相変わらずセミがうるさい。直射日光もヤバイ。
山田もそろそろ高瀬の家に慣れてきたかと思ったが、やっぱり玄関先で緊張して固まってしまうらしい。
僕は物陰から見ていたが、きょろきょろと何かを探す山田を見ていられず、すぐに合流して呼び鈴を押す。高瀬の家の呼び鈴を押すのが、すっかり僕の役目になっているな……。
「いらっしゃい! 山田さんと市川……二人は一緒に来ることが多いね!」
「ふ、二人とも早く着いちゃうから!」
「そうだな。山田は着くの早いよな」
「市川のほうこそ先に着いてるじゃん!」
「ふーん。まあ入って入って」
集合時間から少し遅れて、関根と吉田と小林がやってきて、勉強会3日目が始まる。
山田には、1日目は数学、2日目は英語と国語を教えたから、3日目は理科と社会を教える計画だ。理科と社会は暗記する必要があるものが多いから、暗記が苦手だと自然と苦手科目になりやすい。自分の復習も兼ねて、山田に丁寧に教えていく。
休憩時間。スナックをバリバリと食いながら、山田が話しかけてくる。
「市川の教え方って上手いね! 何かコツとかあるの?」
「コツというほどでもないが、ノートをきちんと取るようにしている」
「具体的には?」
「先生の板書をノートに書き写すときに、何を重点的に教えたいのかをまとめる。シャーペンの色は何色も使いわけたりせず、黒一色だが、頭に点を付けての箇条書き、下線と破線と波線、枠で囲んだりして済ませているかな」
「すごい! 市川は黒いシャーペンだけ使ってるんだ?」
「一般的には、小学生は鉛筆、中学生はシャーペン、高校生以上はボールペンを使うらしい。俺は黒の2Bのシャーペンをメインに使っているな。芯が詰まったときのために同じシャーペンの色違いを持っておくと便利だ」
「あ、そういえば……市川にカッター返してなかった! 確かここに……あった!」
「あ、ありがとう」
ようやく僕のカッターが戻ってきた……。長かったな……。(ほろり)
「じゃあ、今日で予定してた3日間の勉強会は終わりになるけど、皆、帰ってからも夏休みの宿題は自分の力で進めて、なるべく前倒しで終わらせるようにね」
まるおカート大会の後に高瀬が締めると、皆が帰り支度を始める。
「市川、自由研究は、モデルの仕事が無い日にやろうね! 後で日時は連絡するから!」
ちょ! 山田! 今その話はまずい!
「イッチ……もしかして理科の自由研究、杏奈と共同でやるん?」
しまった。一番面倒な関根に情報を知られてしまった。
「あ、案出しは山田のほうが得意だから……」
「私の家のキッチンで、お砂糖の研究するんだよ! あ、アメ作りがしたいわけじゃなくて……ちゃんと温度とか計って発表できるようにまとめるやつね!」
「マ? イッチ、杏奈の家に行くんか……え、まさか二人とももう付き合ってる?」
「付き合ってないよ!」
「付き合ってないが?」
「ハモってるじゃん。付き合ってないのにこの距離感は一体……?」
「はいはい。関根さんもそれくらいにしてあげて。皆、交通安全を意識して帰ってね」
高瀬が割り込んできて、いったんこの話はお開きになった。
だが、僕が山田の家に行くという事実は、関根を通じて全員に周知される形になってしまったのだった。