うん。少し早く着いちゃって、でも一人で呼び鈴を押すのはちょっと怖くって……誰か来ないかなーと……」
「押せばいいだろう」
押すとピンポーンと音が鳴り、高瀬が出てくる。
「おっ。山田さんと市川のペアか。どうぞ入ってくれ」
「ペ、ペアってなんだよ……」
「二人組という意味だが?」
くっ。高瀬には言い合いで勝てる気がしない……。
「みんなで食べる用に、お菓子持ってきたよ!」
「おー、山田さんありがとう。こっちで用意したみかんジュースとりんごジュースは机の端っこに置いとくね」
ピンポーンと音が鳴り、高瀬が出ると、関根と吉田と小林がぞろぞろと入ってくる。
「どうもー」「ちーっす」「こんにちわー」
「これで全員揃ったな。では勉強会を始めます!」
高瀬の宣言で、リビングで勉強会が始まる。するとさっそく、山田は僕の隣に詰めて座ってくる。
……相変わらず距離感がバグっているな……。この距離感は友達……この距離感は友達……僕は自分に言い聞かせる。
「じゃあ、分からないところ教えてね、市川」
「お、おう。まずは、分からないと先に進めないことが多い、数学からやっていこう」
「ふむふむ」
「具体的にどのへんが分からないか、分かるか?」
「正の数・負の数のところで分からなくなったような気がする……」
「数直線の授業は受けたか?」
「受けたと思うけど、小テストで間違えたりしたんだよね」
「じゃあ、そこの復習からやっていこう。まず負の数というのは――」
僕は山田に教え、高瀬は小林に教える。関根は吉田に教える。たまに関根が「萌もここ分かんなくてー」などと高瀬に質問して、教えてもらったりする場面もあったが、基本的には最初に組んだペアの間で、黙々と勉強は進む。
あらかじめかけておいたキッチンタイマーが55分の時間経過を告げると、高瀬は皆に休憩をうながした。
「気を張りすぎるのもよくないからね。休み時間を15分取るから、お菓子を食べたりジュースを飲んだりしようか」
「あー、私アレルギーでスナック菓子食べられないんだ」
あ、小林はそういう体質なのか……。
「そんなこともあろうかと、切ったフルーツも用意しておいた」
「マジか。高瀬くん気が利くね!」
気が利く……というレベルか? まあ学年1位の高瀬だしな……そういう先回りもできるのか……。
「そういえば、お昼ご飯はどうするの?」
「ピザを頼もうかと思っていたけど、アレルギーの心配があるなら、ご飯炊いて、おかずは手作りしてもいいかな。食材は冷凍庫に用意してあるから、好きに使ってくれ」
「具体的にはどんなおかずがあるんだ?」
吉田が質問すると、
「色々あるが、たとえば俺と市川が作ったハンバーグを冷凍したものとかがあるな。ひき肉と卵と玉ねぎ、パン粉と塩コショウしか使ってないから、そのへんがアレルギーじゃなければ食べられると思うけど……」
げほげほごほ。僕はジュースでむせそうになる。
「マ? イッチ、高瀬くんの家でハンバーグ作るような仲なの!?」
「ま、まあ……たまに手伝うことも……?」
「市川、けっこう家庭的なところあるんだね!」
山田のフォローで、その場はなんとかなったものの、何か僕と高瀬の関係が誤解されたまま、勉強会1日目は進んでいったのだった。
なお余談だが、勉強会終了後のゲームタイムでは、高瀬と僕は格ゲーのデッドオアデッドで2勝2敗1引き分けとなった。後ろにいたギャラリーが少し騒がしかったのは、男同士が格ゲーをしているのを見るのがレアだったからだろうか……。
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