勉強会2日目。
僕は予定の時刻の45分前に高瀬の家の前にやってきた。セミの声がうるさい。
当然だが、山田はまだ来ていない。少しぶらぶらしていると、ちょっと離れたところに車が止まる。ニコニコ顔で車から降りてきたのは山田だった。
「こ、こんにちは」
「こんにちは市川。どうしたの?」
「山田は……モデルしてるんだろ。昨日みたいに玄関先にずっと立ってたら日焼けするだろ」
「もしかして、私を待っててくれたの?」
「ほ、他に誰を待つんだよ……」
驚いた顔をした山田から目をそらす。
な、なんだか今日の僕はとてもキモイ動きをしていないか?? 大丈夫か?? やらかしてないよな??
呼び鈴を押すと玄関から高瀬が出てくる。
「おっ。昨日に引き続き山田さんと市川か。暑かったでしょ。さあ入って入って」
「あ、うん。今日もよろしくね」
「よろしく……」
やめろ高瀬、さりげなく山田の死角でサムズアップをしてくるな。まだそんなに山田ポイントを稼いだわけじゃないんだぞ。
リビングで涼んでいると、高瀬はキッチンでリンゴの皮を剝いていた。
「高瀬、リンゴを剥けるとは器用だな……」
「わ、私もバナナの皮は剥けるよ!」
バナナの皮は誰にでも剥けるだろ……。
そこで、妄想の中の山田がバナナを一口で頬張っているシーンが脳内に流れ――。
「ちょ、ちょっとトイレ借りてくる」
すまん高瀬……あとで消臭剤は使っておくから……男としての尊厳だけは守らせてくれ……。
そんなこんなでリビングに戻ってくると、
「うーっす」「ちーっす」「こんにちわー」
既に関根と吉田と小林がやってきていて……勉強会2日目が始まったのだった。
「そういえばさー」
開始早々、小林が何か言い出す。
「私が高瀬くんを独占しちゃっていいのか?」
「ブッ!!」
関根が飲みかけのジュースを吹きそうになる。吉田がこいつまじかよという顔をする。
「高瀬くんが一番頭いいんだし、なんか私だけずるくないか?」
「ず、ずるくないよ。私も市川を独占しちゃってるし、わかんないことあればその都度聞けばいいんだし」
「それもそっか」
すぐに考えるのをやめてドリルの問題を解くのに戻る小林。
だが、途中で何かに気付いたかのように顔を上げる。
「なんで山田は市川くんのことを呼び捨てにしているんだ?」
「ガホッ!!」
関根が本格的にむせる。吉田がこいつまたかよという困り顔をする。
「え、えっと。図書室で市川がうっかり山田って呼び捨てにしてきて、だったら私も市川って呼ぼうって話になって……」
「ほー。山田から市川くんの話はけっこう聞いてる気がしたけど、それは初耳だなー」
「ほ、他の人の話もしてるでしょ?」
山田が僕の話を仲良し女子グループ内で?? 一体どんな誹謗中傷が……!?
「ほらほら小林さん、問題解く手が止まってるよ」
高瀬が助け舟を出してくれたのを察した僕は、とりあえずこれ以上弄られずに済んだと思い、英語の宿題に目を落とす。山田もうつむいている。
しばらくシャーペンの音だけが響く、無言の時間が流れる。
「あ、そうだ。高瀬くん、小林さんっていうの他人行儀だから小林でいいよ」
「じゃあ俺のことは高瀬でいいよ」
「ちょちょちょ、ちょっと待てーい。お前らはいいんかーい!!」
「なにがだ?」
関根の全力のツッコミが小林の返事によっていなされ、宙を舞う。結局、小林と高瀬も呼び捨てしあうようになって、関根と吉田はなんだか渋い顔をしていた。
そんな事件はあったものの、勉強会2日目は順調に終わった。
本日のゲームは最大8人(今回はCPUは入れずに6人)でバトルロワイヤルするタイプの大乱戦スラッシュシスターズで、早々に脱落した山田が応援に回ってくれたおかげか、僕はコンボを決めまくってギリギリで高瀬に競り勝ったのだった。