山田からのLINEが来る。
「明日の夏祭り、行く?」
「行く」
山田には、直接会ってあの日のことを謝ろうと思っていた。
「18時に、模擬店のところで」
「りょ」
てっきり口をきいてくれなくなるかと思ったが、そんなこともなく。LINEでは、いつも通りの、友達の距離感で山田は接してくれている。
「おねえ、明日は夏祭りに行ってくる」
「ん? 彼女とデート?」
「そうだったらよかったんだが……」
ファッション誌でシコっていた奴というレッテルを貼られている自分。心証は最悪だろう。
いや? なら、なんで山田は僕を夏祭りに誘ったんだ?
あれか? イツメン(いつもの仲良し女子メンツ)を集めて僕を公開処刑するつもりだろうか。まさか中学生で社会的に抹殺されることになるとはな……。
「おねえ、骨は拾ってくれ……」
「それ、明日夏祭りに行くやつの台詞か!?」
そして翌日の16時半。うちに浴衣(ゆかた)なんて無いだろうと思っていたら、母さんがなぜか用意してくれていて、着替えさせられた。
「……はい。できたわよ」
「う、うん」
僕は財布とスマホを持って夏祭りに向かう。気分は死刑を執行される前の殺人鬼……といったところか。
フフフ……いつも読んでいた本が実際に役に立つ日が来るとはな……(現実逃避)
そして辿り着いた会場で見たのは、年上の男子数人にナンパされている浴衣姿の山田の姿だった。
「僕は……関係ないよな?」
僕がもう少し早く着いていれば、山田はナンパされなかった。山田が嫌そうな顔をすることも。山田が助けを求めることも。山田が。山田が。山田が。僕は、山田が!!
「……ッッ!!」
考えをまとめるより先に、体が動いた。走って、走って、自分より大きな男子たちの前に割り込み、大声で啖呵(たんか)を切る。
「山田は俺のだッッ!!」
ワンテンポ遅れて、夜空に花火が咲く。驚愕に見開かれた山田の目と、僕の視線が交差する。皆が夜空を見上げた、その喧騒の隙を突いて、山田を奪う。
「僕からはぐれるなよ、山田!」
山田の手を引いて、僕は走った。
「……ごめん」
少し離れた場所で、僕はうつむく。
「何が、ごめんなの?」
「来るのが遅くなった。それで、山田を危ない目に合わせた」
「そ、それは私が早く着きすぎたせいで……」
「山田が早く来るのを見越しておくべきだった。あ、あと」
「あと?」
「
「……ううん。カッコよかった」
僕らはしばらく無言で見つめ合う。
これは、夢だ。夏祭りという名の、いっときの彼氏と彼女の
「走って暑くなっちゃった。かき氷、おごってほしいな!」
「それくらいなら、おごってもいい……」
「あと、唐揚げ棒と、たこ焼きも食べたい!」
「そっちは自分で買ってくれ……」
結局、あの日のことをぜんぜん謝れないまま、僕は、絶対にはぐれないように、強く山田の手を引いた。