机を照らす白い光。ここは僕の部屋で、パソコンがある。
自分のスマホをパソコンに接続して、写真や動画データを吸い出す。
動画をちょうどいいタイミングでキャプチャして、画像データにする。
写真として印刷する必要があるファイルを、フォルダに整理する。
それをUSBメモリに入れてコンビニに持っていき、プリントアウトすればいい。
全て自分のパソコンと情報処理部で
これからの社会を生き抜くために必要なパソコン操作の技術だ。
山田は、ずっとそれを尊敬のまなざしで見ている。
繰り返すが、ここは僕の部屋だ。まぎれもなく!! 男子の!! 部屋なんだけどな!!!!
「山田、リビングに居てくれてもよかったんだが……」
「ううん……パソコンを操作してる市川が見たかったから……」
「キモイだけだろ。パソコン操作してニチャつく男なんて」
「なんかハッカーみたいでカッコイイよ?」
「山田、本物のハッカーはマルチディスプレイで画面も黒くて英数字ばっかりでもっとカッコイイんだ……!!」
「そ、そうなんだ……!!」
「ほ、本物のハッカーはアメリカのペンタゴンとかに侵入して国防情報とかを見たりするらしい」
「すごい!」
「でも昔は国際電話の料金がめちゃくちゃ高くて、そのハッカーはハッキング中に破産したらしい」
「それは面白い! ……市川って、面白いね!」
「そ、それほどでもない」
というか、マジでなんで山田はこの部屋に居るんだ。いくら自由研究の続きとはいえ、年頃の男子のベッドに座るとか警戒心無さすぎだろ。僕の隠された殺人衝動を知らないのはしかたないとして、もし万が一押し倒されたらどうするんだ? 身長が高くても女子は女子なんだぞ?
「どうしたの? 市川」
「いや、ちょっと考え事を……」
「ん? ベッドが硬い……なんか本が……?」
ちょ!! それは山田の載っているファッション誌!! 絶対見られちゃいけないやつ!!
僕は山田のほうに全力で身を乗り出し――
――ドン!!
ベッドに両腕をついた僕の下には、山田が、見たことのない表情で、僕を見上げていて。その瞳には、みるみるうちに涙が溜まっていって。
まずい!! ベッドに女子を押し倒して泣かせた!! この状況は流石に言い訳できん!!!!
「ふぇ……市川……?」
僕はすぐに体を離そうとする。世の中にはラッキースケベとかいう概念があるらしいが、こんな状況で喜んでたらただのゴミ人間だ。なんとか僕は起き上がり、言い訳をする。
「ご、ごめん! 悪気はなかった! ちょっと隠してたものがバレそうになってびっくりしちゃって!」
「わ、私こそごめん……いきなり泣き出したりしちゃって……」
「ティ、ティッシュ使っていいから、涙を拭いて……」
そのとき、僕は山田の顔を直視できなくなってしまい、致命的な隙を作ってしまった。
「か、隠してたものって……これ?」
山田の手には、山田が載っているファッション誌の、今月号があった。
あ、終わった……。サヨナラ……。僕の学校生活……。
短い人生だったが、走馬灯が流れる。過去の栄光の小学生時代。私立に落ちて学校が嫌いになった日。でかい山田に目を奪われた入学式。中間試験後、高瀬にライバル宣言されたこと。高瀬の家でゲームしたこと。山田に勉強を教えたこと。山田と自由研究をしたこと。あれ? なんか山田成分多くない?
「……見ててくれてたの?」
山田が、新しい涙をこぼす。
「え?」
「私のお仕事……見ててくれてたんだ……」
「あ、ああ。うん」
「……嬉しい!!」
え?? どういう状況だこれ????
「私ね、習い事たくさんやらせてもらってたんだけどね。やることなすこと全てがダメで……モデルのお仕事以外全部続かなくて……他の子が私よりどんどん上手くなっていっちゃうのがすごく嫌で……いつも泣いてたんだ……」
そ、そうだったのか。
「でも、市川は見ててくれたんだよね? 私のお仕事のこと……」
い、いい方向に誤解されている!! こ、これは行けるのでは!! 誤魔化せるのでは!!!!
「ま、まあな。山田は……その……可愛いし」
さりげなく言った言葉が、クリティカルだったのだとしたら。キューピッドがガチで引き絞った矢が、山田の心臓を貫いたのだとしたら。もしかしたら、そんなことが起こったら。そう思って目を合わせると。
「わ、私、今日は用事があるから帰るね! じ、自由研究は任せた! わ、わははは!」
山田は真っ赤な顔で、泣き笑いながら部屋を飛び出し、そのまますごい勢いで「お邪魔しましたー!!」と叫んで帰っていった。
……ま、不味い。さすがに誤魔化しきれなかったか。山田に、き、嫌われたかもしれん。
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