まだまだ続く夏休み。
バスケ部は男子バスケ部と女子バスケ部に分かれている。
基本となるルールは同じだが、使用するボールの大きさが違うので、練習ではボールが混じらないように注意が必要だ。小学生の時にバスケ部だったから、このへんの知識はある。
とはいえ今の俺はもうバスケから離れている。家事が忙しすぎるから、中学では週一の活動しかない情報処理部に入ったのだ。
それでも、心の中には今もバスケの炎が燃えている。ばやしこを応援できるなら応援したい。
だが、バスケ部の顧問の先生曰く、保護者以外が女子バスケ部の特定の誰かだけ応援・差し入れをするのは、ルール違反とのことだった。そうしないと、よこしまな気持ちで応援に来る男が増えて、応援する際のマナーが守れなくなるためらしい。これは仕方ないよね。
じゃあ財力にまかせて全員にジュースとかを配るのはどうかというと、それは部費でやることなので応援の範囲を超えているということだった。
おまけに俺は保護者でもなく、文字通りの部外者だ。つまり俺は応援にいけない。
中学1年生にして既に新戦力となっている女子バスケ部期待のホープ、ばやしこを応援できないのは辛かったが、できないことを嘆いてもしかたがない。今やれることをするしかない。
俺は早朝にLINEを送る。
「小林、足のサイズはいくつ?」
「なんでそんなこと聞くんだ?」
「俺は女子バスケ部の応援にいけないから、せめて消耗品くらいはプレゼントさせて」
「いいのか?」
「いいよ。一緒に渋谷のバスケショップに行こう」
しばらく返信が止まる。
ばやしこなりに色々と考えているのだろう。
「それってデートじゃないか?」
「デートのお誘いだけど?」
こういうとき、顔面偏差値でごり押しできるイケメンは得だ。
またしばらく返信が止まる。
今度は、関根か誰かに相談しているのかもしれない。
「分かった。行く」
「じゃあ、待ち合わせ場所は10時半にハチ公前で」
そういうことになった。
渋谷にはバスケットボールのショップが多い。ずらりと並ぶバスケシューズは圧巻だ。
バスケと聞いてまず思い浮かぶのはこのバスケシューズだろうが、バスケシューズは中学生からのプレゼントとしてはかなり高額だ。なのでこの線は却下。
あとはマイボールを持っていると練習が捗るが、これもけっこう高いのと、ばやしこは既にマイボールを持っているとのことなので、これも却下。
靴下やサポーターやタオル、ばやしこが持っているバスケシューズの紐の予備。そのへんを買い揃える感じでデートは進む。
「高瀬はなんでそこまで私にやさしくしてくれるんだ?」
「うーん、俺小学校でバスケやめちゃったけど、バスケしてる小林みたいな子がタイプだからかな」
「そうか。なんか照れるなー」
照れてるばやしこもいいな……などと思っていると、
「もしよかったら今度うち来てよ。何かもらってばっかりだと悪いしさー」
俺は思いがけず、ばやしこ宅への突撃許可証を得てしまったのだった。